【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ 作:日λ........
シュテルの無属性魔法【マイクロバースト】による赤黒い魔力光が発生し、そこから弾き出されるように夜叉鬼 フェイクベーオウルフは飛び出してきた。
全身が自らの血に濡れ片手が潰されても尚、羅刹モードによる暴走とも言える肉体の強化によりその足の速さは健在である。使えなくなった左腕をだらりと下げたまま無事な右腕を構える。そうして放たれた【暴れまくり】をオレはそれをなんとか躱そうとするも一発まともに拳を受け、吹き飛ばされてしまった。
「ぐぅ……っ」
なんとか態勢を立て直し、殴られた腹を抑えつつも武器を構える。手持ちのGUMPにより表示している自身や仲間の状態を確認すると自身は防御力にバフが掛かっている上に相手はロストパワー.xの効果により弱体化しているにも関わらず体力の約半分程が持っていかれていた。
「マスター!?」
「っ、大したダメージではない!!やるぞシュテル!!」
「は、はい!!」
(シュテルの士気を保つ為に大口切ったのは良いが……やっぱキッツいなぁ!!そりゃレベルが15も離れてりゃそうも感じるかぁ!!)
現在オレのレベルはあの中層の洗礼を受けた後もレベリングを続けて40まで上がっている。が、対する夜叉鬼 フェイクベーオウルフはLv55。加えて自分は補助支援特化の後衛で、相手はバリバリの前衛だ。むしろこの程度で済んでいる事自体が相当相手が弱体化している証明だろう。
しかし単純にキツイだけで戦いにはなる。ならばどうにかするだけだ。
ハッキング状態は2ターン続く為まだ継続している。ワンモアプレスで再行動して【ロストパワー.x】を仕掛けた今ならまだもう一度デーモンやウィルスを相手に打ち込むだけの猶予はあった。
「我が命ずる。その眼を閉ざせ!!」
人魚ネキの歌の効果を擬似的に再現する為の研究に協力している過程で作り上げた電子の呪い__【スリープオール】を起動。実体化したことで半透明の四角状状に変化したその呪いのプログラムを相手に投げつける。すると、投げつけた四角形が相手に近づいた途端に膨張し弾けとんだ。
メガテン風に言えば【ドルミナー】であるが、デーモンと同じく【ハッキング状態】の相手にはスピリチュアルな呪いであると同時にデジタルなコンピューターウィルスでもあるという特性を活かしセキュリティホールの中に潜り込んでどんな耐性を持っていても睡眠状態にする代物だ。呪いという特性上デーモンとは違いハッキング状態でなくてもこれ単体で使用可能な使い勝手の良い妨害技である。これにより、相手を一時的に眠らせた。
「回復します、マスター。しかし、ここからどうしますか?弱体化した状態でこれでは厳しい戦いになると思いますが……撤退も視野に入れますか?」
シュテルが回復魔法である【キュア】を発動すると、拳を受けた部分からの痛みが引いていくのを感じた。そうして体力が全回復したタイミングで、後方で支援をしているモモメノさんに話を切り出した。
「いや、突破策はある。まずはモモメノさん、歌の準備は大丈夫か?」
『……うん。どの歌にするの?』
「防御力向上効果のある【堅牢の韻】 を頼みたい」
『分かった。スゥ……〜〜〜♪♪♪』
不思議な歌声が響き渡り、オレとシュテルの防御力が上がる。これがモモメノさんがペルソナ能力によるナビとは別に元々習得していたアトランティスの姫君としての技能、魔力を込めた歌による支援効果である。実は自分の【ディフェンスゲイン】と効果が似通っている影響でどちらかをかけるとそちらの効果に上書きされてしまうのだが、4ターンの時間制限のある【ディフェンスゲイン】とは違いこの歌はデカジャ等で解除されない限り戦闘中ずっと続く永続効果だ。そろそろ戦闘開始時に掛けたディフェンスゲインの効果が解けるので掛け直して貰うことにした。尚、この歌による支援効果も魔界魔法とは別枠として重ねがけできる点も【ディフェンスゲイン】と似通っていた。
