【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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海鈴はなんというか体鍛えるとかは出来るけど、運動は出来ないイメージが勝手にあります。


人形は信頼に羨望し恐れる、人間達は信頼し合う

「まあ……こんなもんでいいか」

 

 カゴの中には幾つかの商品が入っている。

 コードを結ぶもの、ガジェット系のポーチ、観葉植物なども買おうとしていた。最初の二つに関しては前回のにゃむとの旅で少しばかり反省するべき点があったから、こうして付け足しで買っている。観葉植物についてはサボテンを買っていて、偶にはこういうものを買って心を清らかにするのも悪くないだろうとなっていた。

 

 それにしても、百均もこうして歩いていると本当に多種多少なものが目に映る。

 はっきり言って、こんなの誰が買うんだ?と言わんばかりのものがあったりする、例えば一合だけ炊けるような電子レンジ調理器だったり、みかんの皮むき用の道具?みたいなものがある。置いてあるって言うことは誰かしら買うからあるんだろうが、俄かに信じ難いし買う人がいるならいっそ質問して突撃してみたいものだなとなりながらも、会計を済ませて持って来ていたエコバッグにぶち込む。

 

「割と買ったな……」

 

 袋の中に詰め込んだものを覗き込みながらも俺は一人でそう呟いていた。

 目的のものだけ買うつもりが、どうやら無駄遣いをしてしまったようだ。こういうことをしているからいつまで経ってもバイクなんて買えないんだろうという自虐を込めながらも帰りにコーヒーでも買って帰るか……。

 

 目的のカフェまで少しばかり歩く度に、人とすれ違う光景は何処にでもある光景。暫くの間、頭を真っ直ぐにして歩いていたが、斜めに首を動かしたくなっていた俺は少しばかり首を動かすと会計を済ませている黒髪の女性が視界に入って来る。なんてことのない、買い物を済ませる姿だったのだがその人物に見覚えがあったのだ。

 

「八幡……?」

 

 黒のライダーズジャケットを着ているだけで誰なのかすぐに特定できた。

 彼女の場合、顔で覚えるより服装で判断した方が圧倒的に判別しやすい……。買い物を終えて、レジに「ありがとうございます」と言いながらもお店の方を出てくると、俺に気づいた八幡が話しかけてくる。

 

「星乃さんですか、いいところにいてくれました。こちら持っていただけませんか?」

 

「……え!?ちょっ!?は!?」

 

「それじゃあ、お願いします」

 

「は!?おい、せめて了承を得てから渡せ!?持ってやるけど!?」

 

 色んな場所で買ったと思われる紙袋等を渡して来る八幡。

 それが複数個だったらまだ良かったのだが、数えるのがやや面倒なぐらいの数を俺にそのまま渡してきたのだ。

 

「持ってくれるのなら問題はありませんね」

 

「いや、問題はないけど色々待て!八幡!!」

 

 何処から突っ込めばいいのやらとなりながらも、俺は紙袋を手首につけたまま歩き始めていた。

 俺に荷物を持たせてそのまま何処へ向かうのかと思えば、八幡が向かった先は別の店だった。どうやら八幡の買い物はまだまだ続くのだろうとなりながらも、俺はその店の前から遠い目で眺めようとしていたが八幡が会計を済ませようとしたところで俺が払おうとすると……。

 

「別に払って貰わなくても結構ですよ」

 

「いや、なんか俺が……許せないだけだから気にしない……」

 

 と言いかけたまま、俺は固まる。

 いつもならこういう場面で固まることはないのだが、八幡が買おうとしていたものの額が明らかにおかしかったこともあり俺は頭を抱えながらも無言のまま支払いを済ませた。出来る限り、焦りそうになっていたことは八幡に知られないようにしていた。

 

「それで……次はどうすんだ?」

 

 店を出た俺と八幡。

 八幡は何かを少し考えた後にこう言い始めていた。

 

「バッティングセンターに行きましょう」

 

「は!?ちょっ、ちょっと待て!!せめて荷物ロッカーに置かせろ!!」

 

「それもそうですね……。では、そちらを優先しましょうか」

 

 流石にこの大荷物を手に持った状態でバッティングセンターを目指すのは無理がある。

 その為、俺は八幡が一人で歩き始める前にロッカーに荷物を入れたいと言う提案をしていた。

 

 

 

 

 

 

「これで全部だな……」

 

 八幡と共にロッカーに来た俺……。

 八幡は今、ペットボトルの中に入っている水を飲みながら休息をしている。詮索するつもりじゃないが、あれだけの量を高校生が買えるとはとてもじゃないが思えない。八幡の場合、30程のバンドを兼任しているとは言っていたけど、それでもこの量を買うのは流石に厳しいはず……。考えていても仕方ないことで悩みながらも、俺はロッカーの扉を閉める。

 

「それでは行きますか、バッティングセンター」

 

「……そうだな」

 

 特に八幡にそれを聞くという行為はせず、俺達はショッピングモールを出てバッティングセンターの方へと目指し始めた。あっ、コーヒー買い忘れたけどもういいか……。

 

