【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ 作:日λ........
疑問に思っていたことではあった。何故内部の異端に厳しい本流のメシア教から粛清の為の部隊がこの施設に差し向けられてないのか。離反の意志が見れるこの設備に潜むメシア教の一派に対して内部粛清が行われてもおかしくないのに関わらず、彼らは野放しにされたままだった。
小規模過ぎて無視されていたならまだ良かったが、どうやらこの地下施設はそうでは無いらしい。
「おいおい、嘘だろ……なんでこんな所にセントリーボットが配備されてるんだよ。少数運用機かつ米軍の最新鋭正式採用機だぞ……」
階段を降りて、すこし歩いた後の部屋でそれは鎮座していた。
ぶっとい三脚にメカナムホイールとオムニホイールの間の子の四つの車輪を搭載。ブラックチタン合金製の強固な装甲を装備。ロボット工学界の天才、Mr.ハウス設計の人の言葉を解する程の高度で精密な人工知能を搭載した重戦闘ロボット。ロブコ社製米軍正式採用機である『セントリーボット』がそこにはいた。*1
幸いにも起動前に制御用端末にハッキングして電源を落としておいたが、セントリーボットだけでなくガンタレットまで3台も設置されていた。悪魔に対する備えとしてはともかく、人に対する備えとしては過剰なほどの設備ばかりだ。そりゃこんなもん離反されようが放置するわ。出入り口のすぐそばでコレならまだまだ防衛設備は道中に沢山あるのだろう……頭が痛くなってくる。
「フリスビーニキ、このロボットについて知ってるようだけどコレそんなヤバイ代物なんか??」
「……コイツは米軍が極秘施設や要人の防護用に正式採用しているロボットでな。流石に地下だからかミサイルは外してミニガンに変更されてるが、本来なら左腕はガトリングレーザー、右腕はミサイルを装備した全身チタン合金製の重戦闘ロボだ。ペンタゴンのデータベースをハッキングの修行がてら漁った時に見つけた情報だが、一番問題なのはそこじゃなくてその動力にある」
背中を見てみるとその理由はわかると思うぞと言い、実際そのようにロボットの背部を見た脳缶ニキの顔が引き攣った。
まあ、多分日本人なら誰だってそうなると思うわ。こんなもん使ってるの目撃したらな。
「コレを正式採用してるとかマジかよ……イカれてるのか米軍。コレ核動力で動いてるぞ!?」
「はぁ!?うっわマジだ!?なんつーもん使って、いやそれ以前にどうやってこんなもん日本に持ち込みやがった!?」
排熱のため剥き出しになっている動力部に書かれた☢マークを見て、脳缶ニキとカス子ネキは頭を抱えた。銃刀法違反とかは俺達も強くは言えんが、いくら何でも終末が来ていないのに関わらず核で動く戦闘用ロボットを持ってくるとかドン引き物である。いかにメシア教がやりたい放題しているのか察せるというものだ。
この世界はメガテン世界である為か、一部の技術が前世よりも早いペースで発展している。サブカルやネット、スマホ等に関しては先に転生したことを自覚したことで社会的に成功している俺らの手によって発展しているものであるが、そもそも素で手持ち式の『プラズマソード』や『レールガン』等のハイテク武器が既に実用化されているのは確認済みだ。
エドニキが愛用している神経接続式の義肢等も既に民間レベルで出回っているし、パワードスーツやパワーアーマー等と言ったハイテク防具もそろそろ実戦投入されると言う情報が出回っていたり、改良されて悪魔との戦闘も可能となるであろう種族『マシン』の前身である自立型ロボットも民間レベルではともかく軍事施設では既に導入されている。
