【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ 作:日λ........
完全に理性を捨てきった二体の悪魔は、目の前に居る肉を食らう為にその力を開放していく。十分な手数を得るために__同時に【獣の眼光】を発動した。
原作ゲームではやりたい放題してくる敵専用行動の筆頭格の眼光系スキルであるが、実際にこの世界でそれを行う場合膨大な量のマグネタイトを消費する。その原理は時間操作や肉体の加速等、それぞれ使う存在によって別れているのだが何にせよ無理をして素早く動く力の総称であるからだ。
データの世界から現実へ移され、マグネタイトを使用して作られた仮初の肉体を持つ彼らにとってそれは自殺行為に等しい。だが飢餓に支配された彼らは目の前の肉を食らう事を優先した。
その結果、彼らの悪魔の力の源であるアザ……アートマが暴走した。
彼女らは電脳世界で再現された情報体を、マグネタイトによって実体化させられた言わば仮初の存在である。魔王や大天使さえ食らう力を持つものの、その存在は不安定で不完全な電子の悪魔。故に、電脳世界では起こり得なかった悪魔化よりも危険なアートマの暴走が起きてしまったのだ。
2体の悪魔に刻まれたアートマの刻印から中心として、全身が罅割れるかのように悪魔の肉体が剥がされていく。そうして現れたのは獣の耳を持つ二人のルシェ族の女であったが……その殺意の圧は収まるどころか高まり続けるばかりであった。
陶器のように灰褐色に変色した肌の色。爛々と黄昏色に染まった瞳。そして剥がれ落ちず残った武器となる悪魔のままの身体の部位。
夜叉鬼 フェイクカルラはその背中から生えた翼腕を残した赤髪の長身のルシェの女へと変わり、夜叉鬼 フェイクベーオウルフはその肥大化した両腕を残したまま金髪の髪を簪で纏めたルシェの女へと変わり果てた。
その姿を見たモモメノが動揺と悲しみのまま、その名を叫んだ。
「そんな、ナムナ!?アギ!?どうして貴方達が……」
「馬鹿な!?あの二人はもう既に死んでいた筈……グッ!?」
その疑問への返答は攻撃によって返された。先程までとは比べ物にならないほどの速度で放たれた攻撃をナイトニキは必死で受け流しているが、速さだけではなく破壊力も恐ろしいほどに跳ね上がっていた。
「……この解析結果、これはまさか羅刹の力か!?だとしたらマズイぞ!?」
「知っているのか、フリスビーニキ!?すまんが俺はアバチュは未プレイだったんだ!!」
「詳しく説明してる時間はないから手短にヤバイと思う点だけ話す!!アレは羅刹モード!!あの状態だと喰奴は一部だけ肉体が悪魔のものに変化し、必ず先制行動を行えるほど素早くなる!!更に物理攻撃力が倍加!!クリティカル率が上昇、相手の攻撃からの命中率が80%に変化。物理無効・反射・吸収耐性を無視して相手に攻撃できる暴走状態だ!!」
「はぁぁぁ!?何だそりゃ!?反則だろそんなの!?」
「本来なら本能に飲まれるせいで自力で行動が不可能になり
ナイトニキが高速化したフェイクカルラの相手をしている中、攻撃が激化した影響でこれまでように上手くヘイトコントロールを行うことが難しくなった為かフェイクベーオウルフがこちらへと突っ込んできた。
間一髪のところで拳を回避する。そうして敵を近くで目にして見えた情報に思わず顔を顰めた。
「離れてくださいマスター!!火炎魔法を__」
「待てシュテル、撃つな!!コイツいつの間にか火炎リフレクトを貼ってやがる!!」
「なら私が対処する!!ハァっ!!」
あまりの速さに一瞬しか見えなかったものの、なんとか解析できた情報をシュテルに伝えると、横からトーコさんが飛び出してきた。居合の構えのままフェイクベーオウルフの懐に羅刹モードで加速している筈であるにも関わらず入り、神速の抜刀術を繰り出した。
「例え回避率が上がったところで……四方八方から一瞬で刃が届く斬撃ならば、避けきれないでしょ!!」
そう言ってトーコさんは性質上、刃が届く範囲であればどんな素早い相手でも必中させる事が出来ると豪語する抜刀術、【十六手詰め】*1を繰り出した。
