【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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ANON生誕回となります。
挿入するべき回此処じゃないと思うんですけど、後で弄っておきます




滅茶苦茶な私の誕生日(千早愛音生誕記念

「ゆいく~ん!いやぁ、実はさぁ今日とびっきりな日なんだけど実は知ってる?」

 

「知ってる……お前の誕生日だろ?」

 

「そうそ……ってなんで知ってるの!?」

 

「お前此処最近ずっと誕生日アピールしつこかっただろ。気づかないワケないだろ」

 

「え?え?あーそ、そうだったっけ……」

 

 そう、今日は私の誕生日。

 千早愛音がこの世界に誕生してはやもう16年が経った。いやいや、やっぱり私みたいな人間だと時間の流れも遅く感じちゃうから誕生日もようやく来たかー!ってなっちゃうんだよね。ほら、誕生日だと忙しくなっちゃうから。指で数えるのがやっとっていうか。まず、友達に祝ってもらうでしょ。で、ともりんにも祝ってもらうでしょ?それでそれで睦ちゃんにも祝ってもらうでしょ!?まあ、りっきー達はあまり期待できなさそうだしなぁ……。

 

 それで最後は……。

 

 

 

 最後は……。

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?愛音ちゃん?」

 

「え?!あーいやいや、なんでもないよ!!」

 

 そうそう、そして私は今羽丘のみんなから誕生日を祝ってもらっているんだった。

 なんか夢うつつのままベッドから起き上がった感じがしていたけど、それは多分きっと気のせいというか、ぶっちゃけゆいくんに自分が誕生日だってことを伝えてないけどそれはそれで良かったのかな?ってなっているけど、あのゆいくんのことだからただ誕生日で祝ってくれるだけで済まない。だって、ともりんに「愛してる」とか言っちゃう人だし……!!

 

「大丈夫?愛音ちゃん?」

 

「え!?あっ、いや本当に大丈夫だよ!!?」

 

 危ない危ない、そういえば誕生日で思い出したけどそのうちMyGOで私だけのソロライブを開催してそのまま誕生日ライブとかしてもらうのもいいじゃん。いやぁ、もうこれはタイトルを付けるなら。

 

 ANON BIRTHDAY LIVEだよね!

 逆に自分が年取って来るとこういうのって来るものもありそうだけど、そういうのも楽しんでおきたいしやっぱり!!

 

「そういえば愛音ちゃん、やっぱりバンドのメンバーからもお祝いして貰ったの?」

 

「え?あーうん、ともりんからはお祝いして貰ったよ。プレゼントにくれたのがね、銀河の砂って奴だったんだ。小瓶に入った奴でね。結構可愛いんだ~」

 

「へぇ、燈ちゃん珍しいもの持ってるんだね!!」

 

 ともりんが私に銀河の砂を渡してくれたときに解説してくれたことを思い出す。

 

『えっとね、あのちゃん……。この砂は凄く貴重……なんだ。昔、銀河系から降り注いで来た隕石に漂流してきた砂をそこから採取してこうやってお土産として売っているんだって』

 

 その話を聞くだけで貴重なものだと気づいた私はともりんに聞き返した。

 『いいの?』と……。自分が貴重なものを貰っていいのかな?と思っていたから。それにともりんは頷いていた。

 

『それにその銀河の砂にはこんな言い伝えがあるんだ、この銀河の砂を渡したら天の川のように続いて行くって……。私もあのちゃんとバンドを一生続けていきたいから』

 

 一生続ける……。

 それがこの銀河の砂に掛けられた思い。とても重いものだけど、私はそれをともりんらしいなと思っていた。私をその小瓶を握り締めながらも、ともりんの話にそっと傍で聞くようにしてただ黙り込んでいた。

 

 

 

 ともりんからの誕生日プレゼントはそういうものだった。

 人によっては重過ぎるなんて言うかもしれない。まあ実際、重いっちゃ重いけどともりんからの贈り物ってきっとそういうものなんだと思う。歳を重ねるのも一瞬一瞬だから……。ともりんにとっては……。

 

 

 

 

「愛音ちゃん聞いてる?」

 

「あー!ごめんごめん!それで何の話だっけ?」

 

 天文部での部室で、ともりんとの会話を思い出していると友達が話しかけて来たことに気づく。

 

「愛音ちゃんぐらいになるとやっぱりと()()から誕生日プレゼント貰うのかなって話してたんだ」

 

「……か、彼氏!!?」

 

 過剰反応をしてしまう。

 絶対に飛んでこないと思っていたその二文字が飛んできて私の心臓を貫通していく音が聞こえていた。

 

「あれ?愛音ちゃん彼氏いなかったの?」

 

「え!?い、いや……」

 

 

 

 

 

「いるよ!!?」

 

 な、ななななにやってるの私!!?