「……」

 

 八幡は特に俺に何かを話をするということはしていなかった。

 睦同様、あまり喋るようなタイプでもないから話すという行為は控えているのかもしれない……。とはいえ、俺も八幡のことを全然知らないから何を話せばいいのかと悩んでいるともうバッティングセンターはエレベーターに乗れば目の前というところもやって来ていた。どうやら、互いに無言でいることで、早めに歩いて此処に辿り着いたと冷静になっていると、エスカレーターの方から立希が降りて来ていた。

 

「どういう組み合わせなわけ?」

 

「まあ、そう言いたくなるのも無理はねえと思うぞ……」

 

 実際、他に俺のことを知っているからすればこの組み合わせは頭に疑問を思い浮かべるのも無理はないだろう。にしても……二階はゲームセンターが立希はあまりそういうのをやる印象がないとなりながらも立希のバッグが目に入ると、パンダの毛玉のキーホルダーっぽいものが付けてある。実際にパンダの毛玉ということはないだろうが、なるほどそういう理由かと納得していると立希が俺の視線に気づいたのか急いでそれを隠そうとしていた。隠さなくてもいいのにな……。

 

「立希さんですか?ちょうどいい所に来てくれました、この後星乃さんとバッティングセンターに行くのですがどうですか?」

 

「は?帰るから」

 

「なるほど、情けない姿を晒したくないということですか。まあ、それも仕方ないです。苦手なことを無理にするのは良くありませ「は?やらないとは言ってないから」」

 

 煽るときだけ物の見事に饒舌になり、イキイキと立希のことを煽っていた。

 まあ、これに関しては俺もにゃむに対してやっていたから人のことどうのとかはあんまり言えないな……。

 

 

 

 

 

「バッティングセンターなんていつぶりだろうな……」

 

 ブース内に自分の荷物を置いて、備え付けられているバットを選ぶ。

 久々ということもあって俺は初心者でも打てるようなジュニア用のバットを選ぼうとしていたが、硬式のバットを選ぶ。久々とはいえ、中学時代は助っ人として呼ばれるほどだった。なら、この勝負勝てるはずだ。そう、勝てるはずなんだ。何故なら、これはただやって来る球を打つという単純作業じゃない。

 

『そうですね、ただやるのもあれなので1GAMEでどれだけ打てるのか勝負しませんか?」

 

 八幡が言い始めた結果、1GAMEでの勝負が始まることになった。

 1GAMEということで、20球になる。この勝負、一球、一球を大事にして行かなくてはならない。二人共、運動神経自体はかなり良さそうだし捨てのニ文字は絶対にしない。

 

「行くか……」

 

 一番真っ先にブースの中に入ったのは俺ということもあって、この最初の一球で他の二人に圧を掛けることもできる。バットを握り直して、ゆっくりと肩の高さまで持ち上げる。肘を弾き、力強く構える。指先に込めた力がグリップを軋ませ、わずかに体を揺らす。

 

 

 一旦、頭を整理する。

 こういうとき、必ず力を抜いてスイングするのが基本中の基本だ。あまり力んでしまうとスイングが遅くなり、正確にボールを捉えることができない。腕の力だけで振らず、体の回転を使ってスイングをすることが……。

 

「大事だ……なっ!!?」

 

 大きく振りかぶったが、結果は……。

 空振りだった。全ての球を大事にしていくつもりが、頭の中で色々考えているうちに打つという確信的なものがあやふやのものになっていたのかもしれないと反省しながらも、次の球が来る前に自分の心を落ち着かせてただ一心でボールから目を離さないということを頭に入れて次の球は……。

 

「よしっ、当たった……!」

 

 とにかく雑念に打ち勝つと、バッドを軽く振れば確かな感覚があり、完璧なほど当たった球はホームランと書かれている的へと当たっていた。一球目で圧を掛けることには失敗はしたが、二球目では存分にその効果はあるはず、と一旦落ち着いていると俺の横で立希がホームランを打っていて俺は一瞬放心しそうになっていた。

 

 立希のことだ、運動音痴なんていうことは絶対にあり得ないはずとは踏んでいたが、まさか一球目でホームランを打たれるという事態にもううかうかしている場合じゃないと一気に火がついていた。

 

「残り、18球。全部……ホームランのつもりでやってやる!!」

 

 再び雑念を抱えながらも、俺はピッチングマシンと真剣に向き合いながらも、バットを握る手が汗で滲ませながらも俺は集中し直そうとしていたのが俺の右隣でブースに立っていた八幡からこんな声が聞こえてくる。

 

「お二人はお付き合いなされているんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「は!!?」ってぇ……!!?」

 

 八幡のいきなりの発言に俺の体が損傷する。

 ただ体にぶつかっただけなら、そんなに気にすることはなかったのだが男としてマズいところに当たってしまって悲痛な声を出す。

 

「星乃さんが女性の前でそういうセクハラ的なことをするとは思ってもいませんでした」

 

「お前なぁ!誰のせいだと思ってんだ!!?」

 

