グラコロの季節がやってきた。という話をしたあと、ミホノブルボンがトレーニングに来なかった。何がいけなかったのだろう。
オレは悩みながらもミホノブルボンを探すのだった。
※ピクシブにも投稿しております

1 / 1
第1話

「そういえば、もうグラコロの季節だなぁ」

 

 朝、柔らかな日差しが入り込むトレーナー室。

 椅子に座りながら週刊誌を開いていたオレは、淹れたてのコーヒーに口をつける。

 

 コンビニでテイクアウトしてきたブレンドコーヒーだ。

 甘みと豊かなコク、まろやかさが口の中に広がっていき、その匂いも堪能する。

 

 ぽつりと呟いた言葉に、ソファに座っていた待機中ミホノブルボンは、澄んだ瞳で見つめてきた。

 

「確認します。グラコロとは、マクドナル〇の期間限定商品である『グラタンコロッケバーガー』を指していますか?」

 

 長いまつげを瞬きとともにパチパチと上下させ、問いかけてきた彼女に頷く。

 

「そうそう、それそれ」

 

 さらに一口、コーヒーを含む。

 香ばしい匂いが鼻いっぱいである。

 

 オレたちはトゥインクルシリーズの大事な3年間を終え、休息に入っていた。

 有馬記念も制し、オレとブルボンは目下のところ何もすることはなくなっている。

 もちろん束の間の休みであるため、体が鈍らないようにトレーニングは続けているのだが。

 

「マスターは、グラコロが好きなのですか?」

「うーん、好きってほどじゃないけど、嫌いでもないかな。年末年始は忙しいことが多くて、だいたい2年に1回くらいしか食べてないかも」

 

 オレが少し考え込んでから答えると、ブルボンは目を細め、小さくうなずいた。

 

「2年に1回……理解しました。嫌いではないが、食べる機会があまりないということですね」

 

 オレは彼女の、いつものようなロボットっぽい反応に少し笑って、コーヒーを飲み干してしまう。

 腰かけていた椅子を姿勢よく座りなおし、グラコロの記事が載った雑誌を机に置いた。

 さて、一日の始まりだ。

 

「そうだな。でも、こうして話してると、久しぶりに食べてみたくなるな」

 

 そう言い終えると、ブルボンは視線をオレから床に移して、それっきり黙ってしまうのだった。

 

――

 

「あれ? 時間、間違ってる……?」

 

 時計は十四時を回る。

 持っていたバインダーごと、頭に乗っけて、オレは時計を確認した。

 首をかしげつつ、頭をバインダーでかく。

 

「何かあったのか……? いや、ブルボンの身に何かあればオレにも連絡が来るはずだが……」

 

 いつもなら、きっちりと時間を守るブルボンが、なぜか姿を見せない。

 ただ、過去に一度だけトレーニング時間になっても来なかったことがあった。

 

「んん~、なまけ癖か……? いやいや、それとも何か気に障ること、言ったっけ?」

 

 頭をよぎるのは、いつも真面目で几帳面なブルボンだ。

 そんな彼女が連絡もなく遅れるなんて、普通なら考えにくい。

 

 心配になったオレはとりあえず、食堂に行ってみることにした――。

 

――

 

「ここには、いないな……」

 

 食堂には、すでに昼ご飯を食べ終えた生徒たちが談笑していたり、まだまだ大量のご飯を頬張っている生徒もいた。

 

「タマ、おかわりを頼む」

「よしよし、たんとお食べ~、ってウチはアンタのおかんか!」

「そうですよオグリちゃん。タマちゃんは、赤ちゃんでちゅよ」

「イナリぃ! 助けてくれぇ!」

 

 彼女のスマホにかけてみるが、やはり繋がらない。彼女の特異体質のせいなのだろうが……。

 何かあったのかと、だんだん心配になってきたので、聞き込みを開始することにした。

 

「ブルボンさんですか? うーん、見てないですねぇ。マックイーンさんたちはどうですか?」

「わたくしは見かけておりませんわよね、テイオー?」

「うん、ボクも見てないよー」

 

