【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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流れる星の輝きを忘れない

『そんなの決まってるだろ?お前らが一生バンド続けられるように……って願うよ』

 

 自分の言葉を思い出す。

 頭上には無数に広がる星空が続いている。この星空が何処までも広がっていて宇宙の果てがあると考えると自分達の存在がちっぽけの存在に聞こえてしまうが、無数の星々が輝く中でこうして俺達という生命が生きているということはある意味奇跡的なことなのかもしれない。

 

 星を掴むようにして手を掲げる。

 勿論、星なんてものは掴める訳もなかったが流れ星がやって来るのを待ち侘びている。この歳になってもまさか流れ星を待つなんて、と言われるかもしれないけど俺からすれば星というものはロマンの塊でしかなかった。

 

 小さい頃から星を見るのにはこの最適な公園を選んでいた。

 俺が住んでいる都心からそれほど離れておらず、近場で見れるには最適な場所だ。本当だったら、奥多摩湖や夢の島公園などの場所がいいかもしれないが、家にはミモザがいるからあんまり離れたところに行くわけにもいかない。

 

 周りを見渡すが、燈達はいない。

 「一緒に行かないか?」と誘えば良かったと、少し寂しくなりながらも俺は星空に集中していると後ろから声が聞こえてくる。

 

「あれ?結人……?」

 

 俺に話しかけて来ていたのは帽子を被っている初華だった。

 あいつも星空が好きっぽそうだからもしかしたら此処の特等席で見学しに来たのかもしれないとなりながらも、俺は反応をする。

 

「流れ星、見に来たのか?」

 

「うん、そうだね。そういう結人も流れ星見に来たんだよね?」

 

 それに対して返事を済ませると、初華が俺の隣に座りベンチは二人座っている状態になっていた。

 

「初華は……星好きなのか?」

 

「好きだよ、島に住んでる頃。よく遠い夜空に近づけるかなーなんて思いを抱きながら眺めてたんだ」

 

「島に住んでる頃?」

 

 初華は無言のまま頷いている。

 

「いいな……そういうの……」

 

「え?」

 

「ああ、いいや……。俺生まれた頃から東京に住んでてさ、まあ親父が冒険家だったから色んなところに連れて行って貰ったからそういう場所に行ったこともあったけど、憧れるんだよ。沖縄とかそういう場所に対して……こうなんだろう、島でしか体験できないみたいな生活もあるだろ?」

 

「どう……だろう?」

 

 初華が何とも答え辛そうな表情をしている。

 それはまるで島の生活があんまり自由があるとは言えないと苦い顔をしているのが伝わってきたような気がしてきた俺はすぐに謝ることにした。

 

 

 

 

「悪い、なんか言っちゃいけないこと言ったよな……」

 

「ううん、全然気にしないでいいよ。でも、島での生活に憧れかぁ……。ねぇ、結人は無人島に一つ持っていくとしたら何持っていく?」

 

「よくある質問だな、でもまぁ……俺は友人を選ぶかな」

 

「え?友人?」

 

 意外と言いたそうにしながらも初華が目を見開いている。

 こんな反応をされるのは意外とは思わなかった。少し変なのは自覚しているからな。

 

「少し前だったら、道具とか答えていたかもしれないけど。俺も一人旅は嫌いじゃないからそういうのは悪くないけど、一人で無人島っていうのはなんか寂しい気がするんだ。そりゃあ、一人で見知らぬ土地で見知らぬことをするのってすげえ貴重な体験だよ。自分が鍛えられるような気がするからさ、でも誰かと一緒に無人島に行けばそこでもっと友情とか繋がりみたいなのが強くなれるんじゃねえかって……」

 

「友情……繋がり……。強くなれる……」

 

「まあ、正直変なのは自覚してるんだけどな。他の奴だったら、多分もっとマシな答え方をするんだろうし」

 

「ううん、全然そんなことないよ。私も……持っていくなら友達かな?やっぱり、誰かと一緒に何かをするのって凄く楽しそうだよね。それに……友達とならなんでもできる気がするよ。あーでも、友達を持っていくって変かな?」

 

「あーまあ、確かに持っていくだとおかしいかもな」

 

 お互いに自分達の言葉の意味を理解していた。

 

 なんでもできる気がする、か……。

 確かにそうだな……。俺も燈達なら何処までも進むことができる。立希がいてくれれば俺が間違った方向に行っても連れ戻してくれるはずだ。それに若干ウザいけど絶対俺のことを放そうとしない愛音もいるしな……。

 

「そろそろ、時間だな」

 

 時計で時間を確認すると、もうそろそろで流れ星が見れる時間に到達しようとしていた。

 

「そうだね……ねぇ結人は何を願うの?」

 

「俺か?まあ、秘密だな。初華は?」

 

「私は……うん。私も秘密かな?」

 

 お互いにお互いの願い事を秘密にしていると互いに苦笑いをしてしまう。

 

 

 

 

「会話になってねえな、これ」

 

「……だね」

 

 どうにもお互いの夢を知らぬことになりながらも、俺達は苦笑いから普通に笑顔になっていた。

 そして、時刻はやって来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────燈達が一生バンドを続けられますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日……というより今日という方が正しいかもしれない。

 あの公園まで往復で徒歩で歩いていたこともあり、少しばかり足が痛いという事態になりながらも俺はRINGでバイトをしている。初華はあの後分かれた。カフェの方では燈達が集まっていてなにやら、話をしていたが俺は今山吹先輩に頼まれたことを終えてその報告をしにスタジオ前に辿り着いていた。

