【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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不穏な言葉が脳を縛る

 睦との会話を終えた後、俺はイベントステージへと戻って来ていた。

 

『響いてる、結人の言葉……』

 

 余計なお世話だったかもしれない。

 それでも、俺は何も言わずにただ黙っているということが出来なかった。あの行動が正しかったのかは睦の反応を待つまで少しばかり不安になっていたが、結論から言えば正しかったのかもしれない。

 

「愛音みたいに上手くは行かねえな……」

 

 こういうとき本当に愛音が羨ましくなってくる。

 あの馬鹿みたいな行動の速さ、切り替えの早さ、自己顕示欲の三拍子。本当にあいつみたいに行動が出来ればいいんだが、上手くは行かないというのが事実だな……となりながらも俺は引き続きステージの方を目に焼き付けている。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……疲れた!!」

 

 ライブが終わった後、燈からの連絡を受けて俺は呼び出された場所へと向かうと愛音の大きな声が聞こえてくるのと同時に抹茶パンを食べている楽奈の姿があった。

 

「お疲れ楽奈、今回かなり気合入っていたな。かなり観客の心を掴めるギターが出来ていたんじゃないのか?」

 

「うん、満足」

 

 褒められて少し口角を上げて満足そうにしている楽奈。

 その後、愛音に「私は?私は?」と聞かれてほぼ棒読み気味で愛音の今日良かったところを並べながらも言っていると、棒読み気味なことを突っ込まれていた。

 

「……来てたみたいだぞ」

 

「知ってる」

 

「そうか……」

 

 抹茶ラテを美味しそうに飲んでいる楽奈。睦が来てたことを楽奈に伝えるが、どうやら楽奈は知っていたようだった。ステージから睦の姿を確認できていたのかもしれないなとなりながらも、俺は話を終えようとしていると楽奈が興味深いことを言おうとしている。

 

「どっちだった?」

 

「……どっちだったってどういう意味だ?」

 

 楽奈の疑問の意味を理解する為に、頭の中で一度読み込もうとするがそれでもその全貌が見えてくることはなかった。更に深堀りして俺が聞こうとしていたが、楽奈は一瞬吹き出しを浮かべたようにしている。その吹き出しを出したいのはこっちなんだが、となっていた。

 

「……いいや」

 

「は?お、おい楽奈……!!」

 

 あいつの中でもまだ何か決着がついていないものがあるからなのか、本当にそれ以上聞き出すことも出来なかった。『どっちだった?』という内容だけが頭にこびりついて離れなくなりながらも、俺のスマホから通知音が鳴り響いていた。

 

 

 

 

『結人君、今日はありがとう!!これからよろしくね!!』

 

 

 

 

 通知画面には睦からの初めての連絡が来ていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、俺は立希に言われた場所へと来ていた。

 最初に店の中に入ると、店の装飾や内装に昔の時代に戻ってきたような感覚になっている自分がいた。簡素な佇まいではあるものの、やはり大きく着目すべきは大きな古時計。文字盤には微細なヒビが走り、数字の刻まれた部分は少し掠れている。かなり年季が入ってるようなもののようでこのお店と共に生きてきた証が残っているようだった。

 

 昭和という時間がこういうものだったのかもしれないと時間を逆行した感覚に陥りながらも、俺はソファーに寄りかかっている。このソファーもかなり古いもののようで本当に時代というものが些か曖昧になってくるものだった。

 

「ゆいくん、此処は……あんみつが美味しいって」

 

 燈からメニューを渡されると、確かに此処のオススメはどうやらあんみつと書かれている。

 バニラと小倉を乗せられていてそこにあんみつもあるようだ。そして、更にそこに自家製のメロンソーダ付いていてお安めな値段になっている。なるほど、俺達以外にお客さんが結構いるのも納得だ、となっていると俺は燈に「それでいい」と伝えた後に俺は立希にメニュー表を渡す。

 

「その……モールでのライブどうだった?」

 

 メニュー表を渡してすぐ立希が俺にライブの感想を聞いて来ていた。

 ライブの感想はあの後、立希にも伝えたんだが……今こうして説明を求めて来るということは聞きたかったんだろう。俺はその意図を読んだ後に座っている席の上に置かれている照明の灯りを少しチラッと見る。

