ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】 作:月日は花客
話が思ったより長くなったんで分けます。
今年も来ました、呪術師の繁忙期こと夏の季節。
毎年更新されてると感じる最高気温やら、台風警報なんかに負けず、あちらこちらで呪霊を狩る毎日。
俺は《次元の裂け目》ワープが可能なせいか、特に西へ東へ酷使されている。
正式に特級呪術師として任命されて、冥冥さんの下から手を離れ独立して活動し始めた俺は、戦力として一日に10件以上の依頼を解決することもザラ。
金は入ってくるとはいえ、必要なサプライを買えばほぼ満足してしまう遊戯王以外としては、後輩に飯を奢るのが趣味になりつつある。
この前は俺の全奢りで京都校女子メンバーとスイパラに行って参りました。割とカレーとかもあるんだね、あそこ。
「あー、あっつ……汗やば」
特級術師といえど夏の暑さにゃかなわねぇ。汗でベッタベタのTシャツも早く着替えたい。
そういえば夏服に衣替えしたら、夏季にあまり会わなかったメンバーに「お前あのパーカー脱げたんだ」って顔をされた。
お前らの方が万年同じ服やろが。
「《ゴーティスの双角アスカーン》で攻撃! お前は死ぬ」
そんで、今日のラスト(たぶん)の依頼対象である呪霊を祓った時だった。
「……ん? パックが……2個?」
ポトっと落ちた遊戯王のパック。
今祓ったのは二級呪霊で、大した強さではない。
だが、いつもの呪霊は、倒して落とすパックは一体でひとつの筈だ。特級はボックスを出してくれるが、普段の依頼ではなかなか遭遇しない。
パックだけを、2個も落としてくれる呪霊は長年の呪術師生活でも遭遇したことがなかったのだ。
さっきの呪霊はなにか特殊だったのか?
普通にアスカーンの餌食になったが……。
恐る恐るパックを拾い上げる。
呪霊から出るパックは、パッケージが黒く何も書いていないのだが、今回は黒ともう一つ、白のパックがあった。
持ってみた感じも、微妙に遊戯王OCGとは違う感覚がある。
「なんだこれ」
しかし、目の前にパックがあるなら剥くのが決闘者の生態。
俺はその真っ白なパックを、カードが傷つかないように中央を開くように破った。ボックスを剥くならハサミが欲しいところだが。
「こ、これは――!!」
そして、俺が見たものとは――――
*
「とゆーことで、夏季の繁忙期も終わってお疲れ様! ラッシュデュエル体験会〜〜!!」
「イェーイドンドンパフパフ☆」
「……このメンバーに何か理由はあるの?」
「確かに、あまり見ないメンバーだ」
「わ、私の場違い感が凄い……」
いつものように東京高専の一室を借りて、机を幾つか繋げてお送りしています。学校用机を並べてデュエルスペース作るの、人によっては懐かしさで死にそう。輪ゴムでデッキ括るのはもうできないけど。
ノースリーブで地面に直置きしていたあの頃にはもう戻れないんだ……。
「実は、シーズン中に呪霊からいつものパックじゃないものがドロップしてなー」
「それは……昔にあった、ボックスの一つが宿儺の指だった時のような?」
「いーや、そんな物騒なもんじゃない。遊戯王さ。ただし……ラッシュのな!!」
「遊戯王、ラッシュデュエル……だったっけ? 聞いたこと無いんだけど」
今回集まってくれたメンバーは、夏油君、伏黒くん、真衣ちゃん、三輪ちゃんの四人。
他は任務が被ってたり、遠方にいて旅行してから帰ってくる予定だったり。まぁカード以外にもみんな楽しみがあるからな。他の趣味の邪魔をするほど、今は対戦相手に飢えてないし。
予定が合ったのがこの四人なんだが、あんまり見ないメンバーだな。
学校違ったり、学年とか術師の等級もバラバラだ。
しかし全員決闘者という大きな共通点がある。
「遊戯王ラッシュデュエルってのは、俺たちがいつもやってる遊戯王OCGとはまた違う、新しい遊戯王のカードゲームだ」
「遊戯王だけど、遊戯王じゃない? んですね」
「簡単に言えば、遊戯王の複雑で煩雑な処理やフェイズの行動を、わかりやすく単純に設定し直してある。カードのフォーマットや、細かいルールにも手を入れて、低年齢層でも遊びやすくなってるんだ」
実際にどれくらい子どもたちに受けているのかは今の俺にはわからないが、イラストの置き方やアニメのテイストはかなりわかりやすくなっている。
先にOCGをやってると混ざって混乱するところもあるが、一から始めるカードゲームとしては、わかりやすいながらに奥の深い遊戯王特有の動きを可能にしてると思うぜ。
アニメはセブンスも好きだが、どちらかといえばその後のゴーラッシュの方が好みだった。
ユウディアス・ベルギャーは萌えキャラ。異論は認める。
「子ども向けってこと?」
「低年齢層にもとっかかりやすくなってるが、場合によっちゃOCGより考えることがあるぜ。手札誘発や、俺たちが当たり前のように使ってる強効果が存在しないからな」
「同じ遊戯王といっても、はっきり違いがあるんだね」
「ああ、でも遊戯王ってことには変わりない。ラッシュオリジナルテーマも多くあるが、夏油君愛用の《サイバー・ドラゴン》や《古代の機械》はラッシュにも存在するぜ」
俺はリュックから白いデッキケースを複数並べていく。
夏の超忙しい日々、あれからどの呪霊からもOCGと同時にラッシュのカードパックもドロップするようになった。特級を倒せば、ボックスもそれぞれ一個手に入る。
俺はラッシュはやり込んだとはとても言えないし、OCGのおまけで情報を見ていたから抜けも多いが、基本ルールは把握している。
あと、OCGの反省を活かしてか、ラッシュのカード効果は「条件」と「効果」が分けて書かれているから、どういう処理が発生するかとてもわかりやすいぞ!!
