歴戦の勇士。戦国の世で武勇を轟かせた武士の異名。
そんな歴戦の勇士と呼ばれる武士は、若武者だった!

これは、戦国乱世を駆け抜ける歴戦の勇士の日常のお話



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戦国無双Chronicleシリーズは、青春です。


北条の章
【壱話】熊姫と大道芸人くのいち/イヌ


 

 

 戦国の世で各地の戦に参戦するなどの武者修行を行い、名のある戦国武将から【歴戦の勇士】と恐れられている若武者がいた。

 

 その前に歴戦の勇士とは何か。文字通り、戦場を渡り歩いた猛者のことを指す。

 その人物は、武将達との交流が深く、親密な関係であったとされる。しかし、殆どの歴史書に記されておらず、歴戦の勇士に対して宛てた古文書を発見しても、途中で破れているなどの一部損失や欠字の古文書ばかりである。

 

 

 この物語では、歴戦の勇士の名を迅と定めよう。

 

 歴戦の勇士もとい迅は、武士の家系であるが、謎の多い人物である。

 

 彼は、有力な武将と交流が深い。例えば、相模の獅子の異名を持つ北条氏康に会うと、氏康特製の魚介鍋をご馳走になったり、彼の息子である氏政、氏照、氏康の娘の早川殿、後北条氏家臣の成田氏の娘である甲斐姫と共に釣りを楽しむなど、類稀なる豪運と人柄の良さを持っている。 

 

 そんな彼も、今日は、のんびりと城下町を散歩していた。戦で武者修行をしている迅だが、本人としては平和な日常を過ごす事が好きだ。誰も血を流さない、誰も失わずに悲しむことがない平和な日々を過ごすことが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【壱:熊姫と旅芸人くのいち】

 

 〇月✕日、晴天によって青が澄み渡っており、秋の訪れによって、幾らか涼しくなったこの頃。

 

 のんびりと平和な一時を楽しもうとした迅は、

 

 「迅〜!早く早くなのじゃ〜!」

 

 

 天真爛漫な性格の美少女を追いかけていた。赤紫に近い髪色をしたツインテールの少女は、ガラシャ。またの名を明智玉。後に本能寺の変を引き起こした謀反人明智光秀の娘である。

 

 彼女は、たまに冒険と称して家出をする。行く先々で親切な人や父である明智光秀の友人に会うことから今まで無事だが、危険な戦国乱世である。盗賊や海賊に攫われたら一溜まりもない。

 それを叱った光秀は、ガラシャに対して、自宅の屋敷にいるよう数週間の外出禁止を言い渡した。

 

 そして、外出禁止の解禁日にガラシャは、光秀から呼び出された。

 

 

 「ガラシャ、私は貴女の事を心配しているのです。お願いですから、もう少し落ち着いてください。」

 

  

 「むぅ~父上はわらわのことが嫌いなのか?」

 

 

 「そういう事ではありません。貴女は私の大事な娘なのですから…しかし、今日は外出禁止を解く日です。…近場なら許可します。」

 

 

 「ありがとうなのじゃ!父上!大好きじゃ!」

 

 

 「ッ!コホン!但し、条件が一つだけあります」

 

 

 「ほむ?」

 

 

 光秀から手紙で頼まれた迅は、今、ガラシャのお守りを引き受けている。その手紙の内容は、[必ず信頼のある大人と一緒に行くことを条件に決めたので、ガラシャが迅となら大丈夫と言っていました。私も貴方なら大丈夫と信頼しています。どうかご検討のほど宜しくお願いします]とのこと。それを光秀が迅を信頼して頼んでいることから、光秀は、ガラシャに対して、かなりの親バカである。

 

 

 迅は、団子屋でみたらし団子や餡子団子などの串団子を6本買う。

 

 「兄ちゃん、可愛いお嬢ちゃんとお出掛けかい?若いねぇ!お買い上げ有難うよ!お代は10文(約300円)ね!」

 

 迅は、巾着財布から10文を取り出して払う。団子屋のオヤジから団子を受け取った迅は、団子を二本取り出し、残りは紙包みに入れ、風呂敷にしまう。

 ガラシャに団子を渡すと、

 

 

 

 「ありがとうなのじゃ!あむ!うむ、この団子は美味なのじゃ〜!」

 

 

 

 ガラシャは、美味しそうに団子を食べている。愛らしいその姿に道行く人は皆微笑ましい顔をしていた。

 

 団子を食べながら歩いていると、反対側から見覚えのある女性二人が談話しながら歩いていた。

 

  

 「あ!迅とガラシャちん!お久しぶり!」

 

 

 「本当だ。ガラシャちゃんに。こんな所で会うなんて奇遇ね」

 

 

 「ほむ!わらわは覚えているぞ!熊姫としがない大道芸人じゃな!」

 

 

 ガラシャの一言に思わず、甲斐姫とくのいちはズッコケる。そして、熊…甲斐姫は、迅の方へとズンズンと進み。怒ったような怖い笑顔を近づける。

 背後で熊が立ち上がり威嚇している幻覚が見えるが気のせいだろうと信じたい。  

 そんな迅の思いは届かず、現実に引き戻された。

 

 

 「あんた、ガラシャちゃんに本当のこと教えてないでしょ!?しかも熊姫って言ってるし!」

 

 

 「正しい呼び方を教えたつもりだ。でも、熊から熊姫に変わってるし、良かったじゃないか。ぷふっ」

 

