【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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死ぬほど時系列が分かりにくいかもしれませんので先に伝えておきます、この話の時系列についてですが……。

簡単に説明すれば、睦がそよをライブに誘って尚且つ、初音が初華をライブに来てと誘った翌日になります。時間軸的にはムジカのライブを行うまでの空白の一ヶ月間。

話数的なもので言うならば、

こじ開けられた扉は開くにはもう少し(そよ睦回)→それぞれの決意→『忘れてないよ』になります。




MyGO!!!!!編第五章 力ある一歩は決意となる
忘れてないよ


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結人、ライブ来れそう……?』

 

 肩でスマホを押さえて俺は電話に出る。

 背中いてえな、寝違えたか……?

 

「ムジカのだろ?別に全部見に行ってもいいんだぞ?」

 

「嬉しい……でも東京公演だけ見に来て欲しい」

 

 俺が全部の日程を見に行ってもいいと伝えると、睦は拒否してきた。

 あいつなりにも、理由があったのかもしれねえ。来て欲しくないと理由が……。このライブはムジカというバンドが大きく成長するためのライブ。睦もまたステージに立って成長を果たそうとしている。

 

 自分の未来のためにも……。

 

「分かった」

 

『ん……ありがとう』

 

 俺するべきは最後に一押しだけだ。

 俺という存在だけで、何処までそれを強く思い描くことが出来るのかが分からねえが……。あいつが望んでいるのはそういうことのはずだ。なら、俺は応えてやる必要がある。東京公演という最後の舞台であいつを確かめてやるために……。

 

『それじゃあ、結人……』

 

「ああ、じゃあな睦」

 

 ライブが終わったら何処かに行くか?という話をしようかとも考えていたが、今ご褒美を吊り下げるのは違うはず。こういうのは全部が終わってからの方がいいだろうな。

 

 

 

 

「とりあえず、起きるか……」

 

 ベッドに長い間に座り込んでいた俺は立ち上がり、制服に着替えようとした瞬間にスマホに通知音が鳴る。

 

『結人君、今日大丈夫?』

 

 ワイシャツに袖を通していると、燈からの連絡が来ている。

 

『水族館行く……?』

 

 水族館に行く……。

 燈から誘ってくるのはこれで二度目だが、もしかしてあのときの約束を果たそうとしているのか……?なんて気がしてならなかった。

 

『結人君……今度水族館行かない?』

 

 中学時代の記憶が泡として蘇る……。

 

『池袋のじゃなくても……いいよ?』

 

 そうだったな、前に一度だけ燈は俺のことを誘ってくれていた。

 俺がペンギンを見たいだろと言っても、燈は俺の話を聞きたいからと言って水族館に行くという約束を取り付けていた。中学時代のことなのにちゃんと燈は覚えていてくれていた。

 

「ありがとうな、燈。覚えていてくれて」

 

『ううん、結人君と行きたかったから……』

 

 否定をしない。

 やっぱり、約束を果たすためだったんだな……。

 

「ああ、分かったよ。じゃあ、学校終わったら駅前で……」

 

『が、学校前で待っても……いい?』

 

 声を裏返しながらも、燈は言ってくる。

 俺は笑うこともなく、真剣に考える。

 

「え?あーそれはちょっとな……」

 

 天井に目を向けながらも、考える。

 前に一度だけ、燈にちょっかいをかけていた奴らがいたからあんまり学校前で待たせたくないという気持ちが勝ってしまう。効率とかじゃなくて、少しでも一緒にいられる時間を感じたいからとか理由なんだろうが、あいつらみたいな低俗な奴らが燈の近づくとは言えないしな……。

 

「俺も立希のこと言えねえな……」

 

 小さな声が漏れだす、渇いた笑みが出そうになる。

 普段、あいつのことを燈の守護神だとか思ってるくせに、こういうところは俺も立希と全く同じだから人のことが全く言えねえが、俺の場合実際に経験があるから……な。なんか、この言い方だと俺と立希は違うみたいな言い方になってんな……。

 

「燈、学校は前みたいなことが起きないとも限らねえから悪い。近くに待ち合わせできる場所があるからそこでもいいか?」

 

「う、うん……」

 

 燈の要望通りに応えてやりたいところだが、前にも似たようなことがあった以上警戒しておくことには越したことはねえだろう。俺がいつでもあいつのことを守れるわけじゃねえからな……。

 

「じゃあ、待ち合わせ場所送っておくからそこでな」

 

 と電話を切って、すぐに指定の場所を燈に送る。

 それからして、俺は袖に制服を通してから部屋から出る。視界に入れていたものをバッグの中に入れて部屋を出る……。

 

 

 

 

 

 放課後、俺は慌てるなく学校を出る。

 特に何もなく、学校から出ることに成功した俺は若干早歩きで燈が待ってくれている場所に向かった。あいつもああいう場所の方が落ち着くだろうから、そこで待っていて貰っているが退屈してないだろうか……。

 

「悪い、待ったか燈?」

 

 走ることなく、図書館の中で待ってくれていた燈に小さく声を掛ける。

 

「ううん、今来たばかりだよ……」

 

 燈は「違うよ」と言ってくれる。

 燈の方は、さっきまで本の世界に浸っていたそんな名残りがあった。

 

「気になる本でもあったか?」

 

「え?う、うん……」

 

 視線で本の位置を語り掛けてくれる。

 俺は視線の先の方を向けると、それは燈の身長よりもちょい高めの位置にある本。俺が話しかける前から、その本に視線を向けていたから本の背表紙だけでその本の世界に入っていたんだろうな。

 

「これか?借りるのか?」

 

 背伸びすることなく、俺が本棚から手に取ると燈は本に視線を向けている。若干古びた本の匂いが本からする。どうやら、お目当ての本で合っているようだ。本のタイトルに目を向けると、そこには……。

