ダイビート旗揚げから間もなく4年。
だが…毎年恒例の市民感謝イベント開催は、今年は難しそうだ。
「ウォーグリム…!」
「ええ、神騎が聖魔戦争で幾度も刃を交えた、不倶戴天の敵。」
「ならば、次にどう出てくるか…」
「街にも大きな被害を出しているし…イベントを心から楽しめる状況じゃないわよね…」
「…いいの? そんな状況で、私の歓迎会なんて。
ましてや魔王サマ、この臨戦態勢ってある意味、私の不徳の致すところ、ってヤツじゃん…?
呑気に楽しめないのは、こっちもなんだけど…?」
ぎゅっ。(?)
「私『たち』の歓迎会だよ、マヤ。
きっとこういうのって、戦勝祈願の意味もあるんだ。
あなたを歓迎することで、魔王さんも先輩たちも、元気が出るんだから。
だから…歓迎会、心から楽しもう?」
「ユリカ…?」
くすっ。
(ああ、俺が言いたいこと、ユリカに全部言われたな。)
……
…
「よっし、続きは明日にしましょっ!!」
「うん、うららちゃん、ヒビキちゃん、お疲れさまっ!」
今日は午後からずっと、中止になった4周年感謝イベントのアイテムの片付け。
続いてユリカとマヤの歓迎会用の装飾品をチェックし、あとは明日、手際よく飾るだけ。
…だが、ヒビキは懸念する。
「…アカリ? ちょっと元気が無いな。」
「…ゴメンね。」
「どうした?」
ふう…。
「また、平和が遠のいちゃったのかな、って…。
ダイビート4周年感謝祭、街のみなさんに心置きなく楽しんでもらえれば、良かったんだけどね…。」
顔を曇らせるアカリ。
「…抱え込むなよ。いつ誰が攻め込んでくるか…それは私たちじゃ、どうにもならない。」
「うん…わかってるつもり。…でも…」
(?)
「私…空回り、してないかな、って。
みんなを護るんだ、って…がむしゃらに突っ走って。
エスカ・ルビーになって、いっぱい応援してもらえて…それは嬉しいし、頑張れる。
でも…それって、みんなの受けたマイナスを、少し引き戻せただけ。」
「それは…」
「欲張りかもしれないけど…私、まだまだ非力なんだと思う。
もっとみんなを笑顔にできる…プラスにできること、私…何かできないのかなあ、って…」
「アカリ…!」
戦いは、終わらない。
ダイビートがどんなに勝ち続けても、4年前までの…何者にも脅かされない静かな日々を、完全に取り戻すことは未だ叶わない。
ぽんっ。(えっ?)
背の高いヒビキが、うつむき気味のアカリの頭を撫でる。
「アカリらしい、立派な志だ。
だが…一人で叶えようとするな、相棒。
お前が力不足なんじゃない。私たちみんなの非力なんだ。」
「ヒビキちゃん…!」
アカリは戦友に…親友に感謝し、顔をほころばせる。
「今すぐは無理でも、いつかみんなで…若頭領と共に、実現しよう。約束だ。」
「…うん、一緒に…!」
……
…
「…あれっ?」
ヒビキたちと別れ、戻ったアカリの部屋の前。
「うっすうっす、ただいまアカリ。」
「イノリちゃん!」
夜更けの来訪者に、顔をほころばせるアカリ。
怨玉の欠片を回収し、ノロイの予兆を未然に塞ぐ閃忍たちの旅は、今なお続いていた。
談話室でお茶を4杯用意し、長旅をねぎらうアカリ。
「世界中くまなく旅してるんだよね? 楽しそうだなあ!」
「ご冗談を。貧乏旅行の珍道中ですよお。
飛行機はぜんぶエコノミー、なけなしのマイレージも企業契約チケットでぜんぶダイビートに召し上げられますし、こないだはホテルのグレードちょっと上げたら、ユーノさんからすぐ警告メールが来ましたから。」
「忍びとはー、心の上にーやいばを置いて-。」
「あんたがその都度チクって小遣い稼ぐからでしょうがっ!」
ライカがボヤく程度には、節制の効いた清貧ツアーのようだ。
「…時々、何の因果でこいつらと旅してるのか、疑問が頭をもたげるわ。」
「なにおう! お前がバッグ盗まれた日だって不満などひと言も言わずに赦した、このイノリちゃんの寛大さ!
