【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ   作:日λ........

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アバチュ2のOP曲【ALIVE】を聞きながらこの章は書いております。
当時のPS2の性能的限界から批判の元となった1と2で別れる原因となった部分でもありますが、1と2に分けなければこの名OPも容量の問題で入れらなかったという話ですので個人的には必要な措置であったなと思っております。

アバチュ2のOPは良いぞ(ライドウもリマスター来るしアバチュも来ないかなぁ……)


DIGITAL DEVIL SAGA 7th Slayers

 

 

 

 

モモメノさんのペルソナ【恋人 エウリュディケ】の力を借りて部屋全体に敷かれた研究員の血肉で書かれた魔法陣の全体図、及び部屋全体を侵食するように突如生えだした不気味な花をGUMPに記録しつつ解析していると部屋の連絡路から戦闘中であった為こちらに到着するのがズレていた脳缶ニキ、カス子ネキ、デュエリストネキがこちらへとやってきた。

 

 

その惨劇と奇妙な花々に不気味さを感じている様子のデュエリストネキ、早速この魔法陣がなんの術式なのか手元に呼び出した魔導書を開いて調べ始めている脳缶ニキ、何か思い当たる点があるのか頭に手を当てて考え込んでいるカス子ネキと反応は様々であったが、自分達の慌てた様子から状況は芳しくないと察せられたようであった。

 

 

「フリスビーニキ、状況は……あまり良くは無いようだね。例の主任はどこに?」

「すまん、悪魔かすら定かじゃない化物に変身して逃げられた。この魔法陣は転移に使った代物だ。今解析して行き先を調べてる所だ」

「悪魔かすら定かじゃない化物ねぇ……それで、今どの位解析進んでるの?」

「今急ピッチで調べ上げて、魔法陣全体の形状は調べ終わった。内容に関しては前もらった機械翻訳版ネクロノミコンの記載の内容と照らし合わせて、翻訳機能に掛けた程度ではあるが今の所4割位までは進んでる。だが、オレも流石にこの手の魔術の類は専門家では無いんでそこから先に苦戦してるって所だな」

「りょうかーい。その手の事なら僕らに任せてよ。カス子ネキもイケるっしょ?」

「おうおう!この手の魔法やオカルトの類はアタシらの専売特許だかんね!!今解析できてる分の情報とか見れる??」

「ありがとう!!GUMPから空中に投影させたモニターを出すんでそれを見てくれ。ちなみに指で触ったりタップすればズーム出来たりやマウスの代わりに動かせたりするから自分で詳細は見てくれると助かる」

 

 

そういってGUMPを床に置いて、二人に解析した情報の詳細図が載せられたモニターを投射させる。生体マグネタイトというのは決して万能ではないが本当に便利な物で、科学技術だけでは様々な物理的限界によって導入が厳しい機能であってもMAGを使用する事によって諸問題を解決し実現する事が可能となる場合がある。このモニターも半物質半霊体という性質を持つマグネタイトならではの特性を活かした代物だ。

 

技術部の面々のレベルが上がったことでようやく作れるようになった生体MAGバッテリー完成に至るまで生体マグネタイトそのものの性質を探る為に様々な基礎研究がされていた。このモニターもその研究の副産物の一つである。生体マグネタイトによって形作られた悪魔が元のマグネタイトの色から様々な色に着色される原理を解明した技術が使われている。

 

生体MAG対応型PCを製造した際にMAGバッテリーの作成に失敗した経験から『なら、初めからバッテリーを載せないで使用者自身の生体MAGを消費して動くようにすれば問題ない』という逆転の発想によって覚醒者専用に作られた経緯と同じように、この空中投影型モニターも初めのうちは使用者の生体MAGを消費して動くようにする前提で運用する予定であった為長時間使用する為に徹底的な省エネ化が測られた。結果、消費マグネタイト量は一日中つけっぱなしでも小数点以下の量で収まる代物となっている。

 

 

「どれどれ……ふむ、この術式は転移先の指定で、こっちがその制御系、外周部の文字は確か黄衣の王の写本に載ってたハスターの力を借りる為のものだったな。だからこれがこうで……うん、十分ほど時間を貰うね!!それで行けそう」

「某N案件、と言うかあの神話体系関連臭いなぁコレ。この手の知識に耐性ある人以外はあんま見ないほうが良いかも。アタシと脳缶ニキは使う技術の都合上ショタおじの検定受けててヘーキだけどさ。そういやフリスビーニキはショタおじからそのへん許可貰ってるん?」