しかし、日本ではこれらを目にすることは基本はない。本国であるアメリカでさえ最新式の装備や設備であるからだ。なので黒札でもこの事実を知っているのはオレのようにペンタゴンに腕試しとハッカーとしての浪漫を求めてハッキング仕掛けたりするアホとかか、海外勢の俺らか、このようにメシア教の設備にカチコミを仕掛けた経験があるメンバー位であろう。偶にであるが、メシア教の設備の中には天使等が防衛に詰めてるのではなく、このような機械式の防衛設備を備えている場合があるという話を何度か聞いたことがある。
つまりオレ達は運悪く、いやこの場合は運良くハズレを引いたと言う訳だ。電子制御で動いてる時点でオレにとってはコイツラはカモ同然であるのだから。
「本当なら物理的に接続方法が無いからハッキングとか難しいことは覚えておいてくれよ??オレの場合その手の端子や無線の有無にかぎらず異能で無理矢理繋げられるからハッキング出来るってだけだからなー」
「んなもん言われんでも分かるっての……本当に電子機器関連には反則レベルで強いなフリスビーニキ。実は俺もメシアンとの戦いで一回だけあのロボットとやり合った経験はあったが……レーザーはクソ痛いわミサイルは乱射しまくるわ、ただの機械としては頑丈だから本気で攻撃してうっかり動力部壊すと放射能が漏れたりメルトダウン起こすポンコツだわで対処に困るんだよ。しかもコイツただの機械だから戦ってもレベルは上がらんしなぁ」
「また嫌なもんが出てきたなぁ。メシア教関連の設備としては結構嫌な部類のハズレだぞアレ」
モーさんが嫌そうな顔をして、霊視ニキは深々とため息をついた。ガイア連合はオカルト関連との繋がりが強い為忘れがちだが、メガテン世界は科学も中々に殺意に溢れているのである。こんな物騒なロボット達と閉所で戦わせさせられるのははっきりいって御免被る。しかも種族マシンと違ってコイツはあくまでただの頑丈なだけのロボット。当然ながら霊格なんてものを持ち合わせている訳もなく、倒した所でレベルも上がらない単純な邪魔者である。しかもあまり派手に壊すと霊視ニキの言ったとおり核爆発したり、放射能汚染されたりするおまけ付きだ。霊視ニキがため息を付くのにも無理もない。
核による汚染は悪魔すら殺す劇毒である。人々の認知として核は最強最悪の兵器として認識されている上、放射線が悪魔の肉体を構成する生体マグネタイトを崩壊させる性質を持つ為だ。*2こんなところに天使が突っ込んだ所で自爆させられたらそいつらごと全滅すると言う訳だ。そりゃメシア教の本流共もこんなところに粛清のための戦力向かわせん訳だ。向かわせた所で相手に自爆させられたら無駄すぎるし、流石に核爆発起こしたら言い訳できんからだ。
だが結果的に無傷で無力化出来たことは大きい。救出が終わって余裕があったなら、このセントリーボットも回収して研究用に技術部に回すべきかもな。流石にウラン等の核物質の入手は困難だし、制御用の回路やAIも参考になる部分があるかもしれん。
「とりあえず、今度マッピングソフトのアップデートでガイガーカウンターの機能を着けておく事にするわ。終末後なら必要だろうしなHAHAHA」
「確かに必要だろうが、流石にそれが必要とする状況には陥りたくは無いぞフリスビーニキ」
そうナイトニキと駄弁りつつも見つけた制御用コンソールからデータを抜き、この施設の大まかな構造の情報を発見したのでそれを元にマッピングソフトに書き込んでいく。大体の作りは情報を抜けたが、この感じだとだいぶ深くまで地面掘って作られて……いやこれは違うな。元々あった洞窟に穴掘って繋げてそこに設備を建設してるのか。よくもまあこの地震大国の日本で異界化もせずにここまで大掛かりな地下設備をバレずに作り上げた物だ。