崇められこそすれ、呆れられる覚えはないぞ! ここをキャンプ地とする!」
「あ…あははっ…。」
なしくずしに同行が決まったアルファだったが、喧嘩するほど仲よくなった…のだろうか。
すっ。
「なけなしの旅費から捻出したので、アカリは涙にむせびながら食べるがいい。」
「あははっ…ありがとう。
えーと…のどぐろふりかけ、ゴー◯ーカレー…」
「というわけで今回は国内、能登半島でした。
今年は元日に大地震、復旧は進まないのにこの前は集中豪雨…。
ぶっちゃけ、住民の中には、苛立ちや絶望で限界ギリギリの人も結構いましたね。」
「…そうなんだ…」
「地震で潰された自宅を半年がかりで修理したのに、こんどは豪雨で土砂に埋もれた、とか…。
ぶっちゃけ、あの地域は…見放されたと感じる人々の怨念のるつぼ。
怨玉を育てるには絶好の環境でした。」
「政治家は無能かー! 与党も野党も自分の株を上げるのに被災地を利用するなー!」
「イノリ…あんた、人類アウト判定するハラなの…?」
トリオ漫才のような掛け合いだが、中身は重い。
「そうだね…私も、心が痛むなあ…。」
「あ、でも救助の皆さん、やることはやってますよ。
行政とかボランティアとか、災害初期は自衛隊とか、ちゃんとベストを尽くしてます。
民間団体も住居や自家用車を無料で貸したり、家の片付けを手伝うボランティアも毎週たくさん来ていますから。
何だかんだで、ほっとけない、私も何かしたい…
そう思って動き出す人、結構たくさんいるんですよ。」
「むう…捨てる神あれば拾う神あり。人間も捨てたものでなし。」
「だから何じゃい、その上から目線。」
……
…………
「そっか…、そうなんだ…!」
「…アカリ…?」
ライカの被災地助け合いレポートに、アカリはひどく心打たれる。
(…ちゃんと、困っている人を助けたい、って人が…
この国のあちこちに、ちゃんといて…
みんな動いているんだ…!)
4年前。
理不尽な侵略に脅かされた。何も出来ない悔しさに唇を噛んだ。
でも、エスカレイヤーたちの戦いに、希望の光を見つけた。
トキサダの呼びかけに矢も楯もたまらず、ダイビートに身を投じた。
自分に出来る何かをしたい。
護れる誰かを、護りたい。
そのために、この力を…!
…エスカ・ルビーは、そんな真っ直ぐな思いから誕生した。
だけど、時々自分が恥ずかしくなる。
こんな気持ちを持つ私は…ズレているのかな。
私が特別おせっかいなだけで。
困っている人を何とかしたい、なんて…ただの傲慢なのかなって。
だから、イノリたちの見聞き語りは、アカリの心の渇きにスッと沁みた。
この気持ちは…私だけのものなんかじゃない。
誰だって、困っている人たちに、自分ができる何かをしたいと思う。
みんながお互いに、護りたい人がいる。
だから。
「私も…」
「…アカリさん?」
「私もきっと…みんなに護られて、エスカ・ルビーとして戦えているんだね…!」
一方的に助けているんじゃない。
助けたいと思える人に、心の力を貰っている。
アカリは、自分の原動力に気づかされていた。
もっとも…
(…はあ?)
今やダイビート最強クラスの超昂戦士が、みんなに護られている…?
(うわ~、無い、無いわあ…)
…アカリの真意が見えないライカには、気持ち悪い謙遜にしか聞こえなかったようだ。
ぴーっぴーっぴーっ。
《アカリさん、アカリさん! 観てください!》
「【〔『わああっ!?!』〕】」
談話室のモニターに割り込んだ、先日着任したばかりのダイビート公式広報。
「フェ…フェリニちゃん?」
《今度のダイビート公式チャンネル、打ってつけの素材が貯まったんデスよ!
早速ながら、簡単に編集してみまシタ!
このフェリニア・クレアライズ謹製、渾身のダイビート広報PV最新作パイロット版!
刮目して見よ、デス!》
ぱっ。
(DIE-BEATロゴ)
(列車が迫る線路から少女を救出した青年)
【Q.なぜ、危険を冒してまであの子を救ったんですか?】
『エスカ・ルビーなら、きっとそうしてましたから。』
「……ほへっ?」
(戦闘で荒らされた住宅地の復旧ボランティアに従事する青年)
【Q.東北から来て下さったんですか?】
《引っ越したけど…やっぱり地元だから。
エスカ・ルビーみたいに戦えるわけじゃないけどさ、
せめて、もとジモッティーの俺も、これくらいは…なんて。》
「は…はわっ…!?」
(幼稚園でけんかを仲裁した園児)
【Q.勇敢だねえ。どうして止めに入ったの?】
〔わたし、エスカ・ルビーみたいに、みんなをまもりたいの!〕
「……~~~~~!!!(赤面)」
~届いています、超昂戦士の「護りたい」思い。
もっと伝われ、次の小さな戦士たちに~
ダイビート公式チャンネル
……かああああ……っっ!!
「や…やだあっ…!
恥ずかしいよおおおーーーーーっっ!!!」
あなたが護りたい誰かを、あなたが護る。
あなたを護りたい誰かが、あなたを護る。
超昂戦士が伸ばした手は、少女を護る盾。
かばわれた少女は、次の戦士を志し…今日も誰かに手を伸ばす。
これは、少女たちが差し伸べ合う手と手が紡ぐ物語。
次の伝説が…また始まった。
改めて、超昂大戦サービス4周年、おめでとうございます!
筆者こと超昂大戦SS書き・環藍河よりささやかながらお祝い申し上げます!
実際のサービスイン4周年記念日はもう少し先の11月25日なのですが…フェスが始まったので、もう上げていいですよね?
(実は半分しか書き上げてなくて、慌てて夕方2時間で仕上げ…
2周年記念SSは午後4時ぴったりアップで大好評だったのですが…あれから2年で私もヘタレたものです。反省。)
ともあれ、まだまだ楽しませていただきますよっ。いちユーザー、いちファンとして、今後も勝手に応援して参ります!
Nov.13th.2024 環藍河 拝