ルイズの召喚魔法によって呼び出してしまったのは、なんと、かの悪名高き営業マンであった。そんなルイズとQBとほむほむの物語? 完全にネタなのでご了承ください。以前に「にじファン」で投稿していた同名作品の改訂版です。

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営業マンと魔法少女はピンクがお好き

<ルイズは変な生物を召喚するようです>

 

「――使い魔を召喚せよ!」

 

 何度目の詠唱だったろうか、「ゼロ」のあだ名(二つ名)を持つ彼女は、遂に確かな手ごたえを感じた。

 

(やったわ、成功よ!)

 

 白煙が立ち込める中、小さな影を見つけた。

 ルイズは逸る気持ちを抑えきれず、白煙の中へ駆け込んだ。楕円形の鏡に似た魔法陣が出現したままなのには気になったが、それよりも召喚した使い魔が気になって、視線を下へ下へと降ろす。

 そして、ルイズと奴は遭遇する。

 魔術師にとっては、人生のパートナーと言っても等しい使い魔。

 

 ルイズは学院で、いや、魔法を習い始めた頃から周囲の期待を裏切り続け、何よりも自分自身を裏切り続け、家柄と母親の厳しい指導がなければ貴族としての誇りすらも見失おうとしていた。

 ある意味で、この「春の使い魔召喚」はルイズ(の精神)にとって最後のチャンスだった。

 

 ゴクリと唾を飲み込む音。

 ルイズは白煙の中心で丸くなった小さな生物を見て、自身の魔法の才を再び信じる勇気を得た。この生物は小さいし、どうみても強そうに見えない。それでもすべての魔法を爆発に変える自分が召喚できた使い魔なのだ。嬉しくない筈がない。

 ルイズは気付かない内に涙を流していた。それと共に、自分のような魔法使いに召喚された小さな生物に感謝した。

 

 ――ぴょこりと耳が動いた。

 

「あっ……」

 

 ルイズは思わず目を見張る。

 最初、それを猫かと思っていた。でもどうやら少し違う。猫耳はあるのだが、すぐ側に垂れ耳っぽいものも付いている。なんだろうこの奇怪な生物は? 幻獣だろうか?

 猫耳をぴくぴくと動かしたそいつは、ゆっくりと起き上がった。体のチェックをするように大きく伸びをして、どこか澄ました顔でルイズを見上げてきた。

 

 ぱちりぱちりと瞬き。

 赤い双眸は無機質で、感情を感じさせない。

 

「あの、えと……」

 

 ルイズは戸惑ってしまった。

 白煙が薄くなり始めてもお互いにコンタクトを取らない。ルイズは召喚した生物にまるで観察するように真っ直ぐに見詰められ、メデューサと目を合わせたかのように動けないでいた。

 どれほどの時間が流れただろう。ルイズの体感時間は非常に長く感じていたが、実際はほんの数秒であった。

 

 そして、予想外にも契約を申し出たのは、召喚された生物の方からだった。

 ニコリと可愛らしく微笑んで、

 

「僕と契約して、魔法少女になろうよっ!」

 

 瞬間、ルイズは謎の生物Xへと杖を向ける。

 

「わたしは元々魔法使いよ、馬鹿にしないで!」

 

 ルイズの激昂に対して、謎の生物は可愛らしく首を傾げる。仕草は可愛いが、無表情は相変わらずなので、やはり歪な印象を受ける。

 

「……魔法使い? 確かに、きみの中から不思議な力を感じるね。魔法少女とも魔女とも違う。ふむ、言い得て妙だね。魔法少女でも魔女でもないきみは、確かに『魔法使い』と呼ぶべきなのかもしれない」

 

 よくわからないが、認めてくれたらしい謎の生物に、ルイズは溜飲を下げる。

 

「わ、わかればいいのよ。それで、あんたはわたしと契約してくれるの?」

 

 謎の生物が無表情ながらに戸惑っているのが分かった。

 

「逆パターンとは珍しいね。僕自身、此処が違うのは分かっていたけど、どうやらきみは鹿目まどかとは、違う意味で有用らしい。もちろん契約するよ。ただし条件があるんだ」

 

「条件……?」

 

「そう。きみは世界を繋げる力を持っている。誇っていい、それはきみの類まれな才能だ。契約の条件として、その力を僕に少しだけ貸してもらいたいんだ」

 

