【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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星乃結人は苦悩する

「燈、その悪い夢ってのはなんだったんだ?話したくなかったら、話さなくても構わないからな」

 

 結人君が私に気を遣ってくれている。

 

「凄く暗い世界の中で結人君のことを見つけたの……。それでね、ゆいくんのことを追いかけようとしてもどんどん遠ざかって行って最後には雲に隠れた星みたいに消えちゃってたんだ……」

 

 夢を時間が経て経つほど忘れるなんてこともあるけど、あの夢だけは忘れることはできなかった。自分の中で結人君が目の前から居なくなってしまうというのは耐え難い悲しみと苦しみを伴うから。勿論、そうなったら私は結人君を助ける。この手で掴み切れた手だからこそ私は絶対に助けたい……。

 

「お前がそういう夢のせいで不安になるのも分かる。けど……」

 

 

 

 

「燈、俺はもうお前の傍から離れたりしねえよ。俺は燈の歌が好きだし、MyGO!!!!!のことが大好きだ。確証はまあ俺があんだけいっつもアホみてえにライブの何処が良かったとかほざいてたら嫌でも分かるよな」

 

「ゆいくんが私達のこと好きなのは知ってる……よ?」

 

「ああ、好きだよ……」

 

 

 

 

 

「お前らのこと」

 

 好きという二文字を呟かれたとき、心が凄く晴れやかな気分になっていた気がしていた。

 自分の中で結人君に抱えている感情が込み上げて来て、どう表せばいいのか困っていたけど学校の屋上で結人君とこうやってスマホを使って通話している自分がいるということと、お互いにちゃんと喋れているということに本当に結人君とまた仲良くなれて良かった……。本当に心からそう思いながらも、私は込み上げて来る感情を一旦抑えながらも彼にお礼をしながらも、少しばかり罪悪を感じていた……。

 

 

 それは結人君に喋れないことがあるということ……。

 

『燈は結人のこと……好き?』

 

 睦ちゃんにあることを質問をされて凄く不思議な気分になっていたけど、それを口止めされてしまっているから結人君に質問ができない。そのもどかしさを感じながらも、電話を切る……。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「愛音か……悪いな朝から……」

 

 焦燥感に駆られながらも、俺は自分の髪を掻きむしっていた。

 それは燈の力になれない自分への苛立ちもあるが、もう一つは……。

 

「ううん、ゆいくん大丈夫だよ?」

 

「お前に一応頼んでおきたいことがあって電話してな、燈のことだ……」

 

 燈との電話を終えた後、俺はスマホから愛音に通話していた。

 さっきの燈が見た悪夢というものが気になって仕方ないけど、今はどう反応すればいいのか考えればいいのかとなっていたけど、ああいう夢は正夢になることが多い。出来る限り、そうならないように気をつけたいとなりながらも俺は愛音にあることを頼む。

 

「俺が燈のことを見れない間、お前が燈のことを注意深く見てやってくれないか?Ave Mujica……いや、豊川祥子の件は学校中でもう広がっているだろうから燈が知るのは時間の問題だろうし、テレビ報道とかネットニュースでも話題になっているみたいだからな。だからその……もしものときはお前から全部話してくれて構わない」

 

「いいの?ゆいくん……」

 

 愛音は燈に祥子達のことを話すべきなのかを躊躇っているようだ。

 無理もない、立希に口止めされていることもあるだろうがそれ以上に愛音は祥子と燈が同じバンドだった人間で友人だったということも知っている。だからこそ、愛音的には話すべきじゃないとなっているんだろう。無理もないことだ。

 

「ああ、最終手段だけどな……。後、燈が悪い夢を見たとか俺に電話して来ていたから、もしあいつが話したそうにしていたら相談に乗ってやってくれ」

 

「悪い夢?」

 

「俺が遠ざかるような夢だったらしい。それ以上燈の奴も言及していなかったから、本当にそういう夢だったんだろうな……」

 

 愛音は黙り込んでしまう。

 夢の内容があまりにも現実的なこと過ぎたから、反応に困っているのかとなっていると……。

 

「分かった、ともりんのことは任せて……!それでもしみんなに祥子ちゃんがオブリビオニスなんだってー!ってバレたりしたらごめん!!」

 

「ああ、それはもうどうせなるだろうから仕方ね……電話?」

「どうしたのゆいくん?」

 

