【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ 作:日λ........
夢を見ていた。
長い長い、繰り返し続ける悪夢を。
仲の良かった友人。騎士団の同僚達。憧れの先輩。
……気になっていた、初恋の人。
そんな親しい人達と同じ顔をした人達が……悪魔になって殺し合い、その体を喰らい合う地獄を何度も何度も繰り返し見続けてきた。
最後の一人になるまで殺し合い続けた者はその悪魔としての姿が燃え尽きるように真っ白に成り果てる。そうしてその『勝者』は何かに封じ込まれ、荒れ果てた荒野と廃墟ばかりが広がる乾いたこの土地に親しい人達と同じ顔をした人達が再び配置され、同じように悪魔の力を渡される。そしてその悪魔の力によって齎される飢えに耐えられなくなって、次の殺し合いが始まるのだ。
そんな光景を何回も、何百、何千と繰り返しているにもかかわらず、自分は見ているだけで何もする事が出来ない。現実にある自分の体は拘束され、強制的に眠らされて身動きが取れない状態にされている。
時に誰かが勝ち残り、時に全員が全滅し、そんな不毛な殺し合いを何回も、何回も何回も!!
大切な人達と同じ顔をした、だけど何かが違う彼らがただ、殺し合う。いくら腸が煮えくり返るような怒りをどれだけ感じても、その怒りを忘れないようにこの悲惨な夢を見続ける事しか出来ない。それが今の私の現状だった。
この夢はただの悪夢ではなく、実際に行われている所業なのであろう。彼らが苦しみ、戦い抜くその姿を何度も何度も見続けてきた。それらが全てただの悪夢とはとても思えなかった。
アラカナ回廊の中で無数に現れたマモノ__否、『悪魔』に殺された同胞たちはその魂を奪われてしまった。それを見てアトランティス騎士団所属の占星術師、ムルムルが魂を奪われない為の対策としてペンダントに死んだ仲間たちの魂を封じる術を仕掛けて死んだとしても悪魔に魂を奪われないように処置をしていてくれた。
だが彼女も姫様を守る為に最後に私にペンダントを託し、魂を贄に大爆発を引き起こす術を使い自爆して消えていった。そんな大切なペンダントを、私は捕まった際にあの女に奪われてしまったのだ。
私自身は斧か剣を振るうことでしか姫様のお役に立つ事が出来ない無骨者だ。それでも鋼や金属に対して親和性の高いルシェである以上、あのペンダントを持っていたからこそ分かるのだ。
ペンダントの中に宿っていた同胞たちの魂と、あの荒野で殺し合いを何度も繰り返させられている彼らの魂が同じ物であるという事を。どういう絡繰か、何度も何度も彼らの魂を使ってあの蠱毒を作り出しているのだと。
あの女は絶対に許さない。仲間達の魂を弄んだあの女には、必ず命を持って償わせてやる。
眠らされているにも関わらず、このような思考が出来るようになったのはあの憎い悪魔に身体が変わる力を植え付けられた時からだ。耐え難い飢餓感に襲われる悍ましい力であったが__あの程度の衝動で狂うのならルシェの戦士なんてやっていない。
頭の中の枷を外し理性的に狂う技を習得することが出来て初めて私達の流派は免許皆伝なのだ。制御する事は可能だった。
一度血に狂った獣のように見せかけて、実験を受けていた際にあの女と白衣の奴らを皆殺しにしてやろうと攻勢を仕掛けた事もあったが自由意志を奪われたあの三体の悪魔に止められて、あと一歩のところであの女の喉元に届かなかった。
結果、それ以降こうしてずっと眠らされている。意識だけが、夢を見るようにある状態で。
悪夢はまだ、繰り返され続けている。だが、今回見ている夢は普段のそれとは少し違っていた。
殺し合いの果ての1人の勝者になる訳でもなく、全滅してしまう訳でもなく、ギリギリの環境下で彼ら三人は再び信用関係を築き上げる事ができていたのだ。何千何百と繰り返されてきた殺し合いの中で、それは初めて見る光景であった。
