【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ   作:日λ........

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良薬口に苦し。敗北もまた然り

 

 

 

シュテルの初実戦を終え、暫く戦闘の感覚を掴ませた後にパワーレベリング的に急ごしらえとはいえシュテルのレベルを20まで上げた。流石は神主監修のシキガミ。まるで乾いたスポンジが水を吸い込んでいくかのように彼女はどんどん強くなっていった。

 

そして素材元であるオレの影響なのか、一部メガテンでは見られないスキルを習得し始めていた。具体的にはアギラオやマハラギオンがスキル変化して、【フレイム】、【イフリートベーン】という名前に変わってしまった。どちらも使いこなせば使いこなす程威力が上がるスキルのようで、【フレイム】は初めのうちは普通のアギラオ位の威力のスキルだったが悪魔相手に何度もぶっ放した今では単体相手に収束すればアギラオ級以上アギダイン以下の威力が出ている上、収束率を下げて拡散させれば全体攻撃化も出来るかなりシンプルな名前に反して使い勝手の良い物になっている。【イフリートベーン】も同じ形のスキルで単体撃ちも全体攻撃も可能。こちらはMPの燃費が悪化した分シンプルに攻撃力が上がっており単発版がアギダイン級、全体攻撃がマハラギダイン級となっている。練度をあげればそれ以上の威力に底上げも可能だろう。今はシュテルのレベルが低い為威力自体はそれ相応だが、シュテルが育ちさえすれば間違いなく主力級の火力として活躍してくれるだろう

 

 

まあこっちはいいんだ。利便性とスキル更新の手間が省ける程度で済むから。問題はレベルアップで新しく生えてきたATLAS作品だと明らかに見覚えのないこちらのスキル2つである。

 

デコイミラー】自分の身代わりとなる幻楯を作り出す

 

マナフローター】使用ターンの間、味方全体の消費MPを0にする+最速行動

 

 

デコイミラー】、このスキルで発生するデコイは本人の肉体を覆うように発動し、デコイ自体が持つHPが無くなるか戦闘終了までずっと残り続ける。デコイは一度剥がされるまではデコイ側のHPで攻撃を受ける仕様になっており、理論上どんな攻撃であっても一発だけなら耐えられるトンデモ防御スキルである。

 

本体に攻撃すれば通るという事もない。コレの原理は確かに幻術の類だが、単純な幻というより世界そのものを騙す術と言ってもいい代物だからだ。そんな大袈裟なと言うかもしれんがそうとしか言えん。

 

このスキル、被せた幻のデコイ側にその攻撃を全て受けさせた上で、『デコイが壊れた』『デコイがダメージを負った』という結果で固定させる量子もつれ現象を引き起こしているからである。

 

……言っていて分かりにくいのでイメージしやすい例で言うならば挙動的には『HP消費のないポケモンのみがわり、もしくは自力で何度でも発動できる上HP消費がないばけのかわ』である。正直無法にも程があるが、魔法使いタイプのシキガミであるシュテルの薄い耐久力を補うにはピッタリのスキルなので多様させてしまっている。

 

これに加えて【マナフローター】までシュテルは覚えてしまった。発動ターンどんなスキルを使っても味方のメンバー全員のMP消費が0になる説明不要でヤバすぎるスキルである。発動中は仲間の周囲のマナ、つまりMPを活性化状態にしどんだけMP消費の重いスキルや魔法を使っても使った分だけ補填される状態になる状態を作り出す便利技である。

 

 

 

これらが組み合わさった結果、オレたちPTメンバーの自重は消し飛んだ。

 

組んだのが初のメンツもいるが、大本としては初陣でレベル1のシュテルが居るから控えめの階層までにしておこうという話だったのが一発だけならまずは死なない状態になり、更にデコイが無事ならMPを使わずにシュテルのMPとチャクラドロップが持つまで自分たちは魔法もスキル使い放題使える状態にまでなった。この状態で欲に負けず潜れる所まで潜りきってしまおうとならないアトラスユーザーの方が少ないであろう。

そう、俺達は知らず知らずのうちに油断をしてしまったのだ。

 

「フリスビーニキに化けた悪魔か!!私を騙せると思ったら大間違いだぞ食らえ絶命け……ウボァー!?」

「な、ナイトニキー!?ナイトニキが物理反射で落ちた!?」

「ああ、キドウさん?!耐性チェック前にスキルで殴るのは不味いでしょ!?」

「ああもう何やってるのよ?!来るわよ皆、アタシの旦那の蘇生は後!!とにかく今を切り抜けてからにして!!」

 

故に、この邂逅も必然であったのだろう。

 

カカカカ!!

外道 ドッペルゲンガー Lv39】三体が現れた!!

