【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ 作:日λ........
「確かここだったな。喫茶『有頂天』ね……ただの偶然か?」
ナイトニキとの待ち合わせ場所に指定された喫茶店。ガイア連合のPCを使いアクセスしている時点で現状では俺らの一人であると思われるが、一体どんな人物かはまだ不明だ。
あのスレでの書き込みでお互いメールアドレスを交換し、色々と話し合った結果お互い一度リアルで会うことを決めたのが昨日の話である。
店内に入る為に扉を開けるとカランカラン、と扉についたベルの音が鳴る。レトロな雰囲気を感じる店内には歴史を感じる黒電話、カウンターに置かれたサイフォンが懐かしさや落ち着きを与えてくれた。
「いらっしゃいませ。カウンターですか?それともテーブル席をご希望ですか?」
「カウンターでお願いします。実は待ち合わせをしていまして。音群さんはいらっしゃいますか?」
「ああ、貴方がマスターのお客様ね?少し待って頂戴」
そう言って、ピンクのヘッドドレスが特徴的な赤毛の少女は店の裏に回っていった。一瞬学生バイトか何かかと思ったが、よくよく見てみると顔が整い過ぎているし、何よりもこんな日本の片田舎の昭和の雰囲気を感じる喫茶店に赤毛の外人さんが働いているのがミスマッチである。そして何より、覚醒したことで目覚めた第六感とも言える感覚から内包している生体マグネタイトの総量が矢鱈と多いと感じ取れた。
(コレが最新のシキガミかぁ。モーさんの時も思ったけど、コレがショタオジの一反木綿と同じ物とかどーいう技術してんだよとしか言えんなぁ。もう完全に人間にしか見えんわ。技術班の執念やっべぇわ)
尚、対悪魔用セキュリティソフトこそショタオジ製であるがガイア連合共通規格のPCのOSやプログラムをほぼ一人かつたった数カ月程度で組み上げデバッグ作業までやったこの男もパソコンを利用する技術班の面々にその使い勝手や拡張性の良さもあり『コイツこの世界のスティーブン枠とかジョ○ズなのでは無かろうか?』など等疑われているが、当の本人はそんな事思われているとは知らず仕事が終わった開放感から修行用異界に凸る日々を送っていた。
だが最早自分一人で突っ込むのはもう現実的に考えて無理だと諦めたのが先日の顛末であり、今ここにいるのはその問題を解決する手段を得る為である。
そうこう考えているうちに、店の裏からカウンターに一人の男が現れた。
「初めまして。貴方が八角 ジュンさんでよろしいですか?」
「はいそうです。そういう貴方は音群 キドウさんですね。現実では初めまして。……ああそうだった。正式名称が決まったガイア連合山梨支部ではHNを現実での呼び名をなるべく使うことが推奨されていますので以降はナイトニキと呼ばせて頂きますね。ふざけている様に聞こえますがこれは敵対者から真名を隠す事による簡易的な呪い対策ですので異界等の戦いの場では徹底をお願いします」
「了解です。ですが……良いんですか?あの名前で」
「実際分かりやすくて親しみやすいと思うので問題無いですよ?自蔑的かもしれませんが、まあ実際問題戦いの場だとオレの場合泣けてくる程火力ありませんので事実ですし」
「分かりました。それではこれからよろしくお願いしますフリスビーニキ。お近づきの印にコーヒーはいかがですか?」
「良いのですか?では、ありがたく頂きますね、ナイトニキ」
そう言うと音群氏。以降、ナイトニキはアルコールランプに火をつけ、サイフォンでコーヒーを入れ始めた。
日本人離れした長身に浅黒い肌。色味の薄い金にも若干黄身がかった白にも見える髪に緑色の瞳。そして尖った少し長い耳。
今は喫茶店のマスターとして白シャツにベスト、蝶ネクタイを身に着けて居るが為に別人感が強いものの、その姿は確かに前世でネットミームとして有名になった『ブロントさん』によく似ていた。
「はい、こちら当店のオリジナルブレンドになります」
「頂きます……ああ、ガイア連合のパソコン開発してた時にこのコーヒーが欲しかった。マッスルドリンコがぶ飲みで眠気を凌いでましたけどやっぱちゃんとしたコーヒーは全然違うなぁ……」
濃すぎず、薄すぎず。理想的な濃度と苦味とコクのバランスが素晴らしい。するすると飲み進めてしまう。コーヒーの理想の一つが『水のように飲めるコーヒー』であるという話があったが、ナイトニキのオリジナルブレンドはまさにその理想を体現していた。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです!いやぁ、こんな美味い珈琲がある喫茶店ならつい通いたくなっちゃいますね。と、申し訳ありません。本題もまだ話していない上、コチラは手を貸していただく側なのに関わらずここまで寛いでしまうとは……」
「いえいえ、自分の珈琲をここまで楽しんで貰えて自分も嬉しいので問題無いですよ。さて、それではココからは本題に入りましょうか」