自分は剣士ではない為説明を受けても詳しい術理はよくわからなかったが、同じタイミングで同時に複数の斬撃を重ねて与える剣技であるという。しかし相手は頭に血が上っているのか先程までの技巧派な一面は鳴りを潜め、本能のみで襲い掛かってきている為かカウンターを繰り出すこともなく、ただ致命傷だけは避けるように身をよじらせそれ以外は刃を受ける事すら構わずこちらへと突っ込んでくる。
そうして捨て身の一撃でトーコさんを殴り飛ばして壁へ激突させた後、再びこちらへと突っ込んできた。が、トーコさんが作ってくれた隙をオレは見つけた。
「好き放題してるんじゃない!!いい加減にせんかぁ!!」
「!?!?!?」
トーコさんの攻撃により生じた相手の肉体の情報的脆弱性が発生している部分に【ハッキング・ワン】を発動させ具現化した半透明のプラグを突き刺し、ハッキング状態を付与することに成功した。
思いがけぬ反撃を受けて動揺した隙から得た一呼吸を使い、そのままデーモン【ロストパワー.x】*2を流し込んだ。
「ガ、ア、ァァァァアアア!?」
ハッキングに成功した部分__肥大化した左腕のマグネタイト結合が溶けていく。信仰排泄ゼリーの元にもなったこのデーモンは相手の肉体のマグネタイトの構造をめちゃくちゃに作り変え、肉体のスライム化を誘発する事でダメージを与えつつ相手の攻撃力と防御力を大幅に失わせる悪性情報を送り込む代物である。
こんなものを流し込まれたら悪魔の肉体を持つ者からしたら溜まったものではないだろう。事実溶けかかった左腕を抑えながら悶え苦しむその姿は尋常なものでは無かった。
「ナイトニキの仲間なのは知っていたからなるべく長く苦しませる事になるこれは使いたく無かったが、悪いがそうも言っている余裕が無い。恨むならオレを恨め。霊視ニキ!モーさん!!悪いがナイトニキの加勢を頼めるか?ロザリーさんはすまないが壁に叩きつけられたトーコさんの回復後こちらに合流してくれ!!それまでのコイツの相手はオレとシュテルで引き受ける!!」
孤立して羅刹化したフェイクカルラを相手にして凌ぎ続けているナイトニキを見て、それぞれにしてほしいことを支持を出す。なんとか今は致命傷は避けているものの、こうなる前までのように攻撃を完全に捌き続けられている訳ではなく、これ以上ナイトニキ一人で相手をさせ続けるのはマズイと判断した。
「ああ、任せてくれ。行くぞモーさん!!」
「よっし、さっき殴り飛ばされたお返しは任せとくぜフリスビーニキ!!」
「アタシの旦那を宜しくね二人共。フリスビーニキとシュテルはトーコを連れてくるまで死なないように気をつけて!!」
各々の返答を聞き、離れていく気配を感じつつオレとシュテルは目の前で悶苦しむフェイクベーオウルフに対して構えを取った。
「さて、やるぞシュテル!!敵は手負いの格上、前衛はトーコさんが帰ってくるまで居ない厳しい状況だが、この程度の修羅場など必ず突破できる!!君と二人でなら!!」
「ええ、期待に応えてみせます!!マスター、指示を!!」
崩れかけた左腕を引きずりながら、羅刹と成り果てたその女は右腕を構え直した。言葉にならぬうめき声を上げながら、獣のような動きでこちらを攻撃しようとしたところでシュテルは火炎とは別の属性の魔法を発動する。
「火炎魔法と比べれば練度はまだまだですが__【コンセートレート】のチャージがあれば!!」
赤黒いエネルギーを収束させ、補助用に刺していたメギド系スキルカードが変異した『無属性』魔法【マイクロバースト】*3をシュテルが放つ。それがこの第二ラウンドの開始を告げるゴングの代わりとなった。
受け流す、捌く、受け止める、盾で殴り返す。初めこそ暴力的なまでに増した速度と破壊力に面を食らったものの、数手交わし続けているうちに相手から技と言えるものが消え去っていることに気が付き、ただ最善手で相手を打ちのめす為に翼腕を振るっていると気がついた後は素直過ぎる相手の動きに対応して防御する事が出来るようになっていた。とはいえこのままではジリ貧であろう。負けない事は出来てもこのままではどうしても勝つことは出来ない。合間に入れる盾による攻撃だけでは攻め手に欠けていた。
だが、それで何も問題がなかった。かつてのアラカナ回廊での強行軍の時のように分断された挙句、自分以外の前衛が全滅した時のような状況ならまだしも、今の自分には頼れる仲間が居るのだから。