 

 

修行用異界中層部。それはショタおじが用意した悪意第二弾。

 

今回は運良く素当たりで自分たちに化けた姿での接敵であったものの、後々修行用異界の攻略が進んで分かったことだが前触れもなく仲間と入れ替わったり、近くにいる人間の記憶の中にいる存在に化けて出てきたり、いつの間にかPTに紛れ込んで一人増えていると言う状況をドッペルゲンガーが出てくるPT殺しの階層であった!!ドッペルゲンガーは物理反射かつ、他の普通の悪魔もわんさか出てくる!!どういう事を伝えたいのか意図はわかるがこれは初見殺しの殺意が高いぞショタおじィ!?

 

『アナライズ完了!!兄さんがやられた通り物理反射で、弱点は呪殺、もしくは魔力!!』

 

自分たちの運が良かった点は3つあった。一つは上記の通り素当たりでドッペルゲンガーと戦闘になったこと。即座にナイトニキが切りかかったおかげで言葉巧みに相手に化け、懐から指してくるドッペルゲンガーの最も得意とする戦法にハマらず済んだ。そのせいでナイトニキは反射ダメで今死んでいるが、下手すると全滅すらあり得た危険な状況であった。

 

『ハイ・アナライズ完了したよ!!ドッペルゲンガー特有の波長を登録したから、これ以降ドッペルゲンガーが化けてるものは視覚で赤く表示されるようにしといたからよく見て!!』

 

2つ目は希少なナビタイプのペルソナ使いが後方支援をしてくれていることだ。この手の解析では右に出るものは居ない程、その能力は強力なものであると実感したものだ。あっさりとこれ以降この厄介な悪魔に対する根本的な対処する事ができたのだから。

 

そして三つ目は魔力弱点であると言う事。オレのスキルは、この手の状態異常系が弱点な相手にはめちゃくちゃ通しやすいのである。なにせハッキングスキルはこの手のセキュリティホールから効果を通している物だからだ。

 

「【ハッキング・ゼム(全体ハッキング)】!!ヨシ!!呼吸を制した(プレスターンアイコン点滅)ぞ食らえ!!人魚ネキの歌声を参考に作った【スリープオール】!!」

 

 

電子的なデーモンばっかりでは芸がないと思い、オカルト的な要素を取り入れ作り上げたプログラムがこれである。デーモンの類はハッキング状態にしてからじゃ無ければ当然の事だが効果を発揮しないのだが、これはプログラムで作り上げたいわば電子の呪いだ。ソフト面からの侵食だけでなくハード面へも侵食の影響を及ぼす事ができるのはオカルトの良い所だ。

立ち上げればオレ以外でも普通に現実に影響を及ぼし選択した対象者を眠らせられる危険物でもあるが、ハッキングを成功させなくても相手に睡眠のステータス異常を与えられるオレにとって貴重な即効性のあるスキルだ。尚、ハッキングが成功している状態だとデーモンと同じ要領で脆弱性につけ込み100%睡眠状態を与えることが可能となる機能も盛り込んである自信作である。

 

つまり今の全員ハッキング成功状態のドッペルゲンガー三体には漏れる事無く全員睡眠が通るという訳だ。っていかん!?背後から新手の敵がこっちに来てる!?早くコイツらを始末しなければ。

 

 

「モモメノさん、コイツラの始末を頼む!!」

『分かった。__永眠の誘い

 

 

ナビ越しにモモメノさんが歌うのは、眠れる者を永遠の眠りへと誘い込む呪歌であった。

彼女はナビタイプのペルソナ使いであると同時に、この手の呪いや祝福を与える歌を操る歌姫でもある。力ある言霊を操り、呪うも祝うも変幻自在。

モモメノさんの歌声により、眠っていたドッペルゲンガー三体は即死し四散。MAGとなり果てる。

そしてそのまま後ろから襲い掛かってきた悪魔との連戦に備えた。

 

手番が巡る。オレが行動し終えると同時に、背後にいたシュテルが動く

 

「デコイミラーは展開済み。ですがここでマナフローター発動は微妙ですね。なのでここは安定を取りましょうか」

 

そう言って渡していた道具類の入ったポーチから道反玉を取り出すと、ソレを死体と化していたナイトニキにポイッと投げつけた。

 

 

「……ハッ、すまない皆!!まだ戦闘中か?!」

「前方に新手が来るぞ!!生き返りたての所すまないが構えてくれナイトニキ!!」

「了解……!!ただ蘇生はしてるがそんなに体力ないからフォローを頼む」

「言われなくても回復位してあげるわよ。ディアラマ!!」

 

ロザリーに回復魔法を受けたナイトニキは立ち上がり、盾と剣を構えた。

それにあわせてトーコさんも刀を構える。

 

「__心に炎を、心火を燃やせ!!」

 

赤火の呼気】(ターン経過毎に攻撃力アップ)

 

 

トーコさんが実家の家業の関係で習ったという特殊な呼吸法で、身体能力を底上げする。何でも一度練り上げればかなり長時間、攻撃力を増大させ続けられるという。手番的には十手分程は保つとの事だ。

 

そして最後にナイトニキが前方に盾を構え、迫り来る敵に構える事で防護体制を取った。これで迎撃準備は完了だ。

 

 

「来るぞ!……ってウソだろ!?このラインナップは!?」

 

カカカカ!!

