【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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その人格は色を知る

 プリクラをしっかりと眺めた後にモーティスは何処に仕舞おうかとあたふたしていると、こんな会話が聞こえてくる。

 

「ねぇねぇ、プリクラから出て来た人達……モーティス、モーティスって名前呼んでたけどなんかAve Mujicaのモーティスみたい名前じゃない?」

 

「いやいや、モーティスってモロに名前出してたじゃん!」

 

 女子高校生っぽい声の二人の会話……。

 しかし、その単なる日常的な会話に何処か引っ掛かる自分がいた。それもそのはずだ、さっきあの二人が言及していたモーティスという名前に凄く覚えがあったからだ。それを確かめる為に、俺はモーティスの方を振り返ると、汗がダラダラに垂れている彼女の姿がある。

 

「ゆ、結人君……ちょっと来て!!」

 

 モーティスに手を繋がれてゲームセンターを出ることになった。

 

 

 

 

「えっとね……まず色々と説明しておきたいことがあるんだけどね」

 

 ゲームセンターをすぐ出て真隣にあったハンバーガーショップにやって来ていたモーティス。モーティスが頼んだのはクソデカバーガー。俺がそう呼んでいるだけで実際にはTOKYOタワーバーガーという名前のハンバーガー。似たようなハンバーガーを違う系列の店で聞いたことはあるが、それとは全く別。こっちのTOKYOタワーバーガーは地獄のようにパティが乗っかっている。これに関しては後で睦に怒られても俺は知らんとなっていた。

 

「世界には似た人が三人いるって言うのは結人君知ってる?」

 

「……それで誤魔化せる奴少ないと思うぞ」

 

「え?そ、そうなの?じゃあ、えっと……ドッペルゲンガーって知ってる?」

 

「知ってるぞ、因みにその理論で言うとお前後二人に会ったら死ぬことになるぞ」

 

 黙り込んでしまうモーティス。

 意地悪と抗議の視線を送って来ていることを無視していると、思考に思考を重ねているようだった。

 

「あっ!結人君知ってる?この世にはソウルメイトと呼ばれているものがあってね、この世には魂が繋がっている相手がいて、その人とは外見や雰囲気が似てるって話があるんだよ!」

 

「……それなら知ってる、所謂魂の片割れって奴だろ?ただ見た目が似てるというよりは、感覚や考え方も似ていて、運命的な関係にあるって奴だろ?でも、それって迷信だろ?」

 

「むー!!結人君は夢がないなぁ……」

 

 「つまんない」と意思表示を明らかにしている。

 まあこういうのは夢がある方がより楽しいけど、実際俺の親父がそういう現場に行って大したことなかったような話を知ってるからな。いや、親父の場合誇張で話を膨らませてあたかも居たかのように話すから普通に萎えたってのもあるけど。

 

「……バレてるよね」

 

「まあ……おおよそはな。Ave……あのバンドの緑髪の女性、そしてその名前で疑念がなかったわけじゃねえけど、お前の騒ぎっぷりならもう納得しかねえよ」

 

 あの後、睦の多重人格のことで頭がいっぱいでAve Mujicaについて調べてる時間がなかった。まさか、こんな形で判明することになるとはな、驚かされることになったな……。

 

「この話は内緒にしておいた方がいいだろ?」

 

「うん、私のことも内緒にしておいてね……」

 

「ああ……」

 

 今、モーティスの話を他の奴にしたりすれば色々と混乱を招くことになるのは確かだ。説明をするにしてもどう説明すればいいかってなるしな。楽奈はこいつのことを見抜いてそうだけどあいつはあんまり人に何かを喋るタイプじゃないだろうしな……。

 

「そんで……モーティス。その頼んだTOKYOタワーハンバーガーちゃんと食えるんだろうな?」

 

「あっ、う、うん……ちゃんと食べられるよ?」

 

 かなり反応が悪いモーティス……。

 こりゃあ、どう考えても食べられる気配が無いな、自分でゴネて買ったんだから流石に食べて欲しいが……と呆れながらも俺は自分が頼んでいたパインバーガーを食べていると違う席の方から声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

「あれ?このハンバーガー……ピクルス入ってる……」

 

 なんとも悲壮感漂う声がして来ていた……。

 ショックを受けているのがこっちまでに届いてる。多分、苦手な食べ物とかそういう理由で抜いて欲しかったんだろうけど忘れられていたんだろうな……とお疲れ様ですとなっていたが俺は何処かその人に見覚えがあった気がしていた。

 