「何故か理由は分からんかったが、どういうことかこの手の知識の毒への耐性が矢鱈とあるっぽくてな。ショタおじからは問題無しと太鼓判貰ってるから大丈夫」

「機械噛ませてるとはいえ僕の渡したネクロノミコン普通に読み解けてるしねフリスビーニキ。自分自身で魔術を取り扱う適性が無いのが残念なくらいだよ」

 

 

こればっかりは才能とはいえフリスビーニキも魔術扱えたなら色々語り合えたろうになぁと残念がりながらも、脳缶ニキはテキパキと術式の情報の解析を進めていった。自分の異能はあくまでも超能力がベースな為か、この手の昔からあるカルトマジックとはあまり相性がよろしくない。そもそも習得不可である攻撃力のある魔界魔法やスキルへの適性と比べると一部は習得はできる分まだマシとはいえ悪魔との戦闘や異能者向けサポート機能を持つプログラム開発に必要な共通言語や魔界言語などの知識の習得までに納める範囲は留めていた。

 

自分一人で何でもしなきゃならないなら習得しただろうが、幸いにもガイア連合にはその手の技術の第一人者としてショタおじがいる。

餅は餅屋と山梨支部にいる時点でこの手の知識への造詣が深い俺らやショタおじに聞いた方が早いのだ。なにせ終末が来るまでそこまで時間はないのだから役割分担は大事なのだ。その分自分は専門分野で貢献する事にしていた。

 

 

「引き継ぎありがとフリスビーニキ。でさ、この転移術式解析したらどうする予定か聞いても良いかな?」

「そうだな。少なくともオレはハルカラさん救出まで突っ張る気だよ。あの女を追う気だ」

「フリスビーニキ、無論気持ちは嬉しいがこれ以上は流石に恩を貰いすぎだよ。キミがそこまでして危険に突っ込むのは……」

「何今更水臭い事言ってるんだナイトニキ。オレはナイトニキ達と出会って漸くマトモに戦える力を得た。燻ってたオレの転機になったのは、間違いなくナイトニキがあのスレで話しかけてくれたからなんだぜ?お陰で、シュテルとも出会えたしな」

 

 

隣に立つシュテルを一目見て、ナイトニキに視線を移し彼と出会ってから得てきたものを思い返していく。今思い返していけば一人でも強くなる手段はいくらかあったものの__ナイトニキと出会うまではその尽くを取り逃してしまっていたのが自分であった。

 

レンタルシキガミは人気が過ぎて自分に順番が回ってくることは自力でレベリングが可能となるまで結局無かったし、だからといって自身のシキガミを作ってもらおうとするのも暴走したせいで殺されかけた邪神セイバーの事が脳裏にチラついて踏ん切りがつかなかった。ショタおじが作っているという点でこの界隈では最大の安全が保証されているとはいえ、暴走したときに取り押さえられない存在をこのメガテン世界で受け取って良いのか?という懸念と警戒心があったのだ。式神製造の優先権を持っていても尚、中々煮え切らず作る事に悩んでいた理由の一つでもあった。なので非効率であることは分かっていたものの、自分一人でスライムやガキ相手に鍋の蓋で挑む不毛な戦いを続けていたのである。

 

そんな自分が変われた切っ掛けは間違いなくナイトニキ__キドウとロザリーさんに出会えたからだ。

 

レベルが上がらない問題は彼らと共に戦う事で解決され、自分の中のシキガミに対する不信感はまるで熟年夫婦のようにお互いを支え合う彼らの関係性を見ているうちに払拭された。彼らとの出会いがなければ今の自分は間違いなく居ないだろう。

 

 

「今度はオレがナイトニキ達の力になる番だ。オレからしたらむしろ貰い過ぎなのはオレの方さ。少しくらいデカめの恩で返させてくれ。それとも、オレってそんなに頼りないか?まあ、今でもソロじゃ弱いのは変わらんしな……」

「そんな事はない!!……改めて、ありがとう。本当に助かるよ。この恩は必ず返させてくれ」

「……ありがとね、ジュン。この人、頼られる事はあっても人に頼る事があんまりなかったからこうでもしないと自分の力だけでなんとかしようとしてたと思うわ。私からも今度お礼をさせて頂戴」

 

