【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ 作:日λ........
エドニキに呼び出されたオレは、シキガミの製造を行っている工房へと足を運んでいた。
多くの水槽のような容器の中に、液体状の生体マグネタイトが詰められたその区画には様々な製造途中のシキガミが浮いていた。
「ほぼ完璧にフリスビーニキの注文通りに仕上げたが、一つだけどうにもならんかったことがあった事は伝えておくぜ。フリスビーニキの肉体由来の素材の性質の問題で、シキガミパーツの成形に不具合が出てるんだ」
「ああ、たまにある例の成形不良か。それで何が出たんだ?」
シキガミ自体はガイア連合技術部達の血と汗と涙と不断の努力により変幻自在にいくらでも形を変えられる夢のような存在となっているのだが、霊的強度の補強をするためだったり自身との繋がりを作るために混ぜられる俺達由来の生体組織がたまに悪さをして造形に支障をきたすことがある。手足が生えないだとか、身体機能に支障が出るだとか、奇形化するだとかそこまで重度の物は今の所確認されていないものの、注文通りに仕上げたい技術部の俺らからすれば悩みの種の一つとなっている。目の色が違かったり、肌の色や髪の色がどうしても一定の物以外に変更できないとかその程度のものであるが、大抵の黒札はそれに文句を言うことはない。何故ならば『自分の肉体や魂からの繋がりが原因で形質が自分に近寄っている』とシキガミを見れば本能的に理解できてしまうからだ。
何よりその程度で文句言ってせっかく完成したシキガミを受け取れない方が損である上、『目の色が違うわ!!』などという頭CEな発言する奴に自分達の息子や娘同然であるシキガミを技術部の面々が渡す訳が無い。
ただ、技術的には問題ない筈なのに不具合が出ている事に危機感を覚える技術部の面々は多く、皆原因を突き止めるために研究を続けている。
「フリスビーニキの場合、結構重い方に症状が出たな。具体的には人型のシキガミを作る場合、フリスビーニキの生体組織組み込むとどうやっても12歳以上の肉体年齢に成形できなかった」
「……ちょっと待ってくれ。オレ今回の専用シキガミ製造でガチャで手に入れたアレコレ組み込んじゃったんだけど!?理想のお嫁さんシキガミスレでも話題の料理とか家事とかのスキルカードを……」
「なら幼妻って奴だな。いいんじゃねーか元ネタのキャラも年齢ちょうどそれくらいじゃんか」
「ちょうどピンポイントで変更してたその部分が駄目とは思ってなかったんだが?! だが、うーむ。まあコレも縁かぁ。自分由来の素材が原因なんだから仕方ないよな。さよならオレの風評。こんにちはロリコンの称号……」
「まあ自分の血肉が原因でシキガミがロリ化するとか、同じ技術部メンバーのフリスビーニキじゃ無かったらオメー魂からロリコンだったんじゃねーの?とか今頃皆で煽ってる所だろうからなぁ」
「うごごごご、言わないでくれエドニキ!オレも脳裏でその言葉がチラついて自分の本性を疑いそうになってるんだ……!」
自分の性癖を具現化したシキガミの見た目が、幼い容姿をしているというのはそういうことになるのである。しかし、技術部と関わりが深い身としてはコレだけ拘った専用シキガミを作り上げる労力がどれだけ掛かるのかも、リテイクに掛かるコストがどれだけ莫大なのかも分かってしまうので仕方ないかと受け入れた。
これも巡りあわせと言うものだろう。
気になるのであれば【変化】のスキルカードを買うなりガチャで入手するか最悪『作れば』良いだけだ!!最近スキルカード関連でちょっとした思いつきがあったので上手く行けば高ランクのスキルカードが作れるようになるはずだ……!!
そう思うことで自身に掛かった疑いから目を逸らした。
「さて、着いたぞ。コレがフリスビーニキご注文の専用シキガミ……仮名称『マテリアルS』だ。起こしてやってくれフリスビーニキ」
「ああ。起動シークエンス起動。システムオールクリア。初期起動開始」
培養タンク用のコンソールを動かし、念の為診断ツールを走らせ問題がないか確認した後、シュテルの入った培養タンク内の生体マグネタイトをシュテルの中にあるシキガミの核に火を入れるためのエネルギーに変換し注入する。そうして徐々に内部の液体化マグネタイトの残量が減っていき、十分な量のマグネタイトが注がれたとコンソールの表記を確認した後残り分の液体化マグネタイトを水抜きし、培養路の透明な円柱のロックが解除され、床の下に収納された。
水槽の中で浮かんでいた状態から液体が抜けたことで横になっていた彼女は目を覚ますと立ち上がり、シキガミ共通の初期起動状態でこちらに語りかけてきた。
「……初期起動確認。これよりマスターの認証を開始します」
「よし、見た所不具合は無さそうだな。んじゃ、俺は受付で待ってるなー。そこのロッカーの中に最低限必要な衣類は用意してあるから、初期認証が終わったらその子に着せて受付まで戻って来てくれ」
「分かった。色々と忙しいところありがとなエドニキ」
「良いって良いって。フリスビーニキの作ったソフトには技術部は毎回世話になってるし、例の事件で手間かけさせちまったお詫びでもあるんだからこれくらいはなー。んじゃ、ゆっくり『はじめまして』を楽しんでくれよ、『二人』とも」
そう言って、エドニキは受付へと戻っていった。
ガイア連合の技術部におけるシキガミの扱いの中で、『シキガミをいつのタイミングで【モノ】から【個人】へと扱いを切り替えるか』という話が議題となった事がある。
