【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ 作:日λ........
本作の独自の設定となりますのでご注意ください。
また、女神転生外伝ラストバイブル、葛葉ライドウシリーズ、セブンスドラゴン3の設定がごちゃまぜになっております。
「そうですか……いえ、情報提供をありがとうございます。それでは失礼します」
そう言ってガイア連合東京支部の諜報部からの連絡を切る。
ガシャン、と言う音と共に店の黒電話の受話器が置かれるのを見て、モモメノは兄に話しかけた。
「どうだった?何か新しい手掛かりはあった?」
「……何も。それらしき情報は見つかっていないらしい」
「そっか……」
「……やっぱり、生き残りはアタシ達だけなのかしら?」
ロザリーは作ったケーキにフルーツを乗せる作業を終え、霊能食材を使った料理用に分けている大型冷蔵庫に保管した。この冷蔵庫は購入した食材の産地である魚沼支部で作られ、他の支部向けに輸出されている製品である。何でもロボを作るための資金獲得の為に、ロボを作りたい技術部の集まりである『ロボ部』の面々が出荷している製品とのことだ。
支部長の田舎ニキが作った使い捨てではない繰り返し使える高級ブフストーンを使用し、MAGで稼働する霊能食材を保存するのに最適な代物だ。更なる高級品になると内部の空間を広げた上で、田舎ニキ本人が直接術式を刻むことで実現した『扉を締めている間、食材の時間を凍結する冷凍庫』などが終末後に備えたシェルター向けの製品として輸出されているそうだが、あくまで半分趣味でやっているこの喫茶店には過剰な物である為導入は見送っている。
ロザリーは思う。今のこの穏やかな日々の暮らしがどれだけの奇跡と犠牲の上で成り立っているのかを。今は火星と木星間のアステロイドベルトと化している第五惑星の崩壊。それにより起きた星の残骸達が地球に降り注ぐあの絶望的な光景を思い出してしまった。
その中で一際大きな、この星そのものを砕きかねなかった巨大な隕石を砕く為に自分達__海底都市アトランティスの民は前時代の遺物である『千人砲』を使った。名前の通り一度の発射に千人のルシェの命を使わなければならない呪砲である。ルシェの魂、肉体、精神。それら全てをエネルギーに変換して打ち出す悪しき遺産であったものの、星の空から現れる脅威に対抗するために先祖たちの手により作られ、万が一の為に保全されていた最終兵器だった。
それに対して自らの両親もその弾となることを選んだことが、ロザリーの心を蝕む生乾きの瘡蓋となっていた。トラウマに触れて無自覚に震えだした身体をナイトニキ__音群キドウが抱き締めた。
「ロザリー、大丈夫かい?」
「……ええ。大丈夫。大丈夫だから……今はこの手を離さないで……お願いよグリオン。私を一人にしないで……!!」
「自分はここに居るよ。大丈夫、大丈夫だから……」
ナイトニキ__音群キドウの、アトランティス時代の古い名前をロザリーは口にする。
海底都市アトランティス、その王族を護衛する筆頭近衛騎士であった頃の彼の名を。
あの日、アトランティスは滅亡した。星を砕く巨大隕石の落下は千人砲による砲撃で阻止できた。だが、それ以外の大量に降り注ぐ隕石でさえ地上の生物の絶滅を招くには十二分な物であった。
それでも、アトランティスの民は未来で生まれることとなるこの星の生命の為に自らの命を捧げた。それこそが当時の霊長であった自分たちの役目であると母なる星にその命を殉じたのであった。
そして、彼らは若者や子供と、彼らを護衛する騎士達や術士を『未来へ』と送り出したのである。アトランティスの占星術師達の秘術により開かれた時の狭間である異空間、『アカラナ回廊』を使って。
だがそれは__酷く苦難の多い旅路となった。
本来、『アカラナ回廊』は人が生身で通り抜けるような場所ではない。故にそこを通る時間旅行者達は何らかの方法で精神体のみをそこに飛ばす。
何故ならばそこはボルテクス界や人の普遍的無意識にも近い深度の深い異界だからである。サンダルフォンやモト、リリスなどといった高位悪魔の分霊が当然ように数ある雑魚のようにわき出すような場所に生身で突っ込んで無事帰って来られるようなものはそういないだろう。
ましてや彼らの生きていた時代に、『マモノ』はいても『悪魔』はまだ産まれていなかった。当然の話である。何故ならばこの第五惑星の崩壊後に生き残りがまだ地球と呼ばれる前の第三惑星に移住してくる事で神と悪魔の原型となった者達が移住してくるのだから。
だが『アカラナ回廊』は時間と切り離された特殊な空間である為そんな事お構いなしに悪魔が出てくる。対策方法など、戦って覚える以外無かったのだ。