赤い光が迸る。閃光のように現れたそれに切りかかられたフェイクカルラは、不意の一撃に困惑しながらも翼碗で体を多い防御姿勢を取るも、その一瞬でクロスレンジまで近づいたもう一人の白スーツの男が覆いきれない顔をしっかりと捉えてその丸太のように太い腕で殴り飛ばした。
「……〜〜〜ッ!?なんつー硬い面の皮してやがる!!金属か何かを殴り飛ばしたみてーな感触がしたぞオイ?!」
そう言って痺れた手をパタパタと払った後、傷跡だらけの男__霊視ニキは再び拳を握り直す。その声に反応するように、凄まじい速さで駆けつけた金髪の騎士__モードレッドがその隣に立った。
「やっぱ電撃じゃねーにしてもオレは物理スキルじゃなくて、魔法使ったほうが良かったんじゃねーかマスター?」
「流石に悪魔の姿の時よりここまで固くなってるとまでは思ってなかったからなぁ……まあ、あと数秒で電撃リフレクトも解ける。そうしたらスキルを発動する暇も与えない位の勢いで電撃属性で殴り続けりゃいいさ」
「霊視ニキにモーさん!!助けてくれてありがとう。丁度攻め手に欠けてて困ってた所だ!!」
「アンタと組むのは久しぶりだな。腕は衰えてないようで何よりだ、ナイトニキ!!」
ガイア連合でも腕利きの前線メンバーの一人である霊視ニキとそのシキガミであるモードレッド。
この二人とナイトニキはモモメノや他の仲間を探していた頃に何度も依頼で共闘したことがあった。ルシェ族は見た目からして普通の人間とは違う部分が多々ある為、実験材料としてメシア教に捕まっていたりしないかと思いその手の違法研究施設を潰しに行く依頼を一時期積極的に受けていたからだ。
故に、お互いをよく知る彼らは吹き飛ばされた姿勢を無理矢理直してこちらに飛びかかろうとした相手に対して、咄嗟に息を合わせて反撃するなんてことも可能だった。
「【シルドパニッシュ】!!」
手にした盾により叩きのめす技__【シルドパニッシュ】*4を使いナイトニキはフェイクカルラを打ち上げ、霊視ニキの方へとカチ上げた。
「ナイスパスだナイトニキ!!【雷龍撃】!!」
練り上げた霊力を雷に変換し、拳にまとわせた青白い雷を殴りつけた瞬間に一気に流し込んだ。つい数瞬前までは発動していた電撃リフレクトの効果がこのタイミングで切れると、霊視ニキは正確に代名詞である霊視により見抜いていたのであった。
そして霊視ニキの動きに連動してモードレッドが全力の一撃を叩き込む。
「【
手に持つ剣から増幅された赤い雷が放たれた。その一撃はフェイクカルラを飲み込む。
眩い光が晴れた後、彼女は燃え尽きることなく残っていたものの背中から生えた真っ白に漂白されたような翼腕の甲殻は黒く焦げ、翼は一部欠けたボロボロの状態に成り果てていた。
だが、その殺意はまだ残されている。手負いになって尚相手を喰らおうと向かおうとその鉤爪を向けた。体内のマグネタイトを燃やし続けている為か肉体の反応速度が向上し、この場にいる誰よりも速く行動することがフェイクカルラには可能であった。
だが、いくら速く動けた所でその思考回路が単純であれば攻撃を予測するのも容易であるなと感じながらナイトニキはその行動先に移動しつつも盾を構え、その一撃を受けきった。
「ギィィィ!?」
「確かにその姿になった後は早くなったし攻撃の威力も上がったな。だが……」
正直な所先程までの方が油断ならぬ恐ろしい相手だった。悪魔の力を持ちながら人の技術を操る一分の隙のない戦士が、人の技術を操る為の理性を完全に捨ててしまった獣に成り果てたのだから台無しにも程がある。その攻撃の破壊力は上がっている。速度も凄まじい。だが戦いでの駆け引きを行う最低限の理性すらなければただの悪魔や獣相手との戦いと大差ない。
元より悪魔と戦う人間というのは、自分達人間よりも強い力や魔力を持つ悪魔に対して戦うのが当たり前の前提である。ショタおじ筆頭の超越者達のようによほどの規格外でもない限りいくらレベルで上回っていた所で根本的に人間と悪魔では元となる部分からして違うのだから当然だ。
だが、その分人間には人間の武器がある。道具に術、そしてそれを使う知識と知恵。そして、誰かと手を組み共に連携しあう事。それが出来るから、自分達は悪魔に対して戦いを挑めるのだ。
例えばこんなふうに__
「ァァァァ!!」
物理攻撃は防がれると知ったフェイクカルラがザンダインを連射する。しかしそれらにことごとく自ら当たりに行きながらも、ナイトニキはそのダメージをものともしない。
