【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ 作:日λ........
ショタオジこと星霊神社の神主に依頼を受け、生体マグネタイト発電式PCの開発に携わる事となったが中々に作るのは大変だった。ハード側に関しては先んじて前世の記憶に目覚めて社会的に成功していた俺らの会社が作ることとなったものの、まず叩き上げとして既存品のパーツから1台組み上げてテストする事となったのである。この時点で覚醒していて、かつパソコン関連の技術をパソコンを組んだりプログラミングしたり出来るほど持ってる人材は本当に1握りしか居なかった為色々と大変だった。
まず初めの草案として作ったのがノートパソコン型の、液体化させた生体マグネタイトをバッテリー代わりに搭載して起動させようとしたタイプ。コレは派手に失敗した。生体マグネタイトというのは不活性化した悪魔の肉体を構成する物質や人間などの特定の生体エネルギーが半物質化した物であり、その性質上高濃度な生体マグネタイトを濃縮させたものを電子部品に近づけるとまともに起動しなくなってしまう事がある。
グレムリンという妖精を知っている人なら分かるかもしれないが、あんなふうに機械の動作を不安定化させたり、最悪壊してしまったりする。精密機器であるパソコンなんて以ての外であったのだ。
起動実験を行った際、文字化けした挙句煙がでてその数秒後、試作品のパソコンは派手に爆発した。幸いなことにも怪我人は覚醒していたおかげで大したダメージを負わなかった自分1人で済んだ。咄嗟に隣においていた鍋の蓋で顔とか急所をカバーしたのが間に合って良かったよ……ショタオジの術で補強されてなかったらこの鍋の蓋も壊れてただろうけども
こりゃ専門設計しなきゃ駄目だわとエドニキことニーサンと話し合いして、色々と試作設計をしていった結果『引き算の法則』で対応することとなった。扱いの難しいMAGバッテリーの技術は基礎研究を重ねていくことにして今回は不採用にすることに決めた。純粋に『使用者の生体マグネタイトで稼働するPC』として組み上げて行くことに決めたのである。
セキュアPCというものがある。コレはセキュリティ保護の観点から一般的なパソコンと違いHDDやSSDなどの情報を書き換え記録するための機材が含まれていないパソコンである。 ならどうやって使うのかというと、ネット回線に接続することで指定の別の端末のHDDやSSDなどの媒体にアクセスする事で稼働させるゲームのコントローラーのような運用方法がされているのだ。あくまでパソコン本体は端末であり、セキュリティが高い建物内でパソコンを使う為の専用端末として使われている。
今回作る生体マグネタイト対応型PCはコレを参考にして作ることに決めた。バッテリーや電源方式に頼れないならいっそ着けなければよいのだ。
本来ならバッテリーや電源ユニットとなる部分を生体マグネタイトを電源に変換する装置を取り付け、それをショートしないように変換器噛ませて、完全に電源は生体マグネタイトを変換して発生させた電力で稼働させる事に成功した。更に内部の回線やCPUなどの構造をショタオジに見てもらい霊的にそれらが機器に害を及ぼさないようになる式の形になるように整えてもらった為問題なく動作している。
こうしてハード側が完成し、本格的にオレの仕事が始まった。ソフトウェアの作成にはデバッグ、つまり実際に動作させてバグがないか色々と実際に試していく必要があるものの、『現時点で覚醒していてPCの知識があるプログラマー』なんて本当に俺らの中でもごく一部な訳で……なのでまあ、テンション上げて頑張ったけど4割位はオレがデバッグ頑張る羽目になった訳である。延々と続く終わらない確認はキツかったぞ……その甲斐あって拡張性山盛りの専用のOSや俺らや悪魔向けの専用ブラウザは出来上がった。オレたちが作ったのは箱物であり原型なので、これに色々とショタオジがオカルト由来のセキュリティを書き加えて完成、と言うわけだ。
眠気覚まし用に利用していたマッスルドリンコの消費量がエグかったな……なんか終末のまだ来ていない世の中でも普通に新作のエナドリとして売ってるのよねコレ。思わずダース単位で買って飲んでたが中々癖になりそうな味であった。
生体マグネタイト式パソコンの完成の感動も程々に軽く休暇を取った後。色々と準備が整ったことをショタオジに告げられたオレは、とりあえず自身のレベル上げや修行の再開のため、オレたちがパソコンを作っている間に整えてくれた修行用の異界に乗り込む事を決めたのだった。
「でもさぁ!!無理だよぉ!!一体二体ならまだしもガキの群れ相手に鍋のフタで殴り合うなんてさァァァ!!」
尚その数十分後の光景がこのザマである。
初めのうちは不意打ちで1体ずつ泥仕合に持ち込んでなんとか【幽鬼 ガキ】を倒す事も出来ていた。2体相手でもギリギリ死なないで勝ちをもぎ取った。しかし、大量に群れたガキ相手にそんな余裕などなくなった。数の暴力は恐ろしいものである。ましてや攻撃力に乏しい自分は鍋のフタでぶったたく以外の攻撃方法は無い。
「だぁぁ!?クッソコレでも食らえ!!」
もっとも自分自身の力を使う攻撃ではだが。半ばヤケクソ気味にこんな時の為の切り札であるガチャで手に入れたマハブフストーンを投げつける。前列にいたガキがカチコチに凍りつき、そのまま後列のガキが突っ込んでバラバラに砕かれ、もつれ込んだガキの肉体に突き刺さる
WEEK!!
