石化王に帰る国はない 〜 目覚めた王は、盟友と新世界を駆け抜ける   作:裃 左右

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また、少し前からランキングに浮上してまして、先日、オリジナルランキングで12位
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そのおかげか、読者数も伸びて新規の方も来てくれました。
ずっと、応援くださったみなさんのおかげですね。
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評価やお気に入りに入れてくださること、どんなに心強いか。

最初の頃、1人増えることがものすごいことでした。
その積み重ね、有難いなって思います。


第5話 また変なのが増えた

 突然の乱入者に、老騎士キホーテは感心したような笑みを浮かべた。

 

「ほほう、見事な戒め。剣が引き抜かれる寸前に、とっさに制するなど只者ではありませんな。さぞかし名のある御仁なのでしょう、助太刀に感謝いたしまする」

 

 仰々しく告げてから、キホーテは構えを解き、深々と一礼した。リューファスは軽く片手を挙げ、敬意に応える。

 

「礼には及ばん、食卓での流血を避けたまでだ」

 

 リューファスはとぼけたように返すと、腕を離した。解放されたチンピラは、尻もちをつき、あわてて腕を抑えたまま逃げ出す。

 

 「無様な。せめて、倒れた仲間を連れて行けばよいものを」と、リューファスは男の背中を鼻で笑い、床に転がる二人を見下ろす。

 

 骨折したらしい男は、脂汗を流しながら呻き続けている。もう一人は、意識こそあるようだが、完全に戦意を喪失していた。

 

 ようやく恰幅の良い店主はカウンターから出ると、面倒くさそうに頭を掻きながら駆け寄り、彼らの様子を確認し始めた。容赦なく平手で顔面を叩いている。

 

 そこでようやく、女給は事態が収束したことに安堵し、小さく息をついた。そして、戸惑いと感謝が入り混じった表情で、キホーテとリューファスを交互に見た。

 かえって騒ぎが大きくなったのは明白、女給は素直に礼を言うべきか迷ったものの言葉を紡いだ。

 

「えと……助けて下さり、ありがとうございます?」

 

 キホーテは朗らかに笑い、甲冑越しにその柔らかな手を握ると、恭しく跪く。

 

「当然のことながら、麗しき乙女よ。貴女のような美しくも心優しい方が、卑劣なごろつきどもの手に苦しめられているのを、この偉大なる(ドン)・キホーテが見過ごすわけには参りません。貴女の安堵した表情こそが、儂にとって何よりの褒美にございます」

 

 大仰な態度に、女給は顔をこわばらせたが、なんとか頭を下げて仕事に戻った。

 

 店内に再びざわめきが戻り始めた。客たちは、面白いものが見れたと騒動を肴に、再び酒を飲み始める。しかし、視線は、時折キホーテとリューファスに向けられていた。

 喧嘩にテーブルが巻き込まれた一同だけは、倒れたチンピラに請求しようと群がったが。

 

「おい、キホーテ爺さん。ちゃんとオレは、一部始終を記録したぜ。マジ超激写。つか、アンタもイケてたぜ。金髪のオッサン」

 

 サンチョは目をキラキラと輝かせながら、リューファスに近づいた。その軽薄な態度は相変わらずだが、先程までの弱々しさはどこへやら、興奮した様子でまくし立てている。

 片手には、一般市民には珍しい写真機(カメラ)が握られていた。

 

「うむうむ、でかしたぞ。我が従者サンチョよ」

「……オッサン?」

 

 リューファスはムスッと不本意そうに聞き返した。

 とは言え、いくら彼の顔立ちが整っており若く見えるとは言え、このサンチョと言う若者からすれば、そう呼ばれても仕方がない。

 

(人生で初めて、オッサンって呼ばれたんだろうな。リューファス)

 

 メッツァはあえて口を出さず、給仕に注文を済ませることにした。

 ちょっとした喧嘩(ショウタイム)で中断していたが、さっさと腹ごなしをしたい。

 