何度も何度も練習したアガシオンによる取り寄せ術を使った装備品変更により、今の一瞬でナイトニキは小手を耐衝撃効果のある【力王の小手】*6に変更したのだ。無傷とは行かないが、先程と比べればかすり傷といった程度のダメージでザンダインの乱射を耐えきったナイトニキは、手にした剣を構えフェイクカルラの胸に突き立てた。
「__すまん、ラギ。自分には、こうする以外でそうなったお前を止める術がない……許してくれ……」
『……グリ、オン……?すまねぇ、迷惑を、掛け……』
「ッ!!」
剣を突き刺した部分から血と共に緑色の生体マグネタイトが流れ出し、そして数瞬のうちに、その体は灰となって崩れさって消え去った。
後には何も残らない。悪魔へと成り果てた者の末路とはこういうものだ。
「ナイトニキ、さっきの反応見るにまさかコイツら……」
「……二人とも自分達の同胞だ。だが、ここまで完全に悪魔になってしまっては助ける術は、無い。行こう霊視ニキ、祈る事は後でもできる。フリスビーニキ達が危ない!!」
「……ああ。クソッ、これだからメシア教は嫌いなんだよ!!」
そう言い捨てて、霊視ニキはナイトニキの背を追った。怒りと悲しみに震えるその背から、目を逸らす事が出来なかった。
その姿は近い将来、自分の身にも起こり得る事だと、そんな嫌な虫の知らせを感じてならなかった。
「これで逃げようとする奴は皆捕まえたね。デビライザーのサーチ機能に引っかかった生体反応は全員拿捕してCALLしたベールに見張らせてるし、そろそろ僕達も攻めに行く??」
「道にトラップカード山ほど差し込んで味方以外が通ったら発動するようにしとるし、問題あらへんやろ。そうしよか脳缶ニキ」
「あっちには刺客を差し伸べてるのにこっちには戦力送ってないのも気になるしねー。実際通って分かったけどこの建物結構設計と違かったりするいかにも突貫工事って感じの作りしてる所あるし、あたし達が知らない逃げ道あってもおかしくないもんね。とっととあの女の身柄を抑えに行く方がいいかぁ」
通気孔を通って先回りした三人__脳缶ニキ、デュエリストネキ、カス子ネキは非常用エレベーターを起動させに来た研究員達を捕縛し終わり、挟み撃ちの形で自分たちも合流しようと動き始めていた。
「しかし、見れば見るほどホントにこいつらメシアンか??って感じるなぁ。警備はほぼ純科学の兵器ばかりだし、捕まえた研究員全員が誰もそれらしき十字架とか持ってる様子がないし、どいつもこいつもそれらしい匂いもしない。さっきフリスビーニキが言ってた情報に信憑性が出てきたな……」
「匂いって……そんなんでわかるもんなん??」
「いやいや流石に直接的な臭気とか香りとかじゃないよ??」
クンクンと鼻を凝らすデュエリストネキに脳缶ニキは軽くツッコミを入れた。
「あー、なんていうのかな。メシアンの連中って、言ってしまえば酒じゃなくて宗教に酔ってる酔っ払い共なんだよねぇ……言動を聞けば明らかに正気じゃねぇやコイツらってすぐ分かるくらいには重度のクソッタレ共さ」
「そうそう。天使とかいたら更に最悪なんだよね。アイツラ人の事を家畜としか思ってない節あるから相手にしてると天使以外の悪魔と接してる時の倍近く不快感や徒労感があると言うか……」
「まあ、悪名高いメシア教やしな。そりゃ脳缶ニキもカス子ネキも色々と根本的に合わん相手やろなぁ。ワイも可能な限り近寄りとう無いわ」
性格やスタンス的にもガイア連合でも指折りの『Chaos』側な二人はそう言った。そうでなくても二人とも散々メシア教には苦しめられてきた身の上である為、当然の事だがメシア教アンチ勢である。良い印象などある訳がない。
だからこそ逆にこの施設の職員の異様さは際立って見えるのだ。そう言ったらしさがある者が一人もいないのである。これに関してはナツメがそういう人間を選定して選んだ為だ。元々ただの十字教徒であったのにも関わらず属する地域の教会ごとメシア教に取り込まれてしまった者。務めていた会社がメシア教に乗っ取られてしまったもの。理由は様々だが、そう言った天使に対して危機感を持つ者たちを集めたのがこの施設に居る職員達であった。
「まあ、話は後にして今はお仕事に集中しよう。敵陣だし何が出てくるかなんて分かったものじゃ__ッ」
