【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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一緒に進むって決めたからな

「燈、本当にありがとうな……こんな俺のことを助けてくれて……」

 

「ううん、気にしないで……。その……」

 

「どうした燈?」

 

 燈が周りをキョロキョロした後に俺の方を再度見る。

 

「また一緒にいてくれるよね?」

 

「当たり前だろ……今度こそちゃんとお前の隣にいるから……」

 

 燈は俺のことを受け入れてくれた。こんな俺のことを……。

 だったら、俺も一歩ずつ確かめながらも歩いて行きたい。進めるかは分からない。燈と一緒なら俺は進むことが出来る気がしていた。それは俺にとって燈が過去を共有できる存在だからだ。あいつは俺の良い所も悪い所もちゃんと理解してくれた上で受け入れると言ってくれた。だったら、俺もそれに応えたい。燈と一緒に進んで行くうちに自分という存在が前を向ける気がしていたんだ。

 

「燈、ところで……そろそろ離れてくれないか?」

 

 今でも燈に抱きつかれている状態が続いている。

 燈としては俺が自分から放れないようにする為に抱きしめていたんだろうけど、今になってみればかなり恥ずかしい状況になっていることに俺は気づいていた。と言うか、気づくのが遅すぎたと言ってもいいレベルだ。

 

「もうちょっとだけ……ダメかな……?」

 

「…………もうちょっとだけだからな」

 

「うん……ありがとう……」

 

 燈は俺の胸の中に顔を置いて目を瞑っている。俺は燈に対して「駄目だ」と言う事も出来ずにそれを受け入れつつもただ時間を流れるのを待っていたが、こういう状況というのも悪いもんじゃないと感慨深くなりながらも俺は燈のことを受け入れていた。

 

 

 

 

 その後、燈と一緒に夕食を食べたりしていた。

 大雨が降っているということもあり、冷蔵庫の余りものでなんとかしようとしていた模索したところ、偶々お好み焼きが作れそうだということに気づいて俺はホットプレートを台所の上の棚から取り出して燈と一緒にホットプレートでお好み焼きを作ることにした。

 

「結人君、お好み焼きって確か広島風と普通のってあるよね……?」

 

「ん?ああ、そうだな……」

 

 俺がホットプレートの中に生地を入れ終えてから燈がそんなことを言っていた。

 因みに広島の人間に広島風お好み焼きという言葉を使うと不機嫌になられることが圧倒的に多い。と言うのも、実際に俺の父さんが広島風って言いかけたのを聞かれて地元の人にムッとされていたのを俺は見たことがあったからだ。正しく言うのなら、広島焼きという言葉が相応しいらしい。地元の料理に誇りがあるっていうのはいいことだとは俺は個人的に思う。

 

「違いってある……?」

 

「ああ、まあよく言われているのは麺が入ってないとか入ってるとかそういうのらしいけど……。もっとちゃんと説明するとしたら、広島焼きっていうのは普通のお好み焼きとかと違ってボリューム感があるんだよ、まあそれはそばとか入ってるっていう理由もあるんだけど、具材が層状に重なって、それぞれの食感が楽しめるようになってるんだ。後はまあ普通のに比べたら手間がかかりやすいってところだな」

 

 ぶっちゃけ、俺もあんまり違いがよく分かっていない。

 食べたときに確かに普通のとは違いがあるなとはなっていた。ずっしりとした満腹感を味わいたいなら俺は個人的に広島焼きの方がオススメな気はする。軽く食べるってんなら普通のをオススメだけどお好み焼きって軽く食べられるようなもんだったか……?

 

「そうなんだ、地域によって調理方法が違うって面白いね」

 

「確かにそうだな、俺はそういう色んな食文化があるっていうの面白いから好きだな」

 

 燈が俺の横で俺の意見に同意したのか無言で頷いていた。

 そういえばいつもこうだった。燈が俺に対して質問してあれはどうなの?と聞いて来ることがあったりしていた。燈としては好奇心もあるんだろうけど、純粋に俺からこういう話を聞くっていのが好きだったりするんだろう。俺も燈に聞かれて悪い気はしないから話をしたくなるし、燈を楽しませるためにクイズ形式で話をすることもあったから……。

 

「燈、ひっくり返してみるか?」

 

「いいの?」

 

「ああ、やっていいぞ」

 

 燈にフライ返しを渡すと、燈は深呼吸をした後に集中していた。

 それから程無くして燈はお好み焼きをひっくり返そうとするが……。

 

 

 

 

「ご、ごめん……結人君……」

 