そう言って、ナイトニキは店に入る扉にかけられた札を裏返しclosedに切り替え、カーテンを締めると指を鳴らす。
すると一瞬で僅かなMAGによる発光の後に喫茶店のマスターとして様になっていた服装から、白基調のサーコートに手甲と脚甲を身に着けた騎士の姿に切り替わった。
「改めて名乗らせて頂こう。私は音群 キドウ。騎士物語に憧れてその道を志す、喫茶店のマスターさ」
「……おおお!?格好いいですねそれ!?どうやったんですか?!」
「ははは、このロマンが分かってくれるとは嬉しいな、フリスビーニキ!!まあ、この手品の種や仕掛けに関しては後ほど。今は自己紹介と行こうか。来てくれロザリー」
そう言うと、店の裏から先程の赤毛の少女が出てきた。喫茶店の制服から花柄のワンピースにワインレッドのアランセーターへと着替えているが、ざっくり見るだけでも相当な品質の防具なのが伺えた。
「ええ、改めて初めましてマスターのご友人。私の名前はロザリー。この人のシキガミよ」
「初めまして。オレの事はフリスビーニキと気楽に呼んでくれ。しかし、オレのレベリングに付き合ってくれるって話だけども……その、良いのか?」
「何がだい?」
「ナイトニキたち、話に聞いてたよりも最前線組だったからさ。練度的にも装備的にも、メシア教や異界相手に相手に何度も何度もカチコミしてる霊視ニキクラスじゃないか。ここまでレベルに差があると自分が同行したら足手まといになりそうで不安なんだが……」
カカカカッ
騎士 音群 キドウ レベル27
造魔 ロザリー レベル25
現状、自分の目に見える情報を解析すると自分の見立てではこの二人の強さはおそらく霊視ニキのアナライズ基準だとこう移る。もっとも自分は霊視ニキのように見鬼に特化している訳でもなく、あくまで
ここ最近、修行用の異界がショタオジの手により解禁されたもののまだそこから一月も立っていない現状でここまでレベルを上げて鍛え上げていると言うことは逆説的にナイトニキは紛れもなく実戦でそれを鍛え上げてきた事の証明である。少なくとも自分の知り合いで現状ここまで鍛え上げているのはショタおじ等の元々強かった例外を除けば霊視ニキ位である。
カカカカッ
人間 八角ジュン レベル13
対して、自分に解析をかけると現状はこうなる。正直数カ月前に最初の霊山オフ会修行ハードコースを突破した奴としては弱いとしか言いようがない。
仲間?鍋のフタ位しか武器として持てない奴とかお荷物にも程があるだろ。そんなのは自分が嫌だから今までソロでレベリングしてきたのだ。ショタオジからのパソコン作成の依頼を終えて、必死にガキやらオンモラキを殴り倒しレベルとスキルを得て最近ようやく支援特化と言い張れる程度に体裁整えられたのが現状である。
流石に装備が鍋のフタのままなのはまずいと装備更新のためにPC開発の際に仲良くなった制作班の面々に新しい武器と防具を発注していたが、ここ最近のシキガミ発注による多忙さに加え調整と制作に手間取り、完成して受け取ったのが昨日修行用の異界から出てきた後であった。その為昨日までは結局鍋のフタで殴り合う羽目になっていたのも重なり思うようにレベルが上げられていないのが現状だ。
「ああ、見るだけでそこまで分かる覚醒の仕方してるのかフリスビーニキ。まあ、必要に駆られてちょっと前まで少しでも強くなる必要があったとだけ言っておくよ」
その目的は既に達しているから、それ以外の事にも目を向ける必要が出てきたんだとナイトニキは言った。
「自分もロザリーもここまでレベルが上がってしまっているが、その分自分達の目的の為だけに突っ走ってしまって星霊神社で集まった面々とあまり親交を深めるような事が今まで出来なくてね。正直に言うとそういう横の繋がりが欲しくて今回フリスビーニキと協力を申し出た面もあるかな……弱みに付け込んでいるようで申し訳ない」
「ああ、そういう事ですか。別に構いませんよ。実際『俺ら』同士で背中を合わせて戦えるような人を今のうちに作っておく必要性はありますからね。自分の場合は主に技術部のメンバーに知り合いは偏ってますが、彼らとの顔繋ぎが必要ならお伝えください。彼らもレベルを上げる必要はありますから、その手伝いを買って出てくれるナイトニキのような人との繋がりは欲しいはずですから」
「それはありがたい!!それでは、これからよろしくお願いしますねフリスビーニキ」
そう言って、ナイトニキは右手を差し出す。その手に握り返し、握手をしてそれに応えた。
「こちらからも、暫くお世話になりますナイトニキ。それでは、改めてお互いのスタイルや、スキル等の戦い方について話し合いましょうか」
こうしてオレはナイトニキと協力関係を組むこととなった。地雷や寄生などと思われないように気をつけて行かなければなと気を引き締める。
ある程度話し合いが終わった後、修行用の異界へと挑む為に全員で星霊神社へと向かった。