ラッシュなら《伝説の都・アトランティス》も《海》としてじゃなく存在できたかも知れないのにね……。
「夏の間に集めたカードで作ったデッキたちだ! 流石にまだカードが足りなくて一部汎用カードは譲り合ってもらう必要があるが、結構テーマは揃ってるぞ!!」
「久しぶりに見た、このデッキケースの山」
「夏の間に作ったって、アンタ何体呪霊祓ったのよ……」
覚えてない!!
まぁラッシュも結構年数経ってるとはいえ、流石にOCGほどカードプールが膨大なわけじゃないからな。被るのも多かったから比較的デッキは組みやすかった。
だが、オーバーラッシュレアなんかはやっぱり排出率が低いのか、出てない。霊使いのやつ欲しいんだけどなぁ。
「おお、本当にサイバー・ドラゴンがある。確かにかなり見方は変わってるけど、ステータスなんかはOCGと同じだ」
「OCGと同じテーマを使うも良し、違うのを試してみるのも良し。ちなみに俺は《ギャラクティカ・オブリビオン》を主軸にしたギャラクシーデッキだ!!」
宇宙関連なのと、好きなキャラであるユウディアスの使用モンスターということで決めた。
ラッシュにはOCGの種族の他にもう一つ、「ギャラクシー族」という種族が追加されていて、このデッキはその種族でまとめられたものだ。
因みにラッシュにはOCGの除外ゾーンはほぼ存在しない。これから出てくるかもわからない。
それが除外愛好家としては少し寂しい……なっ。
「あの、宝玉獣は……」
「ごめん、ラッシュにはいない! でも獣族のテーマはあるからドンマイ!」
「ラッシュはイラストの部分が大きくて良いわね」
「メルフィーも無い……あ、でもかわいいテーマもいっぱいある」
ラッシュの方がネタに振ってるテーマも多いから、こっちのがコミカルで良いって人も多いかもね。
美少女も多いよ。KONAMIはいたいけな少年の性癖を破壊しようとしてるんだ。KONAMIにありがとうと言って。
「あと、ラッシュにしか無い特別でド派手なシステムがあってね。それが……マキシマム召喚!!」
「マキシマム召喚?」
「まず、ラッシュにはモンスターゾーンが三つしかありません」
「嘘!?」
「少なすぎる……EXモンスターゾーンも無いのか……」
「その三つしかないモンスターゾーン……その全てを使用して召喚する超☆大型モンスター! それがマキシマムモンスターだ!!」
一部のテーマにしか実装されてない必殺兵器だぜ!
当然ユウディアスの使うギャラクシーデッキにも存在する。OCGテーマだとレッドアイズとかハーピィも実装されてるよ。
左右と中央、それぞれを担当するモンスターがいて、それらを並べると途切れていた絵柄が繋がるのだ……正に超大型モンスターだね。
「因みに俺のデッキのマキシマム召喚モンスターはこちら。《超銀河王ロード・オブ・ギャラクティカ》になります」
「うおでっか」
「うわー、これは確かに迫力ありますね!」
「あ、マキシマム召喚が無いから弱いテーマってわけじゃないぜ。無くても強いテーマは沢山あるし、OCGより通常モンスターなんかの使い所もしっかりあるから」
ド派手な効果と盤面を持つマキシマム召喚だからこその弱点もあるしな。
あくまでもラッシュの新要素であって、必須要素では無い。
そもそもマキシマム召喚があるテーマの方が少ないから、ある程度メタや対策も回ってるらしいし。
「今回も好きなデッキを渡そうと思ってる。が、OCGにどっぷり浸かったみんなにラッシュが合うかはまだわかんないからな、今日はあくまでもお試し会だ」
「モンスターゾーンが三つしかなかったり、マキシマム召喚だったり……これだけでも、OCGとは別モノとわかりますね」
「また高専に新しい風が吹きそうだ」
そうして、各々デッキを選びだすみんなを、俺はにんまりと眺めていた。
逃がさん……! 遊戯王からは……!
ラッシュはOCGとは違う。そう、だからこそ俺は狙っていたのだ……。
今の遊戯王トップピラミッド、それが構築し直される、その光景を……!!