【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ 作:日λ........
自宅に帰宅後、留守を任せていたシュテルを労い、彼女のしてほしい事を聞いて、次の日にそれを行った。
「マスター、その、重くは無いでしょうか……?」
「むしろ軽い位かな?もっとしっかり腰掛けてくれて構わないよ」
オレの膝の上に腰掛ける彼女を落ちないように軽く抱えながら、皿に盛り付けたケーキをフォークで切り口に運ぶ。美味しかったのでそのまま更に一口分取り、シュテルの口に運ぶ。一瞬固まったものの、すぐに再起動して「では、頂きますマスター」と、一言言ってシュテルはケーキを食べた。相変わらず無表情気味だが心なしか頬が赤いように見えた。
シュテルがオレにしてほしいとお願いしてくれた事は『休暇をとってほしい』と言う事と『私を行動で示す形で愛してほしい』という健気かつ可愛らしい物であった為だ。そう言われてここ最近、休暇という休暇をまるで取っていなかった事を思い出した。
ナイトニキと組んでようやくまともに軌道に乗り出した
そんな訳で、今日はゆっくり休暇を取りつつ、シュテルを甘やかしてイチャイチャして過ごす事に決めたのであった。
……良いだろう別に!!本人が行動で愛していると示してくれと言ってるのだから!!言っておくが卑猥な事をする気は一切無い。精々頭撫でたりソファの上で膝の上に載せてまったり過ごすだけだ。健全だ健全。
ナイトニキと再び集まる日までまだ十日程時間があるので、1日くらい休みに使っても問題ないだろう。駄目になった装備品の更新に関しても昨日エドニキに『技教の館』のデータが入ったディスクの納品をした時に、ついでに異界で取れた素材も渡して自分の装備とシュテルの専用武器の発注をしておいたから1週間後には届く手筈だしな。シュテルを受け取った際に注文していたシュテルの霊衣も、その時に納品するとの事なので今のレベルに合わせた装備に全て更新出来る筈だ。
しかしシュテルの頭を撫でていると、某世界一売れた奴隷のご主人様の気持ちが段々と分かってくる……これは撫でる麻薬だ……これだけでいつの間にか1日が過ぎてもおかしくないぞ……(※もう彼は手遅れである)
そうしてゆっくりコーヒーを飲みながらケーキを食べつつ、たまにシュテルにケーキを与えていると、今度はシュテルが自分の分のケーキを一口大に切ってオレにあげようとして来る。当然ありがたく貰い、シュテルが選んだフルーツケーキを味わった。ナイトニキの喫茶店のケーキはコーヒーによく合うチーズケーキとフルーツケーキである。どちらもロザリーさんのお手製で、ガイアポイントカードの発行と店での対応を可能にするついでに購入した、最近流通し始めたMAGが豊富に含まれる霊能食材を使用し作られた試作品である。ガイア連合魚沼支部産のフルーツや小麦を使ったとのことだった。
面識は無いが、あそこは例の覚醒修行で凍死一発で覚醒した田舎ニキが最近設立した支部だった筈だ。あの支部はロボを作りたいという黒札が集いつつあるとの事なので、余裕が出来たら技術交換がてら少し手助けに行っても良いかもしれないな。
「しかしこのケーキおいしいな。ロザリーさん、いい腕してるな」
「どちらのケーキもおいしいですよね。流石センパイです」
「センパイって、ロザリーさんの事かな?」
「そうですマスター。あの人はシキガミとしてセンパイで、私の理想なんです。産まれたての私にも気遣い上手で優しくて、ただ盲目的に主人に従うのではなく時には厳しく、けれど自分の主の事を誰よりも信じてる。同じシキガミとして、その在り方に憧れちゃうんです」
明らかに霊的食材のポテンシャルを発揮させられているケーキを食べながら、オレ達は二人でPTの仲間達について話し合う。