 薄めの水色の髪に記憶の中に何処かであったような気がして俺はモーティスに確認をする。

 

「おい、あの人知ってるか?」

 

「え?もしかしてモルフォニカの倉田ましろ先輩?私、あの人のせいで色々と大変な「おまっ!?馬鹿やめろ!!」」

 

 モーティスの声を遮ることで注目を浴びることはなかった。俺はようやくあの人が誰なのかを理解する。やはりあの人はモルフォニカの倉田ましろさんだったか……。まさかこんな場所で会うことになるなんて……。というかそうか、モーティスにとってはましろさんって先輩に当た……。

 

「後輩に……嫌われちゃったかな……」

 

「あー違うんです!違うんです!!このなんでもかんでも口から喋り始める馬鹿がすみません!!!「結人君、痛い……」」

 

 モーティスをましろさんの目の前に立たせて頭を無理矢理に下げさせる。抗議の声は勿論、無視する。口から生まれたアヒルの子が余計なことを大声で言い放ったことによってましろさんのメンタルにダメージが入ったようだった。謝罪する為に、俺はましろさんの頭を下げに来ていた。

 

「こいつも悪気があって嫌いだとか……あー!!やっべ!!違うんです!!すいません、俺も悪かったです!!」

 

「結人君の方が余計なこと言ってる」

 

「……」

 

 しかし、更に俺も追い込んでしまうことになってしまうことになって泣いている。手に取っていたポテトを盆の中に落としてしまうほど衝撃があったようだ。そして、突っ込まれた俺は無言で何も言えなくなってしまい、無言でレジの方に向かってましろさんが欲していたピクルス抜きのハンバーガーを購入することにした。

 

 

 

 

「あの……もし宜しければこれ食べますか……?ちゃんとピクルス抜きみたいですけど……」

 

 貯めていた涙をボロボロと流しながらも包み紙に入っているハンバーガーを受け取って、そのまま紙を開けて食べて始めている。その表情はなんというか本当に幸せそうに食べている。なんというか、この人本当に俺より年上なんだろうか……と不安に駆られていた。

 

「あ、あの……さっきはすみませんでした。後、こっちの馬鹿野郎もすみませんでした」

「なんか結人君、私の扱い雑になってきてない……?」

 

 そうなったのはお前のせいだろうが、となりつつも俺は俺はそのままましろさんに話を続ける。

 

「モルフォニカのことお噂はかねがね聞いております。月ノ森の生徒のみで組まれたバンドで音楽的な特徴としては、バンド全体の音色を幻想的なものをしていて上品かつ疾走感のあるメロディーが多く、どれも素晴らしいと思います」

 

「え?そ、そうかなぁ……」

 

「いえ、本当に謙遜することは必要ないと思います。作詞、ご自身でなされているんですよね?本当に凄いと思います。自分より一つ上の先輩でありながら、そういう物語を作れるというのは本当に尊敬します」

 

「そ、そんなに褒められると……えへへ、なんだか恥ずかしいかも……」

 

 さっきまで一つ年上の人間として不安になるとかいう話を滅茶苦茶棚に上げる俺。隣にいるモーティスが凄く目を細めて俺のことを見つめているが無視している。というか、騒ぎ過ぎたな……。此処らで切り上げるか……。

 

「それでは失礼させていただきます、ましろさん……。食事中、不快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。……ほら行くぞ」

 

「…………はーい」

 

 モーティスを連れて俺は自分達の席に戻ることにしていた。

 注目を集めることになったが、あまり客も居ないから多少我慢すればどうにかなるだろう。

 

 

 

 

「それでなんでさっきなんてあんなこと言ったんだよ」

 

「睦ちゃんがCRYCHIC始めるようになった理由、あの人が原因なんだもん」

 

「どういう意味だそりゃ?睦がCRYCHICやりたいって言い出したのか?」

 

「違う、睦ちゃんじゃない。……()()()がモルフォニカに影響を受けてCRYCHICを始めたいって言ったの。影響受けてすぐバンドやり始めるとか馬鹿みたいだよね」

 

 多分だがこれ以上聞き出してもモーティスは答えようとしないどころか、苛立ち始めるのをなんとか察していた。いや……確か燈が言っていたな。CRYCHICを作ったのは豊川祥子だと。確か中学までは月ノ森だったとかそんな話を耳に入れたことがあったような気がしていた。なら、モルフォニカの演奏を一度でも耳にしたことがあってもおかしくはないはず……。頭の中で呑み込んでいると、倉田ましろさんが俺達のテーブルの前に立っていた。

