こちらは当時の身分や立場は事実と大幅に違う物となっております、登場する食物は当時には無い物が多数ありますが、フィクションとしてお楽しみください。
BD版おまけ話
「白い悪魔」
オルクセン王国の王、グスタフは進軍に際し、悪のエルフィンド王国にシュヴェーリンと共に捕らえられてしまった!
エルフィンド王国の拷問士ディネルースの過酷な拷問を耐えるグスタフ王とシュヴェーリン。
彼らに対し、最大の試練が、今訪れようとしていた!!
牢屋の扉が開き、ディネルースが入ってくる。
美しくも少し冷たい瞳が特徴の女だ。
「では、グスタフ王。本日の拷問を始めます」
グスタフ王はフッと笑い。
「なんでも来るがいいさ、昨日はゴロッとした肉の入った豪勢なシチューにやられてしまったが……十分堪能させてもらった、ほんの少しの事で私の心は揺るぎはしないっ!」
「王よ……!」
いつも通りのやり取りだが、今回ディネルースの後ろから運ばれてくる物はまるで違った。
木の蓋が乗っている、大きな金属器。
胴の真ん中あたりに縁がついていて、ついぞ星欧では見ない形の容器だ。
「ふっふっふ、ディネルースよ!王を見くびらんことだ。王は数多くの不可能を成し遂げたお方、わしですら何も惹かれないそんな物で王を動かせると思うなよ!」
だが、ああ、だが!!
「ぐっ……うっ……ぬぐぐぐぐ……!」
汗だらっだらで、苦悶する王がそこにいた。
こんな様子はついぞ見た事が無い。
シュヴェーリンが狼狽する。
(なんだ、あれは何なのだ!?)
そして、ゆっくりと蓋は開けられた。
そこには、グスタフが焦がれる白い悪魔が詰まっていた。
「あ、あああああああああっ!!」
「そう、お米です」
シュヴェーリンは良くわからずにポカーンとしている。
(何あれ、ただの白い食い物?穀物っぽいけど?そんなもんで?)
だが、王はひたすらに苦悶する。
「い、今オルクセンでは……」
「お待ちください!王よ!!」
国家機密を口にしようとする王をシュヴェーリンが止める。
「な、何なのです!あれは!!」
「コメ……米だ!道洋にあると言う神秘のKOKUMOTSU!」
しかし、グスタフはハッと思い立ち、にやりと笑う。
「ふふふふふふ、危ない危ない、この距離ではまだわからないので聞いておきたいが……その米は長粒種か?短粒種か?そして、銘柄とやらはついているのかね?」
穀物は同じ種でも産地などにより、役割や味を変える事も多い。
まったく見当違いの調理法で調理された物は、不味くなってしまう事も多いのだ。
「短粒種……そして……銘柄はこしひかり!」
それを聞いた瞬間、グスタフは敗北を悟った。
「も、もぅ駄目だぁ……おしまいだぁ……」
今まで聞いたことのない声で、聞いたことも無い弱音を吐くグスタフにシュヴェーリンは狼狽する。
「ま、マインカイz……いえ、マインケーニヒ!お気を確かに!!あなたの背には、あなたの双肩には数多くの国民の期待がかかっているのですぞ!」
心は折れかけたが、そうだ、国民を裏切る訳にはいかない。
国民の期待に応えなばならない。
心の中のグスタフは立ち上がる。
あんな、あんな白い悪魔になど……!!
「負けちゃっても……良いんじゃないかなあ…って思ってしまうんだ……」
「王よー!!??」
ディネルースはそんなやり取りをよそに、茶碗に白い米をついでいく。
もちっとした白い粒がそっと口に運ばれて、頬張るとディネルースは至福の顔を浮かべる。
グスタフ王はもはや涎の生成を始めて、悶える始末。
オルクセン王国の未来はシュヴェーリンの手に委ねられたっ!!
「ふ、ふふふふふ!待つが良い、実に笑止!いかにその穀物が旨かろうと!付け合わせの物もなく食べるなど粗食にも程がある!ぬかったな!エルフィンドの拷問官よっ!」
そう言われると、ディネルースは怪しい笑みを浮かべて指を鳴らす。
白エルフが後ろからやってきて、色々な調理器具を置いていく。
「シュヴェーリンよ……これは、もう完敗だ……」
「何を言われます、王よ!」
まず、ディネルースは鍋の蓋を開け、その中の物を別の茶碗になみなみと注いでいく。
芳醇な香りがグスタフ王の鼻に入り、強烈な欲求を刺激する。
「な、なんだそのスープは!?」
「味噌汁……だな?具は?」
「ご明察です。合わせ味噌で具は豆腐とわかめです」
良くわからん顔をするシュヴェーリン。
だが、彼も少しづつ良い香りの欲求に負けそうになってくる。
「そ、そんな物と穀物だけで!?他、他についている品は無いのか!?」
「もちろん、こちらは焼き鮭です」
塩がうっすらと浮く焼き鮭。
究極の組み合わせ。これさえあれば一日が幸福になれる至福のトライアングル―!
「そして、本日のメインディッシュは……」
え、メインディッシュ?これだけやっといてまだ何かあるのか!?
と狼狽するグスタフとシュヴェーリンの前で皿にかぶせてあった布が取り払われた。
卵。
卵である。
山盛りのそれを見た時、シュヴェーリンは一笑に付した。
「何かと思えば!そんなゆで卵ごときで王の心が動くものか!」
「いいえ、これはゆで卵ではありません、生卵、です」
「ふははははは!それこそ笑止!生卵をそのまま食べるとでも言うのか!?」
ディネルースはそう問われると、ニヤリと笑い卵を割り、その殻で器用に黄身と白身を分けていく。
やめろ、やめてくれ。
その言葉が出ない。
出してはいけない、だがもう敗北は決定している―!
そして、黄身だけを熱々の御飯の上に乗せた。
とろりと流れる黄身の大河。
見れば、山となったご飯は黄金の溶岩を流す火山にも見える。
もはや抵抗の意志は無かった、だが気になる事が一つだけあった。
「ディネルース……残った白身はどうするのかね?捨てるつもりかね……?」
「いいえ、こちらは……こうです」
熱してあったフライパンに白身を落とし、焼き上げた物を卵かけご飯へとのせる!
「ま、まさかーーーーっ!!」
焼きたての熱々を頬張るディネルース。
「あの秋津洲で五本指に入ろうかと言う文豪、ハルカッパ先生がおススメする食べ方……!」
わかっていた、わかっていた敗北が今訪れた。
これぞ黄金の長方形の完成である!
「ぐうううう……!!今、オルクセンではオークまんじゅうを開発しているっ!!」
「王よー!!」
王様は喋った。シュヴェーリンは叫んだ。
グスタフ王は腹いっぱいにTKGをかきこみ、鮭や生姜焼き、ニラレバなど多数の料理を楽しんだ。
シュヴェーリンもやれやれと、王の真似をして食べ始めたが、想像以上の味だったようで、運ばれる釜は次々と空になっていった。
しかし、まだまだ引き出す秘密はたくさんある。
グスタフ王への拷問の日々は続くのであった―!
終
思いついてしまったので、やりたかった……!