未知の敵に精強な騎士達も苦戦を強いられ、一人、また一人と櫛の歯が抜けるように削られて行き、分断され……なんとか無事この時代まで生き残り、たどり着けたのはほんの数名のみとなった。
悪魔との戦闘で肉体を失い、魂だけの状態でグリオンに守護霊として取り憑く事でなんとか自分を保つ事に成功した回復師のロザリー。
逆に肉体はなんとか五体満足であったものの魂を損傷させられ、その砕け欠けた魂に偶然にも神々や悪魔の目論見によりこの世界へと転生させられた魂である【俺ら】が収まったことでアトランティスの騎士グリオンの魂と融合する形で憑依転生する事となった、ナイトニキこと音群キドウ。
この二人がそんな状態になってでも守り抜いた、アトランティス王族最後の女王であった『ウラニア・テ・クアンブル』の妹、モモメノ・テ・クアンブル王女。
現在生存を確認できているアトランティスの民の者達はこの三人。自分たちだけであった。脱出時の出口付近で悪魔達に放たれたメギドラオンによりバラバラに吹き飛ばされた事で共にアラカナ回廊の出口を出た事は確認出来た他の仲間達は未だ行方不明となっていた。
時間も場所もバラバラに放り出された彼らの事を、自分たちは探し続けていた。
正直、東京のメメントスに迷い込んだモモメノの事を、やる夫ニキがその豪運を発揮して見つけ出して保護してくれた事でさえ奇跡と言っていいのかもしれない。それでも共にあの地獄を切り抜けた筈の彼らを見つける事を、自分達は諦めきることができずにいた。
ロザリーを抱きかかえながら、ナイトニキと呼ばれている彼はここ二年のことを思い返していた。グリオンとしての記憶を失いズタボロの状態で死にかけていたところをトーコさんの一家に拾われ、居候をさせてもらっていたのである。
大抵の転生者は転生後の今の名前を自身の名前として当然しているが、キドウは違う。
なにせ憑依転生であるが故に目が覚めた時点で別人とはいえ成人した肉体を持っていたのだ。その状態で肉体の持ち主であったグリオンの記憶を魂が砕けた影響で前世の記憶を思い出した事も影響して一時的に忘れてしまっており、唯一思い出せた前世の名前である『音群 キドウ』という名前をそのまま記憶喪失者として新たに発行した戸籍に登録して、トーコさんの一家に居候として過ごさせてもらっていたのであった。
霊山オフ会に参加できた理由は、トーコが前世の記憶を思い出すに至るきっかけになった多忙な自衛官のトーコの兄の帰宅が原因で判明した衝撃の事実により、お互い転生者でありこの世界がメガテン世界である事が分かった為である。詳しくは語らないが、それ故にトーコはその名字をなるべく晒すことなくガイア連合で過ごしていたり、東京を見捨てる訳には行かなくなったりと色々と影響が出ていた。
彼女にもいつか必ず恩を返さなければとナイトニキは思いながら、自分の現状に頭を悩ませる。
(覚醒したからか『グリオン』としての記憶を大半は取り戻したが、結局レベルが上がっても本来の能力は戻らないままか……やっぱり、憑依転生して魂が変質してしまっているせいか?性格の主体もどちらかと言うと『キドウ』寄りだしな自分。やっぱり戦い方を防護主体のタンク型に完全に切り替えなきゃならないか……)
失った物は多い。魂が砕けたことにより失われた物は、魂が弱くなった影響で下がったレベルだけでなく、アトランティス時代に使えていた力も主力となる部分が殆どが使えなくなってしまっていた。ルシェ族特有の金属精製操作術__後の世で錬金術と言われていたそれを失ったことで、ルシェの騎士であれば当然のように扱えていた魔法剣は使えず、触媒であった短刀はただのナイフに成り下がった。刻むことで事で鎧を身に纏うのと同等の防御力を得られていたルーン文字は扱えなくなり、 金属の鎧を身に纏う事で解決せざるを得なくなった。
中層での洗礼を受けたことにより自身の最全盛期であった『グリオン』に近づけようとすればするほど今の自分は戦い方の軸がブレると、今の彼は気がついてしまっていた。かつての自分ほど、攻撃的な力を今の自分は持ち合わせていないのだ。
ルシェの騎士たるルーンナイトとしての力は失われた。故に、今の自分はただの騎士でしかなかった。
「キドウ兄さん__いえ、我が騎士グリオン。険しい顔付きになっておりますよ。なんて顔で淑女を抱き締めて居るのですか。焦る気持ちは分かります。ですが今はロザリーの事を見てあげなさい。貴方の愛する人でしょう」
「……申し訳ありません姫様。ただ、現状を考えるとどうしても__いえ、そうですね。自分は焦っておりました。どれだけ必死に動いてもまるで成果が出ない現状に、途方に暮れそうになっていました。ですが、生きている限り希望はあると言うことを彼女が近くにいるのに忘れてしまう所でしたね」