咄嗟に手にしていたデビライザーに込めた悪魔を弾丸にする。念話で弾に込めた悪魔から『ちょっ、まっ』という抗議の声が聞こえたが、発射のためのチャージ時間が足りてない分辛うじて
悪魔の悲鳴と共に放たれた弾丸は、思いの外近くで着弾し対象を傷つけた。何もないように見えた場所に空いた風穴から赤黒い血が流れ出したと思った次の瞬間、その悪魔は姿を表した。
『グルルルルルル……!!』
脚に受けた銃痕から血を流す真っ白に漂白されたような白い甲殻を持つ、翼の無い竜のような異形__夜叉鬼 フェイクシグルドLv57が身を隠す行動を辞めてその場に現れた。
「サーチ情報に反応なかったって事は、隠密スキル持ちかな??やっぱ最後に頼るべきは自分自身の直感だわ……つーか良くも僕に初代葛葉キョウジ戦術*7を使わせてくれたなぁ!!あんま使うとサマナーとしては悪魔からの信用を失うから使いたくねーんだぞコレ!!」
「脳缶ニキナイス。ここまで近寄られて気が付かなかったとか帰ったら索敵の修行し直さないと駄目だな自分……!!」
そう言ってカス子ネキは自身の持つ人形達を呼び出し、【
『主、索敵ヲシ直シタガドウヤラコチラヘノ刺客ハコイツ一体ダケノヨウダ。他ニ大キナ生体マグネタイトノ気配ハナイ』
「お仕事ご苦労飛丸。たった三人しか居ないからって、あたしらへの対処を暗殺狙いの悪魔一体だけに任せるとか舐めてやがるなぁお相手。確かにレベルだけなら下層級だけども……なんであたしら三人に任されたのかってのを考えてなかったようだな」
展開した【
「さて、運任せやけどリターンを狙ってこかぁ!!【天運のリアクト】!!」
「行けー!!【自爆】*8じゃー!!」
カス子ネキのその掛け声とともに張り付いた特攻人形がチカチカと光り輝き、光の点滅が早くなっていき完全に発光し続ける状態になったと同時に轟音と共に爆散した。
『ガァァァ!?』
(おっ、これが話に聞いてた【天運のリアクト】の効果かぁ。たしかに運任せだけどハマればめっちゃ強いなこれ。よーしよし、【ネクロマ】仕掛けて特攻人形を復活じゃー!)
加速した時間の中で、カス子ネキは再行動を行った。天運のリアクト。その効果は4ターンの間パーティメンバーに相手に対して奇数のダメージを与えた場合一時的な時間加速状態となり再行動権を得る状態を付与するというとても強力な支援スキルであった。デュエリストネキ曰く、自分が覚えているスキル群はカードゲームを媒介にしてそのモンスターを召喚する精霊魔法に近い召喚術と、こういった運に関わる類の技能がたくさん揃っているとのことだ。天運のリアクトは後者のスキルの一つである。
そうしてカス子ネキが特攻人形を復活させたあたりで天運のリアクトの時間加速効果が消え。夜叉鬼 フェイクシグルドが動き出す。少しでも失った体力を回復しようとして目の前にいる特攻人形にその爪を突き刺してHPのドレイン効果があるスキル【ヴァンパイア】を発動したのである。そして、体力を回復した後に更に行動し、爪に麻痺毒を生成して【タランテラ】を発動した。
「うげ、ネクロマしてない方の特攻人形に麻痺付与してきたか……」
人形を霊力の糸によって動かしている為に、人形の動きが鈍くなった事を瞬時に把握したカス子ネキは嫌そうにそう言った。彼女が動かす人形は人形ではあるものの多くの生体部品を使用している為この手の状態異常が通る。ディアやリカームで破損してもある程度は直せたり、ドロイドやネクロマ等のグッドステータスも付与できるので良し悪しであるが、今回はマイナスに働いていた。
麻痺による行動不能によって足留め→自爆→味方の攻撃→復活→足留め という狙っていた流れが上手く行かない可能性が出てきたのだ。その為カス子ネキはこのプランAを取りやめる事にした。
「よし二人とも。ここからはプランBで行く!!」
「りょうかーい。プランBね。じゃあ僕も仲魔出してこうっと」
「プランB?そんなんあったん??プランAは足留めのための自爆ループの予定と聞いとったけど」
「ああプランB?そんなん無いよ。要するに各自有効だと思う事をやってこうぜっていういつもの戦い方に切り替えるってだけ。皆好きに動くべ」
「要するにそれ行きあたりばったりって事やんけぇ!?」
デュエリストネキのツッコミの声が部屋に響く中、彼らとフェイクシグルドとの戦いは激しさを増していった。