【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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熱を帯びる。

「気づいてたんだ……」

 

 ずっと結人君には私の正体は気づかれていないと思っていた。

 変なドジは踏んでいないなかったはずだし……。

 

「ああ、気づいてたよ……。お前一度俺のことを結人君って呼んでただろ?俺はこの店で働いているときは名札は貼ってあるが、苗字しか分からないはずだ。なのに俺の名前を知っているということは俺のことを知っている可能性が高いが、ピンク色の長い髪をしている奴だとしたらそれは恐らく……」

 

「愛音しか居ないと思っていた。まさか、此処まで図々しい性格だとは思ってなかったけどな」

 

「その言い方はちょっと酷くない?」

 

「酷くねえだろ」

 

 結人君に指摘されたけど、私はどのタイミングで名前を呼んでいたのか全く思い出すことが出来なかった。……でもまあ、燈ちゃんの話をいきなり切り出した時点で私はもう自分の正体がバレたことに関してはもうどうでも良かった。これ以上二人を苦しめたくないから。

 

「それで燈の話ってのは俺と燈の関係を取り持とうとしているのか?だとしたら、お断りだ。俺があいつの傍に居たら燈を傷つけるだけだ」

 

「……じゃあ、結人君。バイト終わったらカラオケ屋来てくれる?」

 

「は……?お前この流れで俺がその話に乗ると本気で思ってんのか?それにこの前のお礼を今度こそとか言いたいんなら、尚更お断りだ。別にそんなことのつもりでやったんじゃねえからな」

 

 結人君の「は?」の言い方はりっきーにちょっとだけ似ている気がして私は少し微笑んでいると、結人君は「なに笑ってるんだ?」と言いたそうに首を傾げている。

 

「違う違う、燈ちゃんとかの話は一旦いいから。個人的なものに付き合ってよ」

 

「意味分かんねえだが……」

 

 燈ちゃんの話と言うていで話を進ませようとしたらきっと結人君は来てくれない。

 裏切ったという罪悪感と隠しきっていた本心を漏れ出して彼は今燈ちゃんの話はしたくないんだろうし、私がもしカラオケ屋に燈ちゃんを連れてきたりしても……。ん?燈ちゃん、連れてくる?

 

 待って、今思いついたけどカラオケの個室の中で燈ちゃんと結人君を一緒にしちゃえば流石の結人君も逃げられる訳なくない?だって、燈ちゃんと同じ個室にいるわけだよ?私も居る訳だけどさ……。あの二人が向き合うにはお互いがお互いに向き合わないといけない。りっきーはきっと結人君がしっかりと前を向けるようにならないとあのままだろうし……。

 

「じゃあ、一回だけでいいから!!一回だけでいいから!!私に付き合ってよ!!聴いてるだけで歌わなくてもいいからさ!!女の子がこんなに頼んでいるのに来ないとかありえなくない?」

 

 両手を合わせて「お願い!!」と言うと、結人君は本当に面倒そうにしながらも溜め息をついていた。

 

「最後に最後に本音が漏れてるんだよ……。はぁ、分かったよ。本当に一回だけだからな。次誘って来ても行かねえからな」

 

「じゃあ、バイト終わった後よろしく!」

 

「はぁ……」

 

 結人君は何度目かも分からない溜め息をつきながらも「俺もう行くから」と言って、私が言ったんお店から出ようとしたとき、普段店での結人君が気になって私は店を出るのを一旦やめて結人君に気づかれないように接客中の結人君を観察していた。

 

 結人君は笑顔でしっかりと接客している。

 お客さんが結人君の話を聞いて購入することにしたようで結人君は台車を持って来て椅子やテント等を台車に乗せてレジの方まで運んでいる。レジの会計が終わり、これで接客はひとまず終了かと思っていたら結人君はどうやら駐車場まで運ぶようでお店の出入り口の方までお客さんと共に向かって行った。

 

 正直私は結人君のことを凄く偉いと思ってしまっていた。

 店員さんだから台車に商品を積んだりするのは当たり前なのかもしれないけど、車の方まで運んだりするのは流石に偉すぎる。この後はきっとトランクとかに入れたりするのも彼がやったりするんだと思う。本当に偉いし凄いし優しすぎる。いや、私だってやろうと思えば出来なくはないけど流石にあそこまでやるのって優し過ぎじゃない……!?