まだトーコさんやモモメノさんとは一度しか組んでいない仲ではあるが、産まれたてのシュテルにとってはそれはナイトニキやロザリーさんも一緒である。だが、命懸けの戦いの中で背中を合わせて共に生き延びたその経験は、シュテルに彼らに対する信用を得るに十分足りたようだ。もっとも、オレ自身はその信用に対して報いているとはとても言い切れん未熟者であるが。調子に乗って痛い目見た挙句泣かせてしまっているからな……気を付けなければ。
「しかし、センパイはどんなスキルカードを使っているのでしょうか。私も料理や味覚などのスキルカードは搭載されていますが、霊的食材の調理となると高ランクのスキルが必要となる筈ですが……」
「まあ、ロザリーさんの場合稼働時間が長いから自力で能力を鍛えているんじゃないかな?あくまでスキルカードは能力の原型であって、使っているカードのランクが低くても使っていけば行くほど馴染んでランクアップする事もあるからね」
「そうなんですか?なら、私も料理や家事を常日頃から行う事でランクアップさせる事が出来るかもしれませんね。頑張りますね、マスター!」
そう意気込むシュテルに対し、オレは『応援してる』と答えて再びその頭を撫でた。
尚、シュテルに言ったことに関しては嘘はついていないものの、ロザリーさんはその手のスキルカードを搭載していない筈のシキガミである。
味覚のスキルに関しては搭載されているが、PTを組む際に許可をもらって行ったアナライズデータには調理のスキルは記載されていなかった。スキルカードとして搭載されているならば記載される筈のGUMPでの機械式解析で行った筈なのにである。実は最近、彼女に関しては今はシキガミではあるものの何らかの理由で肉体を失った元人間ではないかと言う疑問を感じつつある。
シキガミにしては所作が少々人間味を感じ過ぎるのだ。確かにガイア連合のシキガミは高性能だが、立ち振る舞いに関しては機械的な部分というか、ある程度の稼働時間が立った今でもシキガミと長く接した人間ならばわかる動作に硬さというべき共通動作があるのだが、ロザリーさんには一切それが無い。更にこのケーキによりスキルにない調理や製菓を『霊的食材を加工できる域まで』精通している事が判明した。
時間があればシキガミであってもスキルカードにない技能を習得させる事は理論上は可能な筈だが、ガイア連合のシキガミが製造されはじめてまだ1年も立ってない今の時期にスキルカードによる土台抜きでそこまで鍛え上げるのは現実的ではない。精神と時の部屋のような現実世界と時間の進み方が異なる異界などがあれは可能かもしれない程度であろうか。これらを踏まえると、シキガミになる前から彼女が元々習得していた技能であると考えたほうが可能性が高いのだ。
ナイトニキ達も何かしら色々と事情を抱えているのだろう。それを無理に暴くつもりはないが、困ってることがあるならば進んで手を貸したい。オレは彼らのおかげで前に進めたのだから。
(……駄目だな。今日はシュテルと共に休暇を楽しむ日と決めたんだからそれ以外の事は後回しだろ)
自然とその日のために備えなければと思い、プログラミングをしようとして手が伸びそうになった懐のGUMPをホルスターごと外して、ソファの端に掛けておく。最近少しでも時間が出来たらプログラミングをしてインストールソフトを作る時間に当てていたせいか、ワーカーホリック気味になっているかもしれない。趣味を仕事にしている為苦にはならんが時と場合という言葉がある。
健気なこの子が勇気を出して口にしてくれた願いなのだ。全力で応えてあげなければ。
「そうだシュテル。この前買った面白いゲームがあるんだが、一緒に遊ばないか?」
例の『異世界おじさん』が盛大に支援と指揮をしている為か、あの歴史に残るレベルの大散金をせずにそろそろシェンムー3が予定通り無事発売されそうなドリームキャストにコントローラーを2つ指して起動させる。入れるソフトはこの前買ったコンパイル製ぷよぷよ最終作『ぷよぷよ〜ん』だ。
自分のシキガミを手に入れたらやりたかった事の一つなんだよな……一緒にゲームで協力プレイや対戦を休暇中にやりながら楽しむことって。