 通話をしていると、そよからの電話が掛かって来る。

 ……もしかして睦と何かあったのかとなって、一旦電話を切ってもう一度掛け直そうとしてから、俺は愛音に通話を戻す。

 

「悪い、ちょっとそよからの電話だったみたいだ」

 

「大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫だ。それで……クレープだったっけか?ちゃんと約束は守ってやるからな」

 

「楽奈ちゃんの抹茶と蕎麦も忘れちゃダメだからね?」

 

「分かってるって…………頼んだからな愛音、燈のこと」

 

「うん、任せて」

 

 愛音との通話を切る……。

 俺はすぐさま、そよとの通話を繋ごうとするが無常にも学校のチャイムの音が鳴り響いてしまう。思わず、溜め息を吐きたくなるこの現状に俺は青空を眺めながらも、天を掴むようにしてこう嘆いていしまう。

 

 

 

「結局、俺はいつまで隠し事してればいいんだろうな……」

 

 睦の多重人格に、モーティス……。

 豊川の家庭事情、これら全てをいつまで隠し通すことが出来るだろうか……。複雑な感情、もどかしさが俺の首元を締め付けているよう感覚に陥る。

 

『自分だけのキラキラドキドキだけじゃなくて……立希ちゃん達のキラキラドキドキも大事にしてあげてね』

『うん、ぜっーたい大事にしてね!頑張ってね結人君!応援してるよ!!』

 

 締め付けられているような……。いや、違う。

 俺の首元には自分の手で絞めつけられている。頭の中には戸山先輩に教えらえた大事なことが浮かび上がる。ああ、そうだな。今の俺は……。

 

 

 

 

「戸山先輩に言われたこと……全然守れてねえじゃねえか……」

 

 自分への憎悪に満ち溢れながらも、俺は立ち上がり屋上へと降りて行く……。

 しかし、扉を閉める音は何処か物凄く力強い音が校舎の中では響くことになる……。

 

 

 

 

 

 それはきっと俺自身への怒りそのもの……。

 

 

 

 

 

 教室に戻れば、教室中からの注目を浴びる。

 何故なら、俺がHRに遅刻しているからだ。急いだとはいえ、遅刻は遅刻だから俺が謝罪をすると、先生が「星乃が遅刻とは珍しいな」と興味深そうにしていた。そして、それはクラスの奴からも……。

 

 

 

「結人、遅かったじゃないか?また女の子と電話でもしてたのか?」

 

「別にしてねえって……ちょっと便所行ってただけだ」

 

 誰のせいにするつもりはない。

 どっかの成績優秀な馬鹿ピンク(愛音)が時々休み時間や帰りのHRが終わった後に電話してくることや連絡してくることが圧倒的に多いせいで俺はよく女子と連絡していると揶揄われることが多い。実際、女子と絡んでるし名前がどうやっても女子だから女子と絡んでいると冷やかされても文句は言えないんだが……。

 

「なんだ?腹痛いのか?漏らすのはだけは勘弁してくれよ」

 

 別の奴が俺に話しかけて来る。

 俺はそれを軽くあしらいながらも椅子に座っていた。

 

「その辺にしておけよ、星乃もお前らも……。全く、最近の子は恋愛に現を抜かし過ぎたな」

 

 心の中で「悪かったですね」となりながらも、俺は窓際を眺めていた。

 俺は……何も全員と喋らなくなった訳じゃない。優しさを振りまくのをやめた訳じゃない。ただ趣向を変えただけというのがいいだろうか。本音を隠すのをやめたし、冷たい笑みもやめた。ただ、俺は俺なりのやり方で学園生活を満喫している。まあ、そのせいで若干友人は減ったがそれはそれでいいんだ、俺の自業自得だからな……。今度は教室の中から雲が幾つあるのかとかの馬鹿なことを考えていながらも、一限目が開始される……。

 

 

 

 

 

「どういうことなのか、教えて欲しいんだけど?」

 

「ちょっと待て……なんのことだ?」

 

 俺は現在、再び屋上で電話をしていた。

 相手は勿論、さっき電話出来なかったそよだ……。休み時間なんてのは大体10分ぐらいだから電話するなら昼休みの方がいいとなっていたが、そよなら早めに掛け直した方がいいだろうとなって電話をしていた。

 

「睦ちゃん、明らかに様子がおかしかった。なにをしたの?」

 