 手がかりはなし。

 誰もブルボンを見かけていないらしい。

 

「どこにいったんだ……?」

 

 ふと外を見ると、いつもとは違って静けさが広がっているように感じられた。

 さらに不安になりながらも、オレは足早に校舎の奥へと進んでいく。

 

 廊下を歩きながら、オレはブルボンの級友である学級委員長、サクラバクシンオーがいる教室を見つけた。

 首だけを覗かせて中の様子を見る。

 

「ちょわっ!? ブルボンさんのトレーナーさんではないですか! どうされましたか!」

 

 ちょうどバクシンオーが出入り口に歩いていたところで、彼女はオレの顔を見るやいなや、尻尾をビーンと上に伸ばした。

 

「バクシン。ブルボンを見なかったか? 今日のトレーニングに来なくて、どこに行ったか探してるんだ」

「はて、ブルボンさんですか……? 授業中は当然いらっしゃいましたが、終わってからは見ていませんね」

「そうか……。困ったな」

「はっ!? もしかすると!」

「心当たりがあるのか!」

「はい! 昨日、熱心に計画を立てている姿を見かけましたよ! 恐らく今後に何か関係があるのでは?」

 

 ふむ。トレーニング計画か。

 

「もしや、ブルボンさんも『トレーニング占い』を遂行中なのでしょうか! バクシンバクシン!」

 

 シュバババババ! と、バクシンオーは両手両足を大きく上げて、興奮気味に拳を握りしめた。

 

「なにそれ? 知らないんだけど」

「トレーニング占いとは! 様々な悩みを解決できる、バクシンな占いです。今後の計画を立てる際にも役立つという噂があります。トレーナーさんもいかがでしょう!」

 

 眩いデコをこちらに食らわせようとする彼女に苦笑しつつ、オレは考え込む。

 

「まぁ確かに今後のレースは、何に出るかは決まってないから、彼女なりに考えているのかもしれないな」

「おおお!! ではやはりスプリンターズステークスに!!」

「まだ決まっていないっての。ちなみに、そのトレーニング計画の内容は知らないよな?」

 

 聞き返すと、バクシンオーは残念そうに首を振った。

 

「残念ながら……! ですが、何か特別な場所で短距離路線に向けて黙々と鍛えている可能性もあります! 応援していますので、頑張って見つけてくださいね!」

 

 うーむ、オレに黙って計画か。

 もちろん短距離路線は、ブルボンにはもともとそっちの素質があった。

 彼女の三冠の夢は叶い、天皇賞春、JC、そして有馬。中長距離の功績も二人で残せたのだ。

 だからこそ、そういうことならオレに一度は相談してくれると思うのだが……。

 

「では私はこれで!」

「ああ、ありがとうな」

 

 ともあれ、オレは彼女に礼を言って、次の場所へ向かうことにした。

 ――次に訪れたのは、校庭の端で花壇の世話をしていたニシノフラワーのもとだった。

 冬のため花は咲いてないが、無邪気に鼻歌を歌いながら土の手入れをしている。

 

「あ、ブルボンさんのトレーナーさん! こんにちは!」

 

 花の咲いたような笑顔で挨拶してくれた彼女に、手を振る。

 

「やあ、フラワー。ブルボンを見なかったか? 探しているんだけど……」

「ブルボンさんは朝は先に出かけておりましたので、今日は見ていません。でも確かトレーナーさんのところでミーティングと聞いていましたが、会わなかったのですか?」

「いや、朝はちゃんと会えたんだが、午後からのトレーニングに来ないんだ……。それで探しててね」

「え、そうだったんですか……うーん、ブルボンさん、どこに行っちゃったんでしょう?」

 

 ニシノフラワーは目を丸くして、首を傾げている。

 そんな姿にこっちまで微笑んでしまう。

 

「ありがとう、フラワー。何かわかったことがあれば、教えてくれるか?」

「はい……。お役に立てなくてごめんなさい」

 

 フラワーは残念そうに頭を下げてくる。

 オレはそんな彼女の頭を、ぽんぽんと小さく撫でてやった。

 

