【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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久々に会う友人との話は死体のように冷たく感じた。

 結人君との出会いは割とありがちなものだったのかもしれない。

 それは私が公園でいつもみたいに石を探しているときのことだった。

 

「今日は……これぐらいでいいかな」

 

 石をポケットの中に入れた私は辺りを見る。夢中になり過ぎて既に周りは暗くなっていた。お父さんが心配しているかもしれない、ポケットにたくさんの石を詰め込んで歩き出そうとしたそのときだった。

 

「……?」

 

 私はブランコに座りながらも夜空を見上げている男の子のことが少しだけ気になっていた。

 

「なに……してるの?」

 

 その日は珍しく私から知らない子に話しかけていた。

 いつもならきっと出来なかった。「何故できたのか?」と言われたら分からないと答える。ただ一つだけ言えることは公園の灯りに照らされている彼に少しだけ興味が湧いていたから……だと思う。

 

「星眺められるかなって……て思ってさ。やっぱ都会の空からじゃ無理だよなぁ……」

 

 彼が見上げている空に見えているのはきっとビルの間と間だけだった。

 微かに星が見えていてもおかしくはないのかもしれないけど、見えているのは一部の星々。それが彼にとっては少し物足りなかったんだと思う。

 

「星眺めるの好き……?」

 

「ああ、俺さ……。よく父さんと旅に出ること多いんだけど、そういうときに空を眺めると星空が広がっていることが多くてさ……。凄い綺麗だなーってなるんだ。えっと……」

 

「高松燈……」

 

 彼がなんて呼べばいいのか少し困っていると、私は彼に対して自分の名前を名乗っていた。

 

「高松か、高松は星好きか?」

 

「好きだと……思う。お父さんと一緒に……よくプラネタリウムに行くから……」

 

「そっか、高松も星好きなのか。いいよな星って……!宇宙って何処までも広がっているんだって実感させてくれるし、星の輝きを見ているだけで自分が生きているって感覚になれるのが最高なんだよ!!きっと向こう側からすれば俺達が住んでいる地球なんてちっぽけのものでしかないんだろうけどそれも本当に凄くてさって……悪い、俺ばっか長々と話してて」

 

「ううん、大丈夫だよ……」

 

 彼が楽しそうに星の話をしている表情を見たとき、本当に心から楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 

「じゃあな高松……!!」

 

「うん……あっ、名前教えて……?」

 

「あっ悪い!!俺は……星乃結人……!!今度こそじゃあな、高松!!」

 

 結人君は笑顔で大きく私に手を振りながらも帰って行く姿を小さくなるまで後ろから見送っていた。その日の帰りはいつもより歩幅が大きかったのはきっと自分と似たような好きなものを持っている彼を見つけられたからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 池袋駅……。

 目の前にはいけふくろうと呼ばれる梟の像が建てられている。周りを見ると、色んな人たちが待ち合わせをしている。音楽を聴いている人だったり、スマホに触れている人……。何もせずただ周りを見つめている人……。待ち合わせ相手が来て歩き始めている人たち。そう人たちが多く集まるのがこのいけふくろう……。

 

「ごめん、待ったか燈?」

 

 周りを観察していると、鞄を持った結人君が手を上にあげながらも目の前に立っていた。

 

「ううん、今来たばかりだよ」

 

 私が今此処に来たのが数十分ぐらい経っていたことになんとなく気付いていたのか、結人君は申し訳なさそうにしていた。

 

「本当か?ならいいんだけど……」

 

 本当は久々に結人君と出掛けるのが楽しみ過ぎて此処で数十分も待っていたなんて言える訳もなく、「大丈夫」と答えていた。こんなこと恥ずかしくて言えなかった……。結人君だからきっと馬鹿にしたりはしないとは……思うけど。

 

「それじゃあ、行くか燈」

 

 軽く頷きながらも結人君が歩き始めたのを見てから少し遅れて歩き始めたのを見て、少し昔のことが記憶から取り出されていた。それはいつも結人君の後ろを追いかけて歩いていたことが多かった気がしていたこと。結人君の後ろは暖かくてなんとなく安心することが多かったから私はいつも結人君の後ろを歩いていたことが多かった。

 

 でも、私が……バンドを始めてからは結人君と対等であることが増えていた気がしていた。

 きっとCRYCHICとして活動していた頃の私は自分に少しだけでも自信を持てていたからこそだったのかもしれない。かつてのように結人君の背後を歩いているということは今の私にはその勇気がなくなったということかもしれない。それでも私は今後ろを歩けていることに安心感を感じていたけど、彼と話すのはかなり難しかった。

 

