最近原神始めた。フォンテーヌ編良かった。じゃあオリキャラ生やすね。
魔神任務とフリーナの伝説任務くらいしかやってないからガバあったら許して。

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まあ基本フリーナ視点で原作なぞるだけだし真新しさはないと思う。
一応主人公はフリーナだからオリ主タグつけてないけど付けた方が良いかな。
序幕と第一幕って意味被ってね、は禁句。


水神様の贈り物

序幕

エピクレシス歌劇場

旅人

 

 

 

「どういうこと「諭示機」が……」

 

 歯車が回りだす。諭示機が発光を始める。

 

「おそらく……死刑執行の時間だろう」

 

 死刑執行…?

 

「{…) フリーナ!!」

 

 被告席を見上げる。そこには、全てを諦めたように絶望の表情を浮かべて席に座るフリーナと、その側で立ち尽くすカドゥの姿が。その二人に向かって勢いよく飛び上がる。

 

「{…) まだ、聞きたいことが…!」

 

 神座に座す彼女は予言にあるように涙を流していた。その涙は、死への恐れか、あるいは片方を置いていくことへの後悔か、逢えた喜びか、あるいはその全てか。いずれにせよ、涙というのは感情が重く詰まったもので、二人の涙は伸ばした指先へと零れ落ちる。

 

 ───瞬間、世界は白く染まった。

 

 

 

第1幕

鏡の前

フリーナ

 

 

 

 ふわふわ、ふわふわと夢を見ているような。

 

「フリーナ……」

 

 浮かんでいくような、沈んでいくような。深い深い海で漂い溺れる夢。

 

「フリーナ?」

 

 微睡む意識がゆっくりと引き戻される。ボヤけた視界に飛び込む光が次第に意味を持つ。

 

「えっ?誰…?僕を呼ぶのは誰だい?どこにいるんだ?」

 

「焦らないで、怖がらないで、僕はキミの目の前にいるよ」

 

 目の前には姿見。映るのは当然───

 

「ちょ…っ、ちょっと待って、どういうことだい?キ、君は鏡の中の僕?」

 

「うん、その呼び方も悪くないね。では、これから僕は「鏡の中のキミ」だ」

 

 目の前の鏡に映るのは確かに僕。だけれども服装も違うし、髪の長さも、纏う雰囲気も違う。これは、僕と言えるのか。

 

「「鏡の中の僕」……キ、君は僕に何か用?」

 

「「予言」のことを……聞いた?」

 

「予言?……あっ、待って。僕は知ってるみたいだ。何故かは分からないけど、それは僕の頭の中に存在しているかのようで……」

 

 自己も曖昧で、自分の過去すら分からない。だけど頭の中をワンワンと、反響する鐘の音のように予言が響く。

 

「「人々はみな海の中に溶け、水神は自らの神座で涙を流す…そうして初めて…フォンテーヌ人の罪は洗い流される」……」

 

「そう───その通りだよ!よく分かってるじゃないか。そして、これも僕がキミを探しに来た理由だ。フォンテーヌの災いはいずれ訪れる。すべてが予言通りになってしまう。逃げたって無駄だよ」

 

 それは……凄く大変なことではないのか?フォンテーヌが海に沈み、人々が溶けてしまう。その未来から、逃れようがないなんて。

 

「僕も、フォンテーヌ人として溶けてしまうのか?」

 

「フフフ……心配しないで。この世に「奇遇」なんてものが存在しているのは、まさに人々に転機をもたらすためなのさ。キミが今日僕に出会えたことだって、まさにそうだよ。みんなを救う方法は、僕が教えてあげる。ただその代わり───キミはいくつもの苦痛を乗り越える必要があるんだ……」

 

 苦痛……なんで僕がそんな……いや、どのみち予言がなれば僕は死ぬ。僕だけじゃない。フォンテーヌの全ての人々が、水に溶けて消えゆくのだ。ただ僕には彼らと同じように、一時の夢のように溶けゆくか、あるいは彼らが溶けゆくのを防ぐかという選択肢があるだけで。

 

「………なんだ、救える望みがまだあるのか。本当にびっくりしたよ。キミがあんなに怖そうに言うからだよ。苦痛については思うところはあるけれど……もし片方に僕の苦痛が、もう片方にすべてのフォンテーヌ人の命が載った天秤があるとしたら、どちらに傾くかなんて明白だろ?」

 

「フフ……やはりキミは僕の「理想」だ。それがキミの「正義」なのかもね」

 

 「理想」?「正義」…?