ナイトニキとロザリーは夫婦揃ってそう言った。

返しきれないほどの恩を既に貰っているのは自分の方であるのだが……この礼を受け取らないのは失礼な事であろう。恩というのはお互いに返し合う物なのだから。

 

 

 

「分かった。それじゃ、ハルカラさんを救出したら今度二人の店で珈琲とフルーツサンドでも奢ってくれよ。オレはあの組み合わせが大好きなんだよなぁ……まあ、この通りオレは危険は承知の上で敵陣に進む気なんだが、皆はどうしたい?引き返す気なら今のうちに頼むぜ」

「いやぁ、まだ依頼達成してないのにここで帰るのは無いでしょ。僕はフリスビーニキの判断に従うよ」

「俺も同意見だ。まあ、気になる事もあるしな」

 

 

脳缶ニキと霊視ニキはそう返答した。手練であるこの二人が居るのは心強い物がある。

 

 

「アタシも問題なく行けるよー。ただ、ここの全員であの女をとっちめに行くのもそれはそれで問題あるよなって。なんかあった時に伝えに行く人員が居ないって事だからさ」

「せやな。それにあの女、ナツメやっけ?ひょっこりこっちに戻ってくるかもしれへんで。犯人は現場に戻ってくるとかそういう話もあるしなぁ。まあ、個人的には自分も直接とっちめに行きたいわ。モモちゃん悲しませた報いは受けさせたいもんな」

 

 

カス子ネキとデュエリストネキも問題なく行けるとそう答えてくれた。彼女らの提案にも一理ある。

モモメノさんとトーコさんは目の前でハルカラさんを連れてかれた事に憤慨しているようで、先程からあまり喋っていないもののそれは怒りを留め宿敵にぶつける為に殺意を研いでいるからなようなので、むしろ止める方が不味いだろうと思う。なのでそれ以外のメンバーを二つに分けようとオレは決めた。

 

「そうだな。全員で突っ込むって訳にもいかんのも事実だ。この魔法陣の見張りと、オレ達が帰ってこなかった時にショタおじ達山梨支部にそのことを伝える人員もいる。だからここは二手に分かれようと思うんだ。良いかな?」

「まあ、今回の依頼主はフリスビーニキだからね。可能な限りはそっちの指示に従うよ。たんまり報酬貰ってるからね」

「同じく。高額な報酬に見合う仕事はしなきゃ駄目でしょ。それにお互い知らない仲でもないしねぇ」

 

そんな訳で魔法陣の解析が完了し転移先の特定が完了した後、あの女が行った先の世界に凸るメンバーとここに待機してもしもあの女が戻ってきた時の迎撃と、もしもの事があったら山梨支部に事態を伝えに行くバックアップに別れることとなった。オレとハルカラさんの身内である当事者のメンバーたちは突入組になる都合上待機することになるのは今回雇用した黒札メンバー__脳缶ニキ、カス子ネキ、デュエリストネキ、霊視ニキの内の誰か二人となった。

 

レベル50超えの悪魔が作り出されたであろう異界に突っ込むのである。戦力的に待機組は本当に最低限の人数しか残せないと判断した結果である。

 

まず霊視ニキは能力の都合上待機組となった。今回のメンバーでアナライズや霊視、探知タイプのペルソナ使い等の解析能力持ちの中の三人の内でオレとモモメノさんが行く都合上、霊視ニキには残ってもらわなければ後が怖い。誰か一人はこの手の能力を持ってるメンバーが居なかったら下手すると詰みかねんのでここは手早く決まった。

 

そしてもう一人は、使える技術の都合上脳缶ニキが残る事となった。転移と送還の為に今使おうとしている魔法陣の転送先の座標を固定しておく必要がある為だ。

 

デビライザー含め原作再現の為にデビライザーと接続して使用する魔界へのゲート開放機能を備えた携帯PCである『ヴィネコン』の製造をまだこの頃は諦めていなかった彼は(後に冷静になったあと危険物過ぎると辞めたが)既にこの手の異界の門や転送、転移についての知識を習得している。その為現世側に帰る際の道標となる為のアンカー役としてこの場に残る事となった。

 

 

突入メンバーと待機メンバーの選出が決まり、突入メンバー側でこの魔法陣を起動出来るカス子ネキが魔法陣の中心に立ち、合図を送る。その合図と共にオレはGUMPのMAGバッテリーから生体マグネタイトを引き出し、転送の術式を起動させるために魔法陣に注いでいく。