この光景もいずれ台無しになるのだと思うと憂鬱な気分になってくる。どうにかして身体を目覚めさせて、少しでも早くこの悪夢を終わらせる方法は無いのかと考えていると__
唐突に、外から硬い何かがぶつかるような衝突音が聞こえてきた。それと同時に、肉体側に強い衝撃が伝わる。
長い眠りからの目覚めは唐突だった。全身から痛みを感じつつも、わたしは肉体を覆う何かを悪魔に変身することで引き裂き、外側を覆う硬い外殻のような金属を破壊した。
『……ここ、は……!!』
なんていうことだ。それまで見てきた夢を実際に起きていたことだと散々思っていたものの、わたしの心の片隅にはまだこれは夢であってくれと願う部分が残っていたらしい。
そこは、幾度となく繰り返して見続けてきた悪夢の舞台である。【ジャンクヤード】と呼ばれる荒野そのものだった。だが、そんな感傷に浸っている時間はわたしには残されていない。
『……まず、い。変身が、維持出来な……ぅ』
強制的に眠らされ続けていた今の私の体にはろくな栄養が残されていないようであった。長い事飲食をしていないのだから当然である。
最低限身体を生かす為の栄養は先程変身する際に外れた身体に刺された管から供給されていたようだが、長いこと身体を動かしていない状態で健康な状態でも疲弊する悪魔への変身を行ったのには流石に無理があったようだ。限界はすぐに訪れた。
アトランティスの戦士ハルカラは荒野に1人、力尽き倒れた。
そして少し立った後で、意識を失う直前に誰かが近づいてくる足音が聞こえた。
「あれが新入りか。あの姿を見るにどうやら既にアートマの力は得ているようだな」
「ま、すぐぶっ倒れちまったから役立つかは分からねーけどな。使えても制御出来なきゃ意味ねーだろ」
「何にせよ、せっかく拾える命だ。この状況では拾って損は無かろうよ」
その声に、失った筈の親しい人達が居るような錯覚を感じた。抱えられて感じた温もりは、確かに……
結局思いを伝えることが出来なかった私の初恋の人が、自分の手の中で息絶えた時と同じモノだった。
無人の荒野に、赤黒い魔法陣が発光しながら敷かれていく。大容量MAGバッテリーから膨大な量のマグネタイトを消耗して発動したその術式は電子の世界を元に形作られた異界への門を開いた。
まず初めに、この術式の制御を行ったボロ布を身に纏った灰色の髪の少女がこの世界に降り立ち、それから続々と同じく転移した者たちが空中から現れ始めた。
水色のフードの男と黒い法衣に身に包んだ茶髪の少女が現れ、白い鎧を装備した褐色肌の騎士が着地すると、その近くに落ちてきた赤髪の少女を優しく両腕で受け取り、地面へと下ろした。黄色の心優しい竜は、自身の主と青髪の姫君をその背にのせてふわりと着地し、最後にセーラー服に手甲と刀を腰に下げた黒い長髪の女剣士が落下時の衝撃を受け流しながら地面へと降り立つ。
「よし、全員無事に到着できたな。ありがとうカス子ネキ。君が居なかったら魔法陣の術式があの有様ではこう無事とはいかなかった」
「へへへっ、どういたしまして!!……正直二度とやりたくねー!!って思うくらいには面倒な術式だったよアレ。力技過ぎる構成してるせいで消費MAGに気を向けてられない位小回り効かないし、皆無事に転移させるので精一杯だったわ。ごめん、ちょっと休ませて……」
ふらつく彼女を慌てて支える。何か生暖かいものが垂れてきたフードの裾に視線を向けてみると、赤い血液が結構な量べっとりとついていた。
慌てて一体どこからとカス子ネキに視線を向けてみると、カス子ネキが顔を青くして鼻から血がダラダラと流れているのを見つけた。慌ててカス子ネキの肉体の情報を解析すると脳の近くの太めの血管が破れていた。
俺はスキルの修行中に自分で何度かこの状態になったことがあった為その症状に見覚えがあった。脳に過負荷が掛かったことにより、血管に圧が掛かり破れた事で鼻から出血しているのだ。端的に言えば脳出血の前兆である。いかん、このままでは死ぬ!!