 

「えっと……その……ハンバーガー、ありがとう……」

 

「ああ、全然構わないで貰っていいですよ。寧ろ、迷惑かけたのはこちらなんで……。本当に…………こいつも悪気があって言ったんじゃないので。モルフォニカ、これからも頑張ってください」

 

「あ、ありがとう……。それじゃあ……」

 

「はい、それでは……」

 

 首を傾けて反省していないあいつが視界に入った為、俺は苦笑をしながらも反省しているということを伝えていると、ましろさんも納得してくれたようで頷いた後に自分のお盆を持って退散して行った……。

 

「ふん、やっぱり結人君って口先が上手い詐欺「ちゃんと食べろよ。そのTOKYOタワーバーガー」」

 

 言いたい放題される前に言葉を区切らせると、モーティスは口を風船のように膨らませている。俺はそれを無視しながらも、自分のハンバーガーを食べていた。それにしても……本当に此処でモルフォニカの人と会うことになるなんてな……。

 

 

 

 

 

 ハンバーガーショップから出て来る。

 案の定、モーティスが食べ終わるのを待つことになり、その上ポテトを食べてと言われた俺は残ったポテトを処理させられることになっていた。お互い、腹は充分に膨れている状態にありこれからどうするかとなっていると、モーティスが不服そうな顔をしている。

 

「さっきのことなら、俺も悪かったのを認めるけどお前も「なんで名前呼んでくれないの?」」

 

「さっきのお店で結人君、一度しか私の名前呼んでくれなかった……」

 

 どうやら不満そうにしているのは先ほどのことではなく、俺が全く名前を呼んでくれなかったことのようだ。周りの様子を見てから俺は外れの方へとモーティスを引っ張って行って、そこで話すことにする。

 

「……悪い、でもゲーセンでのこともあっただろ?だから迂闊に名前を呼ぶのもやめた方がいいかと思ったんだよ」

 

「じゃあ、あだ名で呼んで。忠犬と駄々っ子娘は駄目、犬っぽいのダメ!」

 

 唐突にあだ名で呼んでほしいと言い始める。

 名前で呼ぶのが難しいならあだ名で呼んでほしいというのは全然まあ分かるんだが、いきなり突拍子も無さすぎるのとそういえば俺は人のことをあんまりあだ名で呼んだことがなかったのを今になって思い出していた。

 

「あだ名ねぇ……」

 

 呼べと言われた以上、呼ばなくちゃいけないんだろうが……。こういうのはどうも恥ずかしさの方が勝ってしまう。

 

「もう……モーティスって呼ぶから。それでいいか?」

 

「むぅ、逃げた。結人君にモーちゃんとかって呼ばれたかったのに」

 

「尚更、はずいわ……。普通に名前で呼ぶって言ってるんだからそれでいいだろ?お前もムジカのモーティスですか?って聞かれたらなんかいい誤魔化し方法、身につけておけてよ」

 

「生き写しって答えるから安心して!」

 

「迷信じゃねえか……」

 

 自信満々で答えたのは明らかな迷信だった……。

 まあ、とりあえず暫くは俺が誤魔化してやればいいだけなんだしそれでいいだろう……。

 

「悪かったな、いらない配慮して」

 

「……いいよ、ほら行こう結人君」

 

 こいつにとって自分の名前というものは自分に与えられたものだったんだ。

 それを呼ばれなくなるという行為は不安で仕方なくなるのは当たり前でしかなかったんだ。マジでいらない配慮だったな……。

 

「だな、行くかモーティ……」

 

「どうしたの?結人君?」

 

「あっ、顔出すな!!?」

 

 俺は今危機的状況にかなりあり、固まっているとモーティスが俺の後ろから顔を出したのと同時に本人も固まっていた。別に不良に絡まされそうになっているとかぐらいなら、俺が適当に処理しておけばなんとかなる。それ以上の問題が発生してしまっていた……。

 

 

 

 

「なんで睦ちゃんと居る訳?」

 

 そう、俺達が出会ってしまったのはそよ……。

 もう一人、立希もいるけど立希は俺と睦と話したことがあるのは知っているから立希の方はどうとでもなるが、そよは絶対根掘り葉掘り聞いて来るに違いない。だとしたら、俺達が取るべき行動は……。

 

「逃げんぞ!!」

 

「え!?う、うん……!!」

 

 後で絶対尋問されるだろうけど、今この場に色々喋り出すモーティスと話をさせるよりはマシだ。運が良ければ立希が俺のことをフォローしてくれることを祈るしかない。というか、あいつまた余計なことしてるって顔してたな……。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 まさか……ほぼ連続で危機的状況に晒されることになるとは……いや、今日で三度目だ。