 いつもなら笑顔で楽しそうに話しかけてくれる彼の姿もなく、ただ私達は結人君が向かおうとしている雑貨屋さんへと歩き出していた。黙々と時間と足だけが消費されていくこの時間、息苦しさはさほど感じてはいなかったけどそれでも何か話さなくちゃいけないという焦燥感があった。

 

「結人君、結人君……!」

 

「どうした燈?」

 

「え、えっとね……」

 

 勇気を振り絞って話しかけたのはいいものの、私はすぐに困ってしまっていた。

 結人君に何を聞こうとしていたのか全く決まっていなくて言葉が詰まってしまう。

 

「学校楽しい?」

 

 少しありきたりな質問をしてしまったかもしれないと後悔をしながらも私は結人君の言葉を待っていた。本当は「この一年間連絡を取っていなくてごめんね」と言いたかったけど、咄嗟に出た言葉はこれだった。

 

「高校か、結構楽しくやれてるぞ。ほぼ男子校みたいな学校だからな、この前なんて真剣勝負の腕相撲大会なんてやったり、モテる男子設定とか馬鹿正直に考えたりしていたな。モテる男子設定のなんてきっと燈も笑っちゃうような内容ばっかりで男子がお互いお前絶対モテねーよとか言い合ったりしていたっけな」

 

「そ、そうなんだ……!」

 

 話しかけてからというもののちゃんと話をしてくれていたようで、私と居るのが嫌とか話すのがつまらないとかそういう訳じゃなさそうで少しばかり安心している自分がいた。

 

「後は即興で歌やラップを作ってバトルなんてこともしたりしているんだよ」

 

「歌……」

 

「あーそうだ、俺の学校でもバンド流行ってるみたいでさ……。この前誘われたんだけど、俺バイトで忙しいから断ったんだよ」

 

 

 

 

『CRYCHICを、やめさせていただきますわ』

 

 バンド……。

 私にとって自分を表現できる場所だった。表現できる場所だったけど、私にはもう帰れない場所。でも……この前言われた。千早愛音(ちはやあのん)……愛音ちゃんに一緒にバンドやらない?って……。どうせバンドをやっても……ライブをやろうとしたらバンドが壊れちゃう。だからもうバンドは……。

 

 

 

 

「大丈夫か……?燈」

 

「え……あっ、う、うん……」

 

 自分の世界に入っていると、結人君が心配そうにしながら飲んでいないペットボトルを渡してくれている。私はそれに対して「ありがとう」と言いながらも受け取り、ペットボトルのキャップを開けて飲み物を口の中に入れていた。

 

「……もしかしてバンド解散したのか?」

 

「そう……だね。ライブやった後、解散したんだ……」

 

「……ごめん、俺無神経過ぎたよな」

 

 深々と頭を下げて「俺が悪かった」と言いながらも結人君は謝っていた。

 結人君は何も悪くない。悪いのは私なのに……。

 

「でも……俺は燈ならまた立ち直れるって信じてるから。例え駄目になってもまた立ち直れるって信じてるから……!!燈が凄い奴だっていうのをちゃんと知っているから!!」

 

「結人君……ありがとう」

 

 今結人君が言ってくれた言葉、凄く覚えがあった。

 

 

『でも、またダメにならないように頑張れば良くない?』

 

 愛音ちゃんも似たようなことを言ってくれていた。

 同じような言葉を二日間のうちに聞く事になるなんて思いもしなかったけど、悪い気分はしなかった。寧ろ、心の結び目が解けたような気がしていた。なによりも私が嬉しかったのは結人君が私のことを高く評価してくれていることだった。人と全く違っていて人になりたいとなっていた私にいつも話しかけてくれて彼がいた小学生時代は本当に楽しかった。夏休みは結人君のお父さんに連れていてもらって一緒に日帰りで旅をして星を眺めたりしていたこともあった。中学に入って会う機会は少なくなっていたけど、結人君は私がバンドが入ったのも凄く喜んでくれ……。

 

 

 

 

 

 

 あれ……?

 最後結人君に会ったとき、バンドのライブをやるから見に来て欲しいと言ったけど、あの次の日、ライブを見に来てくれていたんだっけ……。結人君がいないかステージから探したけど結人君のような特徴的な髪色をした人はいなかった気がする……。

 

「結人君……あのときライブ来てくれた?」

 

「悪い、ライブなんだけどさ……あの日急用入ってライブに行けなかったんだ!本当に悪い!!」

 

「そう……だったんだ」

 

 本当のことを言ってくれているのは分かる。

 でも……どうしてだろう。どうして今結人君の口から出た言葉が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冷たく感じてしまうんだろうか……。

 

 

 

 

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