【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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人形は自己を悲しみ、人間は疑念を持つ

『愛音に聞きたいんだが、お前って自分のギターの音ってどんな感じか分かってるか?』

 

『ゆいくん、凄い変な質問するじゃん?でも、それぐらいなら私も分かるよ?楽奈ちゃんや初華に比べれば、全然だけど私だって最近は自分に自信がついて来て『悪い、聞く奴間違えた』』

 

 ライブの帰り道、電車に乗りながらも愛音にそんなことを聞いていたが完全に人選ミスだと思い知らされる。よくよく考えてみれば、愛音は音楽についてはあまり興味なさそうな感じがあったから、これ以上聞いても自慢しかされないだろうとなっていた。

 

 それから少し経って電車を降りて、俺は愛音と分かれた後……ホームの階段を上りながらも立希に電話することにする。すぐに立希の電話が繋がったことを確認してから俺はこう切り出す。

 

『立希って、音楽でこう何か違和感があることってあるか?』

 

『……どういうこと?』

 

 聞き口にそんなことを言い出したため、立希が少しばかり困惑しているような声をだしている。俺は自分の中で答えを出すのに詰まりながらも、こう切り出す。

 

『あー例えばなんだが、音楽を聴いててこの音楽確かにいいんだけど、疑問になることってあったりするか?』

 

『それって音楽性でってこと?』

 

『いや、そうじゃなくて……。なんていうんだろうな、こう確かにいい曲だしいい歌声なんだよ。でも、それに何処か違和感があるような感じってことがあるかって言いたいんだ。悪い、すげえ伝わりにくい言い方して』

 

 スマホを改札に通しながらも俺は改札口にかざした後に、俺は電話を続ける。

 自分でも何を言っているのかと混乱しながらも聞いていると、立希は少しばかり考えている様子だった。

 

『それってその歌声とかに……何か負の感情みたいなの感じるからじゃないの?そういう方向性の曲とかならまだ別だけど』

 

『それだ…………』

 

 駅を出た俺は立希の言葉を聞いて立ち止まる。

 それだ、それこそが俺が求めていた回答だ。初華の歌声から感じたのは疲労や苦労とかそういうものじゃない。あいつから聞こえて来ていたのは負の感情だったんだ。何故、それが俺が聞こえに来ていたのかは知らな……。いや、俺は知っているはずだ。

 

 俺はMyGO!!!!!やPoppin'Partyなどのバンドから、五感を通して得るものが増えて来ていた。燈の歌声からは心の叫び、戸山先輩の歌声からは活力のようなものを得れることが出来た。こういうものの蓄えがあったからこそ、俺は初華のあの歌声から疑問があった。そして、その疑問を今知ることが出来た。

 

『わりぃ、ありがとう立希!!この埋め合わせ絶対するから……!!』

 

 「はぁ?」と言い切る前に俺は立希からの電話を切ることにしていた。

 立希に電話したおかげでようやく俺は自分の中の疑問を片付けることが出来た。初華は間違いない、何かがある……。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「ういちゃん、此処に座って……!」

 

「え?ど、どうしたのまなちゃん?」

 

「日頃疲れている、ういちゃんに肩揉みしてあげようって思って」

 

「心配してくれてありがとう、でも私は疲れてな……ってまなちゃん!?」

 

 楽屋に戻って来たういちゃんをそのまま椅子に無理矢理座らせる。

 こうでもしないと、ういちゃん。きっと話とかしてくれないもんね。結人君に任されたように私がういちゃんの日頃の疲れを癒してあげないと……。

 

「本当に急にどうしたの?まなちゃん?」

 

「さっきも言ったでしょ?ういちゃんのお疲れ気味な肩を揉んであげようと思ったの」

 

「……ありがとう、じゃあちょっとだけお願いできる?」

 

「うん、任せて……!」

 

 一度言ったらやめてくれないとういちゃんは諦めたのか、肩もみをお願いしていた。

 任された私が肩もみをすると、ういちゃんの凝り固まった肩に手が触れ始める。

 

「ういちゃん、凄い凝ってるよ?もしかして最近のお仕事辛かった?」

 

