【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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迷子たちは歩み始め、紡ぐ絆は新たに

 言っちまった、燈の歌が好きだってことを……。

 いや、それ自体は否定する必要ないことだから全然構わなかった。春日影を燈の部屋で盗み聞きしていたとき、燈には俺の知らない凄い才能があるんじゃないのかという期待感と同時に焦燥感があった。凄いと唸らされたのもそうだったけど、俺はやっぱり高松燈という人間が自分の出来る最大限の力を振り絞って精一杯のことが出来る人間だと今なら認識できる。

 

 あの頃の俺は本当に燈という人間を手放しに賞賛できなかったけど今は違う。

 あいつは本当に凄いとしか言いようがない。意地張ってでも喰らいついてでも俺の手を放そうとしなかった。そういう奴だからこそなのかもしれないな、バンドを新しい形で始められたのは……。

 

 

 

 

「そろそろ戻るか……」

 

 偶々近くで見かけた夜空を眺められる場所から立ち上がる。

 いつも俺が眺めているショッピングモールの外階段は此処からじゃ少し遠かった。まさか都会でもこうやって星空を眺められる場所が幾つもあるっていうのは知らなかったけどな……。立ち上がり、俺は帰ろうとしたときだった。

 

「アンタは確か……」

 

「久しぶりだね、結人」

 

「三角……」

 

「初華でいいよ」

 

 ベンチから立ち上がり、公園から出ようとしたときだった。

 俺に話しかけてきたのは初華だった。

 

「まさか初華と此処で会うなんてな」

 

「私も意外だったかな?」

 

 初華にはバレないようにしていたが、俺は彼女に話しかけられたとき少し体をビクッと動いて反応しそうになっていた。こんな時間に公園で人がやってくるとか全然想定していなかったから、ボッーとしていたところを顔を覗かれてなくて良かったといったところだった。

 

「星眺めてたの?」

 

「ああ、最近は色々あったから頭の中を整理しながらも星を眺めてた」

 

 最近色々あったと言うのは実際のところはマジなところだ。

 燈たちと再会したり、俺という人間が本性を表すことになったり、燈たちと和解できたり、愛音たちと繋がりを紡ぐことが出来たり、そしてなによりも……。

 

「五感を通じるもの……見つけられた?」

 

「……見つけられたよ。俺が欲してた五感を通じて確かめられること……。まさか身近なところに存在していたなんて知らなかったけどな……」

 

「身近なところ?」

 

「ああ、俺の友人でバンド組んでる奴がいてな。ボーカルの奴とドラムの奴は昔からの友人でそいつらの奏でるものを目で、耳で、肌から得られるものを通じて体感できたんだ。俺が欲していたものはすぐそばにあったんだって……。でも、それを受けて蓄えて思った事もあった」

 

 

 

「案外、そういう身近なところとかにあるものや友人とかが大切だったり、重要だったりするんだろうなって……。普段。当たり前に存在しているものとかに対しての重要性を忘れたりすることがあるのって仕方のないことかもしれない。だけど、そういう身近なものが実は自分の心の支えになっていたり、自分自身を形作る色彩になっていたりするんじゃないかって……」

 

 俺の話に興味を示したのか、初華はベンチに座り隣に座っていた。

 そして、その視線は続けて欲しいと言わんばかりのものを送り付けていた。

 

「例えば、家族とか友人、仲間……。習慣だとか、俺がさっきまで眺めていた星空とか自然とかそういう一見すると普通なものことこそが大事だったりするんだって……。そして、俺はこうも思う。その普通なものが失われたときに初めてその大切さを実感するんだって……」

 

 此処まで長々と初華に話をしていたが、要は身近なものや当たり前に存在にしているものこそが大事だと言う話をしていた。そして、その身近なものとかが消失したとき人は初めてその意味を知ることが出来ると……。

 

 俺は燈や立希と離れてずっと後悔していた。

 自分の中ではそれが正しかったと信じ込ませていたけど、俺は信じ切ることが出来なかった。燈も立希も俺にとって身近な存在であり、大切な存在だったから……。

 

「本当に…………凄いね、結人は……」

 

「そうか?誰もがこういうことは当たり前だとか笑いそうだけどな」

 

「ううん、そんなことないよ。そうやって当たり前のことを口にするのって凄く大切なことだよ。本当結人には色んなことを教えられてばっかりだなぁ……。ありがとうとか、嬉しいとかそういう小さな言葉の積み重ねでもそれはきっとそうなんだよね?」

 

「そうだな、身近な言葉だとか普段言われているような言葉だからな」

 

 自分で自虐するようにして『当たり前』だと言っていたけど、本質的なことを言えばそれを言うのが大切だと言うことは知っていたし、口に出して伝えることが美しいとも言えるかもしれない。それに対する自分の価値観を再確認することもできるから……。なにより俺がこの言葉をどうしても口に出していたのは気になることがあったからだ。

