【完結】迷子の友人は羨望する 作:シキヨ
再会は偶然だった。
彼のことを一生の友達だと思っていた。
友情という二文字がどれだけ儚いものだとしても……
本当に私は……友情というものがいつまでも続くと思っていた。
でも、それは勝手な想像だったのかもしれない。人の心は脆くて弱い……から。意図していない間に私が結人のことを傷つけてしまったのかもしれない。それを確かめようにも確かめる手段はもう何も残されていない。
携帯には結人の連絡先は残されている。でもそこに連絡するのが怖かった。それが何故なのかは高校生になった今でも分からず、私の中でずっと空白が続いてる気がしていた。バンドが崩壊してこれからもずっと友人で居てくれると信じていた男の子も失って私の音は完全に遮断されていた。もう何もかも跡形もなく消え去ってしまっていたんだ。誰も彼もが私の前から過ぎ去って行くそんな人生に億劫になっていた。
歩道橋を渡ると、私の目の前で花びらが散っていく……。
落ちて来た花を眺めながら私はこんな花みたいに美しくも生きて行くことが出来たんだろうかと違和感を覚えてしまう。出口のない迷宮を走っている気分になりながらもきっと自分はそう胸を張って言えるような人生を送れていなかった。
いつも人になろう、人になろうとしていた私だったけど……人になることは叶わなかった。
もしもなんて仮定の話は良くないのかもしれない。それでも、時々思ってしまう。バンドが……CRYCHICがあったら私はなれたのかもしれない。結人が傍にいていつものように無邪気に笑いながらも星を一緒に眺めてくれていたら私は……。
「人間になれたのかな……」
ぽつりと呟いた言葉は花にも誰にも届く事はなかった。
私は下を向きながらも歩道橋を歩くのを再開していた。聞こえてくるのは電車が通過していく音、人が通り過ぎていく音、自転車が通る音。それ以外にも色々な音が聴覚を通して鼓動に入って来る。いつも聞いているような音で実はちょっとだけ違ったりする、そんな音の違いを少しばかり楽しみながらも私は歩道橋を下りて少し街を歩いてから進んだ辺りで信号待ちをしていた。
見えているのはビルや人々……。
いつもと変わらないはずなのに、何処かそわそわしていた。その違和感を確かめる為に周りを確かめていると、後ろを振り向いたとき見覚えのある男の子が通って行った。
「結人君……?」
一瞬見えた人の影……。
彼のわけがないと首を横に振るも、どうしても自分の目で彼なのか確かめようとしていた私は信号待ちしていた人達の中を入り込むようにして此処を通って行った男の子を追いかける。さっきあの男の子の髪色は覚えている。黒髪に若干銀色っぽい髪が混ざっている。結人君の髪色と一致しているような……。
「本当に結人君なのかな……」
彼だと思ってる男の子を追いかけながらも少し不安になってしまい、足を止めてしまいそうになってしまっていたが私は足を再び進ませる。結人君に会うということが私にとって恐怖心に繋がることだったけどそれでも私は足を止めることが出来なかった。
「結人君……、結人君っ!」
さっきの男の子の姿は見えなくなっていた。それでも私はまだ追い続けようという気持ちがあった。結人君のはずがない、そう思っても、何故だか心の底で彼が結人君なんじゃないかと考えているのは私自身にも分かっていた。
どうしても、もう一度彼に会って確かめたかった。歩いて歩いて……息を弾ませながら探してみても彼は見つからなかった。それはまるで都会の夜空から星空を探すような感覚だった。
「はぁ……はぁ……」
少し息切れをしながらも、立ち止まってから周りを見渡して見る。でも彼の姿は何処にもなかった。
「やっぱり人違い……なのかな」
そんな訳ない、そんなはずは……。
また前を向いて歩き始める。彼の姿がない。やっぱり人違いだったのだろうか……となっていたけど、私は諦めきれなかった。
だって……あの髪色は結人君なはずだから……。
「結人君……」
そう呟いた時、私は後ろから誰かに声を掛けられた気がした。
「燈?」
と私の名前を呼ぶ声がして私は後ろを振り向いた。そこには、少し驚いた表情をした結人君の姿があった。
「燈……だよな?」
「う、うん……久しぶり、結人君」
少し、言葉に詰まってしまう。それでも目の前にいるのは本当に星乃結人君だった。どうしてなのか分からない。人違いだと思っていたのに、私は今目の前に彼がいる事に驚いていた。でも、それと同時に久しぶりに会うから何を話していいのか分からなくなってしまっていた。
「学校、羽丘にしたんだな。制服似合ってるぞ」
「あ、ありがとう結人君……。結人君も学校の制服似合ってるよ……」
「なんか照れるな……、でもありがとうな」
頬を赤らめながらそう微笑む結人君。久しぶりに会ったのにも関わらず、彼は何も変わっていなかった。そんな彼を改めて見て私は少し安心したような感情になっていた。
「そうだ燈、今でも絆創膏集めたりしているのか?」
「集めてるよ……!えっとね、何処に入れていたっけ……。あっ、あった。これが海の動物シリーズでね、フンボルトペンギンで……こっちがキングペンギンで……これがね!!」
バッグの中から絆創膏を取り出して結人君に見せると結人君は興味津々で見てくれていた。
結人君は私の収集癖を知ってくれていて私の話を頷きながらも聞いてくれる。私が知らない絆創膏を譲ってくれたりすることもあった。
「そっか、まだ集めているんだな。あーそれで……最近なんだけどなんでも匂いがついた絆創膏があるらしくて、ラベンダーとか薔薇の匂いとかするんだって」
「そ、そういうのがあるんだ……。知らなかった。じ、じゃあ……今度一緒に買いに行かないかな?」
昔みたいに話をできたのがあまりにも嬉しかったあまり私は少し声を張ってそう結人君に話してしまった。いきなり「一緒に出掛けよう」なんて言ってしまった為、引かれたりしていないのか不安になってしまっていた。
「あっ!ご、ごめん……急だったよね?」
「気にすんな、大丈夫だって。じゃあ……今度一緒に買いに行くか?」
「う、うんっ!」
結人君が私の誘いを了承してくれたのが私は嬉しくなって大きく頷いていた。また彼と一緒に居られるんだ、そう思うと鼓動が高鳴って仕方なかった。
「行くなら今度空いているときでもいいか?お互い都合があうときの方が色々と都合がいいだろ?」
「うん……そうだね!」
「わかった、帰ったら連絡するから」
「……連絡してもいいの?」
私の言葉に結人君が首を傾げる。
「連絡していいに決まってるだろ?俺たち、友達なんだからさ」
「友達……」
良かった、結人君は……私のことを友達だと言ってくれた。嫌われていた訳じゃないと再確認出来て嬉しくなってしまっている自分がいた。
「それじゃあ俺これからバイトあるからじゃあな燈!!今度絶対に行こうな」
「う、うん……!じゃあね結人君……!!」
良かった、本当にまた会えたんだ……。友達だって言ってくれた。結人君との思い出は今までずっと空白が続いてしまっていたから本当に嬉しかった。私はこれから楽しみと期待を胸に抱えながら家へと帰ることにした。
でも……たった一つだけ気になることがあった。
それは……結人君が私に対して笑いかけてくれているときかつてあったようなものが欠落している気がしていた。でもそれがどういうことなのかは分からなかったけど、過去の彼にあったものが消失しているような気がしていた……。