 肩を揉めば揉むほど、凄く凝っているのが手に伝わって来る。

 あんまり他の人の方を揉むなんてことはしたことはないけど、此処まで肩が凝っている人はあんまり見たことがないかも……。

 

「え?あーううん、違うんだまなちゃん……最近ちょっと色々あったんだ」

 

「色々?」

 

 詮索しようとすると、ういちゃんが黙り込んでしまう。

 手元に置いてあったペットボトルの水を手に取ってそれを少し飲んでた後にういちゃんは語ろうか迷っている様子だった。

 

「島、島にちょっとの間帰っていたんだ。まなちゃんは……知ってるよね?」

 

「え?う、うん」

 

「それでちょっと疲れちゃうことがあったんだ……。だから、心配しないで大丈夫だよまなちゃん」

 

 ういちゃんと出会ったときにこの話は聞いたことがあった。ういちゃんはそのときも島での話は凄く悲しそうに話をしていた。それは今も変わらない。やっぱり、結人君が言っていたように……ういちゃんには何か知られたくないものがあるのかな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「これにてプラネタリウムは終了です」

 

 という放送だけが響いていた。

 プラネタリウムを一人で見に来たというのにただ頭の中で昨日の夜のことを思い出しているという不思議な光景が俺の中では起きていた。気分転換で此処に来たはずなのに、何をしているんだろうな俺は……となりながらも俺は椅子から立ち上がろうとしたときだった。

 

 

 

 

「初華……?」

 

「結人?」

 

 椅子から立ち上がろうとしたとき、俺の隣には初華がいた。

 自分の隣に彼女がいたという事実に全く気が付かず、のんきに考え事をずっとしていた俺は自分の頭を今にも床に叩きつけたくなっていた。本当、どうしてこうも気づかないものなのか……。

 

「ねぇ、結人……この後空いてたりする?」

 

「俺は空いてるけど……」

 

「じゃあ、羽沢珈琲店一緒にいいかな?少し話したり、聞いてみたりしたいことがあるんだ」

 

「構わないぞ」

 

 俺も初華とは少しばかり話したいことがあったのは事実だ。

 流石にお前何か隠しているだろ?なんて直球で言えるわけがないから、そこはどうするか考えなくちゃいけねえな……。

 

 

 

 

「ねぇ、結人ってバイトとかしたりしてるの?」

 

「あーまあ、アウトドアショップとライブハウスで働いているな……」

 

「ライブハウス……この辺なら最近だとRINGとか?」

 

「良く知ってんな、ああRINGだよ」

 

 羽沢珈琲店を目指しながらも、俺達は歩きながら会話をしていた。

 帽子もかぶっていることもあって、初華は自分がsumimiの人間だとバレないようにしていたがはっきり言ってオーラがあんまり隠せていないのは言ってやるべきなのかもしれないが、周りは気づいてないところを見るに案外大丈夫なのかもしれない……。

 

「いいなーバイト……。私東京に来たときはすぐスカウトされたからバイト出来なかったんだ」

 

「おい、あんまり芸能界とか言うなよ……」

 

「あっ、ごめん……」

 

 自分が芸能人だと言う事を忘れて少しばかり俺がバイトをしていることを羨ましくそうに話していた初華だったが、自分の立場を忘れんなよと言わんばかりに俺が注意すると少しばかり申し訳なさそうにしている姿になっていた。

 

「……バイトってそんな羨ましいか?」

 

「羨ましいよ、自分で働いたお金で自分で好きなもの変えるんだよね?」

 

「いや、初華も自分で働いた仕事だろ……」

 

「あーそうだよ……ね?でも、本当にそうやってバイトをしながらも高校生活をするって楽しそうだよね」

 

 どうにも自分の芸能界としての仕事に関して何かを隠しているようにしか見えないその発言だった。俺はいきなりそれに踏み切るのは危険すぎるとなって特に聞くことはしていなかった。

 

「ほら、結人。着いたよ」

 

「……だな」

 

 いつ、どのタイミングでふんわりと聞き出そうか?となりながらも俺は初華と共に羽沢珈琲店に辿り着いた。お店の扉を開けると、つくしさんの「いらっしゃいませ!」という声が響いて来ていた。