ただし、ただでさえナビによる支援を随時行っているモモメノさんの負担を考えると【歌による支援効果は強敵相手に1回使用】が限度である。その為切り時を考えなければならない。
さて、ここからシュテルに言った策を実行するのだが__なんてことのない、メガテンにおいて王道の戦術を使うだけだ。今手にしているニーサンことエドニキに作ってもらった赤黒い大きな歯車上の新武器『ブラッドギア』の機能を発動する時が来た。
「戦術支援プロトコル起動。コード【RAKU-Kaja】!!」
GUMP越しにコマンドを入力してブラッドギアを手放す。ふわり、とブラッドギアが宙に浮き、オレとシュテルの周りをくるくると回りながら【ラクカジャ】を掛けていく。現在技術部ではショタおじ作のシキガミコアが必要な為気軽に手に入れることが出来ないシキガミ武器の代用となりうるスキルカードを差し込める装備の開発が行われており、デビルサマナーシリーズで度々登場していた武装型COMPの開発が行われていた。
【技教の館】のスキルカード合成により集まったスキルカードの情報に加えて、以前脳缶ニキから貰った機械言語翻訳版ネクロノミコンにMAGを注いで技術内容を再生させたりして魔界言語の電子化を進めた結果、一部の完全に解析が終わったスキルカードの機械式演算による行使が可能になった為だ。
【スキルエミュレーター】と名付けたこのプログラムの起動に必要な媒体の頑丈さを試算した結果、武器として成り立つ程の相当な強度が必要となった為ならいっその事武器をCOMPにしてしまおうとなった為である。
……武装型COMPというよりはリリカルなのはのデバイスの方が近いんじゃないかコレという声もあったりするが、終末後には悪魔召喚プログラムを入れる受け皿にもなる予定なのでこちらの名称で問題あるまい。
「シュテルもラクカジャを頼む!!」
「了解しました、マスター!!【ラク・カジャ】!!」
技教の館を作る際に出来た副産物__権能格のスキルカードはエドニキに渡した3枚が出来た時点でショタおじからインターセプトとストップが入った為(スキルのみとはいえ高位の神や悪魔、天使の力を精製してしまった影響で日本のGPが少し上がってしまった。結果、ショタおじ本体が慌てて飛び出してきた)アレしか無いが、自分たちが使う分のスキルカードは確保してある。
シュテルにも【ブラッドギア】にも一通り指してある支援魔法のスキルカードは全てSランクの物で揃えているのだ。スキルカードのランクの差が効果にどのような影響を及ぼすのか技術部で試験検証する為に自分で揃えた物の流用品だが、その検証結果は中々面白い物となった。
例えば今オレやシュテルが使用している支援魔法の場合は__品質が最高のスキルカードの支援魔法を重ねたときの倍率や効果仕様が真1の効果のそれとなったのだ。
【スリープオール】の効果によりまだ眠っているフェイクベーオウルフを放置しつつ、そのままラクカジャを重ね続け__二人で合計6回重ねた所でヤツは目を覚ました。
そうして起き上がった所で拳の乱打__【暴れまくり】が放たれたものの、それによって数発受けたダメージは体力の6分の一程度しか削らない物となっていた。シュテルに至ってはデコイミラーが割れてすらいない始末である。
『……ナァ!?』
変形した片腕はまだ再生されていないものの、ロストパワー.xの悪影響は既に解けているにも関わらず大したダメージを出せていない事実に、フェイクベーオウルフは驚愕した。
説明しよう!!今となっては比較的古い部類の作品とされているメガテン__真・女神転生ではカジャ系の補助魔法は最大回数8回、初代デビルサマナーでは7回まで重ねられて、かつ最近のATLAS作品の補助魔法のように時間切れで効果が切れるということが無い、素敵なシロモノであったのだ。そして重ねがけの倍率も高い。現在6回ラクカジャが重ねられているが、これによって防御力は現在3倍に跳ね上がっている。倍率としては最大の8回まで重ねると3.5倍まで行ける。