 

「良かったよ、みんなそれぞれがいつもとは違う場所というアウェイの場で演奏をして、歌を歌って……。一つのバンドとしてなれているのを実感できた、どれだけの人に響いたのかは実際のところ何とも言えないが、それでも俺が聞こえてきた範囲内ではMyGO!!!!!というバンドが人々の心を掴んだのかは聞き取ることは出来た。それに……俺はやっぱりお前らのバンドが好きだ」

 

「こうなんつうかな……特にあのライブ聞いてていいなってなったのが、迷星叫(まよういた)だったか?すげえいいなと思ったのがさ、僕になるって言うところの歌詞だったんだ。なんつうか、人間になりたいっていう歌詞を詩を生み出した燈がこうやってひたむきに前に進めてるのがすげえ嬉しいんだ。あーでも、こういうのって裏事情まで含めたら反則だよな。じゃあ、えっと「もう分かったから」」

 

「お前が私達のこと見てくれるのはちゃんと知ってるから、もういいから……」

 

 長々と語っていると、燈と立希が少し恥ずかしそうにしている。

 よく考えてみりゃ周りにお客さんとかも結構いるのに滅茶苦茶熱くなって熱弁しているのはかなり滑稽な行動をしていたのは本当に事実で頭を悩ませることになりそうになりながらも俺は一旦お茶を飲むことにしていた。

 

「ゆいくん……そのありがとう……好きって言ってくれて」

 

「え?あ、ああ……」

 

 再びお茶を口の中に流し込む。

 身体が熱くなっているせいか、余計お茶の温度が熱く感じていたのはきっと気のせいなんかじゃなかった。火照っている体を冷やすかのようにしながらも、俺はシャツの首元を掴んで仰ぐと僅かに感じる風が全く冷たくなくて、俺は再び意味もなくお茶を飲んでいると話し声が聞こえてくる。

 

「燈、その……この前実は調べて知ったんだけど、今日は流れ星が見れるって」

 

「うん……確か午前一時から午前四時頃ぐらいから見れるって……」

 

 燈と立希の話に聞き耳を立てながらも俺は外の風景を眺める。

 

「そうなんだ……燈は流れ星に何かお願いする?」

 

「お願い……。一生立希ちゃん達と……バンドやりたいってお願いしたい」

 

「……!?私も、私も燈と一生バンドやりたいって願う」

 

 二人の会話を音楽にしながらも聞いていた。

 燈と話しているときの声色が落ち着いた声で立希は話しかけている。いつもの少しばかり棘がある言葉遣いではなく、その話し方は本当に燈のことを大切にしているんだとなる。立希は燈の歌が好きなのは俺も知っている。それが燈に伝わっていないとは思うけど、俺も立希が燈の歌をどう思っているのか伝えるかは必要のないことなのかもしれない。

 

 言葉というものは重要なのは事実だが、こういうときに言う必要なんてことはない。燈は察しがいいし観察力が高いからもしかしたら気づいてるかもしれないしな……。

 

「結人は?」

 

「そんなの決まってるだろ?お前らが一生バンド続けられるように……って願うよ」

 

 MyGO!!!!!が好きだ。MyGOというバンドが好きだ。

 此処まで俺の五感を動かして揺さぶってくれたこいつらのことが好きだ。そして、繋がりという新たな結びを得させてくれた五人のあいつらが大好きだ。本当に自分でこんなことを言っていて恥ずかしくならないのかとなりながらも、俺は首の裏を掻いていると古いブラウン管のテレビが目に入る。

 

 

 

 

 

「睦……?」

 

 テレビ越しの画面のそこには睦と思われる人物が映っていた。

 もう一度確認する為に、テレビを見ようとしてもそこにいたのは薄緑色の長い髪をした少女だったのは間違いなかった。睦がテレビに出るのは別に変なことじゃないが、あまりにも偶々テレビに目が入って視界に睦が居た為、俺は睦の名前を口に出してしまっていたのと同時に誰かの声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 

「なんで睦のこと知ってんの?」

 

 

 

 

 

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