【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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結人君はよく気を遣ってくれる。

「どうした燈?ほら行くぞ」

 

「う、うん……!!」

 

 私は彼のことを後ろから追いかけながらも歩き始める。さっき偶々感じた冷たいものはなんだったんだろうか。結人君からあんなにも冷たいものが含まれているものを感じ取ったのは初めてだから気のせいだと信じたいけど、心がなんとなく嘘じゃないと言っている……。でも確かめようがない。結人君に本当のところを聞いたところできっと謝罪の言葉を言われて、私が戸惑ってしまうだけだから。

 

 

 

 

 目的の雑貨屋に着いた私たちは絆創膏を置いてある売り場に行くことにした。

 ガラス窓のところには開店中と書かれている看板がぶら下がっている。中に入ると、ベルの音が心地良く響き、鼻先にはほのかに香る木と古い紙の匂いが、何処か懐かしい気分にさせてくれる。店内を見ると天井にまで届く棚が並び、綺麗に並べられている小物たちがまるで静かに話しているようにも見えていた。古い時計、木製の小さな動物フィギュア、便箋などが目に入って来る。

 

 辺りを見渡すのをやめて、結人君の方を見ると色んなものが見れる雑貨屋さんの商品を見て回っているようだった。その姿はまるで都会の夜空が星を探しているかのようにも見えていると、一瞬だけ手作りだと思われる星座を模したブローチのようなものを見つける。

 

「こんなふうに星を集められたら、どれだけ素敵なんだろうな……」

 

 結人君もそのブローチが目に入ったようでそっとそのブローチを指先で撫でてから一緒に目的の絆創膏の売り場とやって来ると、色んな種類の絆創膏が売られていた。雑貨屋さんの絆創膏ということもあって普通の絆創膏とは違って色とりどりの絆創膏が、小さな宝物のように整然と並べられている。パッケージを見ているだけで薄く柔らかそうな生地に、手描きのような花や星……。

 

「結人君、星が描かれてるのがあるよ」

 

 星が描かれているのを指すと「そうだな」と言いながらもカゴの中に入れていた。色んな種類のある絆創膏たちに目を向けていると、結人君がある絆創膏を指している。

 

「ほら燈、あっただろ?」

 

「あっ、本当だ……」

 

 結人君が指した方向を見ると、匂いが付いている絆創膏が売られていた。ラベンダーにローズと言った普通にありそうなものから温泉の匂いというものまであった。

 

「温泉ということは……硫黄の匂いとかがしたりするのかな?」

 

「ちょっと想像できないけどな」

 

 結人君が少し笑いながら言ってるのを見て「そうだね」と私は返していた。確かに普通に使うなら硫黄の匂いがする絆創膏は使うのは気が引けるかも……。

 

「こういう絆創膏面白い……よね、絵が描かれている絆創膏じゃなくてこうやって匂いを付けるなんて……」

 

 結人君が「確かに」と言いながらも温泉の匂いがついている絆創膏が気になったのか、手に取って買うことを決めていた。私も気になった為、買うことにしていた。そして、その隣に置かれてあった世界の世界遺産と書かれている絆創膏が売られていて私はその中でモアイ像やマチュピチュなどが描かれているものがあって目に入って気に入ったものをカゴの中に入れていた。

 

「そっちも面白そうだな、俺も買うか」

 

 私がカゴの中に絆創膏を入れた後に、結人君もカゴの中に絆創膏を入れている姿を眺めながらもあることを実感していた。それはこうして一緒に結人君と一緒に買い物を出来ていることが少し嬉しかった。隣にいて一緒に買い物が出来ることが本当に嬉しかった。此処一年彼とは話すことも会うこともしていなかったから……。

 

「俺の顔をばっかり見てどうしたんだ燈?」

 

「あっ……い、いや……なんでもないよ結人君……!!」

 

「そうか?ならいいんだが」

 

 彼の顔ばかり見ていた自覚は全くなかった。

 も、もしかして……無意識の内に見ていたのかな……。き、気をつけないと結人君も気になって仕方ないよね……。

 

 

 

 

 

 

「燈、何飲む?」

 

「え?私……?私は……」

 

 喫茶店……。

 

 私達は絆創膏をカゴに入れて、それぞれ好きなものを買い終えてから喫茶店に来ていた。こういう場所に来たとき、いつもそよちゃんがカフェモカを頼んでいるのを見て私も同じものを頼もうとしていることが多かった。でも、結人君はいつもこういう場所に来てくれたとき、私に気を遣ってくれていることが多かった。

 

「カフェモ……「燈が飲みたいもの、飲んでいいぞ?」」

 

「え?……えっと」

 

 私が実はカフェモカがそんなに好きじゃないことに気を遣ってくれていたのか、彼が好きな物を頼んでいいぞと言ってくれたのはいいものの豊富な飲み物の多さに私は目まぐるしさすら覚えていた。そよちゃんだったら、こういうときトッピングとか言うのも込みですぐに言うことも出来るんだろうけど私はそういうのよく分からないし……どれを選んだらいいんだろうか……。店員さんもきっと「このお客さん、早くしてくれないかな?」と思ってるよね……。ど、どうしよう……。