これに加えてオレのゲイン系やモモメノさんの歌はこの倍率に加算されるのではなく、別枠として乗算されるのでカッチカチになっているのだ。むしろここまでやってもデバフ無しだと6分の1も削れている羅刹モードの破壊力が恐ろしくて仕方ない。これを素で受けてたら間違いなくワンパンされていただろう。防具も【フェザーベスト】から多少重量が増したものの物理、魔法防御力双方を底上げされている【グレイプニルベスト】に更新しているのだがここまで攻撃力が高いと誤差である。自前の独自のバフ効果もそれだけだとそこまで真価を発揮できないので魔界魔法の補助をしっかり積めるように準備しておいて本当に良かった。
まあ、命を掛け合った戦いに『たられば』はない。今ある結果が全てだ。だからオレたちガイア連合は備えているのだから。
さあ、ここから反撃と行こう。もっと積もうと思えば積めるが、下手に動ける敵相手にバフ積みまくってデカジャとかあまりされたくないのでとっとと動くことにする。本来の羅刹モードは物理技しか使えなくなるデメリットとある筈なんだが、こいつらBOSS補正でも入ってるせいか普通に魔法使ってやがるからな!!
「シュテル、ここから戦闘形式を
「はいマスター!!燃え尽きろ!!」
自分のシキガミのシュテル相手なら霊的繋がりから口頭で言うだけで以心伝心が繋げる事が可能な為、その場で戦闘スタイルの変更が可能である。これにより戦闘スタイルをワンモアプレスからプレスターンバトルへ変更した。
ハッキング状態が切れたタイミングでハッキングを仕掛け、再びハッキング状態にした後、シュテルが火炎魔法【イフリート・ベーン】を単体用の収束型で発動し、呼吸を征した所でオレは再び動き出した。
「食らえ!!カス子ネキと脳缶ニキに教わった呪いと悪性情報の詰め合わせを!!【カースオール】*1!!」
コレだけ防御バフを掛けても結構なダメージになるほどに相手の攻撃力は高いのだ。その力を有効活用させてもらうこととしよう。電子の呪いのバリエーションその2、相手を呪い状態にする【カースオール】を発動。フェイクベーオウルフを呪い状態*2にした。これで相手は自身が与えたダメージが反射される状態になった。
コレだけ便利だと、デーモン類もこの手の電子の呪いにしたほうが良いのではないかと思うかもしれない。だが、デーモン系のスキルにはこれらの電子の呪いとは異なるメリットが存在している。
それは発動の負荷がとても軽い事。オレが使わない限りこれらは本来コンピューター上に影響を及ぼすだけのプログラムに過ぎない。それ故に異能として関わっている部分は相手にデーモンを流す事のみであり、効果の割に非常に発動の為の負担が軽く、MPの消費が少ない上にどれだけ相手が素早かろうがハッキング状態の相手には最速で効果を発揮できるのである。
例えば羅刹モードによる最速補正よりも先に、相手の行動に割り込んで影響を及ぼす事もデーモン系のスキルなら相手がハッキング状態であれば可能だ。こんな風にな!!
「我が命ずる。自害せよランサー!!」
『!? グガガガガッ、ガァァァァ!?』
最速行動によって相手よりも先に動き同士討ちを強制させるデーモン、【マッドストライフ.x】を発動。結果自らを攻撃する自傷行為を誘発させ、フェイクベーオウルフは変形してしまった自らの左腕を引きちぎった。そしてそのダメージが呪いの効果を受けて全身を襲う。『相手に与えたダメージ』とあるので勘違いしがちだが、この呪いは同士討ちさせた場合でも、自分に自傷行為をしたとしても発動する。
因果応報だとか、自業自得の概念が詰まった呪いだからであるが……自分やっててアレだけどもやっぱりエゲツないな、コレ!!傍から見りゃ完全に悪役の戦い方だわ!!
