【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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事実上、この話が高松燈2025年版生誕記念の話になります。
話を考えたときにどうやっても本編に繋がる話しか思いつかなかったので本編に組み込んであります。


ひたむきなる情熱

 

 

 

 

 

 

 

 そよちゃんとの一件を終えて、次の日を迎える。

 抱えきれないほどの感情があった、そよちゃんにも……。自分のことを自分で責めてしまうことは私もよくやってしまう。自分が出来ないと、自分が人とは違うと感じてしまう。

 

 人と無理矢理合わせようとして、自分の言っていることが正しくないと気づいてしまうとき怖いとなってしまう。その度に、自分も自分という人間が早く人間になりたいって願ってしまう。そよちゃんの気持ちは痛いほど分かってしまっていた。だからこそ、そよちゃんの心の叫びを解放してあげたかった。

 

『誰が何と言おうと……燈は人間だ』

 

 結人君は私のことを人間だって認めてくれた。

 どんな形をしててても、燈は燈だって言ってくれた。まだ心の中でその喜びが消えることはない。私にとって大事なもの……。

 

 

 

 

 

「燈、悪い。待たせたな……」

 

 放課後、RINGのカフェに来ていた。自分の身体の意識が自分に戻ってくる。

 

「コーヒーだったよな?」

 

 テーブルの上にコーヒーカップが置かれている。

 カップの中には当然、コーヒーが入っている。香りが強めのコーヒーが入っている。

 

「ありがとう、ゆいくん……」

 

 一口飲む、心が温かくなる。

 口に広がるのは、目を細めたくなってしまうほどのコーヒー特有の苦い味。

 

「待ってろ、今ガムシロとか持ってくるから」

 

「う、うん……ごめん」

 

「気にすんなよ」

 

 ゆいくんが気を遣って、砂糖とガムシロップを持って来てくれる。

 加減が分からず、私は全部を入れてしまう。大人の味がどういうものなのかはまだよく分からない。結人君とこうして、何かを一緒に居られる時間を噛み締めたい。実感を感じていたから。

 

「大人の味……」

 

 知っている。

 RINGの外階段で、結人君と一緒にしたこと……。あれは大人の階段を上る行為、そのもの……。思い出す度に、仄かに体が熱くなってしまって思わずコーヒーを口にすると、今度は身体が熱くなってしまう。

 

「どうした?燈」

 

「ううん、なんでもない……よ」

 

 気づけば、顔を集中して見ていたせいで結人君に疑問を持たれてしまう。

 カップを手に持った状態で首を傾けている。すぐに否定すると、結人君は納得してくれていた。気づかれた……かな。結人君にしてあげたことを思い出していたこと。

 

「ゆいくん……私は結人君のこと怪物だとか思ってない……よ?」

 

 結人君が手に持っていたスプーンを置いている。

 乾ききった音が私の耳に通過して恐怖してしまいそうになる。まるで、自分の選択を間違えてしまったと鼓膜が教えてくれたみたいに……。

 

「はぁ……」 

 

 結人君がカウンターの奥から移動してくる。

 

「ほらよ」

 

 カウンターから出て来た結人君は……。

 テーブルの前に立って、私のテーブルの上に飲み物を置いてくれた。

 

「ゆ、ゆいくん……?こ、これは……?」

 

「俺からのサービスだ。遠慮なく受け取れ」

 

 結人君が置いてくれたのは……ラテアートと呼ばれるもの。

 ただのラテアートじゃなかった。結人君が描いてくれたのは秋の星座の一つ。

 

「カシオペヤ座……」

 

 アルファベットのWに似ていて特徴的な形をしてる……星座。

 天の北極を探す為の目印として用いられることも多い、この星座……。

 

「カシオペヤ座の一つにはこういう星言葉があるんだ、カシオペア座υ1星」

 

 

 

 

「星言葉は……ひたむきなる情熱」

 

 胸に突き刺さる、私の耳に響くようにして結人君の声が突き刺さってしまう。

 痛い、苦しいとかいう感情はなかった。どちらかと言うと、心の底から湧き上がる感情は嬉しいだった。

 

「こんなもんで恩返しできるなんて考えてないけどさ、燈がバンドで自分なりに頑張ってる。俺のことを待ち続けてくれていた。感謝の気持ちも込めて、送ろうってなれたんだ」

 

「うん、嬉しいよ……」

 

 直接的な贈り物を私に素直な気持ちを述べる。

 自分がひたむきなのかどうかなんてことは分からない。ひたむきというよりも、心のままに自分の感情をぶつけているだけ……だから。

 