 自分で自分に問いかける。

 俺は睦なにをした?なにをしたんだ……?自分に何度もそう問いかけながらも、俺はスカイツリーで愛音に説明していたものを思い出す。

 

 

 

 

『言葉は時には呪いになることもある』

 

 どうして今これを思い出したのかは不明だった。

 ただ、俺が今まで睦を導くために放ち続けていたあるものが呪いとなっている可能性は否定することが出来なかった。だから俺は……。

 

 

 

 

「悪かった、そよ……」

 

 電話越しにそよに謝罪をしていた。

 果たしてどれが駄目だったのかはまでは模索することは出来なかった。それでも、今はそよに謝るということが重要だとなっていて俺は謝るという選択肢を選んだ。すると、そよの方から心底呆れるようにして深く息を吐いていた。

 

「放課後終わったらRINGに来て」

 

「分かった……」

 

 それ以上、俺はそよに問い詰められることはなかったのと同時に……。

 俺は力が抜けるようにして鉄格子に寄りかかっていた。自分が睦に何を呪いとさせてしまったのか必死に思い出そうにも思い出すことが出来なかったんだ……。だからこそ、俺は自分が許せないという感情が増して行き、さっきよりも力強い音で屋上の扉を閉めていた……。

 

 

 

 

 

 重りがある体を動かすということになるのはこれで何度目だろうか、一度目は燈に劣等感を抱えていたとき。二度目は、燈を裏切ったとき。三度目は、燈を突き飛ばしたとき。四度目は、立希の力になれなかったとき。思えば、俺はずっと十字架を背負わされている。どれもこれも自分の自業自得。

 

 下駄箱から取り出した靴が床に反射する音がしていた。

 その音がしたのと同時に俺は靴を履いて昇降口が出れば、光と温かい気温に照らし出されていた。自分が何処へ進めばいいのかなんては知っているはずなのに何処か億劫になっていたけど、進しかないとなりながらも、俺は校門を出ると「結人ー!!」という声を掛けられる。

 

 

 

「あのさ、結人ってこの辺で時計屋って知ってるか?」

 

「時計屋?どうかしたのか?」

 

 自分の重たいものに気づかれないようにしながらも同じクラスの奴に話しかけられている。

 

「実は俺の腕時計を壊れちまってさ……。時計を修理して貰おうにも時計屋とかよく分かんなくてさ」

 

「ああ、そういうことか……」

 

 こうやって俺はお悩み相談もどきみたいなのは今でもやっていることがある。だから、自然と俺に相談に乗ってくる奴が多い。にしても、時計屋かーとなりながらも俺はクラスの奴と一緒に時計屋を目指すことにした。途中、学校での他愛もない話をしながらも歩いて時計屋を向かって行った。話していた内容は主に今日の昼休み中に自分達の間で流行っていたローカルルールみたいな話題だった。

 

 俺が話題に出していたのは、正直他の奴らと比べて別格なんてのは言い方するのは嫌だが、夕飯は自分で調達できるものだけとか登校も冒険扱いで、毎回違うルートで行くとかそういうなんか変なものだったり割とありふれたもので帰宅するときに「先に家に辿り着いた方が勝ち」みたいなルールもあったと話をしていた。羨ましいと憧れる奴もいれば、想像して面倒くさそうにしてる奴もいた。本当、自分が一般家庭とは違う家に生まれたんだと実感させられる。

 

 

「此処だな……此処は他の店より初回の修理代が安いからな。俺が修理するよりこういうお店で見て貰ったほうが早いだろ」

 

「助かるぜ!!結人!!あれ?でも初回ってことはそれ以降は高いのか?」

 

「あーそうでもなくてな、此処は会員にさえなれば安くなったりするみたいだな。後は、腕時計のことで分からないことがあれば結構相談に乗ってくれるし、悪くないと思う」

 

「おっ、マジか!!それじゃあ、俺は早速行ってみるな!!」

 

「おう……」

 

 時計屋の中に入って行くクラスの奴を見送りながらも、店主と上手く話せているあいつの姿に俺はよかったとなりながらも、歩き出そうとしているとき後ろで俺を呼ぶ声がして後ろを振り向く。

 

 

 

 

 

 

「ゆいぴじゃん」

 

 

 

 

 

「にゃむ?」

 

 

 

 

 

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