【完結】迷子の友人は羨望する 作:シキヨ
二度と来ないで
「お前……」
「立希、話がある……。この後少しいいか?」
「お前と話すことなんてない、早く帰って目障り」
こう言われるのは分かっていた。
「待ってくれ立希、俺はお前にちゃんと謝りてえんだ。燈が俺のことを助けてくれようとしていたのに、俺はそれを突き飛ばした。その事実は何も変わらねえ……!!それでも燈はこんな俺のことを受け入れてくれた。前に進んでいいって言ってくれたんだ。だから、俺は……「お前の謝罪なんか受け取るつもりなんてないから」」
立希はそれだけを言って俺の手を振り払って、学校から去って行った。
「どうかなされましたか?」
去って行った立希を追いかけようとしたとき、俺は立希と同じ学校の女子生徒に声を掛けられる。
「友人に……謝りに来たんだが謝罪を拒否されたところでな……。悪いのは俺だから仕方ないんだが……」
「そうでしたか……」
「……立希の奴のことは知ってるのか?」
「それなりにはではないでしょうか……?彼女が学校ではあまり馴染んでいないとは思いますが……」
「そうか……もしかして立希の友人だったりするのか?」
花咲川の校門前で男子生徒が待っているというのはかなり珍しい光景。
「まあ、そうなりますかね?」
ただの同級生と言われても頷きはしていましたが、彼女の友人と言われて悪い気はしませんでした。私は彼の特徴的な髪色に注目した後にそれから少し経ってから彼の通学用のバッグに目を向けます。そこには動物のストラップが結ばれていました。男性でこういうものを身に着けているというのは珍しいですが、そんなことより気になったのは……。
「彼女がよく付けていたパンダのストラップ身に覚えありますか?」
「もしかしてパンダが仰向けで寝ている奴か?」
「ええ……」
話が見えてきました。
彼女があのストラップを大事にしていたということは目の前の彼のことを大事な友人だと見ていたに違いありません。それを保護シールまで付けて傷をつけないようにしないところを見たところ、彼から貰ったという証が思い出にも繋がっていた。
そういうのを少し羨ましくもありますが……。
「……和解できるといいですね」
「……!!ああ、ありがとうな……。えっと名前聞いてもいいか?」
「八幡……八幡海鈴です」
「俺は星乃結人、ありがとうな八幡」
「いえ、それでは私はこれで……。健闘を祈っております」
星乃結人……。
彼女との会話を少し盗み聞くような形で聞いてしまいましたが、彼は中々興味深いな人間なのかもしれません。信念を持った人間、そういう部類の人間に彼女が果たして折れずに自分を押し通せる。少し見物ではありますね……。
◆
八幡海鈴……。
なんというか凄く洒脱そうな感じな奴で冷静な人という認識を抱いていたが、最後に俺に健闘を祈ります、と言ってくれていたとき何処か暖かさのようなものをあった。立希に彼女のような友人がいるならば、少し安心だなという感情が湧いていた。
それにあのパンダのストラップの話が彼女の口から出るとは思わなかったけど、立希が俺があげたあのパンダのストラップを今でも大事にしてくれていたのは知っているつもりだった……。あいつは俺があげたストラップを保護シートに入れて大事にしてくれていたことも分かっていた。ただ、さっき立希のバッグを確認したとき付けてはいなかった。俺との関係を完全に断ち切る為、だろうな……。
「にしても……どうするか」
立希が俺の謝罪を拒むという展開は予想出来る範囲内ではあったが、そこから先のことは全く考えてもいなかった。燈が俺のことを待っていたように学校で待ち続けるという選択肢もあるが、あいつの場合はそれでは全く折れない可能性が高い。今のところ思いついた方法としてはあいつにひたすら話しかけると言う方法。
これはかなりウザい作戦。
無線のイヤホンを繋いで耳につけた瞬間、いきなり爆音で音楽を流れたりするのと一緒みたいなものなのだが、立希の場合そういう戦法を取らないと絶対に俺の謝罪を受け取ってくれはないだろうし、その後も俺が誠意ある行動をしなければあいつは絶対に受け入れようとしないはずだ。一回目のときは俺とあいつが腹の内をお互いに曝け出すことでなんとかなったところもあるが……。
「腹の内を明かす……?」
それだ、それしかない。
霧の中に包まれていた光が一瞬にして晴れて光が俺の中で照らし出されていた。
一回目の時はお互いに腹の内を曝け出すことでなんとかなったところはある。
二回目もその方法でなんとか立希との関係を結び直すことは出来ないだろうか。やれる可能性は高くはないはず。それでもやらないよりはやってみて効果を試すと言う方が成果も出る可能性がある。
「やってみるしかねえか……」
とりあえず今日のところは花咲川から撤収することを選ぶ。