 謎の生物が何を言っているのかは分からない。

 だが、一つだけわかる。

 自分の力が、認められているのだ。誰もが蔑んだ破壊だけの力しか持たない魔法使いを認めてくれている。

 

「いいわ、なんだってしてあげる。だから、あなたはわたしの使い魔になりなさい」

 

「使い魔……? 構わないよ。いつも、そんな感じのようにも思えるしね」

 

「……?」

 

 よくわからないが、使い魔になることを了承してくれたようだ。

 

「僕の名前は、キュゥべえ。きみの名前は?」

 

 これだけ会話を交わしておいて、名乗っていないことを思い出す。

 ルイズは短く名乗った。

 

「それじゃあ、契約しよう。きみの願いはなんだい? ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール」

 

 無機質な赤の瞳が見詰めてくる。

 なんだか話が噛み合っていない気もするが、これを逃せば使い魔との契約が果たせないような気がして、必死になって合わせた。

 

「わたしの願いは――」

 

 そんなことは決まっている。

 普通に魔法が使えるようになること。

 ただ、それだけでいい。多くは望まない。

 

 ――願いを口にしようとして、鋭い風を切る音が耳元を駆け抜けた。

 

「……っ!」

 

 ルイズは目を見開く。

 消えないままだった召喚陣に波紋が生まれ、そこからまた別の生物が姿を現そうとしているのだ。

 

「なに、どうなって……っ!?」

 

 再び白煙が巻き起こり、その中に人影が映る。

 

「――ここは、魔女の結界?」

 

 それは長い黒髪を背に流す、美しい少女だった。

 鋭い視線を周囲に向け、少女はキュゥべえを目にしてカッと眼を剥いた。

 

「インキュベーター……今度は何を企んでいるの」

 

 キュゥべえはまるで愛玩動物のように可愛らしく首を傾げる。

 

「暁美ほむら。残念ながら僕は何もしていないよ。きみをここに呼んだのは彼女さ」

 

 ほむらはゆっくりとルイズを振り返った。

 

「えっ……」

 

 何故だろうか。ほむらは、ルイズに「たった一人の友達」の姿を幻視した。かつて、何度も救おうとして失敗した彼女――しかし、幾度ものループを乗り越えてあの「物語」はハッピーエンドで締め括られたのだ。彼女が彼女の幸せを見つけた時、暁美ほむらの戦いは終わった。

 呆然と立ち尽くすほむらに、ルイズは混乱する。

 

「ど、どうして今度は人間が出てくるのよ!?」

 

 ここに、異世界(ハルケギニア)の魔法使いと魔法少女は出逢った。

 絶望の未来を回避するために戦い続けた魔法少女は、魔法使いとの触れ合いで人としての温かさを取り戻していく。

 己の才の無さに絶望し続けた魔法使いは、魔法少女との触れ合いで何事にも挫けない強い意志を手に入れる。

 

 ――交差する二つの世界はやがてどこに導かれるのか。それを知る者はいない。

 

 

 

 

 

<もしも続いたならば、という妄想>

 ほむらは、目の前で傷つけられたルイズに彼女の姿を重ねた。

 

「……っ!」

 

 後は無意識の内に体が動いた。

 ソウルジェムに呼び掛けて、魔法少女の姿へと変身する。

 ギーシュという名の少年が一体どれほどのものなのか、それはどうでもいい。彼はルイズ――彼女を傷つけた。倒すのに理由はそれだけで充分。そして、その想いだけでどんな強敵すらも倒す自信があった。

 

 世界にとっては一瞬。

 ほむらにとっては数十秒。

 それで決着は着いた。

 

「動けば殺すわ」

 

 ほむらはを黒光りする拳銃をギーシュの額に向けた。背後では複数の爆発音。お手製の爆弾がワルキューレを粉砕したのだ。

 無機質な冷たさと、どこまでも冷え切ったほむらの声にギーシュは観念した。

 強過ぎる自分の使い魔にルイズは口が開いたままだった。

 

 また、ほむら自身も自分の体が軽過ぎることや動きが俊敏すぎること、また武器の扱いが本来より熟達していることに驚いていた。

 二人はまだ知らない。それがガンダールヴのルーンの力であること。そして、それは伝説の担い手であるのを意味することを。

 

 

 

 