 

「いや、何でもない。いいかい?フォンテーヌは今、水神を失ったばかりだ。キミには、新しい水神を演じてもらう」

 

「神を、演じる……?」

 

 そんなことができるのか?人の身である僕に…?

 

「ああ。ずっと……ずっと演じ続けるんだ。誰にも疑われてはならない。もしキミにそれができたなら、僕には予言に抗うすべがある……けど、万が一キミの身分がバレてしまうと、最後の希望もそのまま消えてしまうだろう」

 

「でも、そんなのどうやればいいっていうんだ?人の身分で神を演じて、まったくバレずにいるなんて……」

 

「安心して。キミのやるべきことは、自分を本当の神の姿にすることじゃない。ただ、人間が想像するような神の姿になればいいだけさ。キミも人間だから、それがどのような姿かについては、よく知っているはずだ」

 

 人の想像する神の姿…?僕には分からない。だって、神に会った記憶はないから。神を知る他の誰にも会ったことはないから。

 

「覚えておくんだぞ。これからキミが直面するのは「神性」をどう模索するかということじゃなく、「人性」にどう抗うかということなんだ」

 

「えっと……まだ完全に理解できてないけど……僕、頑張ってみるよ。それで、僕はいつまで水神を演じ続けないといけないんだい?」

 

 話だけでも、長い、長い年月がかかると想像できる。もしかしたら、いずれ僕が年老いて、おばあちゃんになって、そして死んでしまっても足りないくらいの年月が。

 

「この任務をこなすために、キミは長い年月を歩むことになるかもしれない。終わりの日が訪れるまで、キミが年を取ることはない。しかし僕は約束しよう。ある盛大な、歌劇のような審判によって一切に終止符が打たれ───すべての人々は救われる」

 

「審判か……それは楽しみだね。ワクワクするよ」

 

 鏡の中の僕は言う。

 

「ああ、そうだ。キミに贈り物を。ほら」

 

 カツ、カツと靴の音を鳴らして、何処からともなく彼が現れた。

 深い、深い海の水のような黒に近い紺の燕尾服。湧き出る泡のような白い手袋。彫刻のように整った顔に、浮かぶ島のように深緑の瞳に、雲間に吹く風を思わせる緑がかった白い髪。柄から刃まで繋ぎ目一つない石でできた切れない剣。

 

「彼はカドゥ。キミの身の回りの世話をしてくれる。まぁ、不要というなら話相手にでもするといい。ただし、任務のことは喋ったら駄目だよ。誰が聞いているか分からないからね」

 

「で、でも普通の人は……僕と同じ年月を生きられない」

 

「大丈夫さ。彼は「神」の作った自律人形。諭示機と同じ。彼を目覚めさせるには呼びかければいい。眠らせる時もね」

 

「よ、呼び掛ける?え、えっと、起きて?」

 

 その瞬間、彼───カドゥの瞳に新緑の光が宿る。

 

「こんにちは、フリーナ様。当機はカドゥ。ご命令は」

 

「命令!?…え、えっと、どうすれば……」

 

 縋るような思いで姿見を見る。けれども鏡に映るのは、僕の姿。「鏡の中の僕」はすでになく、一言たりとも返すことはない。

 

「じゃ、じゃあ身の回りの世話を、頼もうかな」

 

「了解しました」

 

 

 

第2幕

就任演説

フリーナ

 

 

 

「カドゥ、僕の就任演説だけど……神を示すにはどうしたらいいかな」

 

 当然の話だが、僕が「神」になったことはない。そして、僕のボヤけた記憶の中には、神らしき神の姿もない。

 

「フリーナ様が神になられたのですから、ありのままを示せばよろしいのではないかと」

 

「ありのまま……」

 

 それでは駄目だ。だって僕は人間だから。「神」を演じているだけだから。だけど、彼はそれを知らない。だって、打ち明けるわけにはいかないから。

 

「分かったよ。ありのまま、自然な僕でいってみよう」

 

 ゆっくりと、されどできる限り威厳のあるように。一歩一歩、踏み締めるように、誇示するように。

 登壇した先、歌劇場の舞台の上に設けられた演説台に立てば、目も眩むような光に、並ぶ人、人、人。

 

 勇気を振り絞る。

 

───それは本当に神か?