 

「じゃあ、俺は帰るぞ。明日も早いからな、もう夜中なんだしお前も帰れよ」

 

「うん、ありがとう……」

 

 自分の中ではお礼を言われるようなことはした覚えはないと言う言葉を呑み込みながらも俺はベンチから立ち上がり、俺は初華の顔を少しチラッと確認していた。芸能人とはいえ、やっぱりそういう……疲労感とかはあるんだろうな。当たり前か、人間だもんな……。

 

 

 

 

「言いたかったことが伝わっているといいんだがな……」

 

 俺は公園を出て歩き出しながらも初華が自分の言っていたことを理解してくれていたか気になって仕方なかったが、あの感謝の言葉的に俺の言葉は伝わっていると信じたかった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 夜中に起きたとき、結人君の姿はなかった。

 私が眠ったのを確認してからすぐに何処へと行っていたのを知っていたけど、私は睡眠を選んで起き上がることが出来なかった。多分、きっとライブという今日の日は回っている。夕方ごろには自分がステージに立って詩を届けることになる。三度目のライブ、緊張はきっとしちゃうだろうけど私はやれるだけのことをしてみたい。愛音ちゃん達が傍にいてくれる、結人君が見に来てくれる。もしかしたら……祥ちゃんや睦ちゃんだって見に来てくれるかもしれない。だから、私は全力でやりたい。

 

 

 

 

 

 必死と言われても私はやり遂げてみせたい、届けたい私の声を……!!

 

 

 

 

 

 詩を……!!

 

 

 

 

 

 ステージの上に立って私は詩っていた。

 暗雲した会場に響くざわめきが、徐々に熱を帯びていて、足元のフロアが低い振動で震えていた。ステージ裏で吸い込んだ空気には、金属的な匂いと湿気が混じっていたけど、それは徐々に消えつつあった。

 

『It's my goだよ!』

 

 必死に藻掻きながらも歌い続けていると、ステージ裏で愛音ちゃんがいきなり大きな声を出してビックリしたけど、私はその言葉の意味が『私達の出番』だと気づいたとき、ある一つのものが思い浮かんでいた。

 

「ともりん、なんか喋んないの?」

 

 明るいライトが容赦なく降り注いでいるなか、愛音ちゃんが私に声を掛けていた。

 気づけば一曲目が終わっていたことに今気づいている自分がいた。私はゆっくりとみんなの紹介をしていた。あのちゃん、立希ちゃん、そよちゃん、楽奈ちゃん……。みんなが此処にいてくれることが嬉しくてしょうがなかった。だからこそ私はこんな言葉が出ていたのかもしれない。

 

 

 

 

「もう、何があっても離さない……!一生、離さないからっ!!」

 

 此処に来るまでの色んな苦節があった。

 悩んだり、苦しんだり、喧嘩したり、楽しいことの思い出の方がもしかしたら人から見たら少ないのかもしれない。それでも私はこのバンドを選んだ。そしてこれからも選び続けたい、そう私たちの……。

 

 

 

 

 

 

「私たちM()y()G()O()の曲、聴いてください……!!」

 

 

 

 

 

 

「迷子でもいい、迷子でも進め……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

「今日のライブ良かったねぇ、MyGOだっけ?また見に行きたいよね……!!」

 

 ライブを終えて見ていてお客さん達が次々とそれぞれ思い思いのバンドの話をしている人たちがいた。話題の内容の多くはAfterglowという立希が好きなバンドの話題だったが、ライブの感想の話題の中にはMyGOの話も出て来ているようで俺は安心していた。

 

「今日のライブも良かったな……」

 

 迷子改め、MyGOとしての始動……。

 これから忙しくなること間違いなしかもしれないが果たしてどうなるか。因みに、俺は文句なしの百点満点のライブだった。燈の慣れないMCもらしさが出ていて良かったと思うし、燈の歌声も立希達の演奏も聞いていて本当に耳障りじゃないどころか、聴いていて心地良かった。観客の一体感だとか色々なものが混ざってていたと思う。

 

 そういう感想を抱いていると、周りをキョロキョロしている女性が目に入って俺は声を掛ける。

 

「どうかなされましたか?」

 

「楽屋って何処……ですか?」

 

 俺がスタッフの服を着ているからか、薄めの長めの緑髪の女性は俺に質問をしていた。手には持っていたの高級店のような袋だった。……いや、そんなことは重要じゃない。俺はこの子を知っている。いや、知っているという言い方はかなり違う。燈の話から彼女の名前や容姿を聞いたことがあったから、彼女のことを知っていたし、彼女の親や彼女自身がテレビで出ているところを目撃していることがあったから俺は知っていたんだ。

 

 自分の中で頭を整頓していると、彼女の方が俺の顔で何か気づいたのかこう言い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

「もしかして……燈がよく言ってた……結人?」

 

 

 

 

 

 

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