作り上げた地図から怪しそうな場所を割り出していく。セキュリティレベルの高い場所が恐らくそれであろうと思いガンタレットなどの防衛設備が集中している場所を探してみると、一か所明らかに手厚く守られた場所を発見した。ショタおじが見たという霊視の光景の特徴に当てはめるとぴったり当てはまる構造をしている為、おそらくここが敵がいる場所でハルカラさんが囚われている場所だろう。
幸いなことにもこの施設、防衛に関しては今のところ人員不足が理由なのか完全に機械任せなのでバレないようにデーモン送り込ませて防犯設備を無効化させてる現状では相手に状況はバレてないと思われる。監視カメラ映像も弄って昨日の分の映像を流した上でリアルタイムで見ているものだと細工しておいたから暫くはバレないだろう。
「よし、この地下施設の構造データを抜き取って敵や人質がいると思わしき場所を割り出せた。先程と同じようにハッキングで防衛設備を無効化しつつ、ステルスを続行して出来る限り続けて進んでいこう。敵の喉元にバレずに近づければ近づける程救助の成功率は上がる。どんどん距離を詰めていこうじゃないか」
位置は大体割り出した。設備構造も大体把握した。ならあとは突き進んでいくだけだ。モモメノさんに マッピングアプリを見せ、全員にその情報を共有させた後、オレ達は先を急いだ。
電脳異界【ジャンクヤード】
廃墟と砂、見渡す限りの荒野が広がるその地を血で染め、返り血を返り血で洗い流すような凄惨な戦いの果てに、その玉座に辿り着いたのはたったの三人の修羅のみであった。
「結局探し回っても、生き残ったのは俺達だけか……クソッ!!どうすればいい??今はまだ良い。狩った血肉が山ほどあるからな!!だが、それもいずれ尽きる……」
「少なくとも、拙者達が共食いするのだけは避けたいが……」
「……今なら部族はもう俺達『カザン』のトライブしか残っていない。今ならば……」
「……ああ、あったなそんな話も。だが、楽園など本当にあるのか?!こんな力を、突然ジャンクヤードの全てのニンゲンにばら撒きやがった奴の戯言だぞ!!しかも、しかもだ……!!なんでこの力を渡すと同時に俺達に感情なんてもんを与えやがったんだ!!こんなもんがなければ、皆、皆無駄に苦しむ事なんて無かったのに……」
激情の込められた声に嗚咽が交じる。皆あの光を受けて変わってしまった。今思えばそうなる前は皆感情を抑制されていたのだろう。ああなる前までは、ここにいる者全てがあの乾いた殺し合いになんの感情も抱くことは無かった。苦しみも悲しみも、この力を得てから得てしまったものであった。
あの日から無機質に殺し合い、無機質に奪い合う日々は終わりを告げ、ジャンクヤードは変わり果てた。皆生き残る為に血肉を奪い合う文字通りの修羅場へと。そうして壮絶な食らい合いの中、たった三人だけ生き残った修羅達が、なんとか人間性を失わず壊れかけた建物の中の席に座り話し合っていた。
『カザン』
『ミロス』
『アイゼン』
『プレロマ』
『マレアイア』
『ネバンプレス』
このジャンクヤードの地形と、その土地を支配するトライブの名が書かれた立体表示の電子地図がテーブルの中心に設置されていたが、それらの名はこの三人が所属する『カザン』を除き全て斜線が引かれ、消されていた。
これは、これらのトライブのメンバーが全滅した証であった。
「たとえ楽園が無いにしてもだ。もしあの塔の先にこれを企てた奴がいるというのなら、拙者はそいつのことだけは八つ裂きにしたい……!!二人は違うのか?」
「……違わねえ。ジャンクヤードで生きた者達の怒りを。無念を……!!叩きつけてやらねぇと気がすまねぇ!!」
「やろう。仲間達を食っちまった俺に、カザンのリーダーを名乗るような資格なんて無いが……それでも元トライブの長として、ケジメを着けに行かなきゃならん……!!」