 元はと言えば、八幡が突拍子もなく俺と立希が付き合っているなんて変なことを言い始めたのが原因。そんな八幡は涼しい顔をして空振りを繰り返している。……もしかして、いやこういうのはあんまり触れるべきじゃないな……。

 

「立希、大丈夫か……?」

 

 バットを握る力が明らかに全く入っておらず、投げられたボールにバットを当てようとするものの全く当たっていなかった。そもそも目を離しているようだった。

 

「立希、ボールはよく見な「い、今……話しかけないで」」

 

「わ、悪い……」

 

 八幡のせいで俺と立希の間で微妙な空気が出来つつもこの後も続けることになったが、先ほどの発言もあって俺の方は10球しか打てず、立希の方は8球しか打てていなかった。出来る限り、意識しないようにしていたがそれでも頭の中から全く離れてくれていなかった。因みに、八幡は4球しか当たらなかったようだ……。

 

 

 

 

 

 

「運動後の飲み物は最高だな……」

 

 1GAMEを終えた後、八幡達と一緒に自販機で買った飲み物を飲んでいた。

 先ほどまでの色んな意味での熱さは無くなっていて、俺と立希は落ち着いてると八幡は満足そうに飲み物を飲んでいた。

 

「結人、スマホ鳴ってるけど……」

 

「え?ああ、誰……あー愛音か。悪い、ちょっと出てくるわ……」

 

 ポケットの中に入れてあったスマホが鳴っていることに気づいてくれた立希に言われて、俺が着信相手を確認すると、愛音からだった。俺は立希に「電話をしてくる」とだけ伝えて一旦、少し離れた場所で電話に出ることにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ゆいくん、やっと出てくれた……!!」

 

 八幡達から聞こえないぐらいの位置まで離れた場所に来た俺は愛音からの電話に出ると、愛音のいつも元気でお気楽な声が聞こえてきていた。

 

「どうした?長く掛け続けていたけど、なんかあったのか?」

 

「ゆいくんにお願いしたことがあって電話したの」

 

「お願いしたいこと?」

 

「そうそう……その実は……さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「sumimiのライブ一緒に行って欲しいの……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「電話の相手、女性だったようですね」

 

「……別に結人とは付き合ってないんだけど」

 

「おや?そうなのですか?てっきり立希さんは星乃さんと付き合っているもんだとばかり思っていましたが……」

 

 パンダのストラップの件もありましたし、学校でも彼からの連絡には少しニヤけているような素振りもあったので、互いに脈ありなのだと勝手に思っていましたが、どうやらそれは検討違いだったようですね。

 

「では……古くからの友人ということですか?彼とは?」

 

「……なんでそんなに結人との関係が気になるのか知らないけど、あいつは古い付き合いだし、色々あったのは間違いないけど」

 

「色々とは?」

 

「……海鈴には関係ないでしょ?あいつと私がどういう関係とか」

 

「それもそうですね……。ですが……そういうのは……」

 

 

 

 

 

 

「いいですね」

 

 お互いをお互いに信じ切れているということが立希さんの言葉だけで伝わっていた。

 複雑になりながらも、私はあることを思い出していた。

 

 

 

 

『誰も居なかった……」

 

 最初に私が組んだあのバンド……。

 私にとってあのバンドが運命だと捉えていましたが、そう思っていたのは私だけであったと言うことを知ったとき、本当に絶望しそうになっていました。自分に非があったのかもしれません。それでも私はあのバンドをあのバンドの一員の中で人一倍信じ切れていたのです。一人でライブをすることになったあの日以来……。私は……人というものをあまり信用しなくなったのかもしれません。そして、ストレスを多くある日はこうして爆買いやストレス解消を多く行き交うようになったはの間違いありません……。そうすることで、自分が満たされるからです……。

 

「そういえば、前に彼のことはもうどうでもいいと言ってませんでしたか?」

 

「関係ないって言ったばっかなんだけど?」

 

「少々、気になるんですよ。それでも彼のことをやはりどうでもいい奴じゃないと思えた、なにかがあるんじゃないのかと……立希さんは割と強情なのでそういうのは曲げないタイプだと思っていましたが?」

 

 とお二人の関係を更に聞き出そうとすると、立希さんは観念して溜め息をついていた後に少しだけ語り始めました。私が興味を持ってしまった、あまりに止まらない判断してくれたのかもしれません。

 

「…………嫌いなところ。いや、許せないところもあるけど、あいつは……私にとって唯一自分でいられた。ただ、それだけだけど?」

 

 立希さんの言葉を聞いて、缶を握っている自分がいました。

 それは間違いなく、私は立希さんや星乃さんのように綺麗な人間になれないということを自覚していました。

 

「……これ以上は言うつもりないから。というか、なんでそんな聞いて来るわけ?」

 

「いえ、ただ本当に気になっていただけですよ。立希さんと星乃さんの関係を……」

 

 なにより、この二人はお互いに強く信頼し合っていると認識できたのと同時に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()ですか……いいですね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お二人はそう信じられるものがあって……」

 

 

 

 

 

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