 

 

 

 『アクセサリーの作り方』

 

 

 

 

 と書かれている。

 本のタイトルを黙読して、俺の頭髪には本屋の照明が置かれているような気分になっていた。身に覚えがあるから、だろうな……。

 

「覚えてるのか?俺が作った奴……」

 

「今も……持ってるよ?」

 

 と言って燈はバッグからお土産が入っていたと思われる箱を取り出して、その中から燈に渡した手作りの首飾りのアクセサリー。俺がミスをした名残りが未だに残っていて、アクセサリーには擦ったような跡がまだあった。

 

 懐かしいという気持ちと、ふがいなくなる自分がいる。

 勿論、燈が今までずっと保管してくれていたこともそうだが、もっと自分を許せないという感情を昂らせているの、約束を果たすことが出来なかったからだ。

 

『来年の春か夏に、へび座をこの場所でまた観に行かないか?』

 

 照明が一気に真っ暗になる。夏の灼熱地獄はまだまだ続くが、気づけばもう7月は……終わる。

 睦だとか初華のことで忙しかったと言えば、聞こえはいいかもしれねえし自分を納得させることは出来るがそれでも燈との約束を放棄したのは間違いねえ。自分を黙らせるほどの理由が仮にあったとしても、それで満足できるかと言われたら答えはノーでしかない。

 

 自分をどうしても許せない気持ちになって、視界が真っ赤になりそうになる。

 そこだけに囚われて、自分を苦しめようと首にまで手を伸ばす幻覚すら見えそうになっていると……。

 

 

 

 

 誰かが……俺の手を掴んでいる。

 その瞬間にまた、俺の中での視界は鮮明になり照明が戻って来る。視覚が完全に戻って来ていたんだ。手の感触を確かめると、手に触れていてくれていたのは……。

 

 

 

「燈……」

 

 手はしっかりと……握られている。

 視界がまるで血で染まっていた俺のことを呼び戻してくれたのは燈、そのものだった。首には俺が渡したものを身に着けている……。変わんねえな、似合ったまんまだ……。

 

「結人君と星を眺める……」

 

 呼吸を溜める。

 瞳は真っ直ぐ俺を見つめている……。

 

「それだけで……充分だよ?」

 

 充分だった。それだけで……。こっちの気分が楽になるのには……。

 

「やっぱ……お前には敵わねえな燈」

 

「そ、そうかな……?」

 

「ああ、やっぱお前は強いよ」

 

 何度目だろうな、こうやって燈には勝てる気がしないとなったのは……。

 いつだってそうだ、感受性が強い燈はまるで何か通信でも拾ったかのようにして俺の気持ちを汲み取ってくれる。俺が燈から逃げようとしたときも、俺が立希のことで悩んでいるときも……。

 

 その度に思うんだ。

 俺は高松燈に勝てねえって……。なによりも、俺は自分が馬鹿らしくなっていた。瑠唯さんに言ったことを思い出す。迷わないでいる人間に寄り添う資格はないという言葉。恐らく、それは自分に言い聞かせるものでもあったが、今心の中では何処か迷っている自分を憎みそうになっている自分も居たのは確かだった。

 

 難しいもんだな、本当に自分を受け入れるってのは……。

 睦はよくやったよ、真面目に……。あいつはすげえよ……。

 

「燈、ありが……いや、行くか?そろそろ」

 

 感謝を伝えようと思った。

 それは大事な行為で当たり前なことだ。当たり前なことだが、俺は口にするのをやめた。燈は多分望んでねえだろうから……。

 

「本借りてから、さ。後……」

 

 

 

「今日の夜、見に行こうぜ。何もかも終わったら」

 

 水族館での非日常を終えてから、なにもかも自分という存在を忘れて星空を見上げる。

 燈と一緒にやり遂げる。河川敷で大の字になるのもいい、公園でも、いつものモールの外階段でも……。ただ燈と星を見つめるという時間を作ってみたいとなった俺は燈の意見を了承した。

 

「ほ、本当……?」

 

 喰いついて来る。

 一緒に星を見れることが出来るという話に……。

 

「あ、ああ……」

 

 明らかにさっきよりも若干俺の手を握る力が強くなってる。

 俺に顔を近づけて、話しかけて来たこともあってか息が僅かに掛かって俺はちょっとドキッとして逸らしてしまう。ったく、唇までしたのになんで今更こんなことで心臓おかしくしてんだよ俺……。

 

 照れながらも、頭の裏を掻いていると後ろから咳払いのような声がする。

 

「すみません……此処は図書館なのですが……」

 

「あ、あっ!!ご、ごご、ごめんなさい……!!」

 

 俺も謝りながらも、「やべっ!?」と心の中で思ってしまう。

 普通に此処が図書館ということを忘れて、燈とこうして話をしていて時間だけが流れてしまって、更には図書館司書の人に怒られてしまう。

 

 頭が下がらなくなり、燈の方はタジタジになりながらも顔を真っ赤にしているのを見てから、燈の手を握り直す。

 

「ゆ、結人君……?」

 

 俺に手を握り直されて、硬直しそうになっている燈。

 

「借りるんだろ、その本」

 

「う、うん……!」

 

「水族館も楽しみにしてるからな?」

 

 

 

「し、調べて来たよ……!!」

 

 必死に頷いてくれている燈に、笑顔を向けながらも一緒に歩き出す。

 にしても、アクセサリーかぁ……。燈は、ちゃんと覚えてくれていたんだな……。

 

 

 

 だって、あいつはちゃんと握ってくれてる。 

 俺があげた首飾りを……。

 

 

 

 

 

 手を握ってない方の手で……。

 

 

 

 

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