 フーケのゴーレムは予想以上に手強かった。

 銃弾を幾ら放ったところで削ることには削れるが、すぐに元に戻ってしまう。ルイズの爆発魔法も同じ結果であった。破壊力に特化した二人でそうならば、キュルケやタバサが太刀打ちできるはずもなかった。

 万策尽きたルイズにキュゥべえが静かに歩み寄ってくる。

 

「ルイズ、僕と契約すればあの程度の障害、簡単に振り払える」

 

「えっ……?」

 

 ルイズはその甘言に耳を傾けてしまう。

 ほむらはなびくピンクの後ろ髪に、彼女の姿を見た。

 

「だめ」

 

 それだけは、契約だけはしてはいけない。お願い騙されないで――!

 ほむらは精一杯に思考を回転させ、タバサの持つ「破壊の杖」を捉えた。

 キュゥべえはルイズに一歩近付く。

 

「さあ、奇跡を願うんだ。そうすればみんなを救えるよ」

 

「わたしは――」

 

「その必要は無いわ」

 

 ほむらは破壊の杖を構えて、そして頭に流れ込む知識のままに操作し、ゴーレムへと撃ち込んだ。

 

 

 

 

 ワルドに追い詰められたルイズ。

 

「さあ、ルイズ! 僕と一緒に行こう。僕にはきみが必要なんだ!」

 

 満身創痍といった様子で、ルイズは床を這って必死に逃げる。ワルドの目にはかつての優しさは一欠けらも宿っていなかった。

 

「いやよ! あなたが欲しいのはわたしのありもしない力でしょ!」

 

「そうさ。そうだとも。僕はきみのその力を必要としているんだ」

 

 絶体絶命のピンチにルイズは死を覚悟した。しかし、それを救おうとする一匹の生物が現れる。

 

「ルイズ、お困りみたいだね。僕と契約すればこんな危機、簡単に切り抜けられるよ」

 

「…………」

 

 ルイズはほむらから何度もキュゥべえと契約するなと言われていた。それでも、死にたくはなかった。

 だから――

 

「僕と契約して魔法少女に――」

 

「その必要は無いわ」

 

 しかし、間一髪のところで使い魔であるほむらが現れた。両手に拳銃を持って、それぞれワルドとキュゥべえに向かって容赦無く撃ち放つ。

 

「ルイズは誰にも渡さないわ」

 

 新時代のガンダールヴは銃を自在に操り、閃光の二つ名を持つワルドを圧倒した。

 その光景を、キュゥべえはあくまで無表情で見詰めていた。

 

 

 

 

 タルブ村がアルビオンの襲撃を受けているらしい。

 そう聞いたルイズは、ほむらとの繋がりで平民ながら自分を支えてくれるシエスタの存在を思い浮かべた。彼女の故郷はタルブだ。しかも運悪く里帰りをしている。

 

「ここからじゃ馬でいっても……」

 

 残念ながら学院に竜は居ない。いや、竜だとしても間に合わない。辿り着いたところで、戦火を上げるタルブ村を見るだけだろう。

 暗がりからキュゥべえが姿を現す。

 

「僕と契約すれば、一瞬で目的地へいくことだってできるよ」

 

「それは……」

 

「さあ、僕と契約して魔法少女――」

 

「その必要は無いわ」

 

 しかし、我らがほむらはそれを見逃さない。

 

「ほむら……」

 

「さあルイズ、早く乗りなさい」

 

 ほむらはくいっと親指で背後に静かに眠る銀色の竜を示した。

 それはゼロ戦。ハルケギニアで眠る近代兵器。

 そして、ほむらにはそれを操る術があった。

 

 

 

 

 迫り来る7万の軍勢。

 ルイズはほむらを騙して、たった一人で迎え撃とうとしていた。

 

「このままじゃ確実に死んでしまうよ」

 

「わかってるわ……」

 

「無駄に命を散らすのなら、もっと有効活用しないかい。そう、宇宙のために死んでくれよ」

 

「宇宙のために……?」

 

「そうさ。僕はそのためにきみたちの感情エネルギーを集めている。きみだってまだ死にたくないだろう? なら、僕と契約して魔法少女になろうよ! そうすればあの程度の数の人間、簡単に倒せるさ」

 

「わたしは……」

 

「きみが死ねば、暁美ほむらは悲しむよ」

 

「……っ!」

 