 もうなんというか迷信とは言え、呪われていることすら疑いたくなるというのが本当のところだ……。

 

「モーティス、大丈夫か?」

 

「う、うん……私は大丈夫……」

 

 あの場所から離れた距離まで歩きだしてしまった。

 多分だが、そよは俺達を追いかけることはしていなかったはず。だとすれば、少し走り過ぎたかもしれない……と荒い呼吸を整えていると俺達に声を掛けている怪しげな女性がいた。

 

「そちらのお二方……私はタロット占いというものをしている者ですが、もしお時間宜しければいかがですか?」

 

「タロット占い?」

 

「文字通り、タロットを用いた占いの一種のことだ」

 

「そういうのダメ!行こう、結人君!」

 

 俺の服を掴んで、そのまま逃げようとしている。

 どうにも俺の話を飛躍し過ぎているモーティス……。

 

「まあ、そう言うなモーティス……。そよ達がまだ追いかけてきている可能性は全然あるだろうし、どうせなら時間を稼げそうな場所で居た方が安全じゃないのか?」

 

「結人君がそう言うならそれでもいいけど……」

 

「どうやら決まったようですね……」

 

「ああ、悪いが頼む」

 

 俺達が了承したことを確認してから、占い師は俺達のことを自分の店の中へと招待してくれていた。

 

「なんか本当に占い師って感じのお店だね」

 

 確かに中に入ってすぐに感じたのはそれだった。

 紫がかかった布地が天井から垂れ、部屋の輪郭がぼやけさせている。ランプの灯りは穏やかに揺れ、影と光が壁を静かに踊る。まるで現実と夢の境目に立たされているかのような気分になってくる。中央には大きな丸いテーブルが一つ。漆黒の布がかけられていて、上には水晶球とタロットカードが伏せられている。そして、その奥にはゆったりと椅子に腰を掛けている先ほど、俺達に話しかけていた人物がいた。顔の半分をヴェールで隠した占い師が……。

 

「改めてようこそおいでくださいました、占いの館……フォルトゥナへ」

 

「フォルトゥナ……まるでローマ神話に伝わる運命の女神みたいですね」

 

「ええ、私のこの館の名前はそのフォルトゥナから頂かせてもらいました」

 

「フォルトゥナ?ローマ神話……?」

 

 フォルトゥナはローマ神話における運命や幸福の女神……。名前の由来となっているラテン語「fortuna」は、英語では「fortune」。要は運、運命、幸運という意味になっている。ただ、彼女は実際にはローマ独自の女神ではなく、ローマの東にある場所で信仰されていた予言の女神だ。軽くだけ、モーティスにその女神の話をすることにした。

 

「それでタロット占いの方は大アルカナなんですか?小アルカナなんですか?」

 

「私の方では大アルカナをさせていただおります。どうやら、そちらの方はタロット占いについての知識はあるようですね」

 

「ああ、まあ親父がイタリアでそういうのをやってもらったのを知ってるからな……」

 

「なるほど、そういうことでしたか。ですが、そちら様(モーティス)の為にも改めて簡単にルールを説明させていただきます。その前に一つ、貴方達の未来を心の中で念じて欲しいのです。そうですね、例えばこれからの運命を知りたいとか、そういったものでも構いません」

 

「じゃあ、それで!!」

 

 大きな声で返事をしていたのはモーティスだった。

 その話を聞いて、俺もそのように心の中で思い浮かべることにし始めると、占い師はカードをシャッフルし始めていた。そして、机の上にはシャッフルされているタロットカードが置かれている。

 

「カードを引けばいいんだよね」

 

「いえ、少々お待ちください。貴方達が互いに知りたいのは未来とお見受けしました。そして、これより先は今貴方達の心の奥にあるものから、未来を照らし出していきたいと思います。さあ、一枚お選びください」

 

「要は引けってことじゃん……。もう形から入るんだから……じゃあこれ!!」

 

 俺が無言のまま、カードを手に取っている間にモーティスは色々喋りながらもカードを手に取っていた。捲って欲しいという合図の下、俺とモーティスがカードを捲ると、俺のカードは……。

 

「吊るされた男、か……」

 

 それも逆位置の……。

 

「貴方が引いたのは吊るされた男の逆位置のようですね。停滞や無駄な苦しみ、行動を起こせない状態を示唆されております。貴方の未来に何か動けないほどの災いが待ち侘びているのかもしれません」

