【完結】迷子の友人は羨望する   作:シキヨ

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解くことが出来ない謎

「任せてください、か……」

 

 手元に残っているスマホの連絡の履歴には海鈴と初華、その下にMyGO!!!!!のグループの履歴も残っていて、俺は胸の奥で会話を思い出しそうになる。燈もそよも気にしないでいいと言ってくれていた。ただ、最後に気になるのはやはりあの二人との電話だった。

 

 

 俺はそれを見つめながらも今朝起きてすぐの電話を思い出していた。

 

『豊川さんのこと、任せてください』

 

 自信満々にそう語っていた海鈴。

 それは自分だけではなく、これはAve Mujica全体に関わる問題。だからこそ、自分達で解決したいと……。俺はその願いを潰すわけもなく、聞き届けることにした。燈達の助けは確かに必要なのかもしれない。しかし、海鈴は自分達の問題として豊川をなんとかしたいと強い気持ちがあるのなら俺はそれを止めるつもりもなかった。とはいえ、一人で任せるのは不安もあった為、何かあれば頼ってくれとは伝えていたが、それにしても……。

 

『それ、本当なの?結人……?』

 

 電話を繋いでいるのは何も海鈴だけじゃなかった。

 初華といも電話は繋げていた。こんな事態のなか、真実を話すのは心が痛くなるがそれでも今話しておかなければ俺は後悔することになるかもしれねえと判断した上での結果だった。

 

『そう……なんだ』

 

 初華の声色は明らかに悪かった。

 特に反応がなくなっていたのは豊川の父親の話をしていたときだった。無理もない、豊川の家で起きたことがあまりにも悲惨過ぎてしまったのだから……。

 

『結人、私ね……。祥ちゃんにちゃんと謝りたい』

 

 そんな話を聞いていたからだろうか……初華は自分の今の胸の想いを語ってくれていた。

 

『祥ちゃんの気持ち何も知らないのにただ自分の感情を吐き出して迷惑かけちゃったから……。だから、謝りたい』

 

 後悔から生まれる「謝りたい」という気持ちが、どれほど辛く悲しいものなのかを俺は知っている。ときにはそれは自分を責める道具にもなってしまう。それでも、初華はただ純粋に謝りたいと言っている。強いな、初華は……。

 

『水臭いではありませんか、三角さん。そのときは私も協力しますよ』

 

『うん、ありがとう海鈴ちゃん』

 

 二人の会話に頰が緩んでしまう。

 Ave Mujicaというバンドは確かに他のバンドみたいに信頼という二文字はなかったのかもしれない。

 

『海鈴、初華……Ave Mujica絶対解散させるなよ?俺はお前らのバンドのライブ、何気に楽しみにしていたんだからな。仮面外しの件であーなっちまったけどそれでもまた見たいという欲求は変わらねえ。だから、絶対に解散させるなよ』

 

 Ave Mujicaは現在、休業という形になっている。

 あの武道館ライブ後ということもあって、変な噂が絶え間ないようだが時間が経つか、復活すれば黙らせることなんて容易なはず。

 

『なるほど、今度はMyGO!!!!!からAve Mujicaに乗り換えようと言うわけですか。立希さんに連絡しておきますね』

 

『おい、なんでそうなる』

 

『いえ、冗談ですよ。しかし、そこまで言われては仕方ありませんね。Ave Mujica必ず復活させてみせますよ』

 

 冗談で言ってるのは間違いないんだが、こいつの場合全く冗談に聞こえなくて仕方なかった。本気で立希に報告する、そういう素振りすらあったと思えていた。

 

『初華もあんま無理すんなよ?お前は芸能人なんだから立場上、色々と面倒なことも多いんだから』

 

『うん。でも、私はやりたい。だから、任せて結人……!!』

 

『分かった、だけど本当に無理すんなよ?』

 

 海鈴、初華の話を聞き届けた俺はそれ以上何かを助言することはなかった。

 記憶の糸を解き終えて、俺は海鈴の連絡先を見続けるのをやめることにしながらも一人呟く。

 

「清告さん大丈夫だろうか……後で様子を見に行くか」

 

 部屋の中でその声が反響しながらも響いていた。

 部屋を出てリビングを出ると、ミモザが眠そうにしている。昨日は夜更かしだったのかもしれないが、俺が帰ってくるのが遅くて不安だったんだろう。そして、親父は居なかった。どうせ冒険だろう……と諦めることにする。

 

「頼むからな、二人共……。豊川のこと」

 

 過程は失敗に終わった。

 それでも、豊川に何も届かなかったとは思えない。あいつは、そんな形で全部を投げ出すような人間じゃない。俺がそう信じたいだけなのかもしれねえが、燈達の友人であったあいつが全部を投げ出したくなるほどの何かがあったはずなんだ。

 

 

 着替え終えた俺の下に通知音が耳に入る。

 

『ごめん、また今度にして』

 

 相手は立希からだった。

 あんなことがあった後だ。出掛けるというのは流石に無理がある。「悪い」と送ると……。

 

「お前は気にし過ぎ」

 