完全な悪魔相手ならともかくなまじ人間の姿が混じってる相手だと流石にちと良心を咎めるな……まあこういうやり方しか自分には手札が無いので出来ないから仕方ないし、油断もしない。格上相手にんな余裕は無い。ぶっちゃけシュテルの手前で情けない顔したくないからすまし顔してるだけで内心ヒヤッヒヤだわ今!!やっぱ格上相手に戦うのはおっかないモノだと真面目に思う。
「ダメ押しです!!【フレイム】!!」
MPが心許なくなってきた為か、シュテルは弱点属性を突きつつも先程よりは威力の低い火炎魔法である【フレイム】を使用する。イフリートベーンは火力はあるんだが燃費もその分悪い。オレと足並みを合わせる為にかなり急ぎ足でレベリングを頑張ってくれているが、それでも彼女は今Lv32。ハイペースでMPを消費してきたツケが回ってきているようだ。回ってきた追加行動分でオレはチャクラポットを使用する。シュテルのMPを回復させ、次の行動に備えさせた。
さて、ここから相手がまた自由に動けるようになるが__とはいえ焦る必要はない。時間はオレたちの味方である。何故ならこの場にいるのはオレたち二人だけではないからだ。
「遅くなってゴメン。【モミジ討ち】!!」
「加勢するわ。【グラダイン】!!」
炎の居合と最上位重力魔法による不意打ちが、フェイクベーオウルフを横合いから殴り飛ばした。
時間をかけてバフを積み上げた理由は、彼女らの加勢を待っていたからでもある。先程ふっ飛ばされていたトーコさんとその回復に向かっていたロザリーさんが戦線に復帰してくれたのだ。
それをナビ能力越しに見たモモメノさんが再び歌い出す。彼女らにも【堅牢の韻】の防御力向上効果は適用されているのを確認して、シュテルに指示する。トーコさんの攻撃によって呼吸を征して追加行動可能になったシュテルが再びラクカジャを発動。最低限でも2重バフの状態にすることで相手の攻撃に備えた。
そしてオレは再びGUNPを異能で操作しモモメノさんのガイアフォンに再びショートメールを送る。
現在使用可能な三つの戦い方の最後の一つ。呼吸の奪い合いによる発生するリスクとリターンが発生しないものの、その分最も安定した自身の素早さによって駆け巡り先手を取り合う純然たる殺し合い__『スピードバトル』を選択。メールを受け取ったモモメノさんがペルソナ【
「よし、このままの勢いで仕留めるぞ皆!!」
相手が最速で走る足を持っているのは初めからである。故に、それを前提に戦術を組み立てていく。
この古き良き戦い方は呼吸の奪い合いによる追加行動の隙すら無視して敵も味方も自分で動ける最速の行動で手番を奪い合っていく性質上発生しない。その為に不確定要素が他の戦い方に比べて発生しにくい。旧作のメガテンにおいてカジャやンダによる補助を掛けて殴り合う事が王道の戦術として成立していた理由でもあった。
故に、追い込んだ相手に反撃の余地を与えず潰すのには最適の戦い方でもある。
確かに相手は早い。そして破壊力も恐ろしいものを持っている。だが呪いの掛かった今ではその破壊力は諸刃の剣と成り果てた。そして呼吸の奪い合いが成立しないのであればその素早さも単純に最速で動けるだけ。なら後は反撃の機会を奪っていくだけだ。
散々いいようにプレスターンバトルもワンモアプレスも使ってきたが、個人的に自分が一番馴染む戦い方はこのスピードバトルである。何故か分からんが、ずっとこのやり方で戦い続けてきたような感覚があるのだ。
そこには確かに派手さはない。ただただ手番を回していき、自らの出せる最高速で行動を行っていくある意味無機質とも取れる戦い方だ。
