【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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違う場所での輝きを求めて

「ライブの開催……?」

 

 商業施設に貼ってあったフライヤーが目に入った私は……それを眺めていた。

 今から二週間後に此処で開催されるガールズバンド限定のライブがあるというお知らせのフライヤーが貼られていた。

 

「燈、もしかして興味あるのか?」

 

「あるかも……しれない。私たちは今までライブハウスでライブをして来たけど、違う景色での……ライブに……興味が……」

 

「だったら、やってみたらいいんじゃないのか?違う景色でのライブ、それもきっと楽しいと思うぞ?あーでも……ちゃんと立希達に確認取ってから……だな」

 

 「うん」と返事をした後に、もう一度そのお知らせの用紙に目を通す。

 違う場所でのライブ……。違う世界でのライブ……。それがどんな効果を生み出すかは分からない。でも……私はやってみたい。一瞬、一瞬の積み重ねを大事にしていきたいから……。

 

 

 

 

 

 

 次の日……休日。

 バンドのみんなに連絡して今はRINGに揃っていた。私はカフェの方に行くと、既に楽奈ちゃん以外は揃っていた。因みに結人君はバイトでちょっと来るのが遅れて来ると連絡があった。急ぐようにしてあのちゃん達が座っている方に急いで座ると、立希ちゃんが水が入ったグラスを用意してくれていた。

 

「それで燈、バンドのことで相談って言ってたけど……」

 

「うん……えっとね……。この前、ショッピングモールでこういうのがあったの……」

 

 貼り紙の置かれてあった紙をバッグから取り出したその紙を机の真ん中辺りに出すと、それを一番最初に手に取ってそれを確認していたのはあのちゃんだった。

 

「なになに……ショッピングモールにてのバンドのライブを募集中……?期間は再来週で……締め切りは……。へぇ、今日なんだ……」

 

 

 

 

「今日!!?」

 

「え?今日……だったんだ……」

 

「ともりん、知らないで持ってきたの!?」

 

 目に入った情報がバンドの参加者募集という文字だけだった。

 結人君も特に締め切りについて話している様子はなかったから、そんなに短い期間じゃないのかもしれないと勘違いをしていた……。

 

「燈ちゃん、これを持ってきたってことはそこでライブをしたいっていうこと?」

 

 言葉が伝わるのかが不安だった私はテーブルの上に紙を広げていると、そよちゃんが言いたかった言葉を汲み取ってくれていたことによって、自分の言葉で伝えようとする意志が芽生えていた。

 

「ライブ……RINGでしかやったことないから……。もっと……違う場所で……やってみたかったから……」

 

「いいと思う……。RINGだとどうしてもバンドとか音楽とかそういうものに興味がある人とかがとやって来るけど、こういう商業施設とかのライブに出てそういうのに疎い人達にも聴いてもらうって聴く機会を作ってもらうっていうのは凄くいいと思う」

 

「確かに友達経由とかでこういう場所に来てハマってくれる人もいるけど、そう都合よく聴きに来てくれる人ばかりじゃないもんね。ガールズバンドだって今は凄く流行ってるけど興味ない人は本当に興味ないからね。いい機会なんじゃない?」

 

 二人は私の言えなかった部分の言葉までちゃんと伝わってくれていた。

 それはまるで本を読むときに書かれていない心情まで読み取ってくれていた。それが自分の中で少し嬉しくなったりしていた。

 

「モールでライブかぁ……。ってことはさー?つまり、色んな人に注目を浴びるってことだし、ANON TOKYOを知って貰える機会になるってことだよねー?って……あれ?なんで二人共、溜め息吐いてんのさ?」

 

「別に……愛音ちゃんって本当に愛音ちゃんだよねって思っただけ」

 

「はぁ……こいつ本当に自分達が何やろうとしてるのか分かってんの……」

 

「えー?自分を売り込むなんて基本中の基本じゃん。ってりっきー話聞いてる?」

 

「聞いてない、黙ってて。後は楽奈か……。あいつライブやるって言うなら秒で了承してくるだろうけど、連絡してみるか……。どうせ返事来ないだろうけど……。後……あいつ(結人)にも楽奈のことを探しておいてって言っておくか……」

