【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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ゆいと、悪いやつじゃない

 授業……つまんない。

 猫たちと遊びたいけど、授業中に立って外に行ったりしたらまた怒られる……。学校、猫達が迷い込んで来ておもしろいのに……。

 

「……?」

 

 机の中に入れてあるスマホが鳴っている音が聞こえる。

 使い方がよく分からない。興味もないから覚えようともしてないけど、きっとバンドからの連絡……。

 

『抹茶パフェ奢るから今日RINGに来て』

 

「抹茶パフェ……!」

 

「要さん、授業中は静かにお願いします」

 

 怒られた……。

 返事をして私はもう一回スマホを見る。RING行けば、抹茶パフェ食べられる。ギターも弾ける。おもしれー女()にも会える。今日は楽しいことが多くなりそう……。

 

 

 

 

「猫……!」

 

 抹茶パフェ(立希)からの連絡でRINGに行っている途中、猫達を見つけた。

 公園に入って行くのを見て追いかける。

 

「……猫がやってきたと思ったら、人間も釣られてやってくるのはちょっと驚いたな」

 

「……?」

 

 猫達を追いかけて行ったらそこにはベンチに座っている人がいた。

 その人の足には猫がいっぱいいた。懐かれてるみたい、悪い奴じゃなさそう。私はその人の周りをウロウロしている猫に触れていた。

 

「猫好きなのか?」

 

「好き」

 

 あごの下部分から触れていると、お腹を出してくる。

 それを見て私はもう少し撫でる手を優しくしてあげると気持ち良さそうにしている。

 

「……どうしたの?」

 

「いや、この子野良の割にお腹を見せたりして結構気を許しているんだなと思って」

 

 悪い奴じゃなそうな人が猫の様子を見た後、私の顔を見ていた。

 だから私は言った。

 

「気持ち分かる」

 

「動物の気持ち分かるなんて凄いな……その子はなんて言ってるのか分かるのか?」

 

「餌をくれたらもっと撫でさせてやる」

 

「意外と現金なんだな……」

 

 でもそれが猫のいいところ。

 自由でどんなところにも行く……お昼寝も大好き。

 

「動物好きなの?」

 

 猫達が懐いているのもそう。

 カバンに動物のストラップが付けられていたから気になって聞いた。

 

「ん?ああ、動物好きだよ。犬も家で買ってるしな……」

 

 犬……。

 猫じゃない……。

 

「も、もしかして猫派の方が嬉しかったか?」

 

「ううん、犬も嫌いじゃない。でも猫が好き」

 

「そっか、それにしても本当にその子達懐いているな……。羨ましいな、動物と話せるなんて……」

 

「気持ちを込めて話していればそのうち出来る」

 

「へぇ……?じゃあ、やってみようかな」

 

「うん、頑張って……」

 

 本当に悪い奴じゃなさそう。猫より犬なのはちょっと残念。

 猫達も撫でられたり遊んでもらって楽しそうだから猫達と話せるひみつ教えた。きっとそのうち出来るようになる。

 

「そういえば……えっと」

 

「要楽奈」

 

「楽奈か、俺は星乃結人」

 

「ゆいと、おぼえた」

 

 悪い奴じゃない奴の名前……ゆいと。

 ちゃんとおぼえる。

 

「そこに置いてあるのってギターだよな?バンドでもやってるのか?」

 

「あっ、そうだった……」

 

 猫と触れる為に置いておいたギターの方を見る。

 猫達を見かけてゆいとと話していたからすっかり忘れていた。

 

「ゆいと、RINGって此処からだと何処?」

 

「あーえっとRINGなら……」

 

 猫たちを見かけてそのまま追いかけて来た。

 RING此処からだと何処なのか分からないからゆいとに場所を教えてもらっていると息を荒くしながらも公園にやってきている二人がいた。

 

 

 

 

「野良猫……やっと見つけた!!」

 

「はぁ……はぁ……!!楽奈ちゃんの隣にいるの……結人君……?」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

あいつ(楽奈)来ないんだけど……」

 

 今はRING……。

 グループに立希ちゃんが楽奈ちゃんに「抹茶パフェを奢るから来て」と学校で送ったらしいけど、楽奈ちゃんが来ることはなかった。

 

「そもそも野良猫ってスマホ見てるの?見た感じ、既読も付けてないっぽくない?」

 

「はぁ……後ライブまでもう一日しかないって言うのに……本当最悪。せめて前日ぐらいは全員で合わせて練習したかったのに……」

 

 立希ちゃんは貧乏ゆすりをしつつスマホを眺めながらも少し苛々している。

 

「た、立希ちゃん……その……楽奈ちゃんを探すって言うのはどうかな?」

 

「あいつのことで何か知ってる奴っている?RINGによく来てギター弾いて抹茶パフェ食べて帰ってるイメージしか私はないんだけど」

 

「確かに楽奈ちゃんのことを私たちは……全然知らない。でも、探してみないと分からないかも……」

 