だがこれこそが__ただのコンピューターの扱いが得意な少年達が自分たちより強大な神話の神や悪魔と戦い、そしてそれを打ち倒してきた人間の戦い方だ。彼らのように戦いたいと願い、模索し、方法を探ってきた『俺ら』が集めた無数のデータを解析し、構築し直し、このごちゃまぜな世界で成立するように組み立て直したこの世界の【原初の闘争】である。故に、悪魔を型に嵌めて打ち倒し切るのには最も絶大な力を発揮する。シンプル故にブレにくいからだ。
当然の事だが、敵も自身の一番強い戦い方をしてくるものだ。そしてそれは高位の悪魔になればなるほど強固な形を持って具現化するものである。最終的にそれは【権能】と呼ばれる悪魔にとって最も都合の良い場に世界を書き換える力に変化する。
ガイア連合の黒札の間ではこの【権能】を自身も習得することでその悪魔の戦い方に対応するショタおじ仕込みのやり方が山梨支部の修行用異界に住んでるというガチ修羅勢からすると主流であるそうだが__そもそも、原作の主人公達もコレに値する物を初めから使って戦っているのだと戦術の研究をしている内に気がついた。
それはゲームで言うところのバトルシステムそのものだ。悪魔を型にはめ込み、アナライズすることで観測し、相手がどれだけ強大な力を持っていても人間が戦えるようにする。
その戦い自体が【権能】と呼ばれる力の代わりになっているのだ。最近の漫画で例えるならば呪術廻戦の簡易領域と言われる技術に近い代物だ。
これもまた、プログラムとして再現していきたい所だ。こういった悪魔との戦いへの対応や悪魔との契約に必要なプログラムの複合体こそが__悪魔召喚プログラムなのだから。
手番を重ねていく。強力な一撃に防御バフが足りてない二人の体力が消し飛びそうになるが、それでも死なずに耐えれた。ならば回復すれば良いとロザリーさんが【メディアラハン】を発動し、トーコさんは刀を鞘に収めながら気を集中させることで次の居合の威力や効果を増幅させる独自のチャージ技である【不動居】 を発動。オレとシュテルはラクカジャを重ねていく事で全体の防御力を更に高める。
全身が傷ついている為か理性を失っているためかそのまま暴れ狂うフェイクベーオウルフに相対しつつも、オレたちは着実にバフと一撃を確実に積み上げ続け相手の体力を削り取っていく。
そうした地道な戦いの果てに__最後に立っていたのはオレたち四人の方であった。
「これで、トドメ!!」
呼吸の奪い合いでないならば単純に破壊力に優れた技の方が良かろうと、トーコさんが繰り出した【一六手詰め】がフェイクベーオウルフを切り裂くと、とうとう力尽きたのか前のめりに崩れ落ちた。肌の色が素焼きの陶器のような質感から人間のものへとなり、悪魔のものに変化していた腕は人間のそれへと戻ったものの、失われた片腕は引き千切れた悲惨な状態になっていた。
「……ああ、長い、長い悪夢を見ていたか……」
「ナムナ!!」
後方で支援をしてくれていたモモメノさんを乗せて、その護衛を引き受けてくれていたデュエリストネキのシキガミであるカイリューがこちらへと駆け寄る。少し前まで完全に悪魔と化していた存在に対してその行為は危険を感じない訳では無かったが、そうだとしてもこの状況ではそうしたくなるだろう彼女の気持ちを汲んで、何かされた際の為に身構えるだけで留めた。
「姫、さま……ご無事だったのですね……良かった」
「良くないよ!!せっかく、せっかくまた会えたのに……!!」
「良いのですよ、姫様。元より、あの時拙者は死んだのです。なのにこうして今際の時に再び貴女に会うことで無事を知れた……それだけで、ナムナは幸せモノで御座います……ああ、そうだ。一つ、一つだけお願いがあるのです。そこの……水色の外套を被っている方」
「オレか?」