 いやいやいやいや、動揺し過ぎだってば……!今は居ないとか実は遠距離で会えてないとか適当な嘘をついて逃げれば良かったのにはっきりと言っちゃうのは幾ら何でもマズい。いや、後者を言うなら今からでも間に合う。前者だと流石に怪しまれるけど、前者なら間に合……。

 

「愛音ちゃん今度紹介してよ!」

 

 

 

 

「……え?」

 

 まっずい……!

 退路が断たれた。すぐ軌道修正していつもRINEだけでやり取りしてて遠距離なんだとか言い訳することも出来たのに私があれこれ考えていたから逃げ切ることが出来なくなっちゃった。これやばいってぇ!どうしよう……!!

 

 

 

 

 

「本当にどうしよう……」

 

 モールの喫茶店内で私はただ一人、冷静に自分の状況をまとめようとする。

 自分の状況を改めて考えてみるとかなり最悪。まずクラスのみんなからは彼氏がいると思われている。そして、その彼氏と会わせて欲しいという約束までされて……。

 

「了承した訳じゃないんだから別に……よくない?」

 

 会わせて欲しいと頼まれたけど、私の方は特に了承していない。

 それどころか曖昧な返事をしただけだから、別にゆいくんを紹介する必要なんてなくない……?

 

「でもなぁ……」

 

 一番の問題は「会わせてくれなかった」という話になったときの場合だ。

 「もしかして、愛音ちゃんって見栄張ってた?」と勘付かれたときには最悪な結果になる。今からでも遠距離恋愛だから会えないとか言い出したら、こうなるかもしれない。

 

「そよりんが居たらきっと言われただろうなぁ……」

 

 そよりんがこんなとき居たらきっと、こう言われたかもしれない。

 「見栄ばっかり張ってるからそうやって自分の首を絞めることになる」って……。まあ、そよりんのことだからこういう状況すらも楽しみそうな気がするけど。そういうところマジで悪魔だよねそよりんって……。

 

 

 

 

「そよがどうし「うぇっ!!?む、睦ちゃん!!?」」

 

 一人で喫茶店で状況を整理していると、睦ちゃんが声を掛けて来る。

 手にはリンゴジュースを持っているようであれこれ考え込んでいた私に話しかけてくれていた。

 

「ごめん」

 

「あー全然そうじゃなくて!!色々と考えてたんだ!!」

 

「結人のこと……?」

 

「そうそう……ゆいくんがさぁ……え?」

 

 あれ?今ゆいくんの話ってしたっけ……?

 なんで睦ちゃん私がゆいくんのことで悩んでいるって気づいたんだろう……?

 

「顔に書いてあった……」

 

「っ~~~!!じゃ、じゃあね睦ちゃん!!」

 

 彼氏がどうのとかそういう話しかしていなかったのに睦ちゃんがゆいくんのことを思っていたという話をされたせいで私は頭が蒸発しそうになってその場を去ってしまう。睦ちゃんがその後、何かを言おうとしていたけど私はその場をすぐに離れてしまう。

 

 緊急退避しなくちゃ……。

 こっちは夏の暑さと共に頭がどうにかなりそうになってるのに……。とりあえず、あれだよね。あれ!砂漠の中でオアシスを見つけるように何処か安全圏を見つけなくちゃいけないよねと改めて意気込みながらも、私がやって来ていたのは……。

 

 

 

 

「よしっ!ストライク!!」

 

 ボウリング場……。

 一人でこういうところ全く来たこと無かったけど、案外楽しい……かも。流石に友達だとかりっきーとかに一人でこうしてボウリングを遊んでいるところを見られたら終わるかもしれないけど、まあボウリング場に来てることなんて早々にないよねぇと思っていると隣のレーンの人もストライクのようだった。

 

 スコアの方を見るとさっきからストライクとかスペアを連続して出しているみたいだった。

 ここまで正確なスコアを出せている人が居るんだとちょっとだけ感心していると、その人と視線が合って私は固まる。何故なら、その相手は……。

 