「謝らなくていいよ。君が見ていないということも一つのヒントになるからね」

 

 オレは彼女に礼を言い、次の候補に向かう。

 

 さて、こういう時は彼女、ライスシャワーなら何か知っているだろうか。

 今ならちょうど彼女もトレーニングをしている頃だろうということで、筋トレルームにやってきた。

 

「ライス、ちょっといいか?」

「あ、トレーナーさん。どうしたんですか?」

「実は、ブルボンを探しててね」

 

 オレはかくかくしかじかと事情を説明する。

 しかしながらライスも眉を残念そうに曲げて言う。

 

「ごめんなさい。ライスも、見てないです。教室では一緒にいましたけど、その後はてっきり、トレーナーさんの元に行ったかと……」

「教室から出るブルボンは見たんだね?」

「はい、いつもと特に変わらない様子でした……。あ、でも、時間を気にしてたような?」

 

 時間か。

 ということは、トレーニングの時間は把握できていると見ていい。

 もしくは、オレの連絡ミスで時間を間違えているということもあり得る。

 そういった連絡は彼女の体質上、紙媒体や口頭で伝えることにしているためだ。

 

「えっと、トレーナーさん……ブルボンさんのこと、心配ですよね」

 

 ライスは少し控えめな様子で、少し申し訳なさそうに話しかけてきた。

 

「ああ、オレの連絡ミスかなとも思ったんだけど、どこにもいないしな……」

 

 最近のブルボンを思い出すが、特に変わった様子はなかった。

 しかしバクシンオーの、ブルボンが計画を立てていた話を思い出し冗談めかしに言う。

 

「もしかしてオレ、ブルボンに嫌われたか? なんて」

 

 するとライスは一生懸命、首をぶんぶん振って否定してくる。

 

「そんなわけありません……! ブルボンさんは、いつもトレーナーさんのこと、大切に想ってましゅ! あぅ、嚙んじゃったぁ……」

「ありがとうライス。それなら良いんだけど……」

 

 オレは軽く微笑んで、ライスにお礼を言った。

 

 残念ながらここまで手がかりはなし。

 ちなみに、すでにLANEにはメッセージを送っているが、エラーで送信できないの一点張りだ。

 やはりブルボンの体質でジャミングされているのかもしれない。

 

「仕方ない。屋上から探してみるか」

 

 オレは校舎を5階ほど上がり、屋上のドアを静かに押し開ける。

 

 冷たい風が頬をかすめ、広がる空が視界に入る。

 屋上は転落防止用のフェンスがそびえ立っているが、金網の隙間から景色は見えた。

 

「ブルボン、一体どこに……」

 

 小さくつぶやくと、胸の中に広がる不安が静かに響くようだった。

 今まで考えられる場所を全て回っても、彼女の姿は見当たらない。

 

「バクシンオーの話だと、計画を立てていた……。もしそれが短距離路線なら……」

 

 適性がないわけではないので、そっちを狙うことも考えているのだろうか。

 

「そっちの路線専門のトレーナーに教わりたいから、契約解除ってこともあり得るのか……」

 

 だから練習に来る必要がない。

 いや、さすがにそんなことはあり得ないよな? だってブルボンはそんなこと……

 でもブルボンに嫌われていたら、いやいや、そんなことは……。

 

「最近ドゥラメンテっていいよな、とか呟いちゃってたし」

 

 思えば、オレはまだ新人トレーナー。

 G1を制したのもブルボンが凄かったからだ。

 ベテランのトレーナーのところで、もっとレベルアップしたいって思うこともあり得る。

 

「もし契約を破棄したいですって、言われたらどうしよう」

 

 そうなったらショックすぎる。

 

「でもブルボンの意思を尊重してあげないとな……ってか、寒っ!?」

 

 身震いしていると、冬の風が肌を突きさし、さらに体がすくんだ。

 こういう時に、グラコロ食べたら旨いんだよなぁ。

 そう思った時。 

 ふと、朝の会話を思い出す。

 

「……、グラコロ?」

 

 そう言えば、グラコロの話題を出した時だった。

 彼女は、何かを考えていたように見えた。

 