 

 

 

 

「結人君って……なんか凄いんだな……」

 

 彼の接客をしているところを見て改めてそう感じていた。そして、あの動作が今回が初めてじゃないというのもなんとなく分かっていた。って、関心してる場合じゃない。燈ちゃんに今までの事情全部話して燈ちゃんにカラオケ来てって言わないと……。こういう話って個室でしか絶対できないもんね……。

 

 

 

 

 

『燈ちゃん、もしもし聞こえてる?』

 

 私はお店を出て、外で燈ちゃんと電話をしていた。

 燈ちゃんはすぐに電話に出てくれていた。

 

『うん、聞こえてるよどうしたの愛音ちゃん?』

 

『あーえっとね、話すとかなり長くなるんだけど実は此処数日結人君が働いているアウトドアショップによく行っていたんだ』

 

『そう……だったの?』

 

 燈ちゃんの声質が少し落ちたような気がしていた。

 もしかして燈ちゃん、自分は誘われなかったと少し落ち込んでいるのかな……。

 

『ご、ごめん……!ちゃんと燈ちゃんとも相談してから行くべきだったと思うんだけど、結人君のことを知りたくて……』

 

『ううん、ありがとう愛音ちゃん。それで何か分かったことあった?』

 

『結人君って本当に凄く優しい子なんだねって……。ちょっと不器用だけど本当に人に対して優しくてそれがきっと本人にとっては当たり前のことなんだろうけど、見ていて凄く関心したかな』

 

 本当は結人君のことあんまり知ることが出来なかったけど、今日偶々結人君の接客態度を見ていて口は本当に悪いけど、彼は純粋に優しい人間なんだということが分かった。

 

『うん、結人君は本当に優しい。自主性がなかった私にいつも燈が好きなの選んでいいぞと言ってくれたり、小学校の頃の夏休みは一緒に虫獲りに出かけたりもしてた。でも、なによりも嬉しかったのは……小学六年生のとき私が男の子にいつもダンゴムシとか集めてて気持ち悪いとか言われたとき、結人君は今にも殴りかかろうとしてたんだけど私の手を取って「気にしなくていいからな」って言って手を繋いで一緒に歩いてくれたの。私は……それが本当に嬉しかったんだ』

 

 やっぱりこの二人普通の友人って感じがあんまりしない。

 当時の結人君にとっても今の結人君にとっても燈ちゃんは守るべき存在だということは変わらないんだと思う。燈ちゃんはそんな結人君と一緒に歩けているだけで本当に嬉しかったんだと思う。今の話を聞いてるだけでも私はそれがひしひしと伝わってくる。そして、その歯車が徐々にズレ始めてしまった。

 

『燈ちゃん、燈ちゃんにとっても結人君は大切?』

 

『うん、とっても大切……。結人君が私のことを傷つけたと思っていたとしてもそれは変わらない』

 

 燈ちゃんもやっぱり凄い……。

 どれだけ突き放されようとも結人君のことを思っている。本当にこういうところはお互いに似た者同士っぽいのになぁ……。

 

『そっか……じゃあ、今日結人君とお互いに話し合ってみない?カラオケに行くんだけど……』

 

『分かった、私も結人君とちゃんと話した……ゲホゲホッ!!』

 

『燈ちゃん、大丈夫?風邪引いた?』

 

 電話越しから燈ちゃんが咳き込んでいるのが聞こえていた。

 それも一度だけじゃなくてニ、三度と続いていた。

 

『だ、大丈夫……ちょっと乾燥してて咳しただけだと思うから……』

 

『本当に?……じゃあ、とりあえず今日の夜ね』

 

 

 

 

『うん……』

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「ねぇねぇ結人君、本当に歌わないの?」

 