 

「燈、昔みたいに直感で選んでみたらどうだ?」

 

「ちょ、直感……?じゃ、じゃあ……この……マンゴーのフラペチーノで?サイズは……えっと小さいので……」

 

 店員さんがちゃんとしたサイズで言い直しているのを聞いて少し恥ずかしくなっていた。結人君はスラスラと言えているようだけど、やっぱりこういう呪文?みたいなのって言えるように練習とかしているのかな……。

 

 

 

 

 

 

「結人君ありがとうね、絆創膏もそうだけど飲み物もお金出して貰って……」

 

「ん?ああ、全然気にするなよ」

 

 結人君は私の分までお金を出してくれていた。

 遠慮したけど結人君が「久々なんだからこれぐらいさせてくれ」と言われても遠慮してしまったけど、先に結人君にお金を出されてしまった為自分で支払うことが出来なかった。それでもやっぱり気が済まない為、飲み物を結人君の分も支払おうとしたけどそれも結人君が一緒に支払ってくれた。私は少し複雑な気分になりながらも結人君と一緒に窓際の席に座っている。窓の外の方を見ると、人々が歩いているのが見えている。

 

「結人君、奢ってくれたのもそうだけど……ありがとうね」

 

「別に大丈夫だぞ、それ美味しいか?」

 

「う、うん……本当にマンゴーの味がするんだね」

 

「そりゃあそうなんじゃないのか?」

 

 結人君ともこういう場所に来ることは割とあって、そのときもよく私はカフェモカがあればカフェモカを頼んでいることが多かった。もし無ければオレンジジュースを飲んでいることが多かったけど、ある日結人君は私がカフェモカがそんなに好きじゃないことに気づいてそのときも「好きなもの頼んでいいぞ」って言ってくれて私は戸惑いながらもそのときも直感で飲み物を頼んで初めて自分の意志で選んだコーヒーの味は今も覚えている。普通のコーヒーと違くて苦いって訳じゃなくてほんのりとした苦みに香りも強くなく、子供も飲めそうなコーヒーだったのを……。

 

「結人君に聞きたいことがあるんだけど、聞いてもいいかな?」

 

「どうした?」

 

「もし、私が……またバンドをやるって言ったら……応援してくれる?」

 

 愛音ちゃんにバンドを誘われたとき、バンドをやったらまた解散してしまうかもしれないという恐怖心に私は打ち勝つことが出来なかった。きっと私が臆病で弱いから「やる」って言い切れなかった。でも結人君だったら、「やる」って前を向いて歩き出せたはず……。だから結人君の答えを聞きたかった。

 

「燈はどうしたいんだ?」

 

「え……?」

 

「……俺は確かに燈がまたバンドやるなら応援したいってなるだろうけど。燈がやりたくないのにバンドをやって欲しい、頑張って欲しいなんて無責任なこと言える訳ないだろ?だから、燈がやりたいか、どうかが重要なんじゃないのか?」

 

「私がやりたいかどうか……」

 

 「燈がどうしたいんだ?」と聞かれたとき、私は自分が想像していた答えと違っていたことに少し驚愕していた。結人君なら「頑張れよ!」と言うことを言ってくれるのかと予想していたけど、返って来たことは真剣な言葉そのものだった。

 

「燈がそうやって相談をしてくるってことは良い人と巡り合わせることが出来たんだろうけど、燈が嫌々やってもそれじゃあバンドとして意味ないからさ。だから燈がやりたいかどうかをちゃんと考えて決めればいいと思うんだよ」

 

 愛音ちゃん……。

 私と比べたら凄く対照的な人でまるで日の光のような存在……。でも、愛音ちゃんはそんな私に手を差し伸べてくれた。私に「バンドを一緒にやろう」って言ってくれて「駄目になってもまた頑張ればいい」と言ってくれた。もう一度……もう一度だけ頑張ってみてもいいのかな。CRYCHICはダメになってしまったけど、次駄目にならないように頑張ってみればいいのかな……。

 

「結人君、ありがとう……。私ちゃんと……考えてみる」

 

「ああ、ゆっくりと考えればいい。燈が決めることだからな。でも……燈がバンドまた始めるなら俺は応援するからさ」

 

「うん……!」

 

 まだ新しいバンドをやるかどうかは分からない。

 でも愛音ちゃんと前を進めて行けばなにかしら前に進むことが出来るかも……。臆病だった私が人間になりたかった私が……人間になれるかもしれない。なんて少し希望的観測かもしれないことを考えながらも私は拳を少し握り締めていた。

 

 

 

 

 

 

 それから数日が経ち、私は結人君にバンドを始めたことを打ち明けた。結人君はそれを聞いて凄く喜んでくれた……。でも、少しだけ問題が発生してしまった。それは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、なんで燈と一緒にいるんだよ!!?」

 

 立希ちゃんに結人君と一緒にいる所を見られてしまった……から。

 

 

 

 

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