「燈はこういうことをすると、自分はひたむきじゃないって言い出すかもしれねえけどさ、俺は忍耐強く自分なりにMyGO!!!!!のこともバンドのことも向き合おうとしてる」

 

「普通はできねえんだ、そよのように誰もが悩みながらも自分の進む場所を間違えてないか不安になる。自分が許せなくなる。俺もそうだし、きっと燈もそうなんだ」

 

「矛盾を抱えて生きる……」

 

 結人君の言っていることは本来、矛盾をしていることなのに妙に納得してしまう。

 私も結人君も矛盾のせいで苦しんできた一人だからちゃんと知っている、その痛みを……。

 

「前に言ったろ、俺が動物のことを詳しくなれたのはお前に自慢したい、凄いって言われたいからって前に言ったよな。あれは……半分事実で半分嘘なんだよ。本当は……」

 

「最初は承認欲求を満たすために俺はやっていたかもしれねえんだけどさ、お前が俺の話に喰いついてくれるうちに俺はもっと燈とこうやって色んなことを話したいって勇気を貰えて、これでいいんだってもっと話そうってなれた」

 

「今にしてみりゃ、自分を慰めるための言い訳かもしれねえけどな」

 

 自分のことを認めてあげたのに、自虐をしてしまう結人君。

 

「燈……?」

 

 咄嗟に手を掴んでしまう。

 大好きな結人君の手に触れて、実感を確かめる。瞬間的に、私が結人君の手を掴んだのはきっと結人君に直接「違うよ」って言うことが出来なかったから。だから、行動で結人君に否定を告げる。ごつごつとしていて、所々に豆が出来ている手の感触を確かめていると、結人君の顔が崩れ落ちていた。まるで、鎖が切れたように……。

 

「ちょっと……自虐に浸り過ぎたな」

 

 何かを感じ取ってくれたのか、結人君は反省してくれている。

 思わず、顔が緩んでしまう。まるでそれは……。

 

「気にしないで」

 

 って伝えるために……。

 

「結人君が教えてくれた星言葉、届いたよ?だからね……私からも送りたい星言葉がある……よ?」

 

「燈から……?」

 

 指先をテーブルの下で弄る。

 今から言うことはちょっとだけ覚悟がいることだから。どうしても、結人君に話をしたくて自分の気持ちに正直になりたかった。結人君がこれからもこの先もそうしてくれるように……。

 

「くじら座ν星、星言葉は……」

 

 

 

 

「人の痛みを……感じられる心」

 

 告げると、一度だけ口を開きそうになったのを閉じている。

 自分の中で、呑み込んでから結人君は一旦冷静になろうとしてる。

 

「ゆいくんは心があるから今もこうして私に星言葉の話をしてくれた、動物の話も半分嘘だったってことを教えてくれた。きっと勇気のいることだと思う。打ち明けるのはそよちゃんも怖がっていた」

 

「伝えれば届くのは……幻想かもしれない。怖がられるかもしれない。だけど、支え合って生きていたって気持ちがお互いにあるならきっと……」

 

 

 

 

 

「信じられて、進めると思う」

 

 信じることは……儚い。

 永遠なんて一生続かない。いつかは絶対に傷つくことになる。星座のようにずっと輝き続けるなんてことは無理かもしれない。だとしても、私はそよちゃん達と傷つき合いながらも作り上げてきた。

 

 

 

 

 

 

 大切な居場所を守りたい。

 歌詞ノートを開いた。大切な居場所を共有したくて、私自身の心の叫びを結人君に見せたくて私は歌詞の部分を見せようとすると……。

 

 

 

「いい、そいつは楽しみにしておく」

 

 結人君はノートを閉じる。

 目を瞑った状態で……。

 

「ゲームのネタバレはプレイするまで取っておく主義でな、燈がライブで見せてくれるそのときまで楽しみにしてる。燈の込めた思いならきっといいなんてレベルじゃ終わらねえからな。俺の顔面をぐちゃぐちゃにさせるほどのを聴かせてくれよ」

 

 閉じた状態でノートを軽く音を立てて、そのまま返してくれる。

 結人君は言ってくれた。私の詩をライブで楽しみにしてくれるって……。なら、私も応えなくちゃいけない。このもったいないと思って手をつけていなかったラテを飲むことで一歩を……。

 

 見えるはずのない、浮いて見える。

 カシオペヤ座の輝きを堪能してから、私は一気にカップに口を付ける。

 

 口の中には甘みと苦みが調和されたような味が広がる。

 そよちゃんがよく頼んでいるのを見て、私は飲んでいることも多かったこの飲み物も今は……。

 

 

 

 

 

 

 

「美味しい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

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