「言ったろ、俺は聴くだけだって」

 

「折角来たんだから一曲ぐらい歌わない?」

 

「俺に気遣わなくていいから歌えよ」

 

 俺は結局愛音に押し切られてカラオケに来てしまった。

 個室の中は大体四人ぐらいが入れる部屋で、天井にはミラーボールがついていて眩しく光っていたから俺が消そうとしたら愛音が「こういうのは雰囲気なんだから消さなくて良くない?」と言われて俺はそのままにした。まあいい、愛音の歌を聴いていればそれだけで済む話だからな。黙ってあいつのを聴きながらもジンジャーエールで飲んでるとするか。

 

「うーん、じゃあ私入れちゃうね」

 

 そう言いながらも愛音が入れたのはmisumiの曲だった。

 ……そういや、あれから彼女とは再会してはいないがあれはあくまでも社交辞令でしかないだろう。それに彼女は芸能人、忙しくてあんまり会うこともないだろうからな。

 

 

 

 

「どうだった?」

 

 歌い終えて採点の結果が出ると96点と表示されている。

 カラオケの精度は最近かなり上がって来ているし、判定が緩かったり厳しかったりと色々と諸説あるところはあると思うがそれでも95点超えというのは素直に凄いと思っていた。

 

「ーん?まあ、良かったんじゃねえのか?」

 

「なんかその感じだと微妙みたいに言いたそうじゃない?ちょっと不服なんだけどなー」

 

「そんなこと知るかよ、普通に聴いていて不快感はなかったし楽しんでるのは全然伝わったからいいんじゃねえのか?」

 

 実際聴いていて不快感はなかったし耳障りでもなかった。楽しんでいるのも充分伝わっていたし、悪くはないと思う。ただライブで聴いた燈の歌声に圧倒されて感動した俺としては燈の歌声の方が好きだっただけに過ぎなかった。

 

「もしかして燈ちゃんの歌声の方が好きだった?」

 

「燈の話はするつもりないって言ったろ?」

 

「燈ちゃんの話じゃなくて燈ちゃんの歌と私の歌がどっちが好みだったかーって話をしてるんだけどな」

 

「……燈の方が好きだな」

 

 此処で変な変な意地を張る必要はないと判断した俺は率直に燈の歌の方が好きだと言った。

 

「……だからって別にお前のを否定するつもりはない。さっきも言ったけど、歌声自体は聴いていて嫌な気分にならなかったし音痴とも思わなかったな。まあ歌自体もちゃんと歌えてるし歌詞とかも間違えてるところはなかったからちゃんと聴き込んでるんだなって言うのは伝わったよ」

 

 燈の話を絡めてするのは嫌だったから俺は愛音の歌声や歌い方を褒める方向に切り替えていると、愛音が俺のことをニヤニヤしながらも見ている。やっぱり褒めてやるんじゃなかった。と言っても本当に良かったと思うし、否定するのも違うしな……。

 

「優しいはNGワードだからな」

 

「まだ私何も言ってないじゃん!?酷くない!?……でも結人君って口悪いけど結構人に気を遣えたりして優し……偉いじゃん」

 

「あんまり変わんねえだろ優しいも偉いも……」

 

「謙遜してるけどさー、実際凄いじゃん?今日偶々結人君が接客してるところ見たんだけど、最後までちゃんとお客さんの対応するところとか本当に凄いなーと思いながら見てたよ」

 

「……別に。あれは誰かが結局やらないと終わらないだろ。俺は目の前で困られてるのが一番気になって仕方ないんだよ。善意じゃねえよ」

 

 ただ俺の目の前で困られるのが嫌だからいつも手助けしているだけだ。そこには善意なんてものはない。俺が勝手にやっているだけに過ぎないことだ。

 

「えー?でもそれはそれで凄いじゃん。善意じゃなくても見返りを求めてなくても結局は人を助けてるんだから結人君しっかりしてるじゃん」

 