 

 ……果たしてこのカードがどういう意味を示しているのか。

 俺に待ち受けているこれからの未来で何かが悪いことが起き始めようとしているのか、そんな予感すらさせているが、どうにも占いと言うものを信じることが出来ないでいる自分がいると、隣で怒っているモーティスがいた。

 

「ねぇねぇ、占い師さん!このカード白紙なんだけど!」

 

「!!?そうですか……そのカードを引いたのですね」

 

「え?なになに、どういうことなの?」

 

「その白紙のカードは私がこの館に来た人たちを試す為に混ぜているカードです。そして、その白紙のカードは本来であれば魔封じの意味が込められていますが、私はこう呼んでいる」

 

 

 

 

「白紙とは常に何色にも染まることが出来る、と……」

 

 モーティスは静かになる。

 表にされていたただ真っ白なカード。そして、占い師の彼女から言われたその言葉がまるで自分の存在を拒絶されたかのようなに虚無の余白を見つめている。

 

「何色にも染まると、言っていましたよね?それはつまり、始まりの余白ともなるんじゃないんですか?」

 

「その通りです、そのカードは選んだ当事者の未来を始まるとも宣告しているカード。勿論、始めるかは貴方次第です。名前のない停滞を選ぶか、それとも名前のない未来を選び続けるか。それすらも貴方自身が決めることに、未来を問われることになるのです」

 

 多重人格の一つの人格であるモーティスにとって占い師の言葉はどう響いているのか、分からなかった。ただ先ほどまで占いを信じていないという感じだった彼女の様子はなかった。俺に言われてしまったことも関係していて尚更その白紙を鏡のようにして覗いていたのかもしれない……。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、お待ち……!!」

 

「ありがとうございます……」

 

 既に景色は夜となっていた。

 俺は屋台の店主から器を渡されていた。中には大きなかき揚げに蕎麦がたっぷりと入っている。こういう屋台のお店というもの今じゃ絶滅危惧種並に無くなって来ていたが、こうしてまだ食べられるということには感謝しかない。

 

「はい、そっちのお客さん。お待ち!」

 

 隣にはモーティスが立ちながらも器を受け取っていた後も無言で自分の顔が映し出されている蕎麦の中を見つめていた。

 

「結人君、この嬢ちゃん大丈夫かいな?」

 

 俺が此処に来るのを知っている店主の親父さんは隣にいるモーティスのことを心配してくれていた。あの占いの館を出た後、モーティスはずっと喋ろうとしなかったが「結人君の好きなところで夕ご飯食べたい」と言われて俺は此処に連れて来た。少しばかり電車を乗り継いで辿り着いたのがこの場所だった。

 

「結人君……あの占い師さんが言ってたことどう思う?」

 

「俺は占いとか迷信とかあんま信じてないけど……あの占い師の言っている言葉はあながち間違いじゃないって思う」

 

「どうして?」

 

 暫く黙り込んでいたモーティスは割り箸を割って少しばかり蕎麦を食べてから喋り始めていた。

 

「朝も言ったことと関連してるんだが、お前が消えずにこれからもモーティスとして生きて、睦は睦として生きるなら、これからの人生は何も決まっちゃいないはずだろ。お前らの互いにはやるべきことがあるとはいえ、それ以外は何も決まっちゃいないからな。だから、あの占い師の占いはあながち間違いじゃねえってことだよ」

 

「あのとき消えなくていいって言ってくれたよね?どうして?どうして消えなくていいって言ってくれたの?」

 

「そう思ったから……そう言っただけだって言ったら納得してくれるか?ミモザと仲良さそうに遊んでくれているとき、一緒にいて思ったんだよ。モーティスは別に誰かに危害を加えたりするような奴じゃないし、子供っぽいし何でも言葉にするけどそれでも分かるんだよ。お前は悪い奴じゃないって」

 

 今は口にはしなかったけど、本当に駄々っ子娘みたいな奴と認識していた。

 それでも、俺はこいつが悪い奴じゃないと断言できるのは本当に楽しそうに無邪気に笑ってくれている姿を俺は見続けていたからだ。

 

「あーそれとモーティス……。お前ちゃんと睦と話し合……」

 

 自分の顔が俺の視界に入らないように向かせていることに気づいた俺はハンカチを差し出すと、モーティスはそれに対して首を横に振ってこう答えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううん……いらない……だって」

 

 

 

 

 

 

 

「涙ぐらい自分で拭けるもん……」

 

 

 

 

 

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