「それでも、ここで死を選ぶのかい?」

 

 キュゥべえの容赦無い「営業」の前に、ルイズも遂に挫けそうになっていた。

 

 ほむらはたとえ平民でも、大切な友人だった。

 たまに変なお願いもしてきたけど――

 

『私のことはほむらちゃんと呼んでくれると嬉しいわ』

『この服(まどかの魔法少女衣装)を着てみない。きっと似合うと思うの』

『髪を短くする気はないかしら?』

『ルイズ、ツインテールにしてみない?』

『できればこの赤い髪留めを使って欲しいのだけれど……』

 

 ――うん、瑣末なことだ。

 

「わたしは……」

 

 契約すれば、それはほむらへの裏切りだ。

 でも、死んでしまうことこそが真の裏切りではないのだろうか?

 

「契約……」

 

 ルイズの手がキュゥべえに伸びる。

 心なしか、キュゥべえが笑っているように見えた。

 そして――

 

 

「その必要は無いわ」

 

 

 魔法少女に変身したほむらがルイズとキュゥべえの間に現れた。

 

「ほむら!」とルイズの嬉しいけど、どうして来てしまったのかという複雑な声音。

「暁美……ほむら」と感情を持たないはずのキュゥべえは苦々しい声を漏らした。

 

 ほむらはゆっくりとキュゥべえに銃口を向けた。

 

「あなたの好きにはさせない」

 

 トリガーを引く。

 キュゥべえは蜂の巣になり、その場に崩れた。

 

「ほむら……ありがとう。でも、もういいわ。フネに戻りなさい」

 

「戻るのはルイズよ」

 

 ほむらの魔法が発動し、その瞬間、ほむらの姿は掻き消える。

 

「あっ……」

 

 ルイズはトンッという軽い衝撃を首に受けて、意識を手放す。

 最後にほむらの声が聞こえてきた。

 

「ごめんなさい……でも、もう二度と――」

 

 ほむらは付き添ってくれたジュリオにルイズを託して、一人孤独な戦場へと立つ。それはほむらにとっては普通のことだった。少しだけ、そうルイズと過ごした日々は確かに幸せだったが、そちらの方が異常だったのだ。

 

「私は絶対に負けない」

 

 不幸な未来など認めない。

 たとえすべてが滅びに向かっても、私だけは決して認めない。

 そう、何度だって繰り返そう。

 ――幸せな未来を掴めるまで。

 

 

 

 

 ルイズは死んだはずの――しかし、生きていると信じていたほむらと深い森の中で再会した。

 

「ほむらっ!」

 

「杖を構えなさい」

 

 涙を堪えて駆け出すルイズに、ほむらは冷たく言い放った。

 

「えっ……?」

 

「最後にあなたに会えてよかった」

 

「どういう意味よ? ねえ、どうしたのほむら? やっと再会できたのに……どうして、どうしてそんな悲しそうな顔をするのよ!?」

 

 ほむらは黙ってソウルジェムを差し出した。

 

「これっ!?」

 

 ソウルジェムは黒く濁っていた。

 

「わたしにはもう時間が無い。戦争で人の汚い部分を見過ぎてしまったわ。それに……この世界に魔女は居ない」

 

 恐らくはキュゥべえの策略なのだろう。ほむらさえ消えてしまえば、莫大なエネルギー――ルイズが手に入る。それ故に、小物は放っておき魔女を、グリーフシードを生み出さないようにしていたのである。

 

「でも、まだ他にも方法があるはずよ!」

 

「あっても、奴がさせないでしょうね。あるいは既に考えられる他の方法をすべて不可能にしている可能性も考えられる」

 

 そう、奴はまるで彼女に対してと同じぐらいルイズに執着を示している。

 だからほむらは最後にルイズに出会えてよかったと思っている。ちゃんと思いを伝えられるから。

 

「ルイズ、決して奴と契約を交わさないで。お願い……約束して」

 

 ルイズは、それがほむらの最後のお願いなのだと察して、涙を呑んで頷いた。

 俯いたままソウルジェムを受け取る。

 

「お別れよ」

 

 ほむらは淡く微笑んで、ゆっくりを瞼を閉じた。

 ようやく彼女に会いに行ける。最後まで精一杯に戦ったのだ。これなら、彼女も笑顔で迎えてくれるだろう。幾つもの世界で失った彼女に――。

 