ロザリーの事を硬く抱きしめる。シキガミの身体になった彼女は、ルシェの証だった頭の耳は無くしてしまっているけれど、それ以外は何一つ身体を失う前と変わっていない。心臓の音が聞こえる。温かい体温を感じる。癖の少しある長い髪は、自分が愛してやまない赤色のままだ。
再度覚醒を果たす為にあの地獄巡りのハードコースの方の修行を受けた後、自身のシキガミを作る際に起きた奇跡。死して尚、彼を守ろうと守護霊となっていたロザリーがシキガミの素体に宿り、蘇ったのである。
もう二度と会えないと思っていた死んだ筈の彼女でさえ、こうして蘇っているのだ。望みを捨てるのはまだ早い。
「とはいえ、もうボクらでやれる範囲だと手詰まりなのは事実でしょう。仕方がありませんので、神主殿に相談しに行きましょう。あまり、彼に頼り過ぎるのは避けたい所ではありますが。騎士グリオン以外のアトランティスの仲間たちは、転生者でもなんでもありませんので筋違いですし……そのための対価は用意しましたから、どうにかなれば良いですが」
自分たちの事情を、ただでさえ終末が来るのでその対策に多大な労力を掛けているショタおじ達に付き合わせて良いものかと思っていたが故に、今までは自分たち独自で作り上げた東京のコネや縁を辿って調査を行ってきた。ガイア連合の総本山である山梨支部に喫茶店を開いたのも趣味の側面もあるが自分以外のガイア連合のメンバー達……今は黒札と呼ばれ始めている転生者達と縁を繋げて仲間たちの情報を探す為である。
なんの手がかりもなしに砂漠の中から蟻を一匹見つけ出すようなあてのない捜索なのは分かりきったことであったが、それは彼女の言う対価を作り出すための時間を得る為にも必要な時間であった。
「ルシェの王族のみが作り出すことができるコレに、神主殿が価値を見出してくれると良いのですが……」
普段から持ち歩いている大切なぬいぐるみの中に隠した拳大の金属の塊__オリハルコンやヒヒイロガネと呼ばれているそれを見て、モモメノはこの程度の大きさにしか成形出来なかった自身の未熟さを悔やんだ。
尚その後、急にショタおじに呼び出され、トントン拍子で自分たちの突拍子の無い事情を話して信じられ、対価もなしに協力を約束された上でショタおじの占いにより彼らの仲間の一人の手掛かりが見つかる事を、彼らはまだ知らない……呆気に取られた後、不安になった彼らがショタおじに理由と問い質したものの、帰ってくる返答はただひとつのみであった。
『僕も神主だからねぇ。お勤めは果たさないと』と。
星は彼らの献身を見ていた。彼らが守り抜いた星の霊を奉る『星霊神社』に辿り着いたことはきっと偶然ではないのだろう。
何万年も過ぎ去った事により、アトランティスと呼ばれていたその都市は地の下に埋まり、地殻変動により隆起した事によりとある島国の山の地下深くへと埋もれてしまっていた。
一夜にして人々が消え去った古代都市、アトランティスは異界化した富士の山の地下深くで、今は誰にも知られることなく静かに眠り続けているのだ。
彼らは自分が知らないうちに、故郷への帰還を果たしていたのであった。
・今回書いていてちょっとややこしい描写が含まれていると思いますので、その辺りを後書きにて簡単に纏めておきます。
1、ラストバイブル1にて舞台だった第五惑星が理 不 尽 にも吹き飛んだ
2、独自の文明を築いていた当時の霊長であった地球のアトランティスのルシェ達がそのとばっちりに合い大量の隕石と直撃したら地球が砕け散るような巨大隕石の対処をさせられる羽目になる。
3、ルシェ達は最終兵器『千人砲』を用いて自らの意思で星に命を捧げることを決意し、なんとか巨大隕石は対処できたが他の大量に降り注ぐ隕石の対処はしきれず当時の生態系と海底都市アトランティスは一旦ここで滅びることとなる。極一部の若者や子供、護衛の騎士や術士が『アラカナ回廊』を使って未来へと逃げる。
4、地球の環境が落ち着くのを見計らって第五惑星から脱出してきた者達が第三惑星地球に移住。後の悪魔や神となる。
5、アトランティスの残骸を含む土地が地殻変動により大きな島となる。大きな島は島国として後の日本となり、アトランティスの残骸が埋まるその島で一番大きい山は後に富士山と言われるようになる。
こういった流れとなります。
尚、一応ルシェ族は分類としては現地の者ではありますが、そもそも悪魔や神が産まれる前の霊長だった人類の先輩にあたる存在なので霊的資質は才能の差はあるものの黒札と大差ありません。機会と経験に恵まれればレベル100までは至れる戦闘民族です。尚、それ以上の領域へ到れるのはメガテン作品の主人公達のような運命に愛されている者位なのは変わりません。