次の日……。
俺はまた花咲川に来ていた。本当は此処に来る予定はなかったが、俺は立希が行く場所なんて動物園ぐらいしか全く知らない為とりあえず此処に来るしかなかったが立希は現れることはなかった。恐らく、俺がまたこうして待っているということを事前に察知したのか裏口から出たんだろうな。
「……ゆいと?」
「…………楽奈!?お前、花咲川だったのか……」
「うん、中学」
「そうだったのか、全然知らなかったな……」
校門前で立希のことを待っていると、こっそりと近づいて来たのか楽奈が俺の顔を覗き込むようにして見つめている。特徴的である綺麗な彩色が異なる色の瞳が俺の目には映っていた。
「りっきーのこと待ってたの?裏口から帰ってたよ」
「やっぱそうだったか……」
意気消沈しながらも俺は背中を曲げる。
一日で俺が諦めて待つのをやめる訳がないと立希は勘づいていたんだろうな。
「ゆいと、ちょっと寄り道しよ?」
「え?あっ、おい。待てよ、楽奈……!!」
このまま楽奈のことを放っておいて次の作戦を練るというのも悪くなかったかもしれないけど、現状どうすればいいなんて分からないし俺はとりあえず俺のことを誘導している楽奈の後を追いかけていた。
「何処に行くんだ?」
「行けば分かる」
「ん?ああ、まあ……そうか」
あんまりにも言葉が足りな過ぎていたが、楽奈はニンマリとした顔で俺を先導していたが周りを一旦確認すると、その景色は昨日見覚えがあった場所ばかりだった。
「もしかして楽奈が向かおうとしているのって……」
「うん、そう……」
楽奈は足を止める。
そこはライブハウス『RING』だった。
「楽奈、もしかしてまた抹茶パフェ奢って欲しいのか?」
「それも悪くない、だけど今はとりあえず入って」
「あ、ああ……」
俺は言われるがままにRINGの中へと入って行く……。
昨日入ったということもあって、この前入って来たときよりはあまり周りの目を気にせず入ることが出来ていた。
「カフェの方行こ?」
楽奈に言われるがままに俺はカフェスペースの方へと入って行く……。
「いらっしゃいー。って楽奈ちゃんかぁ……。それとその後ろにいるのはあーこの前立希ちゃん達のライブ見に来てくれた子だよね?」
「は、はい……!!あのときはお世話になりました!!おかげで最高のライブが見れ……立希のこと知ってるんですか!?」
「知ってるも何も此処でバイトしてるよ?」
「えっ?あっ、そ、そうだったんですか!!?」
驚愕の事実を知る。
昨日この場所にいた俺が全く知らなかったという事実だし、知らないで此処でのんびりと愛音と言い合いをしていたのかと言うと「なにやってんだ俺」となってしまう。とはいえ、昨日は立希の奴シフトを入れていなかったみたいだし、会うこともなかったのは当たり前か。それにしても……。
「だから楽奈は此処に連れて来てくれたのか……」
既にカフェスペースの椅子に座りながらも抹茶パフェを食べたそうにしている楽奈が目に入る。
一瞬だけ俺の視線に気づいたのか、勝ち誇った笑顔で俺のことを見ていたことに気づいていると、関係者用の扉の方から店員が出て来たのを確認するとその人物は……。
「立希ちゃん、お友達来てるよ」
「友達……?お前、なんで此処に…………!?」
「で?話ってなに?私はお前と話すことなんてないし、謝罪を受け取るつもりはないから」
立希に店の中で話されたら迷惑と言われて、俺は関係者用の扉の先へと来ていた。
立希は壁に寄りかかりながらも俺と会話をしようとしている。
「…………なにしてんの?」
「俺が悪かった……」
俺は膝を曲げ腰を低くして手を床の上について……土下座をしていた。
「俺は燈のことを傷つけて、裏切ったっていう事実は何も変わらな「お前のその謝罪って何のためにやってんの?」」
「…………お前が私に謝罪をしたいのは分かった。んで、それでどうしたい訳?お前が私に謝罪をしているのって……要は……」
「自分が満足する為だけでしょ?」
「…………ああ、そうだよ。立希」
「全部、お前の言う通りだよ。俺はお前にただ謝ってそれで許されて自己解決したいだけ」
「そう思われても仕方ねえよ」
ああ、そうだ立希の言う通りだ。
俺はあいつに自分が満足したいから謝りたいだけだと言われても本当に仕方ないんだ。燈達のおかげで自分を受け入れることが出来るようになったからなんだ。立希からすれば……俺は燈のことを二度も裏切った張本人。その本人からの謝罪を受け入れるなんてことが到底出来る訳がないんだ。
「それでも……」
俺は……ちゃんと謝りたい。
例え、自分の為だけと言われようとも俺は立希との結んだものを断ち切りたくなんてない。
「俺はお前に謝りたいんだ……!!」
「いらない、早く帰って……それと……」
「もう二度とこの店にも来ないで」