憎まれ役をやらせてもらっている。

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俺は恋愛漫画動画の世界を渡り歩く転生者。

俺は恋愛漫画動画の世界を渡り歩く転生者。

恋愛漫画動画が大好きだという男の神によって、数多の世界線で憎まれ役をやらされてきた。

何で俺にこんなことをさせているのかを聞くと、毎回「キミもこういうの好きでしょ?」とだけ言われる。

俺の好みのジャンルをなぜ知ってるんだ神よ···いや神だからか。

職権乱用にも程があるが、実は満更でもなかったりする。

2次元でしか見られなかった純愛をリアルタイムで見れるどころか、恋のキューピッド(ただしクズキャラ)として関われる喜びというのは中々にデカい。

その心中も神は読んでいるんだろうが、それはそれとして嫌がるフリはしておく。

やれやれ系主人公ってやつにも憧れてたんだ、俺···。

 

 

◆◆

 

 

今回の世界線(動画)のタイトルは『幼馴染のイケメンが実は女だった!?』か。

主人公がヒロインに『お前女だったのか!?』って言うやつだ。

一周回って潔いテンプレ。ベタ中のベタ。

でも···いいよね、こういうの。

主人公がヒロインのことを男だと思い込んでる時から既に意識してたら尚良し。

『(なっ、いい匂いがする···!?)』

『(おおお落ち着け、コイツは、男だぞ!!)』とか心の中で悶えるやつだ···(至福)

 

んで、俺は両片想いな2人にちょっかいをかけてカップル成立を促進するわけだ。

腕が鳴るぜ、頑張っちゃうぞ。

 

「おいエイジ、アンパンと牛乳買ってこい」

「わ、分かったよリュータくん」

 

はい。張り込みするベテラン刑事みたいなチョイスをした金髪のチンピラが俺です。

んで、黒髪メガネで暗めの性格をしたこの子がエイジ。

実は彼の祖父母の家が空手道場らしく、めちゃめちゃ鍛えられているんだそう。

学ランから覗く細身ながらも引き締まった筋肉。

それがあれば俺(チンピラ)を殴り倒すことくらい余裕なハズなんだけど、彼は暴力を嫌う性格だからなあ···それが彼の良い所なんだけどね。

···っと、ヒロインのお出ましだ。

 

「おいっ、お前またアイツにパシられてんのかよ」

「···うん」

「あんなヤツ、お前ならぶっ倒せんだろ?」

 

否定はしないけど、地味に傷つくんでェ···もうちょい小さな声でお願いします···。

 

「ちょっ、声が大きいよ!」

「別にいいだろ〜?」

 

ヒロインは黒髪でベリーショートな俺っ娘。胸はサラシで抑えているが、そこそこ大きいらしい。欲望の化身かな?

男子の制服を着る彼女は、確かにぱっと見は男に見えなくもないけど···前情報があるからか、俺の眼には美少女にしか見えない。

くそう、羨ましい。良かったな主人公、末永く爆発するんだぞ···!(応援)

 

 

◆◆

 

 

1年後。

えー、神様からの情報によると、明日2人は海に行くんだそうで。

そこで偶然を装ってちょっかいをかけて、2人をくっつけてしまえ、とのお達しが。

心得た。

 

というわけでいざ砂浜。

人混みは苦手だけど、頑張るぞい。

 

「はあ!?その水着···お前女だったのか!?」

「小さい頃に誘拐されかけてから、外ではずっと男として暮らしてたんだけど···親にお願いして、今日だけは許してもらったんだ」

 

ちなみにヒロインは超の付く大金持ちだったりする。

そして俺の経験上、お金持ちなヒロインは7割誘拐されてる。

こんなピンポイントで誘拐されることないだろ普通。

絶対神が仕組んでる。

いいぞ神、死人や重傷人、あと心に傷を負わない範囲でならもっとやれ。

 