 

 

 

 

「あっ、結人君こんにちは」

 

「お疲れ様です、つくしさん」

 

 接客にやって来ていたのはつくしさんだった。

 俺は立希が此処の手伝いを終えた後、何度か此処に来訪していたことがあった。そのこともあってか、此処の従業員には顔を覚えられている。

 

「今日も甘い物食べに来たの?」

 

「まあ、そんなところですかね」

 

「隣にいる子は?」

 

「あーまあ俺の友人ってところです」

 

 と言うと、つくしさんは一瞬何やら勘違いしたのか「え?あっ、えっとごめん」と言っている声が聞こえつつ、俺達は椅子に座ってメニュー表を広げていると初華が俺に話しかけてくる。多分、あの様子だと彼女だと間違えてたっぽいな……。

 

「さっきの人知ってる人?」

 

「二葉つくしさん……。此処で働いている人ってのはまあ見りゃ分かるだろうが、俺が此処の常連みたいなもんだから結構の人に顔知られてるんだ」

 

「そうなんだ」

 

 他の人の接客に戻っているつくしさんの後ろ姿を少しだけ見つめる。

 顔を知られたり、話しかけられたりすると人はあんまり店に来ることはなると言うけど俺はあんまりそういうのは別に大丈夫な人だから気にすることはしてない。ただ、無料で何かを出されたりしたら流石に申し訳ない気持ちになるがとなっていると、初華はメニュー表を軽く見た後にこう聞いてくる。

 

「ねぇ、結人のお父さんって冒険家って前に言ってたよね?」

 

「ああ、そういやそんなこと話したっけな……」

 

 初めて初華と会ったとき、そういえば俺の父さんが冒険家ということを話していたことがあった。軽く言及したぐらいだったからあんまり覚えていなかったが……。

 

「やっぱりお父さんと冒険したりしたこともあったの?」

 

「ああ、まあ……したこともあったぞ。国内だったり、国外だったり色々だけど。うーん……例えば俺が行ったジョージアって国のことなんだが」

 

「ジョージアってシュクメルリが有名なところ?」

 

「ああ……よく知ってんな」

 

 少し驚いていると、どうやら実際に食べたことがあって知っているようだった。

 シュクメルリは簡単に言ってしまえば、鶏肉をにんにくの効いたホワイトソースで煮込んだ料理のこと。シチューとよく似ていると言われるが、やはりたっぷりのにんにくが使われているのと、パンチが効いた味わいが特徴的だ。

 

「で、それで……ジョージアのえっと確かだな……ウシュグリ村って言う場所に行ったんだ。ヨーロッパで最も標高の高い常住村でな、標高が約2200m。静かなトレイルはヨーロッパ最後の秘境の名を持つに相応しい場所なんだ」

 

「最後の秘境……凄くロマンチックだね」

 

「まあ、実際行ってみて分かったんだがアクセスが大変でな、途中の道路とかは悪くて、苦労して辿り着くと周囲は壮大な山々に囲まれていたんだ。そんでその地域の文化はすげえ特徴的でな。古代からの塔とか家とかが並んでいたり、マジで特徴的な建物が魅力的なんだ。特に記憶に残っているのはスヴァネティの塔って言ってな、えっと……13世紀から15世紀の間に建てられたものだったか?それが本当に、この村を象徴とする建物でな、高い石造りの党で長年この村を待ってきたんだなと本当に感じさせてくれるんだ。草原でゆっくりと座り込んで、村の景色を眺めるなんて行為も本当に楽しくて仕方なかっ……ああ、悪い!!俺ばっか話していて!!」

 

 馬鹿みたいに饒舌で旅のことを話していると自分だけずっと話していることに気づいた俺は話していた内容を自分で止めていた。一旦、落ち着こうとしていたときにつぐみさんがコーヒーとチョコレートケーキを持って来てくれて、少し微笑んでいた。俺はそれに対して「ど、どうも……」と言いながらも少しばかり恥ずかしくなりながらも口の中にコーヒーを流し込んでいると初華の方にはコーヒーとサンドイッチが置かれていると、更に俺達の横を通っていたつくしさんも少しばかり微笑んでいる。そう言えば、つくしさんって海外旅行とか行くんだっけと自分の中で熱を逸らしつつ話題を変えようとする。