 ルイズは嗚咽を混じらせながら、エクスプロージョンを唱えた。

 ソウルジェムは爆発し、ひびが入った。

 ほむらは糸が切れた人形のようにゆっくりとその場に崩れ落ちていく。

 

「まどか……約束、守ったよ」

 

 そして、ソウルジェムが粉々に砕け散ると、魂を失った肉体もまたその活動を永遠に停止した。

 森の中、ルイズの慟哭が響き渡った。

 

 

 

 

 人目のつかない森の中を、一人で茫然自失という状態で歩く虚無の担い手(ルイズ)を無視するほど、ミョズニトニルンは優しくはなかった。

 襲い掛かるアルヴィーの群れにルイズは必死でディスペルを使って応戦した。

 

「死ぬ訳にはいかないのよ! わたしは、わたしはほむらの分まで――きゃぁっ!」

 

 しかし、使い魔(ガンダールヴ)の居ない虚無の担い手一人では、神の頭脳ミョズニトニルンに太刀打ちするのは至難の業であった。詠唱する暇すら与えられず、必死にかわして、ほんの少しの時間でディスペルを短く唱える。それだけの抵抗しかできなかった。

 

 ルイズは攻撃をかわしている内に足場を失い、がけ下へと落ちてしまった。足が痛み立ち上がることすら難しい。

 どうすれば生き残れる。

 相手はご丁寧にも自己紹介をしてくれた。だから、相手の戦法はわかるが、それを破る方法がない。詠唱する時間さえ確保できれば戦えるのだが、その時間を稼いでくれる使い魔はもう居ない。

 

『もう打つ手はないだろう? 僕と契約すれば、あんな人間、すぐに倒せるよ』

 

 キュゥべえのテレパシーが脳に直接語り掛けてくる。

 ルイズは必死に無視して、作戦を考える。

 

『このままじゃ無駄に命を散らすだけだよ。だから、僕が有効活用してあげる。さあ、僕と契約して魔法少女になろうよ!』

 

 そんなものになってたまるか。

 ルイズは不利な状況を打開する策を必死に考え続ける。死の目前まで、決して手を抜いてはいけない。ほむらだって最後の最後まで戦っていたのだから。

 

『暁美ほむらはもう居ない。きみ一人じゃ、あいつには勝てないよ?』

 

 うるさい。そんなことわかっている。そんなこと……分かり切っているんだ。

 もう居ないのは……もう居ない?

 

「なら……もう一度」

 

 ――使い魔は何度だって召喚できるのだから。

 それしかないのだろうか。

 いや、それしかないのだろう。

 ルイズは覚悟を決めて、口語の呪文を唱えた。

 

「五つの力を司るペンタゴン――」

 

 思い浮かべるのは共に戦い続けたほむらの姿。

 たとえ身分が違くとも、たとえ世界が違くとも――ほむらは大切な友人だった。

 

「我の運命に従いし――」

 

 決して忘れない。だからこそ、新たな使い魔を呼ぼう。ほむらの生きた証を遺し続けるために、ルイズは死ぬことはできない。

 

「使い魔を――えっ?」

 

 まだ詠唱を終えていないというのに、目の前にゲートが現れた。

 光り輝くゲートから、ゆっくりと人間が姿を現す。大地に降り立つと、ゲートは消えていく。人間は周囲を見回し状況を確認すると、ルイズに目を向けた。

 危機的状況だというのを忘れて、二人は無言で見詰め合う。

 

 

 ゲートから姿を現した人間は、ルイズの目元にたまった涙をそっと掬い取る。

 そして――長い黒髪をかき上げた。




 この作品はにじファンに投稿していた同名の作品を改訂したものです。
 読めば分かる通り、ほむほむへの愛と、キュゥべえの容赦なき営業で構成されている作品です。寧ろそれだけで構成されていると言っても過言ではありません。
 脳内設定では、最後にもう一度現れたほむほむは、「魔法少女るいず☆マギカ」のほむほむだったりとか妄想してます。

 ちなみに、本編に登場するほむほむは、まどかを女神にせずに物語を終わらせています。これは、この作品を『にじファン』で書いていた時点で、原作が最終話まで行っていなかったことが原因です(たぶん10話ぐらいまでだったような)。既に書き終えた作品だったので、余り変更は加えず、あえて、その部分は直さないでおきました。

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