「まさか、グラコロが嫌いで、食べたいって言ったオレを軽蔑した?」

 

 グラコロは確かに人気商品だが、人によってはあまり好きではないという意見もある。

 

『マスターは、グラタンにパンを求めてる人だったんですね。はぁーあ、溜息を吐きます。そんな人だとは失望しました。契約を解除しましょう』

 

 ブルボンの声で、そんな言葉が脳内再生される。

 

「うぉおおお! すまないブルボン、違うんだ……! つい出来心で!」

 

 くそ、悪いことばかり考えてしまう。

 ここは冷静になろう。

 深く息を吸い込んで、静かな風を感じるのだ。

 

 目の前には広がる空、そしてその先に見える町の風景。

 遠くの街並みや、車の流れが何気ない日常を映し出していた。

 

「ん?」

 

 ふと、視線が町の方に向かう。

 

 忙しい通り、静かな住宅街、そして少し離れた場所に見える大きなショッピングモール。その反対側には商店街。

 その一角を見て、オレはハッと気づいた。

 

「そうだ、今日ってグラコロの発売日じゃなかったか?」

 

 確か今朝の記事。グラコロの味や食感がレポートされていたが、最後に今日の日付が書いてあったはずだ。

 

「間違いない。今日が発売日だ。もしかして、グラコロを買いに行ったのかもしれない」

 

 そうだ、逆に考えるんだ。

 もしかするとブルボンは、グラコロが好きでその味を楽しみたくなったのかもしれない。

 

 栄養面に関しても几帳面な彼女が、グラコロを食べるためにトレーニングをサボるとは考えにくいが、今は休養期間。

 食べたいと思ってもおかしくはない。 

 

「それなら、オレも誘ってほしかったな。やっぱ嫌われてるのかな……」

 

 どんよりと心の中が曇っていき、力が抜けそうだった。

 短距離はオレの専門外だ。

 もし本当に契約を解除するつもりなら、彼女の意思を尊重しよう。

 仮に嫌われていたとしても……今のオレは、彼女のトレーナーだ。

 最後まで、その責務を全うしよう。

 

「ええい、行ってみるか!」

 

 オレは屋上を後にし、急いで学園を駆け出した。

 校門を抜け、たづなさんに手で挨拶し、町へ繰り出す。

 商店街を突き抜け、坂道を走ったところで大通りへ。

 

 マクドナル○の看板が見え、行きかう人々の間を縫っていく。

 時折振り返ってくるウマ娘たちが、珍しそうに見つめてくるのは無視だ。

 

「間違いない。今日が発売日だ……」

 

 予想通り、店の前にはグラコロ発売の旗がたくさん並んでいて、それ以上に人々が行列をなしていた。

 昼ごはんの時間はズレているが、店内には人が絶え間なく出入りし、列も後ろが見えないほど長くなっている。

 

 そして、……見つける。

 見慣れた髪の色、そして頭につけたアクセサリーを。

 

「ブルボン!」

「マスター……!」

 

 その名前が口からこぼれると同時に、急ぎ足で列に近づいていった。

 

「ここにいたのか。探したんだぞ」

 

 見つかって良かった。

 だが走ってきて疲れてしまい、膝に手をついて息をしてしまう。

 そんなオレの様子にブルボンは気遣うように手を差し伸べてくれた。

 

「申し訳ありませんマスター……。トレーニングの時間ですよね?」

 

 オレは半笑いを浮かべながら頷いた。

 以前、彼女は昼ご飯のりんごのメニューが気になるあまり、レシピを作り手に納得いくまで聞いて、トレーニングに遅れたことがあった。

 それ以来の出来事だが、気になってトレーニングに集中できないくらいになるなら、オレは許容することにしていた。

 今回も別に怒るつもりはない。

 

「ご心配をおかけしました。トレーニング前に時間があったため、グラコロを購入しに来たのですが、列が想像以上に並んでおりました……」

 

 なるほど。

 並んだは良いものの、想像以上に列が進まなかったらしい。

 

「マスターから汗を検知。持っていたハンカチで拭います」

 

