【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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これにて本編完結となります。
今後は番外編のみになりますが、此処までご愛読ありがとうございました……!


人を結ぶ星座

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空白が続く……。

 音のない世界の中で僕は生きている。雨が降り注ぐことはなく、雲一つない宙が広がっている。こうして意識して、晴れ空を見上げるのはいつぶりだろうか。星を見上げたのは昨日のこと。彼との時間を過ごしたことは忘れることはない。煌びやかな記憶は自分の中でこれからも残り続ける……。

 

『自分でもあれで正しかったなんて分からない』

 

『全力でやりたかった……それだけなんです』

 

 MyGO!!!!!でのライブを終えた次の日の放課後……。

 RINGにて、戸山……先輩に打ち明けたものは正しいものだと信じきることができるもの。河原で見つけたたった一つのかけがえのない石のような答えは小さな残り香となって消えてしまっていたかもしれない。

 

『燈ちゃんは燈ちゃんらしくいたらいいんだよ!』

 

 肯定してくれていた。

 私の背中を明るい街灯が押してくれていた。先輩が言うキラキラドキドキ。この手を離さないが自分なりの解釈をするなら、僕はこの選択を選びたい。間違いだったとしても、不安に押し潰されようとも、叫ぶ、選ぶことで私は自分を表現していきたい……。

 

「ゆいくん……」

 

 背中には硬いものが当たっている。

 冷たい感触、コンクリートの硬さだけが背中には伝わる……。

 

『えー?ゆいくんのこと待つの?』

 

『う、うん……』

 

 あのちゃんは心配してくれていた。

 結人君の学校の前で待つことを……。

 

『あそこ、ほぼ男子校だよ?ともりん大丈夫かな?』

 

『大丈夫……』

 

 あのちゃんはそれ以上何も言わなかった。

 校門前で立つことは結人君が不安にさせてしまう。一度待っているね、と話したときも彼はあまり嬉しそうではなかったのを覚えている。当たり前……だと思う。結人君に助けられて、雨の日の中で待ち続けて、風邪を引いた経験がある……から。

 

 色んな人の足音が聞こえて来る、話し声がする。

 楽しそうな会話の声、校門の前で待っているのを不思議そうにしているときもある。

 

 怖くはなかった。ただ、また心配を掛けさせてしまう。

 看病して貰うことになってしまうかも……。それでも、立ちたかった。どれだけ、待つことになったとしても私は待ちたい。まだ星が見えることはない晴天の空の中で私はこの手を軽く握り締めて待ち続ける……。

 

 

 

 

 

「燈、待っててくれたのか?」

 

「ゆいくん、待ってた……よ」

 

 

 願えば来る……。

 それはこの晴れ晴れとした世界の中でもこの声が……。

 

 

 

 

 

「一緒にRING行こ?」

 

 

 

 

 届く証明だった……。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 繋がり……。

 これがどういう意味を表すのかは人によるのかもしれない。

 

『母さんは俺より体力があってな、一緒に登山してるときは遅いとかすげえ言って来たんだよ』

 

『んでな、足を挫きそうになったら手を差し伸ばしてくれたし。いやあ、俺はいい妻を持ったもんだぜ』

 

 母さんの話をしているとき、父さんは満悦の笑みをしていた。

 昔を懐かしんでいるというのもあるだろうが、それ以上に俺からは……。

 

『お前が生まれたときだって、穏やかな表情でこの子は強い子に育つって言ってたんだ』

 

 話して正解だった。

 勇気を出してよかった。

 

『なんせ、お腹滅茶苦茶蹴ってたらしいからな!!』

 

 もう一度言う、繋がりがどういう意味を表すかなんてのは人による。

 但し、一つの答えとして俺は結び目というものが繋がりを強くさせるものだって確信がある。

 

 スカイツリーのあの一件から、自分のこれが正しいんだと突っ走って来た。

 

「かっこつけでしかねえ、よな……」

 

 転んで、起き上がって悩んで壁に当たったことは幾千もあった。

 誰かを傷つけてしまうことだってあったが、その度支えてくれる奴らがいた。その一人が……。

 

「燈、待ってくれたのか?」

 

 高松燈……。

 学校を終えた俺が、校門を過ぎようとしたとき燈が待っていた。

 あの日以来、学校の前で待つことはあんまりオススメしなかった。絡まれて余計なことをされたら、今度こそ人をぶん殴りたくなっちまう。衝動を抑えられないというより、燈が大切だから。

 

「一緒にRING行こ?」

 

「ああ……そうだな」

 

 どういう心境で待っていてくれていたのか、なんてのは考えなくていい。

 一緒に帰りたかった。ただそれだけで充分なんだからな。

 

「燈、誕生日……。立希達から祝って貰ったんだよな?」

 

「うん、立希ちゃんからは石貰ったよ?丸くて白い綺麗な石……だったよ?」

 

「……あいつらしいな」

 