 と怒られてしまう。

 その内容だけで俺の心はどれだけ救われるか、と濁りきっていたものを吐き出すようにして息を吐いていると……。

 

「気のせいか……?」

 

 玄関から視線のようなものが感じていた。それは普通ではない何処か禍々しくて、俺は扉を開けるのが億劫になっていたが、確認しなければならないとなって除き穴からその視線を確認しようとするが……。

 

「誰もいねえ……」

 

 特に誰もいなかったが、背筋が凍るような感覚がしていた。まるで、ホラー映画でも体験させられているようだったが、邪があるような視線が離れていく気配が全くない。何故、どうしてそんなもんがするのかは分からず、俺は戸惑いながらも自分の家の扉に触れようとしたとき、嫌な予感がしていた。それを開けたら、一生後悔する。そんな気がしてならなかった。

 

「ただ扉を開けて確認すればいいだけだ、そんな怖がることじゃねえ」

 

 早く気持ちを沈めながらも俺は自分が怖がる前に一気に開けて行くと、そこに広がっているのは雲一つない青空でしなかった。何処も異常はないはずなのに、何故俺は……と疑問になっているとすぐに判明する。

 

 

 

 

「睦……?」

 

 家の門の前で待っている睦がいた。

 さっきのは睦が向けていたものなのか、あんな尋常じゃないほどの悍ましい何かを釘を刺すように送っていたというのか?いや、それはあり得ない。睦だぞ?あいつはそんな奴じゃ……と言い切りたいところだが、何故かそれを断言することができない自分がいた。

 

 お前はお前でいればいい、睦にそう助言したのは俺そのもの。

 もし、それが逆の方向へと解釈して歩み出しているというなら俺はそれを正しく導いてやらなくちゃいけないし、あいつに謝らなくちゃいけない。だったら、此処で睦と一旦話をするということが大事なはずだ。

 

 ただ、念には念を打っておいて損はないはず。

 一旦、家の中に入って俺はスマホから立希に電話を入れたが、言葉がそこで詰まる。

 何故なら俺が言おうとしていたことはもしも何かあったときに俺たちのことを監視して欲しいという内容。この前、立希を傷つけたばかりだと言うのに友人である睦の監視をさせるなんてことはあいつが辛くなるだけだとなって電話を切ろうとしたときだった。

 

「なんかあったの?」

 

 頼んでいいんだろうかとなっていた俺……。

 しかし、此処で立希に頼まなけば俺はまた一人で抱え込んで失敗するかもしれねえ。それじゃあ、八潮さんに前に言われたときと同じになっちまう。

 

「頼むしかねえか……」

 

 こんなことを頼めれるのは立希しかいないとなって俺は訳を話し始めると、立希が「睦が家に待ち伏せ?」と不思議そうにしている。

 

「……事情はわかった。それで私は二人の監視をすればいいわけ?」

 

「ああ、勿論無理にとは言わねえ。俺はお前のことを前に傷つけちまったからこんなことを頼むのはおかしいのはわかってる。でも、頼むとしたらお前しかいないとなったんだ。だから、もしものことがあったら……」

 

「分かった、引き受ける」

 

 一瞬、自分の耳を疑う。

 

「いいのか?」

 

 ほぼ即答で反応をされた俺は戸惑う。

 

「変に罪悪感とか覚えないで、お前のことをビンタしたのは私も心が痛かったけど……。お前が道を間違えそうになったら、私は絶対に連れ戻す。そう決めたから、燈の為にも……」

 

 

 

 

 

「私の為にも……」

 

 覚悟あってのものだと俺は認識していた。

 立希は間違いなく、俺が間違えそうになったら本当に引き摺ってても引っ張り出してくれるそういう強さを持っている人間だと……。

 

「頼む立希……!場所は随時送る……!!」

 

 本当は不安だった、立希に電話をしたことが……。

 それでも、電話する相手に立希を選んだのは正しかった。

 

 

 

 

 

 

「よぉ、睦……今日はどうしたんだ?」

 

 家の外に出て、俺は玄関の前まで待ってくれている睦に話しかける。

 

 

 

 

 

「出かけたい……結人と」

 

 俺が声を掛けてくれたことに表情が明るくなりながらも、そう提案してくる。

 

「ああ、いいぜ。最初は何処行くんだ?」

 

「結人は何処行きたい?」

 

 自分が好きな場所に行きたいみたいなことを言われて、俺は一瞬反応に困りながらも睦から目を逸らす。

 

「え?俺か?あーじゃあ、たい焼きでも食べに行くか?」

 

 何か良い案はねえかと思って、偶々思いついたものを提示してみる。

 睦は大きく頷きながらも、反応を示してくれている。

 

「たい焼き好き?」

 

 何気ない会話を振って来る睦。

 

「ああ、好きだよ」

 

 

 

 

「……私も好き」

 

 今の会話に何処か変な要素なんてものは存在しないのに、俺は何処か違和感を覚えてしまっていた。その違和感を絡まった線を解こうとするようにしていたが……。まるで、俺に無理矢理合わせたかのような感じだったが……。

 

 

 

 

 

 どうやっても解くことは出来なかった。

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