「おー。エイジぃ、こんなトコロで会うなんて奇遇だなぁ〜。隣にいる美人は誰···アオイ!?お前男じゃなかったのか!」

 

まずは気付いていなかったという体で接触する。

 

「ふーん···でもめっちゃ美人だな。ちょっと付き合ってくれよ」

「なっ、イヤ!離して!」

 

うん、本当はチンピラが触れちゃいけないとは思うんだが、展開の都合上仕方の無いことなんだ。めっちゃ手ぇスベスベだな(真顔)。

 

「アオイを離せ!」

「ぁ゙ぁ···!?」

 

ヒィッこわい。

どの世界線に行っても、キレる主人公ってホント怖い。

目ぇバッキバキだし。

 

「なんだぁ、俺に突っかかってくんのかよ、エイジのクセに」

 

エイジ君は今海パンに上着を羽織っており、おそらくバッキバキであろう腹筋はまだ見えない。

けど足は完全に逸般人のそれである。

やめて、空手の構えしないで。

最悪死んじゃうから、ガチで。

 

「俺と勝負しようぜ。勝ったほうがその女を連れて行くってことで」

「······勝負の内容は?」

「相撲でどうだ?」

「······受けて立つ」

「やめてエイジ!危ないよ···!」

「大丈夫。勝つよ」

 

ぶん殴り合いだと大ケガするからな···俺が。

負けるのはいいけど、めちゃくちゃに痛いのは嫌なんです。

 

「ま、お前みたいなヒョロガリ、俺がソッコーで投げ飛ばしてやんよw」

「······」

 

ちょっと声が震えちゃった気がしなくもない。

ていうかエイジ君、沈黙はやめてくれませんかね?

一人で喋ってるみたいですごく恥ずかしいんだけど。

 

「土俵は砂浜全体、背中が地面に着いたら負けだ。──それじゃあ行くぞぉ!先手必勝、ぶっ飛べエイジ!!」

「ッ!」

 

バチィン!と派手な音を立てて、男二人が組み合った。

ぬああ超重い!?体重差はそんなに無いはずなのに!

ヤバっ、海パンを掴まれた。投げ飛ばされる!

 

「──がっ、ァ゙ァ!」

 

リュータ選手、片手を地面に付けて粘りました!見苦しい!

 

「クソがァ···エイジのクセにぃぃ!生意気だぞぉぉぉ!!」

 

喉を少し痛めるぐらいに叫び、再び組み合う。

が、今度は冷静に足を引っ掛けられて転倒。

背中が地面に落ち、俺の負けが確定した。

 

「クッソぉ···なんでお前にそんな力があんだよ···!覚えてやがれ!!」

 

捨てゼリフを吐いて駆け出し、砂に足を取られてすっ転ぶ。

ふっ···今回も100点の噛ませ犬だ。

それじゃあエイジ君、後は頑張れよ!

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「·········んー、ここも2年ぶりか」

「お疲れリュータ」

 

神の住居。

今は真っ白な神殿っぽい神々しい空間だけど、実は神の権能で自由にカスタムできる。

2年前はなぜかエ◯ァ2号機がいた。

 

「で、どうだった?」

「おお、最高だったぞ。なんで気づかないんだよ鈍感!って思いながらの胸キュン摂取は止められんな」

「ふんふん。その様子だと、今回もまだ気づいていない、と」

「なんの話だ?」

「うん、この調子だと何百年経っても気づかなそうだから言うけど、俺···というか()女なんだよね

 

ゑ?

 

──────────────────────

 

・見た目は白髪ベリーショートな俺っ娘美少女。

・最初は単にリアルな恋愛漫画動画を見たかっただけで、リュータのこともすぐに現世へ帰すつもりだった。

・しかしいつの間にか堕ちており、以降は自分と彼の関係によく似た世界線への派遣を繰り返していた。

・それでも全く自分の想いに気づかれないことに腹を立て、今回のカミングアウトに至った。

・主人公は翌日、ベッドの上で干からびた状態で発見された。

 

 


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