結局その日は一日中、家に篭ってシュテルと共にゲームで遊んだりアニメを見て盛り上がったりした後、一緒の布団で添い寝してその日を終えた。愛するって一口に言っても、色んな形があるものだろう?なら情欲だとかが絡む愛は最後の方に取っておいて良いだろうよ。
オレはその過程を楽しみつつも、相手にも楽しんでくれたらいいな思っているだけである。そうやって教えていったことの一つか二つでもいいから、シュテルが心の底から楽しいと、好きだと思えることが見つかると良いなと思う。
シキガミだからといってもこの世に生を受けた以上、主人に尽くすだけなのは健全とは言いがたい。色々なことを経験して、自分の幸せというものを自分の手で見つけてほしい。
主人に尽くす為に作られた被造物に対してこれを望む事は、作った側の傲慢なのかもしれない。だが、自分は思わずそう願ってしまうのだ。
どんな夢物語であっても、現実にする為にはまずその夢を語らなければ、願わなければそれは実現しないのだ。浪漫とは、そういう物だとオレは思っている。故にオレは願う。この娘の生に幸あれと。けして神などにではなく、星霊神社の奉っている『星』に願うのだ。
神や悪魔が実在し、それらが人間に対して害をもたらすこの世界であっても、それ位は許されると思いたいものである。
星霊神社。その社殿にて斎服を身にまとう髪の長いの少年が本殿を前に座する。滅多にない祭神からの神託が降りた為である。その正体すら不明である星霊神社の祭神は基本的に人に対して放任主義である為に、このようなことは滅多に無い。故に神主__ショタおじと仲間内で呼ばれている彼も何事であろうかと少し冷や汗を流していた。その詳細を聞いとるために、緊急でいろいろな仕事を切り上げ、分身達も一時的に停止させて本殿まですっ飛んできたのである。
一体何事であろうかと、神経を尖らせ一字一句、祭神からの神託を聞き取った。
『__古き太古より、第五惑星崩壊による我が星の滅亡を、墜ちる星を砕く事により阻止した民の生き残り達が現世にて目覚めている』
『彼らは古代アトランティスの民達である。自らの命を打ち出す砲を使い、星の生命を守るために自らの命を擲ち、僅かな生き残りを未来へと送り出した者達である』
『その民の名は【ルシェ族】という。男は日に焼けたような浅黒い肌と銀の髪、長い耳を持つ人類種であり、女は狐のような耳と絹のような白い肌を持つ美しく鍛冶に長けた神秘の種族である』
『我が社に来る事があるのであれば最大限の敬意を持って歓迎せよ。扱いに関しては任せるが無体な事はしないように。以上』
そう、『星霊』が告げた言葉を神主は手にした筆と紙に書き記すと、その神託は終わりを告げた。
「……えっ、マジ??第五惑星と古代アトランティスって実在してたの……?マジでぇ??」
第五惑星とは、その存在が遥か太古の時代にあったとされるかつて存在していた太陽系第五惑星の事であり、その情報はほぼ失伝して居るオカルト業界の『オカルト』として扱われているトンデモ説の一つである。
曰く『神話や伝承の神々や悪魔が唯の人として生きていた時代に存在していた惑星』であるという。神主でさえその存在が本物であるのか偽物であるのか判別がつかない程に古い時代の物語の舞台であった。
加えてオカルトと言えばの代名詞の一つである、かつて存在していたとされる都市『アトランティス』の実在まで前提として自身の祭神が神託で語るという異常事態。コレには神主も思わず宇宙猫にならざるを得なかったという……
「しかし、ルシェ族ねぇ……浅黒い肌、銀の髪、長い耳……白い肌。狐耳。美女美男……あれぇ?コレってナイトニキとその妹さんの外見的特徴と一緒じゃない??お話しなきゃ駄目だなコレ!!」
とりあえず、急停止した自身の業務を再開するためにショタおじは分身達を再度動かすコトにし、自身はあの兄妹に対して呼び出しを行うことにしたのであった。