 

「コホンッ……えー、紳士淑女のみんな。ようこそ、今宵のエピクレシス歌劇場へ。僕が水神を引き継ぐことは、みんなもすでに知っていると思う。そう、この僕……フリーナ・ドゥ・フォンテーヌが、キミたちの新たな水神だ」

 

 誠意を込める。

 

───それはキミの思う神か?

 

「一国家の新たな神になる───これまでそういった経験はなかったけど、みんなを導けることを光栄に思うよ。魔神フォカロルスとして、そして正義の神として、僕は出来る限り力を尽くして、みんなに公平で公正な時代をもたらしたいと思っている」

 

 礼儀正しく終わる。

 

───それは人々の望む神か?

 

「改めて……ここまで足を運んでくれて、ありがとう。今後、疑問やアドバイスなどがあれば、枢律庭に提出してくれ。フォンテーヌの未来を築くには、みんなの協力が必要なんだ」

 

 これで、いいかな?噛むかと思ったけど……無事、思っていた通りに話せてよかった。次は───

 

「…っ」

 

 目、目、目。客席からはいくつかの素直な目と、大半の不信を示す目が混じった視線が向けられていた。

 

「これが新しい水神…?枢律庭が私たちを誤魔化してるんじゃ……人間よりも上位なんだから、神様ってもっと威圧感があるのかと思ってたわ……」

 

「おい、聞いたか。最後、俺たちに意見まで求めてたぞ」

 

「神様って何でも出来るんだよな?何であんなに謙虚なんだよ……あれじゃ、一般人とどう違うんだ…?」

 

「もしかして……新しい水神なんて最初からいないんじゃないの。枢律庭が手配した操り人形だったりして?」

 

 次第に疑念、疑惑の声が大きくなっていく。逆光で暗がる観客席に、それでも浮かび上がる民の顔には猜疑の皮が貼り付いている。

 思い返されるのは鏡の中の僕が言っていたあの言葉。

 

「これからキミが直面するのは「神性」をどう模索するかということじゃなく、「人性」にどう抗うかということなんだ」

 

 (ありのまま)の僕では駄目なのだ。人々が望むのは(ありのまま)ではない、神の(偽れる)僕なのだ。

 

「……」

 

 悔しい。僕は認められることがない。苦しい。ありのままでいいという彼の声を聞けない…。悲しい。僕のままでは民を救えない………。

 

「ハ、ハハハッ……悪くない、我が民よ。それでこそ、このフリーナの統治に相応しい」

 

 威圧感、存在感、すべての疑念を払拭してくれるようなイメージ……僕はそれを演じなきゃならない……。

 

「僕は以前、こんな疑問を抱いたことがある───ある日、弱々しい操り人形がこの舞台に立ち、あまつさえ歌劇場の主であると主張したとして……それでもフォンテーヌの民は従うのか、と。しかしどうやら……フフッ、諸君はそれほどくだらない者たちではなかったようだ。キミたちには、この歌劇場で、僕と一緒に美しき審判を見届ける資格がある!」

 

 尊大に、大仰に、大胆に。()からかけ離れていく程に人は疑いの目を晴らしていく。

 

「先ほどの「パフォーマンス」は皆への手土産に過ぎない……歌劇場の雰囲気にぴったりだと思ったのだが、どうだい?」

 

 観客の反応は上々。この就任演説を通して、僕は()になる。………ならないと、いけない。

 

「ここより、改めて自己紹介をしよう。僕はフリーナ・ドゥ・フォンテーヌ!!!キミらの知っての通り新たな水神さ!!!」

 

 意思を固める。

 

───そうだ。

 

「さて、我が愛しの民よ。僕を認める者たち、崇める者たち……そしてそうでない者たちも皆、正義への熱意を持ち続けてくれたまえ!この国の罪はもう洗い流せないと聞いたが───ちょうどいい。罪の中に咲く正義こそ、最も芳しい香りを放つのだから!」

 

 もっと大仰に語る。

 

───その通りだ。

 

「正義の神の手にある天秤は、決して堅苦しいものであってはならない。一方に公平と公正を載せ、もう一方は歓声と喝采で満たすべきなのだ。法を祈りの言葉に、審判を礼拝にして、篝火を灯そうではないか。さあ、フォンテーヌの未来のために、杯の酒を飲み干そう!」

 

 心に響く言葉で締める。

 

───それが、人々の望む神だ!!