三人は各々の銃を身に着け、可能な限りの食料を持ってその塔へと挑んだ。
明日などいらない。楽園など、同胞達を喰わざるを得なかった自分たちに行ける場所ではないと、その修羅たちは知っていたからだ。故に彼らは不転身の思いで最後の戦いに挑もうとしていた。
その姿を、天に輝くタイヨウだけが見続けていた……
ハルカラの遺伝子データと、ハルカラがルシェの占星術士に託された、悪魔に魂を奪われないようにアカラナ回廊で死んでいったルシェの同胞たちの魂を込めたペンダント。
それらの情報をカルマ・アソシエーション社が極秘に開発していた戦闘用AIへ、アートマの実用化実験の為に組み込んだのが彼ら『人工ルシェ』である。
古代のルシェの魂には『原罪』と言われている物が存在していない。
かつて法の神が管理していた、今は悪魔と呼ばれている者たちが奪われた知恵。
それは天地創造を行う事ができる創造主としての『認識し、創り上げる事ができる想像する力』である。
それを蛇に唆された人の祖たる男女が食したことで彼らは土くれ等から作られた『マネカタ』から『人間』と呼ばれるものとなり、その魂に知恵を宿す事となった。
原罪と呼ばれている物の正体はこれである。
だが彼らルシェ族は後に悪魔と呼ばれる者たちがこの星に移住してくる前から、この星の霊長であった者達である。
そんな物を持ち合わせているわけがないのだ。彼らの知恵と理性は、生物として進化することで得た自前のものである。
故に、人の理性を持ちながら悪魔の力を得ようとした女が開発した【悪魔化ウィルス】に適応することが出来たのであった。
何故喰奴やアバタールチューナーと言われているものがこの世界に表れていないのか。太陽が狂いだして人々が石化していく奇病が無い為必要とされてなかったからというのもあるが、原罪を持つものに対して働く機能を持つこの世界に法の神が敷いている『ナホビノの禁』*3に類する行為である為に人を悪魔化させようとしたところで、悪魔化ウィルスそのものが弾かれてしまうからであった。
いくら実験を重ねた所で普通の人相手には成立しない代物であったのだ。それこそ、両性が機能する半陰陽の人間でも存在していない限り、『ナホビノの禁』をすり抜けて人を悪魔化させる方法など見つける方法が無かったのである。
『原罪を持たない種族』でも都合よく現れない限りは、この世界でアバタールチューナーと呼ばれる存在は成立する訳もなかったのだ。
故にこの出会いはメシア教に属する者達からも、ハルカラ自身からもお互いにとって不幸であった。法の神の子として生まれながらの原罪を持たずに生まれたが故に、『人々の原罪を肩代わりしてその身を捧げる事ができた救世主』と同等の資質を持つ存在に、原罪とほぼ同義の悪魔の力を植え付けて台無しにしてしまっているのだから。
よりによってその救世主を崇める、その名を名乗っている『メシア教』が救世主足り得る天然の存在を自らの手で汚してしまったのだ。
その様を見て、メシア教を作り上げた大天使の一体の中に潜む者は嘲笑った。
『実に良い腐敗である』と。
悪魔の中に潜み、復活を目論む彼らの性質は前世界から変わらない。『完全に今の世界の悪魔へと変質しきらない』限りは、彼らは世界を喰らう者としての本質を失う事が出来ないのだ。
故に虎視眈々と彼らは策を練り、自身を宿した悪魔の中で潜み、失った【■■】としての力を取り戻し復活する為彼らはこの宇宙が作られたその時から暗躍を続けていた。諦めの悪い敗亡者達。それが今の彼らの、かつて君臨していた七体の【■■】の内の数体の現状であった。
『私ですらもう【お花見】をする気は無いのに、そんなザマになってまで見苦しいんだよお前ら』と、かつて前世界で君臨していた第二は、この世界の外側から彼らのその無様さを見て呟いた。