 

 

 

 

 

「うぇっ!?ゆ、ゆいくん!!?」

 

 今日何度変な声を出したっけ……。

 もう数えきれないほど出したような気がするなか、ボールを投げた後に綺麗に靡いているゆいくんの茶髪が目に入る。

 

「愛音……?」

 

 ゆいくんのスコア票をもう一度見ると、どうやら今日は一人で来ているみたいだった。

 よかった、とりあえず誰かに見られるとかそういう心配はなくて……。

 

「き、奇遇だねこんなところで……」

 

「俺もそれは思った」

 

「一人でボウリング?」

 

「気晴らしにな、そういうお前もか?」

 

 それに私は頷くのが精いっぱいだった。

 とりあえず、ボウリングのボールを持って自分のペースを崩すことなくまたプレイに戻ろうとしたときだった。ゆいくんが自分のバッグから何かをごそごそと動かしていた。

 

 

 

「ほらよ」

 

「……え?」

 

 手に持っていた球を落としそうになる。

 危ないとすぐに手の中に戻す。

 

「誕生日だったろ、今日」

 

「し、知ってたの?」

 

「前に一度だけ言ってたからな」

 

「よく……覚えてたね」

 

 たった一度っきりゆいくんの前で言ったことがあるだけなのにゆいくんはそれをちゃんと覚えててくれていた……。私はそれだけで自分の心が満たされていた。心の中で落ち着かない感情を抱えながらも……。

 

「誕生日ってのは誰にとっても大事だろ、だからちゃんと覚えてた」

 

 ちょっとだけ複雑そうな顔をしながらもゆいくんがそう言ってくれる。

 

「そっか、そっか……開けてもいい?」

 

 自分の中で「そっか」という単語を何度も噛み締めながらも、ゆいくんがくれたラッピングされた誕生日プレゼントを開けて行くことにした。ゆいくんが渡してくれたのは小さな小包のようなもので何が入っているんだろう?となっていると……。

 

 

 

 

「これってフェレット?」

 

「あー前にポメラニアンの眼鏡ケースあげただろ?今回は愛音にピッタリな動物であげようかなと思ってな、フェレットは遊び好きで活発で、悪戯好きな性格なんだよ」

 

「それ私じゃなくない?」

 

「まあ聞けって、フェレットってのは注意を引きたがる行動も多くてな、構ってあげればあげるほど懐いてくれる性格なんだよ。だから愛音に似て「なんか褒めてないよねそれ!?」」

 

 私にそっくりな動物で誕生日プレゼントで選んでくれたんだー!と嬉しくなっていたし、このアクセサリーに大事にしようとなってた。なってたけど、なんかゆいくんの言い方だけど「お前こういう奴だよな」なみたいな言い方されててちょっとだけ「うーん」となってしまった。

 

「あーなんか悪い」

 

「やっぱ褒めてないんじゃん!!?」

 

「あーでもコミュニケーション能力が高いってのは似てるだろ?」

 

「今あーでもって言ったよね!?ゆいくんが誕生日にこんなことしてくるなんて信じられな……ん?」

 

 私はもう一度フェレットのアクセサリーを眺めると、なんかちょっとだけ造りが甘い部分というか既製品にしてはこんな作り込み甘いことするかなって言う部分があった。まあ、安めな奴ならこんなこともあり得るかもしれない。ただ、ゆいくんがこういうところで手を抜くって考えられないし……。もしかして、もしかして……。

 

「おい、なにニヤついてんだよ」

 

「いやぁ、そっかそっかゆいくんそういうことしてくれるんだなーって思って」

 

 なんで真っ直ぐ私のところに来てくれなかったのかな?ってちょっとだけ思っていたからその理由が分かった気がする。

 

「……帰っていいか?」

 

「えー?ねぇねぇ!!」

 

 

 

 

「手作りなんだよね!これ!!」

 

 逃げようとしていたゆいくんの足が止まる。

 手作りと言った瞬間だった。私が裁縫とかそういうものが出来るからなんとなく気付けたけど、アクセサリ―の表面を見たときにちょっとだけやすりか何かで擦ったような跡が残っていた。それに気づかなかったら、多分これをただの贈り物としか見なかったと思う。

 

 

 

 

 ゆいくんってそういうところは本当に素直だよね。

 と思っていると、ゆいくんは観念したのか荷物を床に強めに置いていた。ただそれは怒っている感じじゃなかった。

 

 

 

 

 

「誕生日おめでとう愛音」

 

 ゆいくんはそれだけ言い残して、今度こそ去ろうとしていたけど……。

 こう言ってくれた。

 

 

 

 

 

「一ゲーム一緒にやるか?」

 

 

 

 

 

「当たり前じゃん!!」

 

 誕生日を祝ってくれたゆいくんだけど、勝負事となれば別……!

