宇宙世紀0093…第二次ネオ・ジオン紛争。
シャア・アズナブル率いる新生ネオ・ジオンは地球に住まう人類の粛清を掲げ、対する地球連邦は、外郭部隊ロンド・ベルがそれを阻止せんと派遣する。
その戦いの中で起きた一つの奇跡を、一人のパイロットの視線から描いた回顧録。

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宇宙世紀0093…第二次ネオ・ジオン紛争…。
そこで起きた奇跡、アクシズ・ショックを一人のパイロットが振り返る回顧録


第1話

人の革新…ニュータイプ…。

そんなものに俺は興味は無かった。

そうだと言われている人間の近くに居ても、何ら変わらない普通の人間、まぁ、勘の鋭い、腕の良いパイロットとしか思えなかった。

 

だけど…俺はみたんだ…。

ガンダムが、ガンダムに乗ったニュータイプが起こした奇跡…。

地球を救う為に小惑星アクシズを押し戻したアムロ・レイの奇跡を…。

 

宇宙世紀0093

俺は、ロンド・ベルのパイロットとしてジェガンに乗ってあの戦場(アクシズ)にいた。

シャアのネオ・ジオンが実行した、地球寒冷化作戦の為に核弾頭を満載した小惑星アクシズを地球に落とすという作戦を阻止する為に。

 

俺は信じられなかった。

俺は新兵の時にシャアの…あの時はエゥーゴのクワトロ・バジーナ大尉だったか?

まだ青臭い餓鬼だった俺は、クワトロ大尉の演説に惹かれて、エゥーゴに参加したわけだが…その僅か数年後に、地球の為に行動しようとした人間が今度は皮肉にも地球を破壊しようとしている。

それも人類全てがニュータイプになる為だと…。

 

凡人の俺には全く理解できなかったが、一つ言えるのは人間は簡単には変われないし、変えようとしたって無駄だってことだ。

 

結局のところ、民族主義だの貧富の差だので起きるテロにしか過ぎない。

そんな冷めた感覚で俺はジェガンのコックピットに飛び込んだ。

地球には何の未練もないし、宇宙に住む事自体も抵抗が無い俺は何も感じてなかった。

 

だが周りの士気は高かった。

歴戦の叩き上げ集団であるロンド・ベルは、地球を何としても守ろうと必死だった。

ブライト司令が「みんなの命をくれ。」と言った時涙しながら敬礼する奴まで居たぐらいだ。

 

俺も敬礼したが、内心は給料分の仕事をする事と、死にたくない、ただそれだけを考えていた。

 

宇宙に出て、戦闘が始まるとネオ・ジオンも必死に抵抗してきた。

シャアの理想を信じて戦っているのか…ジオン再興を夢見ているのか…どっちでも良い事だが、ギラ・ドーガとドライセンや、ドーベン・ウルフと言った、最新鋭と若干旧式のモビルスーツが必死に飛び回ってビームとミサイルの雨を叩きつけて来た。

対するこっちも、ジェガンやジムⅢ…増援の連邦軍本隊はジムⅡなんかも居たって話だったな。

こっちも似たり寄ったりの状況で何とかアクシズの核パルスエンジンに辿り着こうと必死だった。

 

ビームライフルで幾人かのパイロットを屠った直後、俺は見た。

アムロ・レイ大尉が駆るνガンダムを。

伝説のエースの動きは…そう例え様の無い、一切の無駄を省いた完全な機動で的確に敵弾を躱して、相手のモビルスーツを撃墜していった。

 

敵も味方も恐らく選りすぐりのエース揃いの筈のこの戦場で、大尉は別格だった。

そして赤い彗星も…。

 

次に大尉を見たのは、赤い大型モビルスーツとガンダムがアクシズの表面で戦っている所だ。

どうやらお互い疲弊しきって居たが、二機とも健在、そして長時間白兵戦を演じている。

お互いとも少しでも操作を誤れば両断されていたであろう斬撃を往なし、躱し、切り結んでいた。

 