 何故かこっちまで気分がよくなってしまう。

 パワーストーンとかじゃなくて、河原とかで拾えそうなものを選ぶ。ちゃんとあいつも燈が石でもどういうものが好きなのかちゃんと把握してる。集めるのが趣味な燈だからこそもあるだろうが、ちゃんと燈の好みに合わせたものを選んだんだな。

 

「祥ちゃんも前日来てくれたんだ、CRYCHICの頃のアルバムをくれたよ?」

 

「祥子がか?」

 

 燈は無言のまま首を縦に振る。

 あいつもあいつで自分の過去を過去として呪うわけでもなく、大切な思い出として残そうとしている。渡すまでの間、どれほどの苦悩があったのかは俺には測りしれないが、アルバムを渡すというだけで並大抵の覚悟では足りないのは確かなはず……。

 

 

 

 強いな、あいつも……。

 俺も強くあり続けたい。

 

 

 

 

 

 そのためには……。

 

 

 

 

 まず……必要なことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「すまなかった立希」

 

 RING内のカフェを入って来て、早々結人が頭を下げて来る。

 燈達が見つめているなかで謝ってくる結人……。

 

「燈の誕生日で体調を崩すなんて許されることじゃねえ」

 

 椅子に座って腕を組んで、背もたれに寄りかかるのは簡単なこと。

 結人の誠意を見るためにも悪くはない。ただ、こいつの場合は……。

 

「あいつの隣で居続けるとかほざいてたくせに、不甲斐ないことばかりしてすまなかった」

 

 ちゃんと謝りたいとか、埋め合わせをしたいとかそういう気持ちがある。

 もう言葉として表さなくても視線だけで伝わってる。だから、私は腕を組まないで燈と結人が座るテーブルに水を置いてから、結人と燈を案内する。

 

「いい、お前は……ちゃんと祝ってくれたから」

 

 

 

 

「燈の誕生日……」

 

 毒されてる。

 かなり毒されてる。昔の私だったら、燈の誕生日を祝わなかっただけで絶交していた。言うことすら出来なくなったのは結人のアホさ加減と、精一杯我武者羅で何も考えずすぐ厄介なことを持ち込んでくる結人のことが嫌いになれない自分がいる。

 

「ねえねえ、そよりん。りっきーってさ、だいぶゆいくんに甘いよね」

 

「好きだからじゃない?」

 

「「は!!?」」

 

「息ピッタリだね、二人共」

 

「はああ!?ち、違うから!!こいつのこととかどうでもいいから!人の気持ちも考えられないで、燈の誕生日来れない奴とかどうでもいいから!!」

 

 結人のことを指さしながらも言うと、肝心の結人が水を飲んで落ち着こうとしている。

 あいつのせいで余計デキてるとか勝手に思われる。全部結人のせいにしたくなる。

 

「りっきー、顔赤い」

 

「違うから!!」

 

 野良猫が変なことを指摘してくる。

 ダメだ、燈以外この場所にはまともな奴がいない。結人は結人で私のことを視界に入らないよう、わざと背けていることもあってか余計怪しいと思われてる。そんななかでも、燈は私に水を差し出してくれて優しい。私の味方は燈だけ。

 

「とにかく、来年の誕生日はちゃんと祝って。風邪引いたとか言ったら許さないから。それと……」

 

 

 

 

 

 

「来年も祝って欲しい……」

 

 言ってしまった。

 言うつもりはなかった。結人以外もいるこの場で私は口にしてしまった。もう引き戻すことはできない。絶対、揶揄われることを承知の上で言うと、結人の視線を感じるような気がしていた。真っ直ぐな眼差しのまま、見つめてくれていて……。

 

 

 

 

 

「当たり前だろ」

 

 いつもみたいに言ってくれる結人の存在が……。

 

 

 

 眩しくてしょうがなかった。

 

 

 

 

 

「ねえねえ!ゆいくん、私も祝ってくれる!?」

 

「あのちゃんって空気読めないよね」

 

 

 

 

 一人を除けば……。

 口には出さないけど、この五月蠅い感じも嫌いじゃないというのも本音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 いやぁ……やっぱりゆいくんって罪深いというか普通だったらもう刺されてもおかしくない。

 ツッコミどころが多すぎて、全部突っ込んでたらキリがないからもうここは聞かなかったことにしておこう。というか、私も言いたいことが他にあるし。

 

「ねえねえ、ゆいくん?」

 

「なんだよ?」

 

「私、誕生日実は9月だったんだけどさー?」

 

「今から祝ってもらうことできるのかなーって」

 

 私の誕生日は9月8日。

 もう二ヶ月も過ぎ去っているし、あの頃はもうそれどころじゃなかったと言うかそもそもみんなに誕生日教えてなかった気がする。祝ってくれるような感じもしなかったし、とはいえこういうのはダメ元でも言ってみた方が絶対いいよね。

 

「別に構わねえが……」

 

 さらりと了承してくれるゆいくん。

 さっすがゆいくん。こういうときは頼りになって、男を張ってくれる。誕生日プレゼントとかを期待はちょっと難しいし、イソスタで前見つけたお店とか連れて行ってもらおうっと……。