先程と同じように魔法陣が赤黒く発光するのを確認すると、カス子ネキは霊力で作り出した半透明の糸を指先から魔法陣に突き刺して術式を制御し始めた。

 

「座標の固定、転移門の固定、あちら側とこちら側の時間軸の固定……うへぇ、何じゃこりゃ?!動かしてみて分かったけどこの転送魔法陣めちゃくちゃ力技で出来てるぞ!!やり方は知ってるけど実際に作る事はめったに無いトーシローが作った日曜細工みたいな非効率的な構成してる……いや無駄多すぎィ!?」

「何か問題発生かカス子ネキ?!」

「あー、いや、転移させるのは問題ない!!ただ、普段からリソース管理に苦労してる身からしたらこんなにMAG効率の悪い術式構成見てるだけで文句が出てくるってだけだから!!それよりもフリスビーニキ、バッテリーのMAGめちゃくちゃバカ食いしてると思うけどこれMAG足りる?!」

「……ゲッ!?ほ、ほんとだ!?MAGバッテリーの容量満タンまで入ってた筈なのにもう4割しか残ってねぇ!?」

 

 

恐ろしい勢いで減っていく貯蔵MAGに思わず声を上げる。残り三割、二割__と削れていき、魔法陣に完全にMAGが染み渡り漸くマグネタイトの消費の勢いが止まった。しかし維持にもMAGを消費しているようで、残り少ない残量も削れつつあった。

 

「バタバタして悪いが、なるべく急ぎで転移を頼む!!このままじゃバッテリーのマグネタイトが尽きちまう!!」

「はいよー!!チョーっと本気出すわ!!」

 

そう言ってカス子ネキは目の前の難物である魔法陣を相手にするために自身の手足となる小さな人形を数体ローブの中から展開させた。あまりにも術式が非効率的過ぎる為に人一人の手で制御し続けるのは手に余ると判断した為だ。

 

手が足りないなら増やせば良い。幸いな事に彼女は人形使いであり、その手の技術には事欠かない。

 

人形を含めた術式の操作により、早急に転移の為の手順を執り行っていく。

 

「よしよしよし!!安全確保完了、座標の固定ヨシッ!!オールオッケー!!いつでも行けるよ皆!!」

「ありがとうカス子ネキ!!それじゃ悪いが、バックアップは任せたぜ脳缶ニキ、霊視ニキ!!それじゃ、早速転移を開始してくれ!!」

「分かった、皆離れないように一団になってね!!それ、ゲートオープン!!」

 

赤黒く魔法陣が再び光り始める。 開くのは人の手によって作られた煉獄へ向かう為の門。

 

__電脳異界『ジャンクヤード』へと続くゲートは今ここに開かれ、バックアップ役二人以外の全員がその場に足を踏み入れた。

 

光の中に踏み入り、そして消えていった面々を見送った霊視ニキと脳缶ニキの二人は、お互いのシキガミや仲魔に支持を出し周囲の警戒へと移った。

 

皆で無事に帰ってくる事を祈りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達三人が復讐を誓いあったあの日から、早くも三ヶ月が過ぎようとしていた。『塔』の探索は暗礁に乗り出している。出てくる悪魔が強くなって来ている事は対処出来ているし、食料問題に関してもどこからか分からんが湧いて出てくるこの塔に出現する悪魔を食らう事で解決されてもいる為思いの外問題になっていない。

 

 

しかし、塔内部の構造があまりにも複雑過ぎる上に、持ち込んだアイテムや銃弾などの消耗品の補充の為に一端アジトに戻ってきた後にまた塔の中に入ると内部構造が変化している不可思議な現象によってその行く手は阻まれ続けていた。それに加えて、強くなる事自体も思いの外中々上手く行って居ないのが現状であった。その原因である暴れだす胃袋の違和感に、ラギは思わず顔を顰めながら腹を抑えた。

 

 

「あー……クソが!!さっき食ったあの鼻のなげぇ悪魔、名前は忘れたが見た目の割に味は良かったのにまた腹の中で暴れてやがる……!!」

「アレの名はガネーシャだぞラギ。拙者は大丈夫だったがラギはまた腹を壊してしまったか……リーダー、【ディスエイク】はあと何個残っている?」

「後、4個だな……スマン、実は俺もさっきから腹が痛いので使わせてもらいたい。だから残りは2個になるな……更に言えばレーションの数も残り少ない。ここまで来て残念ではあるが、次のセーフルームを見つけたら転移装置を起動させて一旦引き返すべきだろう」