「あいつからの連絡もない以上、自力で探し出して練習に引っ張り出すしかない、か……。本当に最悪だけどやるしかないか、燈行くよ」

 

「う、うん……!」

 

 立希ちゃんは手に持っていたドラムスティックを置いて立ち上がってステージを出て行った。愛音ちゃんもそれを見て「私も行く……!!」と言って後を追いかけていた。私もそれに続くようにしてステージから出ようとしたとき、そよちゃんに全く動きがないことに気づく……。

 

「そよちゃんは……行かないの?」

 

「うーん、楽奈ちゃんがもしスタジオに来たときにいつでも連絡できるように此処にいるね。もしかしたらスマホを失くしたりしたのかもしれないし」

 

「えっ?う、うん……」

 

 そよちゃん、ああは言っていたけど立希ちゃんが楽奈ちゃんのことを話しているとき、ずっとスマホを眺めていたように見えていた。だけど、もしかしたらのこともあるからそよちゃんの言葉に対して何かを返すことは出来なかった、なによりもう時間がなかったから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「CRYCHICに……あの二人はいらないのに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処最近ずっと走らされてばっかじゃん!!」

 

「口動かしてる暇があるなら足動かしたらどうなの?」

 

 RINGをすぐに出て楽奈ちゃんのことを探す事になった。

 愛音ちゃんは此処最近ずっと走っていたみたいだから、色々大変なのかもしれない。

 

「走らされてた原因の人に言われたくないんですけどー?」

 

「はぁ?別にお前に追いかけて欲しいなんて一度も言ってないんだけど」

 

「立希ちゃん、愛音ちゃん声……」

 

「ご、ごめん燈……」

 

 立希ちゃんが私に謝った後、愛音ちゃんも「ごめん燈ちゃん」と言っていた。愛音ちゃんと立希ちゃんの言い合いを周りの人が凄く見ているのに気づいていた私。でも、こうやって三人で目的に向かって頑張るのはなんか……いいかも。

 

「と、とりあえず別れて探そう燈……。私は駅の方を見て来るから、燈はショッピングモールの方を見て来て」

 

「私は?」

 

「お前は通りの方……野良猫のことを見つけたらグループに連絡」

 

 立希ちゃんの言われた通りに私達はそれぞれがそれぞれの方向へと歩き出していた。

 楽奈ちゃんのことを探すのはきっと間違い探しを見つけるのより凄く大変なことになるだろうけど、結人君ならきっと此処で諦めたりしないはず……。だから、私も頑張らなくちゃ……。

 

 

 

 

 

 

 そして……。

 

「はぁ……はぁ……!!楽奈ちゃんの隣にいるの……結人君……?」

 

 途中、愛音ちゃんと合流して私はショッピングモールの近くにある公園にやって来ていた。

 此処はあまり人が遊んでいたり、休憩していたりしていない場所であまり使われている印象がない公園。どちらかと言うとイベントとかのときに使われていることが多い気がする。そんな場所に楽奈ちゃんともう一人……結人君が猫に囲まれていた。

 

 私はすぐに楽奈ちゃんを見つけたとグループに送信すると、立希ちゃんがすぐに反応をして、「分かった、RINGで待ってる」と送っていた。

 

「もしかして野良猫の隣にいる人って……」

 

「うん、私の友達の結人君」

 

「へぇ、カッコいいじゃん!」

 

 思わず愛音ちゃんから目を背けてしまう。

 結人君は顔立ちが整っていて私なんかと比べて明るい性格の人……。それは本当に事実だけど、肯定するのが少し恥ずかしくなってしまっていた。

 

「あの……初めまして千早愛音って言います……!!」

 

「俺は星乃結人。燈から聞いたけど千早が燈をバンドに誘ってくれたんだよな?ありがとうな、誘ってくれて」

 

「全然そんなこと……燈ちゃん凄くいい子で……!!あっ、後私のことは愛音で!!」

 

「そうか、じゃあこれからも燈の子とよろしく頼むな愛音」

 

 愛音ちゃんと結人君が楽しそうに私の話題で盛り上がっていると、楽奈ちゃんがギターを担いで歩き始めていた。

 

「ともり……あのん……迎えに来たの?」

 

「え?う、うん……!!」

 

「行くのか?楽奈」

 

「うん……猫たちも話せたし満足。またね、ゆいと」

 

「ああ、じゃあな楽奈」

 

 楽奈ちゃんが結人君に対して手を振ると、結人君もそれを見て手を振り返していた。

 

「燈も頑張れよ、愛音も燈や立希のこと頼むな」

 

「う、うん!ありがとう結人君!!」

 

 私も結人君に手を振りながらもその場を離れる。愛音ちゃんは結人君から二人のことを頼まれて返事をしていた。結人君、猫に懐かれてる……。なんかいい画だったな……。

 

 

 

 

「結人君、超良い人じゃん!!」

 

「う、うん……そうだね!!楽奈ちゃんは結人君と何話してたの?」

 