 

「これ食べに行かない?美味しいって評判なんだ!」

 

 『人気店』と書かれている投稿を見せると、ゆいくんは目を細めて何かホッとしてる。

 あれ?もしかして、なんか凄い変なものを要求されるとか考えてた?それはそれで面白そうだけど、そういう気分じゃないしなあ……。

 

「こういうの大体映え目的で作られたものだからあんまり美味しくなかったりするよね」

 

「えー?そよりん辛辣過ぎない?こういうのはSNS映えするからいいんだって!」

 

 そよりんが余計なことを言ってくる。

 いちごやマスクメロン、アイスクリームとかこれでもかと乗っているから。味の保証とかできるかどうかで言われたらイマイチとか結構多かったりする。なによりも、こういうのは値段が書いてないで載せてるとかも多い。これの場合、『1800円』って書いてあるからそこは大丈夫な……はず!

 

「じーっ」

 

「なに愛音?」

 

「いいよね、りっきー?」

 

 お店行くのに一番攻略が難しそうなりっきーへと視線を向ける。

 楽奈ちゃんは抹茶で行ける。燈ちゃんは全然来てくれるだろうし、そよりんもなんだかんだで来る。問題はそう、りっきー。こういう場所行きたがらないだろうし。どうやって攻めようかなーって思って見つめていると……。

 

「はぁ……息抜き程度だから」

 

「えー!!?嘘!?りっきー優しい!」

 

「やっぱり却下、すぐ調子乗る」

 

 いつもみたいに腕を組んで、ムスっとした顔になる。

 うーん、さっきまでデレデレだったりっきーにするのはかなり難易度高いかも。とはいえ、もう言質は取ったも同然だから。

 

「えー!訂正なし!楽奈ちゃんも燈ちゃんも来るよね!?」

 

「まっちゃあるなら行く」

 

「い、行くよ?あのちゃん」

 

「よしっ、これで成立!!」

 

 ゆいくんが祝ってくれるのも聞いたし、今日は一旦バンドのことを忘れて……。

 

 

 

 

 

 

 楽しい一日にしよ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 RINGを出たのは割とすぐだった。

 愛音は機嫌がよくなって、鼻歌を歌っている。凄い聞き覚えのある楽曲だったが、俺は何も言わない。初華と初音が歌っていた曲だってのは一発で気づいたからな。あいつもライブ見てたんだな……。

 

「りっきー、ライブいつ?」

 

「一応二週間後とかって考えてる」

 

 楽奈が立希の袖を掴んで聞いている。

 指を下へとなぞりながらも、スマホでスケジュールを確認している。

 

「楽しませる」

 

「結人君のこと?」

 

「ゆいとだけじゃない、見てる人もそよ達も」

 

 口角を上げてしたり顔になる楽奈。

 

「そうだね、楽奈ちゃん」

 

 そよはその表情を見て、穏やかな表情で笑っている。

 痛みを知って触れたそよだからこそ今の表情はそよにぴったりな表情だった。

 

「新曲とか作ってみない?やっぱり、マンネリ感がないとか大事じゃん?」

「愛音の言うこと、一理は……ある」

 

「えー!やっぱり、りっきー今日優しいじゃん!」

「はぁ……もう分かったから」

 

 楽しげな会話が次々と聞こえているなかで俺はほくそ笑みそうになってしまう。

 俺が踏み出す度に靴の音には高揚感がある。不思議と心がリズム感を出していて、気になって仕方なかったが、違和感を違和感のままでいいと言い切れることが出来ていた。

 

「ゆいくん……?」

 

「ああ、いや……ちょっとな」

 

 笑っている俺に気づいたのか、燈が声を掛けてくれる。

 自分の二の腕に触れつつも、俺は歩き出して照れ臭そうに声を出してしまう。

 

「ゆいくんどうしたの?急に笑い出してさー?」

 

 愛音がちょっかいを掛けて来る。

 俺はそれを無視して、あるものに触れる。この手首に結ばれているものが教えてくれている。これまでの人生が教えてくれている……。目線には立希が付けてるネックレスとパンダのキーホルダー、燈が付けてるペンダント。

 

 車が走り去る音もしてくる、猛スピードで過ぎ去って行った。

 聞こえて来る人の話し声、額に当たる髪の感触と言う名の五感が教えてくれている。

 

「楽しくてしょうがねえんだよ」

 

 痛みのない日々はきっと訪れることはない。

 寧ろ、これからだってやってくる。それは絶対に変わらない。だとしても、俺はここで叫び続けたい。誰かを支えて、誰かと進んで行きたい。声にならない日々がやって来たとしても、俺には燈達や睦、初華達がいてくれる。

 

 

 

 

 だからこそ……。

 

 

 

 

 

「お前らとなら……」

 

 

 

 

 

 

 

「俺は何処までだって行けるからな」

 

 

 

 

 この繋がりを断ち切ったりしない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが()()()()だ。

 

 

 

 

 

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