 

「ううん、気にしないでいいよ。旅の話しているときの結人、凄い楽しそうだったよ」

 

「そ、そうなのか?まあ、旅は嫌いじゃないからな……」

 

 話を終わらせる為に区切ったが、旅は嫌いじゃないと言った辺りで熱く語りそうになっていた為なんとかバケツに汲んだ水を思いっきり自分にぶっ掛けるようにして一旦冷静さを取り戻すことにしていた。

 

「ジョージアかぁ……全然知らない国だったけど聞いていてなんだか長閑な国なんだね」

 

「まああんまり知っているような国のことを話していても仕方ないかと思ってな、それでちょっとあんまり知られていないような国を選んだってところだ」

 

 ジョージアに住んでいる人達がこんなこと聞いたら憤慨しそうだが、悪く思わないでくれ……と申し訳なくなっていたが初華は俺の話に興味を示していたような顔をしていた。

 

「結人って島国とかにも行ったりしたの?」

 

「イギリスぐらいだな、行ったことはあるな。あんま行ったことないんだよ、島国」

 

 今度は感情をある程度抑え気味で話をする。

 海外行くときは大体父さんが居ないと行けなかったから俺はそもそもあんまり海外に行ったことがない。

 

「そうなんだ、あっ結人って島に憧れがあるって言ってたよね?島での生活の頃の話聞きたい……?」

 

「あーいや……話したくないなら別に話さなくてもいいだぞ?」

 

「ううん、私もちょっと自分の気持ちを整理しておきたいんだ」

 

「……初華がそう言うなら……構わないが」

 

 自分の気持ちの整理をしたいというのがイマイチ分からなかったが、俺は初華がどうしても話をしたいというのなら止める必要もないとなっていた。コーヒーを一杯飲んだ後に俺は初華の話を聞くという姿勢に入る。

 

「島に住んでいたことは前に言ったよね?島で漁師をやっている養父のことを凄く慕っていたんだ。いつも養父は私のことを心配してくれて気遣ってくれた。そんな養父のことが私は大好きだったんだ。でも、心の中では寂しかったんだ……」

 

 テーブルの上に置かれてあった初華は軽くの手を握り締めていた。

 その声の感覚的に俺は何処か悲痛さのようなものがあった気がしてならなかった。それは、恐らく満たされる願いがあったというものがあってならなかったんだ。

 

「ただ一人、夜の島で体育座りをしながらもいつも広大に無限に続く空を見上げてたんだ。……夏なら、夏の大三角形。こと座、はくちょう座、わし座と言った感じで口にしながらも言葉に発していたんだ。そんなとき夜空に輝く星空が私のことを満たしてくれたんだ……」

 

 無限に広がり続く夜空を離島という浪漫溢れる構図なはずなのに、重苦しいものでしかなかった。浅瀬にいるはずなのに今にも呼吸が苦しくて仕方なかったんだ。初華は養父に愛されていたという言葉は間違いない、そして星々に癒されていたというのも間違いじゃない。なのに、なんだこの強烈までに感じてしまう違和感は……。

 

 

 

 

 なんで俺は三角初華に違和感がある……。

 本当のことを言っているはずなのに何故、俺は疑問がある……。あのときから、ずっとそうだ。初華の歌声を鼓膜に通したときからずっと……。

 

 

 

 

 この三角初華という人間に対して疑念しかない。

 そして、それが負の感情だということを知っているのに何かもっと別の何かがあると勘づき始めている。

 

 

 

 

『島での生活に憧れかぁ……。ねぇ、結人は無人島に一つ持っていくとしたら何持っていく?』

 

 ああ、そうか……。

 違う、俺が初華に対して謎があるように感じ始めていたのはあのときからだ。あの日の流れ星の日をきっかけとして俺は徐々に見方が変わり始めていた。だからこそ、俺はこんなことを初華に聞いてしまっていたんだろう。

 

「初華は……多次元宇宙、マルチバースって信じてるか?」

 