「ちきしょう、悪魔を食ったら悪魔の体の方の腹だけじゃ無くて人間の体の方の腹も満たされりゃもっと潜れるのによー……ああリーダー、そんな顔しないでくれ。もうあんな無茶はしねーよ。食ってるのに餓死なんてしたくはねーからな……それよりも、早く胃薬をくれ。腹の痛さが限界だ……」

 

 

心配そうに見つめるユスタスに対して、ラギはそう言って手を差し出した。ユスタスは懐のポーチに入った胃薬……【ディスエイク】をラギに一つ渡した後、自分も一つ取り出して無造作に口の中に投げ入れた。瞬時にスッと胃の痛みが消えていくのを感じた後、二人は周囲を警戒するナムナと合流し探索を再開する。

 

 

彼ら喰奴が悪魔として強くなる為には悪魔を食らう事で得られるAPを消費し、その血肉に含まれるマグネタイトから悪魔の情報を取り入れ、『マントラ』として自身の業に変換し、装備する必要があるのだが……あくまで喰奴は『悪魔に変身できる人間』である。食べるのは変身した姿で行う為、変身している際は内臓も悪魔のものに変化している為か食べても普通の人のように死にはしないが、毒素の多い悪魔の肉体を食っている為か、何かしら無理をしているのだろう。人間の部分が拒否反応を起こす為なのか、毒素の多い悪魔の肉に胃もたれを起こすのか、悪魔を殺して食らっていると彼らはこうして頻繁に腹を痛めてしまう傾向にあった。

 

 

それを予防したり癒やす為の胃薬はあるにはあるが持ち運べる数には限度がある。その為塔に潜ると頻繁に胃薬の残量が少ない状態になってしまうのであった。腹痛状態では悪魔を食らってもAPが肉体に蓄積されない為強くなる事も阻害されてしまう上、腹が痛くてはろくに戦えなくなるので塔を出て金を消費する事でアイテムを購入できる端末があるアジトに胃薬を買いに戻らざるを得なくなってしまう。

 

それに加えて人の肉体の方の食事も休息も彼らは取る必要があった。悪魔を食って満たされるのは彼らの悪魔の肉体側のみである。人の体には人の食事を、当然のことだが水分や栄養を与える必要があるのだ。

 

 

ラギが一人で戦っていた際に、彼女は悪魔を食らってずっと悪魔の姿で戦い続けることで何日も戦闘を継続していた。腹は痛かったが、肉体の中の悪魔の力の消費と食べる事で得られる力の消費が釣り合っているため問題ないと彼女は思っていたのだが、ある日突然原因不明の体調不良によって変身が維持できず体に力が入らなくなったのだ。

 

そうして人間の姿で倒れ伏し、無防備な状態になっていた彼女は他の理性を失ったトライブのメンバーに襲われ、殺されそうになったそんな時に通りがかり、彼女を助け出したのが悪魔を食らうことで自らの意志と理性を取り戻す事に成功した元カザントライブリーダー__ユスタスであった。それ以降、彼ら二人が殺し合う事なく信頼関係を再び築く事ができたのはそれがきっかけであった。

 

そして彼女が突然動けなくなった理由は人の肉体側の空腹__つまり、普通の食事を食わずに悪魔ばかりを食べていた偏食と栄養失調が原因であったと人間の体に戻ったラギによって分かり、悪魔ばかりを食していては身体が持たない事が判明したのであった。ユスタスに差し出された味気ない筈のレーションがあれほど美味しく感じた日は他に無かったと、ユスタスへの感謝と共にラギはそう語った。それ以降、彼らは人の食事を最低1日2食は欠かさず食べるようにしている。

 

彼らは悪魔に変身している間は悪魔としての飢えは感じるものの人の体の空腹を感じなくなる上、飢えは悪魔を食べることで満たされてしまう。その為うっかりしていると人間の肉体側の空腹を忘れてしまい、限界になると強制的に変身が解除されてしまうのだ。ラギの変身が突然途切れ、死の危機に立たされた理由はそれであった。彼らの持つ悪魔の力は中途半端に不便な面が目立つ代物である。体内の悪魔の力__マグネタイトが不足すれば意志と理性を失い、それがなんであれ味方であれ食らい合う獣に成り果ててしまう上、悪魔だけ食らい続けていてもいずれ人としても悪魔としても限界がやってくる。マグネタイト不足により理性が取り戻せなかった場合、彼らは完全に悪魔に成り果ててしまうのだ。