色々と意見を話し合った結果、技術部としては『初期起動時からモノではなく個人として扱う』という形になった。故にエドニキは『二人』と言ってくれたのだ。その気遣いに感謝しつつ、彼女の瞳を見つめた。青色の瞳。ショートカットの少し暗めの茶髪。物静かな印象を受ける少女は、真っ直ぐ自分を見つめ返していた。
「はじめまして。オレが君の主人の八角ジュンだ」
「認証を確認……マスター登録、完了しました。はじめまして、八角ジュン様。では初めにですが、私に名前を与えてください。それで登録は完了となります」
「分かった。実は名前はもう考えてあるんだ。今日から君の名前はシュテル・ネンリヒト。星の光って意味があるんだ。これからよろしく頼んだぞ、シュテル」
流石に完全に元ネタそのまま名前を付けるのはあまりよろしくないと感じるので、名字の方は自分で考えて着けた。彼女の元になったのは『マテリアルS』もしくは『シュテル・ザ・デストラクター』という名前の転生前人気作品だったアニメ『魔法少女リリカルなのは』シリーズの、外伝作品のゲームで出た登場人物である。
あのアニメは人気作品ではあったがシュテルは外伝作品発のキャラクターであった為かまだシキガミのデザイン元として被って無かったのは運が良かったと言えよう。
「個体名【シュテル・ネンリヒト】登録完了しました。それでは、ご命令をお願いしますマスター」
「そうだな。まずは……その手術着から着替えようか。確かシキガミの持ち帰り用に用意されてるしま●らの服がこっちの棚の中に入ってた筈だ」
人型のシキガミには初期起動時、調整された液体化した生体マグネタイトの中に漬けられている為、内部で悪さをしない素材で出来た全員に着せられている手術着以外の服は当然の事ながら持っていない。当初は自己責任ということでシキガミを迎える者が自分で用意する事になっていたが、シュテルのように俺ら由来の生体組織の影響で予定の大きさから外れる事もたまにあったり、そもそも忘れてしまった者も多発した為安物ではあるがある程度の体型に合わせて着れる普通の服を技術部側でストックする形となったのであった。
尚、あまりに服を持ってき忘れるものが多かったせいで理由なく忘れただけの者には罰として容赦なくマッカ払いでこれらは強制的に購入してもらう事となっている。自分のようにシキガミ製造をしている技術部メンバーに指定された予定より早く呼び出されたりした場合は別であるが、結構手痛い出費になるのでシキガミを迎える際にはフリーサイズの服は持っていくか事前にそちらの装備や服を注文して予約しておけというのが俺達の間で広まっている。
そうして手渡した服を着てもらい、エドニキの工房の受付まで戻ってきたオレはそのままシュテルの採寸をしてもらい、シュテル用の装備品を購入していった。
恐山の協力を得たことにより技術部もその古くから続く技術……はGHQやそれを隠れ蓑にしたメシア教による迫害により完全には継承しきれて居なかったものの、それでもなんとか隠し守っていた書物や秘伝書からその知恵は得る事はできた。
特に呪殺や破魔を無効にする耐性装備は必須品であると見込まれていた為、生産体制を確立し悪魔やシャドウから取れる素材の中でそれらを作れる素材には買い取りにボーナスをつける形で多く集めた結果、転生者であれば問題なく皆買える程の量を量産することが可能となっている。カス子ネキが送ってくれた大和手甲は、その試作品としてカス子ネキが作っていたものの一つを渡してくれたものであるそうだ。
その為シュテルにも問題なく対呪殺装備である腕時計の【G−ラダーズ】を購入してあげることができた。専用の霊衣も発注したが、出来上がるまで時間がかかるのでそれまでの繋ぎとして防具に自分と形は一緒で色が濃いめの紫になっている【フェザーベスト】を購入してあげた。ちなみにこれは名称はベストになっているが、その形状は自分が着ているものと同じ物の矢鱈と風に靡くフード付きコートであったりする。
それと、武器として鈍器にもなる魔法補助具である杖【クリスタルロッド】を購入。見た目だけはシュテルの元ネタの機械仕掛けの魔法の杖であるデバイスのルシフェリオンに似ているが、可変機能などはない純粋な杖である。
なんでもとある修羅勢の俺らが使っていたものの、その人が早々とシキガミ武器『レイジングハート』を作ってしまった為、使わなくなってしまって複数個質に流された品であるとの事だ。
その際に1本を、店主が杖のバランスを手直しして、ついでに色を塗り替えてルシフェリオンカラーにしたそうだが、そのせいでコスプレグッズとしてそのまま売れた他の杖と違い売れ残ってしまったらしい。シュテルを連れて来た時にこれは運命かな??と思った店主が倉庫の奥から引っ張り出してくれた珍品である。
シュテルには火炎系統の適性があるらしく既に【アギ】【マハラギ】が使えるらしいので、力よりも魔に補正がある装備が欲しかったから渡りに船であった。これらを購入して装備してもらい、契約して早速で悪いがシュテルには共に戦ってもらう事にした。シキガミとはいえレベル1のままぶらつくのはこの物騒な世の中では辞めておきたい行動であるからね。
トーコさんがシキガミ武器持ちの剣士であるとの事なので、レベル差はあるがこれで大分PTのバランスが良くなった。前衛もできなくはないとはいえ、回復役のロザリーが無理に前に出なくても良くなったのはかなり安定感が増したと思う。更にモモメノさんのペルソナによるナビ型支援がどういったものかも気になる所である。
新要素が一気に開放された気分に浸りつつも、戦闘の場では気を引き締め無ければと思いながら、ナイトニキ達と約束した修行用の異界の入り口にシュテルと二人で向かっていった。