凶鳥 モー・ショボー】

悪霊 くちさけ

悪霊 はなこさん

悪霊 ブキミちゃん

 

が、現れた!!

 

「モーショボーに、怪談の悪魔と便器の悪魔?思ってたよりは大したこと無さそうに見えるけど……」

「逃げろトーコさん!!コイツらはヤバイ!?」

「ちょとsYレならんしょこれは・・・?!」

「へっ?……ってウソでしょ!?」

 

 

初めのうちはたった四体出てきただけだと思っていた。だが実際は違う。はなこさんとくちさけは存在を視認した瞬間に沢山の分身を作るかのように大量に溢れ出てきた挙句、ブキミちゃんはこちらへと突撃してきた

 

ヤバイヤバイヤバイ!?『女神異聞録ペルソナ』で見たトラウマ挙動そのまま再現されてるぞこれ!?

 

バイナルストラ__

 

「くらましのたまぁ!!」

「とんずらぁ!!」

「ちょっ、キドウさん急に何を__」

 

 

何してくるか知っていたナイトニキとオレの決断は早かった。シュテルとロザリーを送還して管やGUNP収納し、ナイトニキはどういう状況かよく分かってないトーコさんを抱き上げてダッシュ。オレは戦闘から逃げるためのアイテムであるくらましのたまを投げつけた

 

 

次の瞬間、くらましの玉による激しい閃光とは別に強烈な爆炎によるキノコ雲が上がり、辺り一帯を吹き飛ばした。

 

 

 

バイナルストライク

使用者の命と引き換えに、敵のHPを1にする。または敵全体に大ダメージを与える。

 

 

バックアタックからのそれは、初代ペルソナをプレイした者たちからすればトラウマムーブであった。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、クソ。調子に乗り過ぎてたな。痛てて……」

「マスター、吹き飛んだ腕を、回収してきました」

「ありがとうシュテル。とりあえずくっつけるのと蘇生するか……【119ナノマシン】……【リジェネレーター】」

 

片手しか残っていない為、タイピングが中々キツイがそうもいってられないので回復の為のスキルを発動する。あの爆発で、なんとか生き残れたものの皆ズタボロである。ナイトニキはトーコさんを庇う為にもろに爆発を受けたせいでまた死んでるし、トーコさんも直撃は避けたが吹き飛ばされて脚の骨が折れているし、衝撃で気絶してる。

 

「シュテル、とりあえず腕を持って肩にくっつけてくれ。そうすりゃ次第にくっつけてくれるから」

「……申し訳ありません、マスター。わた、私、マスターを守る為に産まれたシキガミなのに、守るどころか、庇われて……」

 

ポロポロとシュテルの目から大粒の涙が溢れだす。……ああ畜生、自分が情けなくて仕方ない。調子に乗って自分勝手な無理をした挙句、まだ産まれたばかりの女の子を泣かせるなんて最悪だ。

血が垂れて汚れたまだくっついている方の手を、ボロ切れになったコートで拭う。そして可能な限りきれいにした後、ポケットの中に残っていたハンカチでシュテルの目の涙を拭った。

 

「ごめん。思ってたより効率よく進められたから、予定より無理させてしまった。シュテルは初陣なのにな……モモメノさんもせっかくナビしてくれてたのにすまなかった」

『……止めなきゃならない立場なのに止められなかったボクも同罪だよジュンさん。やっぱ異界って怖いね……どんな時でも一瞬の気の緩みが命取りになる。そういう場所なんだって気を引き締めなきゃ』

 

 

【119ナノマシン】の効果が起動し、死亡状態だったナイトニキが蘇生し、気絶していたトーコさんも目を覚ます。そしてシュテルが泣きながら抱えてくれたおかげで【リジェネレーター】によりなんとか手がくっついたオレは、笹の葉に包んだ沢庵を口の中に放り込んだ。

 

 

帰ろう。帰ればまた来れるから。そうつぶやいて咀嚼するカエレルダイコンで作った沢庵の味は、とてつもなく苦かった。

 

 

 

 

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