 俺は心の中でモヤモヤとしていた。

 「凄い」だとか「しっかり」だとかしていると言われいることが普通の人からすればそれだけで自分という人間が満たされる気分になるはずなんだろうが、俺には全くそれがなかった。自分は見返りでも求めて助けた訳でもなく、善意で助けた訳でもない。やらなくちゃいけないから手助けしているだけに過ぎない。それを褒められるのはなんか違う気がしていた。

 

「もしかして結人君ってああいうことって当たり前だと思ってやってた?」

 

「……当たり前っていうか、やるしかないだろ」

 

「そっか。じゃあ、その()()()()をちゃんとやれる結人君ってやっぱり凄いと思う」

 

 俺は愛音に「当たり前」という言葉を使われて自分の中で引っ掛かっていたものが解消されたような気がしていた。当たり前のことを当たり前にやるということが凄いことだということを俺は考えたこともなかった。自分があの店でかなり動いている方だし、働いている方だとは認識こそはしていたが、それは自分が店員なのだから当たり前だとしか見ていなかったんだ。

 

「肩の荷軽くなった?」

 

「別に…………まあ、少しはな」

 

 まさかこんな図々しい奴に俺の肩の荷を下ろされるとは思わなかったが、自分の中で今まで解消されていなかったものが消滅したのはこいつのおかげだ。俺は誰かに「ありがとう」だとかお礼に何か貰えたりすると自分はそんなことの為にやっていないのにというと感情になることが多かったが、それは俺自身がそれを当たり前だと思っていたからだったんだ。

 

 本当に愛音にそれを教えられるとは想像もしていなかったけどな……。

 

「お悩み相談してあげたってことでじゃあ一曲歌わない?折角カラオケ来たんだしさ!!」

 

 いきなり俺は電子目次本を突き付けられて困惑していた。

 結局こうなるのか……。

 

「は? 別に相談した覚えはねえけど……。それに、俺が好きなアーティストはカラオケで歌うような奴じゃねえんだよ」

 

「そうなの?そういうの全然気にしないから、歌いなよ?ほら、結人君も接客業やってるんだから、偶にはお客さんを喜ばせる気分で!!」

 

「お前、客じゃねえだろ……。つーか俺今店員じゃねーし……。はぁ……一曲だけな。それで終わりだからな……」

 

 愛音は嬉しそうに拍手をして「やったー!」と喜びを表現しながらも、俺は電子目次本を受け取って、好きなアーティストの曲名で調べて俺はそれを選んだ。カゴの中に入っていたマイクを取り出してスイッチを入れる。

 

 

 

 

 耳には聴こえないはずの信号機の音が響いている。

 曲自体はとてもじゃないが明るい曲じゃない。でも、俺はこのアーティストのこういうところが好きなんだ。泥臭さ、自己嫌悪。悲壮感やこの世に対する否定、抵抗……。中学生に上がって初めて聴いた楽曲が今歌っているこの楽曲だった。出だしから俺は引っ張られて自分が今聞いてるのは音楽ではなく(うた)なのかとすら錯覚させられていた。音楽というものではなく、まるで込めれた想いが詰め込められている詩を聞いているかのようだったんだ。なによりもこのアーティストのこの楽曲の凄いところは簡単に「頑張れよ」という言葉を使っていないところだ。喉の奥から叫びを体現しているこの歌とアーティストに俺は魅了されていたんだ。

 

 

 

 

 

 

「これで満足か?」

 

 歌い終えた俺がマイクを置く……。

 採点では98点という表示がされているが、俺はこの採点がおかしいと全く納得していなかった。

 

「結人君これって結構人気な漫画のOP曲だよね?」

 

「ああ、そうだな……」

 

「というか、98点って凄いじゃん!?私の点数普通に抜かされてたんだけど」

 

 愛音は自分の点数が抜かされたことが少し不満ありげだったが、それでも俺の点数を褒めてくれていたが俺はマイクを置いてソファーに座り込みながらも不機嫌そうにしていた。

 

「98点ねぇ、俺は納得していないけどな」

 

「なんで?もっと高いかと思ってたの?」

 