 

 「熊姫言うな!あと笑うな!」

 

 

 「いてッ!」

 

 

 甲斐姫は、迅の脛を思い切り蹴る。迅は痛みで蹲る。戦場で活躍する歴戦の勇士でも、脛の痛みには敵わなかった。

 

 くのいちは、ガラシャとお話をしていた。ガラシャの話を聞いたくのいちは、ニヤリと猫のような口になり、ガラシャと共に迅に駆け寄る。

 

 「迅の兄貴!迅の兄貴!」

 

 

 くのいちが迅を兄貴と呼ぶ時は、大抵ロクでもないことを企んでいる。ため息を吐きながら、くのいちに何用かと尋ねる。

 

 

 「どうしたくのいち」

 

 「さっきまで、がーるずとーくしていたんだけどね。彼処に美味しい餡蜜屋があるんだよね」

 

 「何が言いたい?」

 

 「白ばくれちゃって〜可愛い美女三人と茶屋でお話出来るんですぜ?」

 

 「迅〜!わらわも餡蜜食べたいのじゃ〜」

 

 ガラシャは、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら餡蜜屋に行くように催促している。

 

 迅は、懐にある金を見てから腕を組んで考えた。

 そして、ガラシャに向かって言った。

 

 「仕方ない。ガラシャ、甲斐姫、くのいち。餡蜜食べに行くぞ奢ってやる」

 

 

 「やったなのじゃ〜♪」

 

 

 「餡蜜食べまくるぜい」

 

 

 「太っても知らないわよ?」

 

 

 「甲斐ちんよりは痩せやすいし〜自分の心配をすれば〜?」

  

 「何ですって!?」

 

 

 怒った甲斐姫は、くのいちを追いかけ回す。それに対して、くのいちはニシシと笑いながら逃げていた。

 

 二人の様子を見て、ガラシャは呟いた。

 

 「ほむ!仲良いことは良いことなのじゃ!」

 

 ガラシャは、笑顔で二人の追いかけっこを見物していた。

 

 

 

 【弐:イヌの日】

 

 

 迅は、小田原城内を散策していると犬と戯れている一人の男を見つけた。

 

 その男の名は風魔小太郎。忍集団風魔一族の棟梁であり、体格は六尺六寸(約190cm以上)と恵まれている。篭手による変幻自在な戦闘が得意で、忍法による攻撃で敵を翻弄する。敵にすれば恐ろしい忍者だ。

 

 小太郎に近づくと、仔犬が迅を見つけ元気に吠えている。小太郎は、迅を見るや否、質問をした。

 

 「ウヌは、今日が何の日か分かるか?」

 

 

 小太郎に問われた迅は、考えるが全く分からない。

 

 いつもなら、破壊と混沌の二つを口癖に愉悦をしている小太郎が「今日は何の日」と普通の話題をするからだ。

 

 迅は、正直に「分からない」と答える。その答えに小太郎は、呆れた視線を迅に向けた。何か釈然としないが、その事をすぐに頭から振り払う。小太郎に尋ねる。

 

 

 「今日は、犬の日だ。だからこそ、ウヌに問いかけた」

 

 

 訳がわからないよ。と迅は首を傾げる。それを見た小太郎は、含み笑いをして告げた。

 

 

 「クックック、ウヌは我の犬だからな」

 

 

 「誰が犬だ!わんわん!」

 

 

 小太郎は、迅の発言を愉快そうに笑いながら、仔犬を抱えて頭を撫でている。篭手の爪に当たらないのだろうか。小太郎のことだ。動物相手には慎重に接するのだろう。

 

 

 「何だ?迅と…小太郎か」

 

 「氏康!」

 

 「氏康か…」

 

 

 「そうだ迅。飯食っていけよ。息子等も喜ぶ」

 

 

 「で?さっきまで小太郎と何話してたんだ?」

 

 「それは…あれ?小太郎が居ない」

 

 小太郎が仔犬を残しながら消えたことに驚くが、

 迅は、氏康に小太郎と犬について話していたことを伝える。

 

 

 「アイツは、犬が好きだって前に言ってたな。まぁ、昔の話だ」

 

 

 「氏康は犬に吠えられそうだよね」

 

 

 「ど阿呆。こんなに犬好きそうな男はどこ探してもいねえだろ」

 

 氏康は、ぶっきらぼうに笑いながら、バシバシと豪快に迅の背中を叩く。

 

 「お〜!迅ではないか!」

 

 遠くから水色の素襖を着た髭の男が駆け寄ってきた。彼の名は北条氏政。氏康の嫡男であり、あと数年で後北条氏4代目として家督を継ぐ予定である。

 

 迅とは、兄弟のような間柄だ。

 

 氏政は、氏康と迅の間にいる仔犬を見つけると怖がらせないようにしゃがみ込んで抱きかかえる。

 

 

 「ほら捕まえたぞ!な、なはは!や、やめ!

 くすぐったいぞ」

 

 仔犬は、氏政の顔をペロペロと舐めて触れ合っている。

 

 「すごい舐められている」

 

 「犬にモテモテだな。氏政」

 

 氏康は笑いながら、氏政と犬の触れ合いを眺めている。迅も氏政のところへ行き、仔犬を撫で始めた。

 

 木の上に移動した小太郎は、氏康達の様子を面白可笑しく眺めたあと、跳躍して木の上から消えた。

 

 

 

 


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