 

 と言った後に立希ちゃんが一瞬そよちゃんに口を開きかけていたけど、言葉を発しないまま口を閉じていた。眉が僅かに寄って、視線が揺れていた。

 

「え、えっと……そよちゃんは昨日はありがとうね……」

 

 視界の中にそよちゃんのことが入っていた私は昨日のことでお礼を言っていた。

 

「気にしなくていいから、二人だけの思い出作れた?」

 

「…………うん」

 

 あの日の思い出はこれからも……ずっと記憶の中にあり続けると信じたい。

 久々に結人君と一緒に水族館であの水槽を眺められたことは……本当に嬉しかったから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 アウトドアショップのバイトの帰り……。

 俺は電車に乗っていた。今日は燈に呼ばれていた為、バイトが終わってすぐにRINGに向かおうとしていたがバイトが終わってすぐに立希から「こっちでも探しておくけど、楽奈のこと探しておいて」という連絡が来ていた。正直、あいつのことを探すのって割と骨が折れる……。

 

 

「にしても……今日のバイトはやり辛かったな流石に……」

 

 別に愛音みたいに絡みが長い奴とかそういう客が来ていた訳じゃない。

 単に俺が立希を手伝わせてしまったときのことがあったから、俺は今日バイトに行くことに関してはかなり億劫になっていたが特に理由もないのに休むという選択肢をしたくなかった俺は行くという選択肢を選んだ。

 

 結局のところ、俺は特に何も言われることもなかった。

 日頃の行いがいいからなんて自惚れるつもりはないが、こういうのは積み重なったものがあるからこそ俺は信頼されているのかもしれない。でもまあ、最近俺って愛音とかと話していただけだったりするときもあるから信頼があるのかは知らないが……。まあ、あそこはフレンドリーの店員が多いからやり易いのは事実だ。

 

 

 ホームから別の列車に乗り換えつつも俺は頭の中で楽奈で何処にいそうかを整理しながらもこう言っていた。

 

「後でそよに礼言っておかないとな……」

 

 羽沢珈琲店で立希が働いているという情報をくれたのはあいつだ。

 多分あいつは罪滅ぼしの為にやっただけだからと言って拒むだろうけど、それでもあいつに言っておきたいと言うか気が済まないというのが本当のところだ。

 

 

 電車の中で揺られながらも、俺は目を瞑って目的の駅に着くまで待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつ……いつもの場所にいねえ……」

 

 目的の駅に着き、少し歩いてある場所に辿り着いた。

 いつも通り、ショッピングモール近くの公園で猫と戯れていると予想して公園に来たものの猫も楽奈の姿もなかった。公園の中にいたのは東京に遊びに来ていると想像できる奴らぐらいだった。

 

 とは言え、よく考えてみれば楽奈が同じ場所にいつもいるというのはあまりにも安直だったのかもしれないがそれでもあいつはよく此処にいることが多かった為、真っ先にやって来たのだがいる気配もなかった。もう一度目を横に逸らしながらも、公園の中を隅々まで観察しているとそこには薄めの緑髪の女性がベンチに座っていたのを一度横目に確認した後に、俺はもう一度その女性を見る。

 

「……睦?」

 

「結人……?」

 

 睦の方に近づいて俺は睦に「隣座っていいか?」と確認すると、軽く了承の返事をしてくれたのを聞いて俺は睦の隣に座る。

 

「凄い偶然だな……こんなところで何してたんだ?」

 

「猫と戯れてた……」

 

 彼女の傍を確認して猫の気配はない。

 先ほどまで一緒に遊んでいたけど、猫の方が飽きて去ってしまったと言ったところだろうか。猫は気まぐれだからな……。

 

「結人はどうしたの?」

 

「あー俺はちょっと人を探しててさ……両目の色がそれぞれ違う中学生ぐらいの奴を探してるんだが知ってる訳ないよな」

 

「ギター弾いてた人?」

 

「そうそう、もしかして知ってるのか?」

 