「猫の話。ゆいと……悪い奴じゃない」

 

 愛音ちゃん、結人君のこと褒めてくれた嬉しい。楽奈ちゃんに「どんな話をしたの?」と聞いた。友達のことを褒めて貰えるというのはやっぱり嬉しい。楽奈ちゃん、凄く自由気ままな子だけど……結人君のことを褒めてくれるなら良い子なの……かな。どんなこと話したのかよく分からなかったけど……。楽奈ちゃんが結人君の名前を出したとき、少し笑顔を見せていたからきっと楽しいことを話したんだと思う。

 

 

 

 

「野良猫、遅い。お前なにしてたの?」

 

「猫と遊んでた」

 

「……もういい、準備」

 

 RINGに戻って来た私達……。

 立希ちゃんは溜め息をついていたけど、もう時間がないと判断していたのかそれ以上楽奈ちゃんを怒ることはなかった。

 

「抹茶パフェ、抹茶パフェ後?」

 

「今は練習……これでも噛んでて。後、私の名前は抹茶パフェじゃないんだけど」

 

 抹茶パフェをお預けさせられた楽奈ちゃんは少し悲しそうにしていたけど立希ちゃんから抹茶の飴?のようなものを貰って嬉しそうに舐めていた。

 

「じゃあ、りっきー」

 

お前(愛音)のせいで変な呼び方されたんだけど?」

 

「私のせいじゃないんですけどー?」

 

 立希ちゃんが愛音ちゃんのことを睨むと、楽奈ちゃんが立希ちゃんの服を掴んでいた。

 

「りっきーダメ?」

 

「はぁ……好きにすれば?もう時間ないから今日は合わせて練習するから」

 

 楽奈ちゃんはギターを取り出してアンプに繋ぎながらも準備をしている。こうして全員揃うことは今までにも稀にあったはずなのに少しばかり感情に浸っている自分がいる。

 

「燈ちゃん、どうしたの?」

 

「皆、ようやく揃ったんだって思って……」

 

 スタジオの入口の方で楽奈ちゃんがギターを軽くピックで弾く音が聞こえていた。

 もう片方の奥では愛音ちゃんが私のことを気に掛けてくれながらもギターを調整している。そよちゃんも特に何も言わずにベースを持っている姿があった。そして、立希ちゃんは手元の楽譜に目を落としながらも、私の言葉を聞いて一瞬だけ目尻に笑みが浮かんでいた。

 

「ねぇねぇ、全員揃ったんだしやっぱりバンド名決めておかない?」

 

「は?お前のネーミングセンスダサすぎて絶対にやだ」

 

 そんな私の言葉を聞いたからなのか、愛音ちゃんがバンド名をやっぱり決めようと言っている。

 バンド名……。確かにあったら私達の個性みたいなものになるのかもしれない。でも……思いつかない。

 

「別に私が決めるって言ってないんですけどー?ねぇねぇ楽奈ちゃん、なにかいい案ない?」

 

「なんでもいい」

 

 楽奈ちゃんは本当になんでもいいと言いたそうにしながら答えると、愛音ちゃんが「えぇ!?」と言いながらも次はそよちゃんに聞いていた。

 

「バンド名だよ?凄く重要じゃん!そよさんはどう思う?」

 

「……うーん?私もバンド名はいいかなー?」

 

「えぇ!?みんな興味ないの!?ねぇねぇ、燈ちゃんはどう思う!?バンド名って凄く重要と思わない?ほら、アンノウンとかってどう……!!」

 

「やっぱり、お前の名前じゃん。燈、相手しなくていいから」

 

「重要だと思う……けど。全然思いつかないから、まだなくてもいいと思う……」

 

 バンド名……。

 私はそういう名前を付けるセンスはある方じゃないと思う……。だからきっとみんなを納得させられるようなものは多分無理……。

 

「燈もこう言っていることだし、もう本当に時間ないから練習するから。愛音もくだらないこと言ってないでちゃんと準備して」

 

「はーーい、分かりました」

 

「は?なにそのはいの言い方、絶妙にイラッとするから普通に返事して」

 

「はいはい、分かりました」

 

「はいは一回でいいから、早く準備」

 

 二人が楽しそうに話しているのを聞いて、私が笑っていると立希ちゃんは少し恥ずかしそうにしていた。私はやっぱり……バンドが楽しい。CRYCHICは解散してしまったけど、こうして新しいバンドを組めて本当に良かった……。愛音ちゃん、立希ちゃん、そよちゃん……楽奈ちゃんがいてくれるから……。

 

 明日はライブ……。またあのときみたいにボーカル必死過ぎって言われるかもしれない。それでも私は歌いたい。結人君が私のノートにあのとき共感してくれたように……。祥ちゃんが私のこのノートを心の叫びだと言ってくれた。だから私はこの歌詞でお客さんに結人君に……私の叫びを届けたい……!!

 

 

 

 

 

 それが今出来る私の精一杯だから……!!

 

 

 

 

 

 

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