「思っていたよりも無理してるじゃないか!?大丈夫かカス子ネキ?!」
「フリスビーニキ!!そのままカス子ネキを抱えて動かさないで!!大丈夫、意識はしっかりしてる?」
「ち、ちょこっと無理したかも……あらら、鼻血止まらないや恥ずかしい……」
「いや恥ずかしがってる場合か!!ロザリーさん、出来うる限り一番効果のある回復魔法を頼む!!」
「分かったわ!!今そっちに行くから!!」
転移の術式は俺ら基準でも相当の負荷が掛かる代物だ。ましてやあの魔法陣は明らかに人間の作り出したソレではなかった。力ある悪魔が無理矢理作ったであろうそれを人間が使うことはそれだけでリスクとなり得る。同じ転移先を辿るためにこの方法しか無かったからやるしか無かったが、可能ならば避けるべき危険行為である。
その姿を見たロザリーが駆け寄ってきた。軽い診察の後、そのまま回復魔法をカス子ネキに掛けようと魔力を練る。現代医学では外科的な手術が必要な状態であっても、回復魔法が使える場合は話が変わってくるものである。
物理的な外傷に関してはどれだけ悲惨な状態であっても、最悪蘇生魔法で再生させることも可能なのだ。魂さえ傷つけられていないなら割と肉体の損傷に関してはなんとかなるのが悪魔に携わる業界である。
「【ディアラハン】!!よし、応急処置は完了!カス子ネキ、このちり紙にチーンして頂戴。入っちゃ駄目なところに漏れた血液を材料にして傷を再生して塞いだけども、それ以外に漏れた血液は残っちゃうからそのままにしてると中で固まってしまうわよ!!それと、帰ったら精密検査ね!!」
「はーい……フードの裾血塗れにしちゃってごめんねフリスビーニキ」チーン
「気にしないでくれ。こちらこそそこまで無理させていた事に気が付かなくて済まない。危険手当として医療費と追加報酬を付けるから帰った後の報酬には期待して……む?」
殺気を感じ咄嗟に手にした大型の歯車をその方向に投げつける。遠心力によって回転を強めるその歯車は持ち主のMAGを元に円盤上の光刃を展開した。こちらに不意打ちを仕掛けようとした悪魔__飛天族 グルルの翼を引き裂き、刃の展開を解除しただの歯車の状態で手元へと帰ってくる。
唐突な襲撃だが、よくよく考えたら当たり前であろう。ここは既に敵地なのだから。先程の転移による多量のマグネタイトの気配かカス子ネキの血の匂いでも嗅ぎつけてきたのだろう。
「敵襲だ!!全員警戒!!」
「了解!!敵反応、今フリスビーニキが叩き落とした悪魔含めて5体!!上からの襲撃、鳥系の悪魔だよ!!」
モモメノさんのその声に反応し、各々が迎撃態勢を取る。翼を引き裂いたことで落下してくる飛天族 グルルに対し飛ぶ斬撃__刀から発生させる風の刃で敵を切り裂く対空用の剣技【トンボ斬り】でトーコさんはグルルの首を切り捨て、灰色の空からこちらに向けて襲い掛かってくる悪魔たちに対して刀を構えた。
「カス子ネキ、今は下がっていてくれ。ロザリーさんも言っていたがあくまでさっきの回復魔法は応急処置だ。なるべく安静にしていてほしい」
「……分かった。悪いけどちょっとゆっくりしてるね。頼んだよ、皆」
「任された。ロザリーさん、カス子ネキを連れて後方で支援を頼む!!」
「了解したわ。……貴方、リーダー役が板についてきたんじゃない?」
「どうかな。いつも自分の役割を熟すのに必死なだけさ。……敵が来たな、やるぞ皆!!」
「「「了解!!」」」
そう言って先陣に立つ彼は、こちらに襲いかかろうとする悪魔の群れを迎え撃とうと味方との連携により戦いの場を整えていく。
彼にとってこれはモモメノのナビ能力による支援を元に行っている歴代ATLAS作品のバトルシステムの再現であるが、ゲームの中のそれを現実であるこの世界で行える事の異常さこそ彼の異能が機能している証拠であった。