 首を横に振りながらも「知らない」という意思表示を示している。

 何処にいるのかは知らなったみたいだが、ライブで楽奈のことを知ってそれでちゃんと覚えているということはなんというか凄いな……。

 

「そうか……じゃあ他を探してみるわ」

 

「結人」

 

 改めて探しに行こうとしている俺に睦は呼び止めていた。

 

「どうした睦?」

 

 何も言わずに俺の方をただジッと見つめている彼女の表情を見つめていた。

 

「もしかして……手伝ってくれるのか?」

 

「……ん」

 

 

 

 まさか睦が楽奈探しを手伝ってくれるなんてな……。

 だけど、人探しは一人より多い方が楽だ。こういうときに人手が増えるというのは凄い有難い。

 

「助かるよ睦」

 

俺はお礼を述べた後に睦と一緒に楽奈のことを探し始めていた。もう一度、公園の方を観察していたが楽奈がいる気配もなかったことに気づいた俺達は公園を出て、探すのを再開していたが問題が発生する。

 

 

 それは楽奈が結局のところ何処にいるのかが全く思いつかないということだ。

 あいつとよく話をするようになったのはつい最近のことだ。スマホ講座もあれは結局意味がなかった行動だったからな。楽奈は面白がっていたけど、二度とやるつもりはないとなっていると一つだけ楽奈が前に言っていたことを思い出す。

 

 それはあのスマホ講習が終わった後、俺がホワイトボードを片付けて楽奈に普段休日はどうしているのかと聞いたときにこう返って来たことがあった。

 

『お昼寝』

 

 と……。

 自分の寝心地が良い場所で寝てそこで過ごしたりしていることがあるらしいということを……。正直女子中学生がそんなことするなと言いたいところだったが、楽奈は言って聞くような奴じゃないし、本人の趣味?を否定するのもどうなんだとなった俺は特に何も言わなかった。引いてはいたが……。

 

 俺が固まって考え事をしていると、睦が不思議そうにしている。

 

「ああ、悪い……。ちょっとあいつが何処にいるのか考えてたんだ」

 

「分かった……?」

 

「ああ、多分な……それじゃあ行くか睦……」

 

 俺は一旦彼女の方を振り向いた後に、カバンの中から帽子を取り出してそれを睦に被らせる。

 自分がどうして帽子を被らされたのかを悟ったのか睦は小さく「ありがとう」と言っているのが聞こえていた。

 

 

 

 

 睦と俺は会話をすることなく、楽奈のことを探していた。

 この周辺であまり人がおらずそれでいて日向ごっこが出来る場所があるとすれば、俺の中で想像できるのはあの場所ぐらいしか知らない。モールの中に入り、電機屋の方に辿り着いてベッドの方を見に行くことにしたが……。

 

「いねえか……」

 

 浅はかという言葉が俺にはお似合いなのかもしれない。

 辿り着いた先には楽奈どころかベッドには誰もいなかった。

 

「でも電気屋のベッドで眠られるのって邪魔でしかねえか……」

 

 マッサージチェアとかを使用感を試していて注意されている人は見た事はないが、流石にベッドで本気で寝ていたりしたら流石に店員に怒られる気がしてならない。実際、そういう現場を見たことないから知らないが偶にアウトドアショップで椅子に座ったまま、寝ている人なら俺は知っている。因みに俺は何も言わない。気持ちよさそうに寝てるなーぐらい。

 

「なぁ……この辺で気持ち良さそうに眠れる場所って知ってるか?」

 

 何も喋らない状態のまま、睦は気持ちよさそうに眠れる場所を模索しているようだった。

 こんなピンと来ない単語で分かるものなのだろうかと不安になっていると、睦が「ついて来て」と言いながらも歩き始めていた。

 

 

 

 

 

 

「此処……」

 

 モールから出て暫く歩いた先にあったのは……ベンチが多く並んでいる場所だった。

 人はあまり座っておらず、光も入って来る為……。確かにこの場所なら気持ちよく眠れそうだ。俺はベンチを観察しながらも見ていると、あるベンチに銀髪の女子が目に入る。

 

 

 

 

「楽奈……!?」

 