 冬とはいえ、走ってきたらさすがに汗をかいてしまった。

 そんなオレの額に、彼女は自分のハンカチをそっと当ててくれる。優しい手つきだ。

 

「ありがとう。でも、無事で良かったよ。何かあったのかな、とも思っていたから……」

 

 嫌われたかもしれない、と不安になっていたことは伏せる。

 

「申し訳ありません。こちらからも連絡しようとしたのですが、スマホが見たこともない挙動をしておりまして……」

 

 見れば、なぜかスマホがピンク色の画面になって、◎を表示して固まっていた。

 エラーどころか、ホラーである。そりゃ連絡が取れないわけだ。

 

「次の方、どうぞ~」

 

 そうこうしていると、ブルボンまで順番が回ってきた。

 

「マスター、グラコロを買ってきます」

「ああ、オレのも頼む」

「はい」

 

 お金を渡した数分後。

 マクドナル〇のカウンターで無事にグラコロを手に入れ、オレたちは帰路につく。

 

「でも意外だなー。ブルボンは、そんなにグラコロが好きだったのか」

「いえ、マスターと同じで、好きでも嫌いでもありません」

「え、そうなの?」

 

 なら、なぜ発売日に早速並んで買いに行ったんだろう。

 そう思っていると、ブルボンが続ける。

 

「朝に、マスターがグラコロを久しぶりに食べたいと仰っていたので、買いに来ました」

「お、オレのため!?」

「はい、マスター。それ以外に、何か理由が必要でしたか?」

「え、いや、そういうわけでは……」

 

 そっか。そうだったんだ。

 さきほど、自分のハンカチで汗を拭いてくれたこともあり、オレは彼女の気持ちに酷く感動してしまった。

 

「時間がかかってしまい、ご心配をおかけしましたが、必ず買って帰らねばと思い、その……申し訳ありません……」

 

 良かった、嫌われてなくて。

 そんな風にホッと胸をなでおろすオレを、ブルボンは不思議そうに見つめていた。

 

「マスターには、ご迷惑でしたか?」

「そんなことない! とても嬉しいよ」

 

 そう答えると、ブルボンの頬が少し朱に染まった気がした。

 

「では早速……、いえ、お待ちください。中から高温を感知。バッドステータス『火傷』を確認。冷却モードを開始します。ふー……ふー……ふぅーーーっ」

「そ、それくらいは自分でやるよ!」

「そう、ですか……? ではお熱いのでお気をつけて」

 

 ブルボンが甲斐甲斐しく冷ましてくれたグラコロを受け取り、そのままひと齧りする。

 

「旨い……!」

「マスターから幸福を感知。私も、幸せです」

「ありがとう。ブルボンのおかげだよ。さぁ、一緒に食べよう」 

「はい」

 

 自らもグラコロを袋から出し、それを両手で持ちながら、ブルボンは小さくハムハムした。

 

「……美味しいですね」

 

 抑揚の少ない声だが、オレには分かる。

 今のブルボンは、コンディション『幸福』だ。

 

「やはり私も……グラコロを食べたかったのかもしれません」

「はは、美味しいもんな」

 

 ブルボンは深く頷く。

 だが、その後に続けて。

 

「マスターと一緒に食べるものは、特に……」

 

 小さな声で返してきたブルボンの耳が、ピコピコと跳ねていた。

 冬の冷たい空気の中でも、グラコロの温もりと、ブルボンの優しさが重なり合って、オレの胸はじんわりと温かくなる。

 今日のグラコロは、今まで食べた中でも、ひときわ旨く感じられた。

 

 オレたちは歩く。

 二人並んで、同じものを食べながら。

 今までと同じように、同じ場所を目指して。

 

――

 

 ちなみに後日、ブルボンに短距離路線のことを聞いてみるとバクシンオーの勘違いであったらしい。

 まぁ、時間はたっぷりある。ゆっくり考えたらいい。

 また、スマホの不具合については、バクシンオーに教わったトレーニング占いを行ったところ、あのような画面になってしまったとか。

 ピンク色で◎。一体どんな意味があるのやら。

 

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。