現実すらも電子の世界のようにハッキングし作り変えるハッカーとしての力__彼本人は未だ知る由もないものの、かつて旧世界で情報技能Sランク異能者として扱われていたその力の正体は自らの認識に従って現実すらも塗り替える出力を持った強力なESP能力である。
第五惑星ではこの力を『ガイアの力』と呼んでいた。星の力を操る者たちの総称である。
「……?」
それ故に、無自覚ながらも自らの力により塗り替えられるこの『現実の世界』に対して彼は違和感を持った。水を得た魚のように、今の彼は異様に調子が良かったのだ。普段よりも自前のスキルや武装型COMPに内蔵された支援魔法の通りが異常に良い。
この事に、彼はこの世界に訪れる前に自分達が倒し、消えていったフェイクベーオウルフ__否、ナムナの言葉を思い出した。
(この世界がもしゲームの方のアバチュの『ジャンクヤード』と同じような由来を持つ異界だとしたら……調べる必要はありそうだな)
体感型の軍事シュミレーションを開発していたというカルマ・アソシエーション社。その軍事シュミレーションをベースにこの異界が作られたのだとしたらこの異界は電脳世界の中に作られた異界である可能性が高い。大元が自身の持つハッキング能力であるこの異能は電子的な機械やプログラムに対して非常に通りが良い為、例に漏れず電脳異界でもそうである可能性が出てきた。この異界では普段よりも出力を効率よく出せるようだ。
そんな事を考えながら普段よりも出力が高く掛かる支援魔法をあえて『普段通りの効果量』に調節しつつ皆に掛けていく。
命のかかった場で必要なのは単に馬力があることよりも出力が安定していることである。当然のことだが現実であるこの世界ではカジャやンダ等の効果量や効果時間がゲームのように一定という訳ではなく、使用者によって変化してしまう。この不安定さがバフやデバフの大切さを知りつつも掛けても大半の俺らがデバフばかりでバフは自力での自己強化程度で済ませてしまう現状にも繋がっていた。半端に味方に支援魔法を掛けても違和感のない動きが出来ないと命取りなのだ。
なので自分が味方にバフを掛ける時は、掛かり具合と効果時間が一定になるように毎回調整している。カジャとゲイン系を重ねる際も段階を重ねて掛ける事で感覚的に増強された自身の力を把握しやすくする為だ。結果的に一緒に戦った人から感想を聞くと今の所『やりやすい』と好評であるので続けていきたい。
そうしてバフやら体力の自動回復効果を付与していると、あっけなく今回の戦闘は終わった。うん、不意打ちに対応する為に仕掛けるとかじゃない限り自分から攻撃することはほぼ無いからな!!やるとしてもハッキング仕掛けて相手をハッキング状態にしてからなので強敵ではない相手だと先に味方が片付けてしまうのだ。こればかりは支援特化故に仕方があるまい。その分手強い相手への戦闘の際や別の所で貢献する事にしよう。
それはそれとして、あの女がいる場所の探索をするにしてもこの広さの異界を探索するにはまずは拠点を確保しなければなるまい。この見渡す限り荒野と砂ばかりの場所では先程のように悪魔には襲撃され放題だ。
やるべきことは色々とあるが、第一目標はナイトニキたちの仲間であるハルカラさんの救出。それを忘れないようにしつつ、事をを進めていこう。
電脳異界との親和性の高さにより、八角 ジュンは エグゾースト を取り戻した!!
Exゲージを消費してEx状態を発動可能になった!!
Ex状態では最速で行動が可能。攻撃やスキルの効果が倍化。回復アイテムの効果が倍増する!!