全身が末端から灰のようになり砕け散りつつある、モモメノに抱きかかえられる彼女から指名を受けた。
「ええ、暴れ狂う拙者を、止めていただき、ありがとうございました……ですが、拙者達はあくまであの、繰り返し続ける煉獄の中で生き残った例の内の一例に過ぎないのです……もし、貴方がたが、あの世界に行く機会があるのでしたら……今も尚、あの仲間同士での殺し合いは続けられていることでしょう……可能ならばそれを、止めて頂きたく……!!ぐ、ゴホッゴボッ……」
「何、どういう事だ!?煉獄……煉獄ってもしかして【ジャンクヤード】の事か!?」
「……その名を、どこで知ったのかは分かりませんが、そう呼ばれている場所で間違いありませんね……ですが、くわしく、語るには、もう時間が……無いよう、で……」
「……いいよ。そこまで言ってくれたなら後はオレ達で調べる。アンタらの無念は引き受けた」
「ありがとう、ござい、ます……では、姫さま、ナムナはお暇を、頂きます、ね……」
そう言い終えると、彼女の身体から力が抜け__全身が全て灰色になった後、細かい砂のように崩れ去り、何も残さず消えていった。
「あっ、ああっ……」
モモメノさんの声にならない慟哭を見て、トーコさんは彼女の背を支え、ロザリーさんは何も言わず彼女を優しく抱きしめた。カイリューは涙を流す彼女を見て、心配そうにしつつも主人からの願いを果たす為に周囲を警戒していた。
「マスター……こういった時は、どうすれば良いのでしょう……胸が、痛みがない筈なのに痛く感じるんです……!!」
「……シュテル、その痛みは大切にすると良い。それはな、モモメノさんから共感した怒りと悲しみの感情だ。それに囚われすぎる事も問題になることもあるだろうが、親しい人が傷つけられたら、そう感じることはとても自然な事なんだ」
俯くシュテルに対して真っ直ぐと目を向ける。
こういう時目を背けてはいけないとオレは思う。子供はこういう時大人を見てるもんだからな。
「世の中理不尽なことばかりだ。でも、だからこそ、そういった理不尽に対する怒りや悲しみは忘れてはいけない。キミは優しい子だからな……それによって傷つくこともあるだろう。それでも、その優しさを手放してはいけないよ」
きっとその共感性や感性こそが、俺達人間と悪魔を分ける一番の一線だろうから。
かのデビルハンターいわく、Devils Never Cry__悪魔は、泣かない。誰かのために悲しみの涙を流すことが無いのだ。
わかっているさ。シュテルはシキガミで、どちらかといえば存在からして悪魔寄りの存在である事も。しかし、だからこそ彼女には心を育ませてやりたい。
せっかくの自分が望んで作り出した命なのだ。主人の都合の良い道具ではなく、自らの意思を持つ相棒に育ててあげたいと思うのだ。
少なくとも、自分はそうしてやりたいなと思いながらシュテルの眼から溢れた涙をハンカチで吹きつつも、周囲の警戒を続けた。
しかし、ジャンクヤードかぁ……もしや例の戦闘用AI開発計画をベースに電脳異界でも作ってやがるのか??
このごちゃまぜな世界ではどうなっているのかは調べない事には分からないが、元ネタの顛末を考えるに絶対ろくなもんじゃねーだろうなと感じつつ、これはハルカラさん救出だけでは済まずに色々と長引くぞ……とこの戦いが長丁場になりそうな事を感じ取って、覚悟を決めた。
そして、近くにきた見知った気配を出迎えた。どうやらナイトニキたちも無事に撃破出来たようだ。
さあ、まずはともかくハルカラさんを助ける所からだ。居場所を知ってるであろうこの事態の元凶__日暈 ナツメの捕縛を進めて行くことにしよう。
太陽が狂いだして人々が石化し始めるような