その時、運悪く、俺のジェガンは流れ弾のグレネードが当たって、大きな爆発が起きて、俺は気を失った。

 

幸いほんの少しの間だったが、俺のジェガンはシールドが完全に吹き飛んでいた。

シールドが守ってくれたお陰で機体は五体満足無事だったが、シールドに装填していたミサイルが誘爆して、俺と機体はひっくり返ってアクシズの地表に墜落したらしい。

 

生きている事が奇跡とは思いつつ、機体を起き上がらせた時、何かの拍子で通信機器のチャンネルが狂ったのか、言い争う声が俺のコックピットに流れて来た。

 

因縁のニュータイプ、アムロ・レイとシャア・アズナブルの言い争う声が。

人類に絶望せず希望を持つアムロも、その反対のシャア、互いに譲り合わない争いはほんの僅かな時間で途絶えたが、俺は愕然とした。

 

俺はただ漠然と戦場にいたに過ぎないのに、ニュータイプと言われた二人は本気で人類の行く末を案じていたのだ…。

その直後だったアクシズが爆発したのは。

ロンド・ベルの作戦がアクシズを内部から爆破して、地球への降下ルートから逸らす作戦だったからそれが成功したのだと、その時は思った。

 

だが実際は、アクシズの半分は依然地球への降下ルートに留まり、むしろ阻止出来ない状況に陥った。

終わりだ…。

誰もがそう思った事だろう。

だがガンダムはアクシズに取り付いて必死に押し戻そうとした。

 

無駄だ、そんな事をしても結末は変わらない。

分かっている、分かっていた筈なのに…。

俺は他の味方機や、さっき迄殺し合っていた敵機と一緒にアクシズに向かっていた。

馬鹿げているよな、たかだか数十機のモビルスーツで押し戻せる代物じゃ無い。

 

だけどあの時はどうしてもそうしなければと思ったんだ。

そしてあの場所には沢山の意思というものが集まっていた。

一番真っ先にアクシズを押していたアムロ大尉が「やめろ!来るんじゃない‼︎」と俺達を引き離そうとして来たが、どいつもこいつも軽口を叩いてたな。

「ロンド・ベルだけに良い格好はさせませんよ」だとか「地球がダメになるかならないかなんだ、やって見る価値ありますぜ」とか…みんな自分の命を顧みずにアクシズを押し返そうとした。

 

そしてその時だった、ガンダムから放たれた緑色の光がアクシズを包み、俺達をアクシズから引き離したんだ。

その光はアクシズを押し戻して、その進路を変えた。

信じられない光景だった。

こんな事が起こるのかと…敵も味方も呆気に取られていた。

地球の周りを緑色のオーロラが包んだ…その光はとても暖かくて、希望に満ちた物だった。

人の心の光…あれはそう呼ぶに相応しいものなのだろう。

 

だがその代償としてアムロ・レイは戦闘中行方不明…シャア・アズナブルも同様に行方不明。

あの光がもし二人のニュータイプを生贄に出ていた物なら…いや、辞めておこう。

少なくともアムロ・レイは自己犠牲の精神でアクシズを押し返そうとしたんじゃない。

人の可能性を信じて行動していたのだから…。

あれから数年…俺は未だロンド・ベルに籍を置いて、相棒(モビルスーツ)もジェガンからリゼルになったが、何も変わらない。

俺も、地球圏も、人類も。

遥かに小規模ながら、あの緑色の光がまた現れても、真の宇宙世紀憲章が「ジオンの忘れ形味のお姫様」によって白日の元に晒されても、人類は変わっていない…。

少なくとも俺が生きているうちは変わらないだろう。

だが可能性は示された…きっといつかは変わっていくのかもしれない。

あの光(オーロラ)を見た者として、俺はそれを信じて、次の世代に語り継ごうと思う…。


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