【幽鬼 ガキ】 New 氷結に弱い
「高かったが命には変えられんわ!!もう一発!!」
前方列が急に凍ったことで自分を追いかけていたガキ達がもつれ合いとなった所であった為、幸運なことに全て纏めて火炎の餌食にすることが出来た。
「ぜー、ぜー……ふう、今回は、なんとかなったが……こんな戦い繰り返してたら何個命があっても足らんわ。真面目に前衛にシキガミを作ってもらうべきか……?」
でもなぁ、推しのキャラ前衛じゃなくて完全に後衛型の魔法使いなんだよなぁ……いや贅沢言ってるのは分かるんだ。でも霊視ニキのモーさん見てるとマジで羨ましいから妥協はしたくない
幸いにもガキを泥臭くも倒し続けた事でレベルは上がっている。スキルを覚えた感覚もある。だが覚えたスキルがよく分からない物であった為今の状況ですぐ試す訳にも行かなかった。
「
サバゲーナレッジ
ターン終了時、一定確率で味方全体の体力を回復する。自動発動
ハッキングワン
敵一体を『ハッキング状態』にする。成功率:中
あまりにも簡潔な、脳裏に浮かぶその説明文に困惑しながら1人呟く。サバゲーナレッジの方は中々に破格だ。発動できるタイミングが運任せではあるものの、なんの消耗も無く体力を回復する事が可能であった。少数相手ならガキに格好はつかないもののアイテム無しで勝てたのもこのスキルに先に目覚めた事が理由である。
問題なのはハッキングワンの方だ。ハッキング状態ってなんなんだよと思うものの、なんとなくそれについて理解できる自分も居た。
レベルが上がるにつれて段々とはっきりと見えてきたが自分の目は少々変わったものが見えるようで、目を凝らして物を見るとそれが0と1で構成された情報のように見えてしまう。霊視ニキのような見鬼や『アナライズ』のような技能という訳ではなく、どうやら自分の目は物体の構成情報を電子的に変換して見る事が出来るらしい。
これを踏まえるとあくまでまだ使ったことのない技であるので確証はないが、この構成情報に直接的にハッキングを仕掛けて相手にバッドステータスを付与する類のスキルであると思われる。
ちなみにこれらのスキルは発動しようとすると空中に現れるキーボードのようなものにプログラムを打ち込むように入力する事で発動する。これらの動作は矢鱈スタイリッシュなんだが、肝心の攻撃手段が鍋のフタでのどつきあいかアイテム頼りな為なんか戦い方を間違えてる感が否めないのは事実だ。
「悪魔にDaemonでも打ち込めってか?そりゃシャレが効いてるねぇ……はぁ、一旦引き返すか。これ以上は一人じゃ無理だと言うのは嫌なほど痛感したわ」
ショタオジの言った通りだった。どうやらオレには相手に直接ダメージを与える力が致命的に欠けているらしい。
ならば解決する手段は一つしかない。誰か別の仲間を得る事である。そうなるとやはりシキガミを貰うべきだろうが……
「今生における一生のパートナーって考えるとなぁ……あんまり妥協はしたくないよね」
どんな形であれ、シキガミは自分の一生モノの相棒になり得る存在になる物だとショタオジから教わった為、単純に現状の打破の為だけに都合の良い物に仕上げる事に少しばかり抵抗感があったのである。
己の性癖やら欲望やらに従うべきか。それとも現実を見て妥協するか。終末が近いのにも関わらずそんな贅沢な悩みを抱えたまま、オレは修行用の異界から脱出して星霊神社の隣の土地に設立された『ガイア連合山梨支部』の宿泊施設へと向かい、荷物を置いた後設置されている自分たちが作ったパソコンを利用した。
一人では解決しない悩みでも、誰かと話すことで解消される事はある。それがたとえ有象無象の「俺ら」であったとしても。
無造作に開いたスレで書き込んだ愚痴がキッカケとなり、手に入った縁。
それが良い縁となるか、悪い縁となるかはまだ決まっていなかった。