【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ   作:日λ........

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侵入開始/ある部族達の終わり

 

 

 

 

手にしたアサルトライフルを構え、撃つ。放たれた弾丸は正確に敵の頭や胸を打ち抜き、無力化した。それを確認後後ろに控えている仲間に手で指示を出す。

 

 

「ここから先はミロスの支配領域だ。迎撃に注意せよ」

「了解。この襲撃で食料を得られれば良いのだが」

「銃弾と銃ばかりが我々のトライブにはあるからな。余裕があるうちになんとか確保しなければ我々はジリ貧だ」

 

仲間達とそんな、乾き切った会話を続け俺達はその日も無機質な殺し合いの日々を続けていた。

 

 

ここはジャンクヤード。誰が言ったかも分からないが誰もがここをそう言う名だと知っている。それについて疑問に思う感情も、疑問も、その時の俺達には何も浮かぶこともなく、ただただ銃を使い、敵対する部族との殺し合いと資源の奪い合いを行い続けている、乾き切った土地だった。

 

 

「リーダー、前方にミロスの兵隊共を確認した。どうする?」

「このまま隠れて潜入しよう。護衛を置いているということは近くに資源を置く保管庫がある可能性が高い。それを見つけ次第、一度引き本格的な襲撃の計画を……」

 

 

銃声が響く。後ろに控えていた仲間の一人が撃ち抜かれ崩れ落ちた。

 

 

「クソ最悪だ見つかったか!」

「チッ、各員、遮蔽物に身を隠せ!!迎撃する」

 

 

いつも通りの、よくある殺し合い。各々手にしたライフルや拳銃で、撃ち合い、殺し合い、資源を奪い合い、自分たちの部族の勢力を高める。

そして、全てを統一したものが中央に位置する『タイヨウへと続く塔』へと向かい、楽園を目指す。

 

それがジャンクヤードの部族達に課せられた使命であると、俺達は誰もがそう信じていた。無感情に、ただ命じられるがままに。

 

 

その日が来るまでは。

 

 

「……リーダー何か、空の様子がおかしい。何だ、あの光は」

「空だと、この状況で一体何を……」

 

仲間の一人がそう言った為、遮蔽物に隠れながら上を見上げる。

 

灰色の空に、一条の巨大な光がこちらへと落ちてきていた。やがてそれは、弾け、無数の光の線となって俺達へと降り注ぎ始めた。

 

 

「なんだ、これは……」

 

敵味方関係なく、降り注ぐ光に貫かれ、直後俺達はその衝動に苛まれた。

 

 

目の前の命を食らい、貪り、自らの糧にしたいという衝動に。

 

 

光に貫かれた部位が熱を帯びていく。得体のしれない光を放ち、それは俺達の体を変質していった。

 

 

 

「あ、あ、あああぁあぁァァァァ!!」

 

 

瞳が色付く。体が変わり果て、人では無い異形へと変質していく。そして、耐え難い餓え。乾き。本能的な食欲に頭が支配されていく。

 

 

天に輝くタイヨウに咆哮する。変わり果てたその姿は、悪魔とでも言わざるを得ないような、ヒトからかけ離れた姿であった。

 

男のように浅黒い肌と長い耳を持つわけでもなく、女のように白い肌と記憶の中で狐と呼ばれていたと知っている生き物の耳を持つ訳でもない。生物としてどこか間違った位置にある口と牙。発達した太い手足や硬質化した骨のような外骨格。頭が2つある物も居れば、手足に鋭い刃や斧を持つものも居る。

そんな見た目からバラバラの者たちに、一つだけ共通する点が存在していた。

 

皆が皆、血肉に餓えた獣であるということだ。

 

引き裂き、屠り、喰らう。

 

目についた全てをそうする他に、その衝動から逃れる術は無かった。

 

 

 

この日、楽園を目指す部族は皆滅んだ。生き残ったのは変質した肉体を操り、かつての同胞たちやトライブの者たちをより多く喰らい、理性を保つ事で完全に悪魔に成り果て無かった者達だけ。

 

 

 