 それは俺がかつて愛音とハンバーガーを食べつつ駄弁っていたときに話していた内容のことだ。

 どうしても俺は初華の内面が気になってしまって仕方なく、俺はなんて答えるのか気になってしまっていたのだ。こういうことは本来やらない方がいい。でも、俺は止めることが出来なかった。気になって仕方なかったからだ。

 

「マルチバース、凄く素敵だよね。映画とかではよく別次元の自分や知っている人達がいるって言われているけど、もし本当にそういうものがあるなら私は……」

 

 

 

 

 

 

 

「大事な人と別次元の宇宙と一緒にいたいなぁ……」

 

 その瞬間、疑念という糸は鋏で切られた。

 今まで自分の中にあった彼女に対する違和感が突如、切除された感覚があった。それ何故なのかは俺にも知ることが出来なかったが、これはあくまで俺の推測でしかないが自分が予想していた答えより遥か下の答えだったということに安心していた自分がいたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、三角初華は()()ではないと察してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結人、大丈夫?」

 

「え?……大丈夫だぞ」

 

 俺は自分がコーヒーカップを手に握っていたことすら忘れていた。

 初華に初めて話しかけられて自分が手を差し伸ばしていることに気づいたんだ。……ともあれ、初華に対して怪しいところがあった訳じゃないと落ち着けただけでも良かったとするべきかもしれなりながらも、俺はコーヒーを一杯再び飲み始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、気持ちの整理に付き合って貰って」

 

「ああ、俺は全然構わないぞ?にしても、どうしたんだ?急に気持ちの整理って……」

 

 羽沢珈琲店で会計を済ませて、つぐみさんとつくしさんに挨拶を済ませた俺は店を出るとそんな会話をしていた。最後までどうして初華が気持ちの整理をしたかったのか気になっていると、初華が少し複雑そうにしながらも空を見上げていた。

 

「…………ちょっと前に養父の命日だったんだ」

 

「……悪い、聞いちゃダメだったよな」

 

「ううん、気にしないで貰って大丈夫……。養父が帰って来なくったあの日のことは今でも私は覚えてる。凄く大切な一日だった……から」

 

「……初華」

 

 大切な家族を亡くすという経験は俺もしたことはある。

 初華の気持ちは分かると言いたかったが、初華は初華なりの苦しみがあるだろうし俺の言葉が何処まで響くか知らないけどそれでも怯むことなく俺は伝えることにした。

 

「墓参りには行ったのか?」

 

「……うん」

 

「なら、喜んでくれてるじゃねえのか?初華の元気の姿が見れて」

 

「……そうだといいよね」

 

 空を見上げるのをやめて初華は歩道の方を眺めていると、「あっ」と言い始めている声が聞こえていた。それと同時に聞き覚えのある名前が飛び出して来ていた。 

 

 

 

 

「あれ?睦ちゃん……?」

 

「睦……?」

 

 羽沢珈琲店をすぐ出て、俺達が歩き始めようとしたときだった。

 薄緑色の長髪の少女……睦が歩いていたのだ。それ自体別に普通のことなのだが、俺と初華が睦に気づいて名前を呼ぶと逃げるようにして去っていくのだった。

 

「睦ちゃん、どうしたんだろ?」

 

「……悪い、初華。ちょっと睦のこと追いかけて来ていいか?」

 

「え?う、うん」

 

 了承を得た後に、俺は睦のことを追いかける。

 初華のことで少しばかりホッと出来ていた俺は休息が自分を欲していたが、逃げていく睦が気になって俺は彼女のことを追いかけていた。

 

 

 

 

「睦……!!」

 

 ひたすら睦のことを追いかけていた。

 辿り着いた先は路地で陸は膝に手を乗せてただ息を荒くしていたが、俺に声を掛けられてこう聞いてくる。

 

 

「明日……結人……空いて……る?」

 

「え?ああ、明日はRINGでバイトなんだ。悪い」

 

「行く……バイト先。カフェ?」

 

「え?ああ……」

 

 呼吸を整えながらも、睦は少ない単語で話を進めていた。

 

「じゃあ……待ってるからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん」

 

 

 

 

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