魂に施された封印が一部解除された。
__決戦の時は近い。
それは、星々を食らう怪物。彼らにとって星とは極上の食材であり、自身が美味と感じる成熟した文明を持った知的生命体を育む為の苗床である。
彼らは星に知能を持つ生物の種を巻き、文明を栄えさせ、収穫時期となった際にそれを刈り取り食らう世界の捕食者たちであり__地球の人類の創造主そのもの。
天の座に君臨せし七体の絶対捕食者。かつて真竜と呼ばれていたそれらは、皮肉にも自らが作り出した人によって滅ぼされた。
そして彼らの手によって、初めて人の手による創生が行われたのだ。
今の世界で言う神殺しと、ナホビノと呼ばれる存在が逆説的に産まれるきっかけを作り出した彼らは最後に一つの選択を迫られた。
可能性を殺し悲劇の元となった全ての竜を狩るか。
可能性を生かし、滅び去った世界の新たに産まれてきた最後の幼竜を見逃すかを。
どのような葛藤があったのか、どのような選択のもとにそれが判断されたかは記されていない。だが、彼らは最後の竜を狩ることはなかった。
それ故に、今のこの世界は存在している。全てのものが竜から産まれ竜に還る旧世界のコトワリは既に絶たれていた。それ故に今の世界のコトワリの元に新たに生まれたその竜は、後の全ての命の原型としてその役割を果たしたからだ。
しかしそれにより、僅かに、本当に僅かながら【真竜】という存在の因子を世界に残す結果となってしまったのであった。
悪魔にも亡霊にもなりきれないそれらは、この新たに作られた世界が始まってから今に至るまでずっと潜み続けてきた。結末に納得している者はただ自分達に勝利した者達を見届ける為だけに。
結末に納得していない者達は……自らの存在を取り戻す為にほんの少しずつこの世界に干渉を続けてきた。
転機になったのは感受性が高かったかの作者が、彼らに対する星々の恐怖を読み取ってしまいとある創作神話を作り上げてしまった事だ。それにより彼らは真竜としてではなく、悪魔としてこの世界に干渉する術を得てしまった。
ジャンクヤードの中心に位置する塔に君臨する邪神 ハスターはその一柱であり、この世界の悪魔としてのハスターでは無く、かつて真竜であったその恐怖の原型が悪魔としてのハスターの肉体を得た存在であった。
絶叫が鳴り響く。その声は自分自身の中にある何かを奪われ、別のものに置換されていく絶望と恐怖に彩られていた。
『はは、ハハハハハハハッッッ!!真逆、こんな形で本物の竜の因子を再度得る事に成功するとは思わなかったぞ!!余り物には福来たるとはこの星の住人の言葉であったか??第五の奴程に悪趣味な味は好みではないのだが、こういう事があるのであればたまには食わず嫌いをせず残り物も喰らうべきであるな!!』
自分勝手にその存在はそう言った。痛みと絶望に苦しむその女に対して要らなくなった自らの悪魔としての存在を受け渡しながら。
『なんだその顔は。キサマは『悪魔の力』が欲しかったのであろう??望みを叶えてやって居るのだからもう少し嬉しそうな顔の一つ位はしたらどうなのだ??いや、所詮は元家畜の眷属にそのような期待をしたオレが馬鹿であったか』
竜の力を奪われて苦しむその女__黄色の布のような何かに包まれたナニカに変質していくナツメを見て、傲慢にそう言い捨てたその存在は鬱憤を晴らすかのようにそれまで被っていた悪魔としての姿のバケの皮を脱ぎ捨てるかのように四散させていき、自らの肉体を再構築させていった。
『__漸くだ。この世界が創生されてからずっと、ずっとこの姿を取り戻す事をどれだけ待ち望んでいたか!!オレは__【第六真竜 ヘイズ】だ!!』
世界に対して自らの存在を誇示するかのようにその存在は言葉を吐き出していく。封印されていた筈のその名前は今、完全に解き放たれていた。
再構築させた肉体の変化が収まると、全身に鋭利な刃物のような手足を持ち、全身に様々な星から喰らい自らの糧にした大砲や機関銃のような兵器を生やした異形の竜がそこには存在していた。
『__創生を行ったあやつらが君臨する西暦2100年までの間に、その代理としての法の神と嘯き座に居座っている第二の食い残しも!!この世界も何もかも!!我らが喰らい尽くしてくれるわ!!』
真龍として存在できるギリギリの状態ではあるものの__世界を喰らうものとしての力を取り戻したそれは、まず手始めに悪魔として存在していた時は契約に縛られ行えなかったこの世界への自らの力への侵食を開始した。
極彩色の花びらと紫色の葉を持つ毒々しい花が塔を覆い尽くし始め__世界を侵食していった。
不気味な花々に覆われていくジャンクヤード。その中でもかつて上位三つの支配領域を持っていた『ミロストライブ』『アイゼントライブ』『ネバンプレストライブ』の3つの領域には自らの眷属である帝竜を作り出し、糧を得るための『調理』を急がせた。
第六真竜 ヘイズ。その真竜としての性質は兵器が生み出すエントロピーを好む、優れた兵器を収集して喰らう存在であった。
故に、生体兵器として生み出された喰奴__アバタールチューナーはヘイズにとって極上の糧であり、失われた力を補うのに最適な存在であった。無念の中死んでいった者達の遺したマガツヒやマグネタイトを喰らい、ヘイズは完全な状態に至るための策を実行していった。
第七に至る資格を持ちながらそれを拒否し、竜の輪廻を繰り返す世界そのものを破壊した怨敵への復讐を成す為に。