全てが敵に成り果てたこの煉獄で、俺達は終わりの見えない共食いを続ける以外、生き残る道など無かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

この手の襲撃やカチコミの基本は人の少ない深夜帯に行うのが基本だ。一般人の迷惑になりにくいし、何より視界の暗さはそのまま様々なことを隠す覆いとなる。元カルマ・アソシエーション社の本社ビルの周辺は山に囲まれた一見東京とは思えない立地に存在しており、紛れ込みつつ侵入するの常人ならば中々厳しい立地である。

だが覚醒者の一団である俺達であれば話は別だ。山の木々に紛れながら、忍者のように木々の上を走り抜けることもやろうと思えば簡単に出来る。

 

 

「カス子ネキ、索敵、斥候用に放った小型の人形からは何が見える?」

「んー……少なくともビルの上側は誰も居ないわ。少し中が荒れてるけど、まあ潰れて暫く経った会社って考えると普通。不用心も不用心だけど、まあ本流の派閥から見捨てられた奴らの隠れ家と考えるとお寒い懐事情が見えてくるとしか言えないわこりゃ」

「となるとやはり情報通り地下が怪しいか。ならハッキングしてみるか……人形に持たせた無線接続用の端末をビルの回線に指してくれ」

 

 

刺したよ、とカス子ネキの返答を聞いて俺はGUMPを開き、回線にアクセスする。無論、相手に気が付かれないように侵入を知らせないデーモンを流しながらである。

 

「最古のデーモンだが、原始的だからこそ信頼性があるものよな。PINGっと。」

 

このビル内のローカルネットワークに接続された電子機器に対し、接続テストを行う。返ってきた反応を見ると、大半は反応が帰ってこなかったものの数カ所繋がる反応を拾えた

 

「ビンゴ。社内駐車場の中に怪しい反応を発見した。カス子ネキ、端末を回収しておいてくれ」

「はいよー。さてさて、何が出てくるやら」

「流石に手際がいいなフリスビーニキ。案外この手の機械に強い俺らで前線に出てくる奴は珍しいからやり方がスマートで新鮮に見えてくるぜ」

「大抵マスター含めて異能やらスキルやら腕力で対応しちまうほうが早いって奴のが多いからなぁ……特に戦闘特化の黒札だと尚更」

 

 

霊視ニキとモーさんがそれを見て何やら感心している様子だ。まあ力任せでも同じ事が出来て、隠蔽含む後始末もしっかり出来るならそれはそれで問題無いと思うのだが。バレたときの面倒さを考えたらそれくらいの隠そうとする努力くらい当たり前にするだろうに。

 

 

「皆が皆そこまで気を回せるならいいんだが、初めからそういう事まで気が回せる奴は悲しい事に割と少数なんだよ。俺達ガイア連合はあくまで民間組織だって事頭からすっぽ抜けてる奴が意外と居てなぁ。当たり前の事を当たり前にするのって案外貴重な資質なんだと実感したよ」

「異界の攻略とか、地方の神々の封印の攻略とかならまだいいんだ。でも異界とか無いこういうメシア教関連の組織とかで戦う場合もそのノリで突っ込んで警察にお縄になりそうになった黒札が何人か居てさぁ……後始末クッッッソ面倒くさかったぞホント。マスターの友人達じゃ無かったら一回剣のサビにしてやろうかって思った位だわ」

「うわぁ、考えたくない面倒な案件だなそれ……」

 

 

そんな事になったから今じゃそのあたり弁えて行動できるよう研修を受けたか問題無しと判断されたメンバーが非異界の場での依頼では選出されているとの事だ。霊視ニキがやたらと要救護者な俺らを回収する事が多いのも、そういう時と場合を弁えた行動が出来た上で危険な場所にも突っ込める実力と度胸がある為結果的にそうなっているのだ。実際に救われた経験のある脳缶ニキは僕の時に来たのが霊視ニキでマジで良かった……とあの時の事を思い出し今更ながら少し冷や汗を掻いていたそうな。