 集中した状態でお好み焼きを引っ繰り返して見せた燈だったが、結果は失敗に終わってしまう。

 燈は少し恥ずかしそうにしながらも引っ繰り返すのを失敗したお好み焼きを見つめながらも、俺に対して申し訳なさそうにしているのを見て俺はほんの少しだけ笑ってしまうが、燈の肩を軽く叩きながらも「まだ生地はあるから次ちゃんとやってみればいい」と俺が伝えると、燈は顔を赤くしながらも頷いていた。

 

 それから少し経った後、お好み焼きにちゃんと火が通ったのを確認してから俺と燈は一緒にお好み焼きを食べていた。失敗こそしたもののこういう失敗の方がきっと思い出に残ることの方だってあるかもしれない。

 

「どうしたの結人君……?」

 

 お好み焼きを食べ終えていた燈が俺の方を不思議そうにしながらも見ている。

 

「いや、こうやって失敗したことがきっといつかいい思い出になるんだろうなって思ってな。成功したこととか楽しかったとかもそうだけど、失敗しても美味しかったり楽しかったねって言えることってかけがえのないものだって俺は思うんだよ」

 

「かけがえのないもの……そうだね結人君……!!でも、次は成功したい……!!」

 

「だな」

 

 燈の目からは本気の眼差しが映り込んでいた。

 ただお好み焼きを引っ繰り返すというだけなのに彼女は本気でそのことを成し遂げたいと言う気持ちがあったんだろう。だから、燈はきっと次のお好み焼きのとき……。

 

 

 

 

 

 

「結人君見て……今度はちゃんと引っ繰り返ったよ……!!」

 

「ああ……よくやったな燈……!!」

 

 俺はこんな言葉を思い出していた。

 失敗しても楽しかったりすることが……次に成功したりすることがあればそれは成長となることもあるという言葉を……。その言葉を思い出したのはきっと俺がさっき燈に言っていた言葉が関係しているから……。そして、この言葉を言っていたのは俺の母さんだ……。

 

 母さんはしっかりとした人で凄く誠実な人だった。

 いつもフラフラと冒険に出かけている父さんに正座をさせて説教していることなんて多く見かけていた。父さんが実際フラフラしていたのは事実だし、仕方のないことだ。俺に対しては結構甘かったのを覚えている。小学生の頃は俺がいつもテストで高得点を取ると抱きしめながらも俺の頭をそっと撫でてくれたのあの温もりを今でも覚えている。母さんと過ごしていた時間は短いものだったけど、確かに此処にあった。

 

 

 

 

「結人君、おやすみ……」

 

「ああ、おやすみ燈……」

 

 お好み焼きを食べ終えた俺達は歯磨きをして少し燈と話をした後にお互い眠くなってきたこともあり、俺は自分の部屋のベッドを燈に貸すことにして燈を俺の部屋に残して俺はリビングのソファーで毛布だけ掛けて眠ろうとしていた。

 

「此処からだよな……」

 

 俺は燈との関係を取り戻すことが出来た。

 燈が進むという言葉を借りるなら俺は一歩ずつ進むことが出来ているのかもしれない。地味な一歩になるかもしれないが、それでも俺は燈と一緒に進むことを選んだからこそこれからも燈とも一緒に歩んでいきたい。

 

 そして、許されるかは分からないが……。

 立希との関係もまた……俺は……。

 

「結人君……」

 

「……どうしたんだ燈?」

 

 燈が目を擦りながらも俺が横になっているソファーの前に立っている。

 

「結人君の部屋、安心するけど……。一人だと、眠れなくて……」

 

「寝たいのか一緒に?」

 

「……うん、隣で」

 

「隣で寝るって言っても……俺ソファーだぞ?狭いだろ?」

 

 燈と眠ること自体、俺は正直嫌かと言われたら嫌じゃない。

 俺のことを信頼してくれた上で俺の隣で一緒に寝たいと言ってくれているんだろうから……。それにこういうこと自体は何度かあったし、別段今更気にすることもない。キャンプとかでは一緒のテントで寝ることもあったしな……。

 

「気にしない……」

 

「分かったよ燈……」

 

 だから燈も全く気にしていなかったんだろう……。

 俺は燈のことをソファーの内側に寝かせて俺はソファーの外側で眠ることにした。どう考えたって狭くてしょうがねえし、ベッドの方がいいと言ったのに燈は此処がいいと言って聞かなかった。燈がぐっすりと眠ったのを確認した後に、俺は燈の顔を見ながらもこう言っていた。

 

 

 

 

「仕方ねえ奴……でも……」

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に進むって決めたからな……」

 

 

 

 

 

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