エルヴァンディアの全土を巻き込んだ革命戦争から、はやくも十年。
王も貴族諸侯らも、そのほとんどが断頭台の錆と消えて、それだけの年月が経った。

戦災孤児たちを引き取った、とある修道院では近頃、妙な噂が流れていた。

『天使さまが現れた』『そればかりか、こっちに手を振ってくだすった』

まことしやかに語られるのは、金髪の美しい少女の存在。
夕焼けの空を自在に飛び回る姿は、まさしく天使のようだった。

――なんて噂話の正体は、頭のネジがだいぶ緩いだけの、ただの孤児の少女である。
しかし本人も全くなんでか不明だが、空を飛べた。

翼も生えていなければ、ジェットエンジンも積んでない。そして当たり前だが、魔法でもない。

何から何まで意味不明な少女の元に、ある日、陸軍特務大尉を名乗る女軍人が現れる。
あろうことか、そいつは素手で銃弾を発砲できる、あまりにもイカれた女であり――。

「あなたには、わたくしの率いる特務隊に入っていただきますわ」
――元公爵令嬢だった。
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