缶詰された脳味噌が話しかけてくるとか冷静な相手じゃ無かったら悪魔扱いされてそのまま潰されていたかもしれないからだ。オモイカネとかのまんま見た目脳味噌な悪魔も居るのである。

 

そんなふうに会話を楽しみつつも、霊視ニキとオレは先導して目で見て罠や霊的な仕掛けがないかを確認しながら駐車場への道を進んでいった。見鬼に特化している霊視ニキと、見るものを情報化する事ができるオレの目はこの手の初見の土地において無類の強さを発揮する。霊視ニキが霊的な罠等を見抜き、オレは電子的、物理的な罠の情報を視覚化する事でお互いの目の負荷を抑えつつも敵地の罠を見つけつつ前へ進めるからである。

電子的な警報システムが何個かあった為、見つけ次第ハッキングして無効化しつつ誰にも会うことなく俺達は社内の駐車場の中までたどり着いた。

 

 

「当然ながら中は暗いよな。一応聞いておくが皆夜目は効くか?」

「あー、ごめん。ワイはちとまだそこまで習えてへんねん。霊格鍛えるのに専念してたもんである程度しか習得しきれてないわ。皆を追っていく位なら出来たけどな」

 

デュエリストネキがそう答える。異能者でさえ視界が一切見えなくなるダークエリア内は別として、闇夜に紛れた悪魔が恐ろしいのは当然の事である為か、それに対応できるようになる為の一種の防衛本能のようなものが働くのか、普通の暗さに対しては覚醒してから鍛えれば皆割と慣れるというか、対応することが出来るようになるのである。

が、これはあくまで鍛えれば出来るという話であって、鍛えていないぶっつけ本番でそれをやるのは無理というものだ。

首に下げていたゴーグルを取り外し、オレはデュエリストネキにそれを渡す。

 

「ならこれを使ってくれ。マッピングアプリの調整用の電子ゴーグルだが、暗視ゴーグル機能も搭載している。ベルトのサイズさえ合わせれば問題なく使える筈だ」

「あんがとなぁフリスビーニキ。その分戦いでは役立てるよう張り切るで!!がんばろなぁカイリュー」

「ギューリュー!!」

 

デュエリストネキ__本名藤堂 まいはゴーグルを受け取りつつ専用式神のカイリューと共に意欲を共にした。

 

青い長い髪を大きな黒とグレーの格子柄模様のリボンで纏め、青基調のTシャツにミニスカート、黄色色のジャケット、赤色のカード入れ付きの大きな革ベルトと飾りつきブーツ、そして父親から貰った大切なピアスを身につけた現役の女子小学生である。普段はガイア系列の企業が経営している小学校に通っており、修行の時や依頼を受けた際はショタおじに作ってもらった見た目と性格を再現してもらった簡易式神に入れ替わってもらい、カードを使った召喚術や魔術を得意とする二重生活を送る黒札であった。

 

 

「見た所、何の変哲もない駐車場だな……霊視ニキ、何か見つかったか?」

「いや、俺の霊視でも何も見つからねぇ。って事はだ。おそらく霊的な力で隠してる訳じゃなく物理的に何かしら仕掛けがあるんだろ。その場合フリスビーニキの目の方が分かりやすいんじゃねぇか?」

「ああ、ちょっと待ってくれ。ピントを合わせる」

 

目に念動力を込めて可視化する情報の種類を変更する。この目で取得できる情報はあまりにも多すぎる為、過負荷で脳を焼かない為に身につけた小技である。何かしら仕掛けやスイッチなどが無いか建物内の内部構造に関する情報を可視化していく。

 

「……あった。この端末だ。よし、ここは霊子ハッキングで対処するか」

 

異能により作り出した半透明なプラグとコードをぶっ刺し、内部のプログラムを改変。セキュリティ関連に探知させないように内部のプログラムをスタンドアロン化。そのまま端末を起動させる。

 

無機質なコンクリ製の床だと思われていた床が割れて開き、その中から金属製の無機質な階段が現れた。図面には無い地下室は、明らかに後から増設されたのが目に見える荒い作りとなっていた。

 

 