 服装ですぐに楽奈だと気づいた俺は横になっている楽奈の体を遠慮なく叩き起こすと、楽奈が目を擦りながらも起きようとしていた。その起き方はまるで清々しい朝を迎えたようで良い気分になっているのがこっちまで伝わってくるが今それどころじゃない。

 

「楽奈、おい起きろ」

 

「……ゆいと?」

 

「ああ、俺だよ……。お前、立希がご立腹だったぞ。早くRING行け」

 

「……抹茶」

 

「分かった、奢ってやるって……」

 

 こいつのせいで懐がどんどん寂しくなっているけど、バンドの練習をして貰う為には本当に仕方ない。バイトしているおかげでどうにか賄っているが、していなかったらこいつに全部金を喰いつくされるところだった。ってそんなこと言っている場合じゃねえ、楽奈を見つけたと連絡しておかないと……。楽奈がベンチから起き上がったのを確認してから、スマホをポケットから取り出してすぐにグループに連絡を送っていた。

 

「ありがとうな睦、それにしてもよくこんな場所を知っていたな」

 

「偶にこの場所来てたから……」

 

「そうか、本当にありがとうな」

 

 「気にしないで」と言いたいのか、睦が首を横に軽く振っていると楽奈の足が動いている音が聞こえなかった俺は楽奈の方を確認すると、小首を傾げながらも視線を向けていた先は……睦の方だった。

 

「名前……教えて」

 

「睦……若葉睦」

 

 名前を言うのか少し迷ったのかそれともいきなり名前を聞かれて戸惑っていたのか、反応が少し遅れながらも自分の名前を答えていた。それに対して、楽奈は表情を一つ変えずにいたがそれでも何処か違和感があるような気がしていたが、楽奈は何も言うことはしていなかった。

 

「むつみ」

 

 楽奈は睦のことを呼び止めると、彼女は止まって楽奈の方を見る。

 呼び止めた事に対してまるで疑問があるような顔をしていた睦だったが、楽奈の言葉はすぐに出ていた。

 

「またライブやるから来て」

 

 その言葉は俺には凄く聞き覚えがある言葉だった。

 俺も燈達のライブを見に行くと言った後に、俺の記憶に一生残るライブをしてみせると言ってくれていた。実際、あのライブは俺にとって凄く記憶に残るライブだったのには間違いなかった。

 

 暫くの間、何も言わずにいたが睦だったが小さく頷きながらも反応を示していた。それは紛れもなく了承と見て取れた為、ゆっくりと口角を上げ、瞳の奥にかすかな光を宿しながらも微笑んでいる楽奈。睦に対して「じゃあね」と言いながらも、楽奈は俺より前に出て歩き出していた。

 

「睦、改めてありがとうな。楽奈のこと一緒に探してくれて……睦?」

 

 楽奈を追いかける前に俺は感謝の言葉を告げると睦は何かを思考しているかのようにして口を閉ざしていた。なにかあったんだろうか?と一瞬考えが過って言葉を出そうとした瞬間に睦の重く閉ざされていた口から言葉が発せられ始めていた。

 

 

 

 

 

 

「え?ああ、ううん。大丈夫だよ結人君、ライブのとき思ったんだけど楽奈ちゃんは……ギターを弾けて凄いよね」

 

「睦もギター弾けるんだろ?」

 

「そ、そうだね結人君……!!じゃ、じゃあね……!!」

 

「…………?そうか、じゃあな睦」

 

 ……自分の中で何か喉元に何かが引っ掛かるような違和感があったような気がしていたが、俺にはそれが全く認識できていなかった。ただそれを言語化するとしたら、自分が想像していた睦と今の睦が何かズレていたような気がしていたが……俺は全くと言っていいほど睦のことを知らなかった為、何も言うことが出来なかった。

 

 それから程無くして、楽奈を追いかけてRINGを目指すことにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽奈ちゃん……気づいてたのかな?多分気づかれてないよね?それにしても……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「結人君、やっぱりいいなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

「あっ……!帽子返し忘れちゃった……!でも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また会えるよね」

 

 

 

 

 

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