 

 

 

 

「…………すげえな」

 

 スタジオをノックしてから返事が無かった。「失礼します」と言った後に扉を開けると、そんな感想が出てしまう。Poppin'Partyの音楽を聴くのはこれが初めてじゃなかったが、こうして近くで大音量で聴くという行為自体がそんなに無かった俺にはいい刺激になっている。

 

 Poppin'Partyは何処かポップで元気いっぱいな楽曲が特徴的なものが多い。それでいて楽曲の中には背中を押してくれるものが多くあることは知っていたが、それが戸山先輩の歌声が良い具合に合わさっている。そして、なによりドラム捌きが癖になる。日頃、頼れる先輩の山吹先輩がこうしてドラムを叩いている姿はまさしく様になっていた。そして、なにより他のメンバーの人達も息がぴったりで全体を通してバンドという一つの形が完成しているとしか言いようがない。

 

 

「これが先輩達のバンド……」

 

 まるで植物に水を与えられたように活力が漲って来るこのバンドの底力に俺は感激していると、練習が一旦終わった後に拍手をしてしまっていた。

 

「あれ?結人君、どうしたの!?」

 

 一番真っ先に俺に気づいたのは戸山先輩だった。

 歌い終わって汗を拭った後に、俺の存在に気づいたようで俺が此処にいることに驚いていたようだった。

 

「山吹先輩に頼まれてたライブハウスの日程調整の件で来たんです。これで構いませんか?」

 

「今日スタジオ来る前に頼んでおいたことだよね。ごめんね、やってくれて」

 

「いえ、気にしないでください」

 

 ドラムの前に置いてある椅子から立ち上がり、山吹先輩は俺が持っているタブレットを確認しに来てくれていた。タブレットに書かれている日程を軽く確認してくれた山吹先輩が「うん。大丈夫だよ、ありがとうね」と言ってくれていた。

 

「そういえば、結人君が前に気になってたバンド。今日路上ライブやるみたいだよ?確か場所は日本橋だったかな?後で詳しい場所送っておくね」

 

「そうなんですか……!?ありがとうございます……!!」

 

 そうか、あのバンドが東京でライブをするのか……。

 あっちを拠点として活動していることが多いからあんまりこっちに来ることはないと聞いていたけど、こうして間近で見れるのは楽しみでしかないとなりながらも俺はスタジオを出ようとしたとき、足を止める。

 

 

「あの……先輩方、本当に凄いですね。バンドとしての完成度が非常に高くて……練習だって言うのにスタジオに入った瞬間、ライブでの会場の熱気が伝わったような気がしました。あんまり戸山先輩や山吹先輩とかに言ったことなかったんですけど、先輩方の音楽すげえ好きなんです。素敵で元気が出るような曲が多くて偶にRINGでバイトしているときとか口ずさみたくなるんです。なんかすげえ頑張るかってなれて……」

 

 先輩方にどう思われるかとどうでも良くなっていた俺は少しばかり熱くなっていると、戸山先輩の目頭が熱くなっている。どうやら、引かれてたりはしてないみたいで俺は少し安心していた。

 

「今、完成してちゃ駄目だろ」

 

「確かにそうですよね、市ヶ谷さん。すみません」

 

 キーボードの前から立ち上がったのは金髪のツインテールの女性、市ヶ谷有咲さんだった。

 

「つーか、お前用事終わったんだろ?此処にいないでカフェの方に行ってやれよ。友達いるんだろ?」

 

「ちょっ!?市ヶ谷さん!?山吹先輩に頼まれて俺此処に来たんですけど!!?あーいやそれ終わったからもう出てもいいのか」

 

 強引にも俺はスタジオの方から追い出されそうになる。

 その間にも他のメンバーの人達、牛込りみさん。花園たえさんにも軽く挨拶を済ませながらも強制退去を市ヶ谷さんから命じられる。少しの間だけ先輩方の練習を聴き過ぎたのもあるかもしれないけど、多分市ヶ谷さん的には俺の居場所は此処じゃなくてMyGOだろうと言いたかったのかもしれない。あの人、見た感じ割と戸山先輩にすげえ素直になれてないし。そういうところが出ているのかもしれない。あの人、男勝りだけどそういうところはあるしな……。と少し都合よく解釈し過ぎな気がしながらも俺はスタジオを出ようとしたときに俺は戸山先輩に一つだけ言いたかったことがあった。

 

 

 

 

 

 

「先輩、立希達とのキラキラドキドキ……。ちゃんと大切にしています。そして、これからもその輝きを大事にしていきたいです」

 

 宣言とも取れるその言葉は戸山先輩に響いているのが俺にも伝わって来ていた。

 今に声を出して喜びを出したいというその表情、その口元がそれを物語っていたしなにより戸山先輩は物凄く分かりやすい人だ。歌声だけでなく人の心を温かくしてくれるその先輩の姿は眩して仕方なかったけど、決して悪いもんじゃなかった。

 

「うん、ぜっーたい大事にしてね!頑張ってね結人君!応援してるよ!!」

 

「はい、先輩……!練習中、失礼させていただきました!!お疲れ様です!!」

 

 ……市ヶ谷さんの言う通りだな。

 俺があいつらとのきらめきを大事にしていきたいなら一秒でもあいつらのところにいてやるべきなんだ。それにしても俺は本当に……先輩から大切なことを学ばせてもらったんだ……。

 

 

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