「さて、ここからが本番だな。皆、注意して先に進むことにしよう。霊視ニキ、また隣で霊視しつつ罠を探りながら進んでいこう。ナイトニキは俺達のすぐ後ろでカバー出来るように構えててくれないか?」

「あいよ。正直、アンタとこうやって肩を並べて同じ場所で戦えるのが感慨深いもんがあるぞ。フリスビーニキ」

「カバー了解した。新調したこの盾と鎧なら、この前みたいなことがあっても死なずに皆を庇いきれる筈だ。任せてくれ」

「二人ともありがとう。カス子ネキと脳缶ニキとトーコさんは後ろからの襲撃に備えて構えてて貰えると助かる。デュエリストネキとモモメノさんは、真ん中の位置で皆の後方支援を頼んでも良いか?」

 

ナイトニキと霊視ニキにお願いした後、他のメンバーにも今後の動きについて説明する。

ガイア連合の俺達、黒札には明確な序列は無い。故に依頼主としてお願いするという形で指示出しを行う。恐らくこれが一番角が立たない指揮方法であろう。皆それなりに長いこと付き合いのある面々が揃ってはいるが、だからこそ親しき仲にも礼儀ありと言う言葉もあるからだ。

 

「はいよー。人形展開しておくわ。起きな【殺戮人形(ジャック ドール)】×3!!」

「【COLL】!!仕事の時間だ、ベール。他にも色々呼べるけどこれ以上は道が手狭になるから今はベールだけで自重しとくわー」

「よし、何時でも『星眼』は抜けるようにしておくよ。居合スタイルで行くか」

 

後ろからの備えを頼んだ面々からそれぞれ準備を終えた返答が来る。近接型の剣士、王道のデビルサマナー、遠距離支援型の人形遣いと中々バランスの整った面々だ。

 

「さあ、サーチするよ!『エウリュディケ』!!」

「わぁケモミミのお姫様やー!!カッコかわええなぁモモメノさん!!」

「そ、そうかな……まいさんみたいなカワイイ人にそう言われるとボク、その、照れちゃうな。そのリボンとか、ピアスとかとてもお似合いですし」

「……!!へへ、これはワイの自慢の両親からの贈り物で宝物なんや。褒めてくれてありがとなぁ。さぁ、モモメノさんのお仲間さんを助けに行くでカイリュー。気ぃ張ってけぇ」

「リュー!!」

 

 

敵陣に入った事により意識が切り替わった為か、モモメノさんは戦う為の衣装である怪盗服へとその装いを変化させた。

中衛を担う二人も、どうやら早々と打ち解けてくれたようで何よりである。貴重な感知タイプのペルソナ使いであるモモメノさんと、聞いた話だとカードを使った様々な属性の召喚術を得意とするデュエリストネキはどちらから敵が来ても対応できるように真ん中に置いておく事にした。そして万一彼女らに接近されても護衛のデュエリストネキの専用シキガミ、某携帯獣の初代600族を模した黄色いドラゴンのカイリューの拳が相手を貫くと言う寸法である。

 

 

「シュテル、背中を預けるぞ。支援を頼む」

「はい、お任せくださいマスター!!」

 

最後に、シュテルに指示を出す。他の面々も各自仲魔やシキガミ等に指示を出し終えるのを見届けて、オレはカチコミ開始の合図を出した。

 

 

「皆準備万端だな。コレより敵陣に攻め入るぞ。ハルカラさん奪還作戦を、コレより開始する!!」

 

俺と霊視ニキが先導しながら、俺達は深い深い地下に掘られた違法研究施設に侵入していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この被験体に刻んだアートマのみが、何故正常な稼働をするのかの仕組みはあの電脳世界で行った実験によって判明したわね。あとはこれを私用に調整すれば……ふふふ、あと少し……あと少しで……」

 

 

この力は、ようやく私の物となる。

 

彼らが侵入を果たした地下の最深部にて、試験管の中に眠る少女を見ながらその女__この研究設備の元主任であった日暈 ナツメはそう呟いた。

 

深く深く、渇望するかの様に。

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