 此処まで手心を込めたものを貰ったけど、私だって勝負は負けるわけには行かないし……!!手にボウリングの球を持ったまま、勝負へと挑むことにする。

 

 

 

 

 誕生日の先にある行動を通してだったんだけど……。

 

 

 

 

 

 

「ちょっとゆいくん!!手加減してよ!!」

 

 明らかなスコア差をつけられて文句の一つでも言いたくなる気分だった。

 だって、ゆいくんさっきからずっとストライクだとかスペアだとかばっかりなんだもん!勝てるわけないじゃん。こっちはゆいくんと一緒にボウリングでドキドキしてるのに……!

 

「じゃあ、手抜いてもいいのか?」

 

「それはそれでなんか嫌だから全力でやって!!」

 

「はいはいはい、我が儘なお嬢様だな。コツ教えてやろうか、その方がフェアだろ」

 

 と言いながらも、私に近づこうとしてくるゆいくんに気づいて何をしようとしているのか察して私は「ダメダメダメ!!」と首を思いっきり横に振る。

 

「っ~!!!!」

 

 

 

 

 

「そういうところだってば!!」

 

 手を掴まれたり、こうやるんだよとか教えられたりしたらこっちの身が絶対に……!

 

 

 

 

 

 

 持たないってば……!!

 

「いいから、教えてやるから」

 

「いいってば!!ゆいくんの馬鹿!もうしらない、誕生日プレゼントもいらないから!!」

「本当にいらないのか?」

 

 

 

「いるに決まってるじゃん!!」

 

 顔を真っ赤にさせながらも、ゆいくんは

 あーもうゆいくんのせいで色々と誕生日おかしくなってるんだけど……!!

 

 

 

 

 

 

 

「折角の誕生日なのに!!」

 

 

 

 

 

 









補足の描写





 あーもうゆいくんのせいで色々と滅茶苦茶な誕生日だった。
 もう全部ゆいくんのせいだよ、誕生日が煩悩まみれになったのも全部……。

「って……あれ?睦ちゃんどうしたの?」

 再びモールに戻って自分の誕生日、ご褒美でも買いに行こうとしていたとき睦ちゃんが階段の外に座ったままちょっとだけ調子が悪そうだった。隣には紙袋のようなものが置かれている。何かあったのかなとなっていると……。

「愛音、これ……」

 立ち上がったとともに睦ちゃんは紙袋を渡してくれる。

「もしかして誕生日の……?」

「ん、さっき渡せなかったから……」

 そ、そういえば……さっきも睦ちゃんが話しかけたときに手には紙袋があったような気がする。
 自分への買い物かなと考えている暇がなかったというか、そもそもゆいくんの名前が出ていたからちゃんと気づくことが出来なかった。



「モーティスと一緒に選んだ……。本当は別々に渡したかっただけど」

「……そっか、開けてみるね!」

 二人が選んでくれたという気持ちだけで私は嬉しくなっていた。
 こうして睦ちゃんが私に選んでくれた誕生日プレゼントいったいどんななのかな?と楽しみにしながらも、開けていくとそこにはきゅうりのTシャツというより、きゅうりのマスコットキャラみたいなTシャツが出て来た。

 「睦ちゃん、これって?」という感想よりも先に出たのがちょっとだけ笑いが出てしまったことだった。勿論、ふざけてじゃない。なんというか睦ちゃんってセンスが独特なんだなってちょっと面白いかもなっていた。


 でも、なんだ可愛いかもってプリントされているTシャツを見て思った。
 竹串が体になっていて丸い目があって、口は包丁で切られたような跡があって奇抜なゆるキャラだなという印象があった。







「変だった……?」

 睦ちゃんが不安になって来たのか、自分があげた誕生日プレゼントを掴み直そうとしていたけど、私は「ううん」と返す。





「ありがとうね、睦ちゃん……!モーちゃん!!」

 お礼の言葉を送る……。
 睦ちゃん達が選んでくれたそのTシャツをしっかりと握り締めながらも……。




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