 

 

悪魔の力を渡される前の、感情を制御されていた頃は無機質な殺し合いという名の陣地取り合戦を行っていたがそれでも元が戦争時の戦略シミュレーションを元に作られたが為にその総人口は数千人程はいた筈のジャンクヤード。

それがあの喰らい合いの果てに理性を保ち生き残ったのは彼ら三人のみであるのを加味すれば、理性を取り戻して生き残れる確率はとても少ない。

 

 

それだけ厳しい前提をくぐり抜けても人としての限界があり空腹に倒れる危険性があるのだから半端と言わざるを得なかった。人としての苦からも悪魔としての業からも抜け出すことができない存在。喰奴とはそういう存在であった。

 

彼らはそうした補給の問題と入り直す度に構造が変わる塔の仕組みに翻弄されている為に、彼らは中々塔を登り切ることが出来ずにいた。

だが、今回はその半端さが故に彼らに奇妙な出会いを齎す事となる。

 

 

「あー、くっそ!!結局今回もあまり登り切れ無かった!!せめて次の大ターミナルが見つかりさえすればなぁ」

「少々、手詰まりを感じるな……何か良いマントラが無いか探すべきか?いい加減この腹痛に付き合い続けるのも鬱陶しくなって来た。見落としているだけで、腹痛耐性とかそういう感じの力を持ったマントラもあるのではないかと思うのだが……」*1

「それは確かに探して見る価値はありそうだな。アジトに戻った時にマントラの情報を端末から探索してみるか……ん?」

 

 

塔の中に存在しているセーフルームと読んでいる、悪魔が寄り付かず小型ターミナルが置いてある部屋から塔の入り口にまで転送した彼らは久々にその光景を見た。それは空から落ちてくる流れ星だ。かつてはこの世界に新たに来た者がいた時によく見た光景であり、流れ星が落ちた後には新たなトライブのメンバーとなり得る無所属の人員がいる為、それを得るために争奪戦になった事も何度もあった。

 

しかし皆が悪魔と成り果てた後は何故かパタリと止んでしまい、人数は減る一方となってしまっていた。そして今や彼ら三人以外のトライブのメンバーの生き残りは居なかった。

 

 

「もう見ないものだと思っていたのだが……」

「新入りか。こんなクソみてーな場所に落ちてくるなんざ、運がねーな……」

 

そうして流れ星に目を凝らしていると、途中で落ちてきた流れ星が二つに別れた。

片方は下からは眺める事が出来ないほど高いこの塔の上の方に落ち、もう片方は……

 

「これは、俺達のアジトの近くに落ちてきたな……」

「どうするリーダー?落ちてきた奴に悪魔の力が宿ってなかったとしたら、最近外にも湧くようになった悪魔に襲われてひとたまりもないぞ」

「……ふむ、奇貨と捉えるべきかもしれんな。見に行こう。どの道俺達三人だけでは行き詰まりを感じる状況だ。新入りを味方に加えれば何か良い変化が得られるかもしれん」

「ま、どんな奴が来たのかはあってみねーと分からねぇが、な。精々歓迎してやろうぜ?地獄へようこそ、ってな」

 

そう言って三人は砂と岩に埋もれた道を歩んでいく。荒れ果てた荒野ばかりが目に映るこの世界では、落ちてきたにもかかわらず未だに発光をし続ける落下物はとても目立つ。悪魔の力を得て強化された五感を持つ彼らにとってそれを探し出すことなど造作もなかった。

 

光を目印に、三人は塔の入り口の近くを離れ、落ちてきた物へと駆け出していった。

 

 

 

 

彼らはまだ知らない。落ちてきたその流れ星の正体の片方が、自分達が復讐を誓った彼らに悪魔の力を与えた存在であることを。

 

そして彼らのアジトの近くに落ちてきたもう片方が、事実上の自分達の元となったオリジナルであるという事を。

 

彼らにとっての宿敵との決戦の日は、近づきつつあった。

*1
※存在しています。【聖獣】マントラの『ストマックガード』(腹痛を100%無効にする)により鋼の胃袋を入手可能である

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