「そうじゃねえよ、寧ろもっと低いと思ってた。もっとこう感情表現とか這いずり回っている感じが全然表現できてねえって納得してねえんだよ」

 

 愛音が「意外と厳しいんだ」と言いながらも電子目次本を手に取って自分の曲を選ぼうとしていたが、その手を一旦止めていた。

 

「でも結人君がなんとなく燈ちゃんの歌が好きっていうのも分かったかも。燈ちゃんの歌って何処かで燈ちゃん自身の叫びだと思うんだよね」

 

「燈の話はしないって言ったろ」

 

「まあまあ聞いてって……!だから今さっき結人君が歌っていた曲と似ているところを感じたし、歌い方も結人君かなり燈ちゃんを意識してたんじゃないかなーって?どう?」

 

 俺は無言のままでいたが、実際そうだった。

 燈のノートを見たとき、まるで自分が好きなものと一致しているような気がしていたんだ。そして、燈達のライブを見たときあのときは気づいていなかったが、実際に燈の心の内側に触れたような気になって、彼女の喉の奥から出る声の数々が俺の耳に響き、燈が必死に歌っているというのが目で伝わっていた。俺は……あの真剣で必死に歌っている燈の姿に何処か必死でもいいというものを感じ取れていたんだ。なによりもあいつの覚悟を感じ取れていたんだ。だからだろうな、俺が自分のことを不甲斐なく感じてしまったのは充分に人になった燈を見て怪物のままな俺は自分の弱さを嘆くことしか出来なかったんだ。

 

「……そうだけど、なんだよ」

 

「……ねぇ、結人君聞きたいことがあるの」

 

 

 

 

「本当に燈ちゃんとこのままでいいの?」

 

「このままでいい、俺が燈に関わってもあいつを傷つけるだけだ。ただ……」

 

「ただ……?」

 

 愛音が途中で言葉を区切ったことに対して不思議そうにしている。

 俺がこれ以上関わっても燈のことを傷つけるだけだ。現に俺は無意識のうちに燈や立希のことを傷つけてしまった。俺なんて居ないがあいつらの為にもなるはずなんだ。だから、俺は愛音にこの言葉だけを伝えたかった。

 

「愛音にどうしても伝えたいことがある」

 

「私に……?」

 

「ああ……」

 

 俺は深呼吸をしてから愛音の目を見てはっきりとした口調で喋り始める。

 

 

 

 

「燈を……燈を……支えてやってくれないか?」

 

 無責任なことは分かっている。

 俺は燈を裏切って傷つけた人間だ。誰かに燈を支えてやってほしいと頼むなんて間違っているのは分かっている。俺にはもう燈の傍にいる資格なんてない、どれだけ綺麗事を心で埋め込んだとしても俺は燈のことを羨ましかったという事実を今まで隠してきたことは変わらないし、それを伝えてしまった以上俺はもうあいつに居てやれることなんてできはしないからだ。

 

 それに愛音は良い奴だ。

 いつも俺が口汚く言っているのに愛音はそれを笑って言い返して来るし、相手の肩の荷を軽くさせてくれるようなこともちゃんと言ってやれることが出来る。俺のように燈を傷つけるなんてことはしないはずだ。だから、俺は愛音に燈を託したかった。立希もいて、愛音も居れば燈は大丈夫なはずだ。

 

「それは……」

 

 愛音が何かを言いかけようとしたとき、ふいに個室の扉が開く音がした。

 俺と愛音が驚いて振り返ると、そこには燈が立っていたが、様子がおかしかった。彼女の顔は真っ赤で、視界は朦朧としている。

 

「燈……?」

 

 俺がそう声をかけた瞬間、燈の膝が崩れた。

 

「燈ちゃん!!?」

 

 愛音が駆け寄り、彼女の体を支える。俺も慌てて隣に駆け寄り、燈の額に触れると、火傷をしそうなくらい熱かった。

 

 

 

 

 

 

「おい、燈……!!燈……!!大丈夫か!!?」

 

 

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