 旨そうな名物料理を頼んでいく。濃厚クリームのサーモンスープは外せないし、川魚のフライは定番だと手持ちの旅行ガイドブックにも書いてあった。

 しかし、メニューに品数限定と記載があったトナカイの煮込みや、トナカイチーズも食べてみたい。きっと、遊牧するカモス人から仕入れているのだろう。

 

「とりあえず、これと……これも。スパイス入りの蒸留酒、サイダー割りあります?」

「さすがに炭酸水は、うちでは扱ってないですね」

「あー、そういうもんなんだ」

 

 共和国とは勝手が違うな、と頷きながら、注文を終えた頃にまた威勢の良い声が聞こえた。

 

「おお、それは光栄ですな! 儂も、貴殿のような勇敢な御仁とお話できるのを楽しみにしておりましたぞ! ぜひ、ご相伴に預かりましょう」

 

 なぜか、自称老騎士キホーテとサンチョは、こちらのテーブルに腰を下ろし始めた。リューファスも当たり前のように、ドンと構える。

 さすがにメッツァは頭を抱えた。その眉間にシワが寄る。

 

(また、変なのが増えた。なんで連れて来てるんだよ!)

 

 思わず、リューファスを睨みつけるが、蚊が止まったほどにも感じていないらしい。

 なお、食事の支払いは、すべてメッツァが請け負っている。

 

「えっ、なに頼んでもいいのかよ。マジィ? ありがてぇ、テンションぶち上げ~♪」

「では、儂はジョッキでエールを頂くとしよう。む、豆はないのか、豆は!」

「そんなものより、こいつにしようぜ。なに、トナカイって。マジ、ウケんだけど。写真撮ろうぜ」

「なぬ、そんなものが……これもまた挑戦と言うものか」

 

 騒がしい。この二人、あまりにも騒がしい。目の前で喜劇が披露されているようにすら思うほどだ。

 それをリューファスは、「くるしゅうない」と寛大な態度で促す。

 

「よいよい、落ち着け。ゆっくりと好きなだけ食べるがよい。ここは余が持とうではないか」

「いや、だからさ。払うの僕なんだけど」

「だが、最終的な支払先はベスタル家であろう」

 

 それは、その通りだった。

 実のところ、食費どころか、ゴーレム戦車『ポラカント』の代金も含めて必要経費はほとんどすべてベスタル家に請求している。

 

「コレーが、真に余を欲すると言うならば、まずはこの程度は誠意として払ってもらわねばな。余の客人二人を持て成せぬと言うなら、名家が聞いて呆れるだろう」

「相手からの提案、蹴っといてよくそんな態度とれるね。なに、王様ってみんなそんなに面の皮が厚いの?」

 

 思わずつっこむメッツァだが、ゴーレム車両『ポラカント』を率先して手配したのは彼だ。

 自分の実家に逆らっておいて、平気な顔で請求書を山のように叩きつけては、非難を全て論理で叩き潰している。

 今まで実家にやり込められていた憂さ晴らしも、兼ねている辺り、メッツァも面の皮の厚さなら負けていない。

 

(まあ、とは言え。……この二人の素性が気になるのは事実だな)

 

 遍歴の騎士を名乗る老人キホーテ。その従者である若者サンチョ。

 この老人が纏う魔導甲冑は、旧式ではあるが戦争で使用される兵器の1つ。古い時代、騎士が戦場の主力となりえたのは、ひとえにこの纏える兵器によるものだった。




◎魔導甲冑
 鉄と呪詛が絡み合う、騎士の鎧。
 それは、脆弱な肉を人間戦車へと変貌させる。
 内蔵された演算器は、骨の軋み、筋肉の繊維一本に至るまでを解析。
 微弱な魔力をエンジンへと送り込むと着用者の意のままに、鎧を制御。
 着用者に常識を超えた力と速度を与える。
 外装には、複雑な回路が幾重にも刻まれ、エメラルド色の淡い光を放つ。
 別名、強化外装。
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