 

「我が民よ、キミたちが心から正義を信奉する限り……この世に審判で解決できぬ問題などない。このエピクレシス歌劇場でならば、この諭示裁定カーディナルの前でならば───僕、魔神フォカロルスは……この世の神々さえも審判してみせよう!」

 

 盛大な拍手喝采が鳴り響く。そうだ、これでいい。最初から僕なんて望まれていない。彼らが望んでいたのは僕を通して現れる理想の水神なのだから。

 ゆっくりと、その背ですら信ずるものだと理解させるようにゆっくり降壇する。迎えるのはカドゥ。

 

「素晴らしい演説でした、フリーナ様」

 

 ああ、キミも僕を───

 

「ですが、ありのままでよろしかったと申し上げたはずです」

 

「───っ!!!」

 

 彼は分かっていた。「鏡の前の僕」が現れてから今までずっといたからか、彼は僕が偽るのを分かっていた!!

 ありがとう、「鏡の中の僕」。君が贈ってくれた理解者のおかげで僕は、長い長い苦痛に耐えられそうだ!

 

「ありがとうカドゥ」

 

「…?」

 

 

 

第3幕

歌劇場

フリーナ

 

 

 

「フリーナ様、こちら本日審議される事件の報告書と、その後の処理結果でございます。お目通しくださいませ」

 

 またか。僕の仕事だなんていって、もうすでに決まったことを知らせてくる。こんなもの、僕がいなくても回るだろうに。それに、予言の手掛かりになるわけでもない。

 

「はぁ、僕はいつも審判の場にいるじゃないか。そういう細かいことはヌヴィレットに任せるといい。……それに、どれも「僕の期待している審判」じゃない」

 

「その……ご期待の審判とは、どのようなものなのですか?」

 

 目の前の民が言う。その目に浮かぶのは純粋な好奇心。予言のことも、終わりの日も関係ない、ただの興味。僕の秘密を探るわけでもない、取るに足らない疑問。

 

「盛大で、劇のような……すべてを終わらせる美しい審判さ。はぁ、言ったところでキミには分からないだろう」

 

「はい…及ばずながら、そのようなお考えを察する力はなく……」

 

「別に恐縮する必要はないさ。僕の言ったことは気にせず、職務に戻るといい。僕が期待する審判は……いつか必ずやってくるんだからね」

 

「はぁ、それは、楽しみですね?」

 

「ああ。……さっ、もう行きたまえ。まだキミにもやることがあるだろう?」

 

「はい、失礼します」

 

 彼が去って、再び部屋には僕とカドゥの二人だけになった。また山と積まれた紙束とにらめっこする静かな時間が始まるのだ。

 

「フリーナ様」

 

「なんだい、カドゥ」

 

 珍しい。執務中に彼が話しかけてくるなんて。

 

「当機は、貴女様の身の回りの世話を仰せつかっております。その、貴女様の言う終わりの日まで」

 

「そうだね。ちょっと長くなるけど付き合ってもらうよ?」

 

「はい。当機は最後の時までフリーナ様に付き従います。そして、そのためにいずれ来る終わりの日、貴女様の言う劇のような審判の内容をあらかじめ把握しておきたいのです」

 

 ……正直驚いた。自律人形の彼がそんなことを言うなんて。でも、彼は僕が「鏡の中の僕」と話した内容を知らないし、僕が本当の水神でないことも知らない。予言が本当に起こることを知らなければ、僕らの役目が長い長い年月がかかることを知らない。

 だが、ずっと一緒にいてくれるのだから、彼にも終わりを知る権利があるのだろう。とはいえ───

 

「実のところ、僕もよく知らないのさ。だってそうだろう?サプライズは、中身を知らない方が楽しめる。たった一回きりの劇なんだ。楽しまないと損だろう?」

 

「……その通りですね。確かに、サプライズの内容は知らないほうがいいでしょう。お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした」

 

「いや、大丈夫。君と話すのは楽しいからね」

 

 

 

第4幕

歌劇場

フリーナ

 

 

 

「フリーナ様!こ、光栄です。謁見をお認めくださるなんて、何とお礼申し上げればいいか…!」

 

 目の前に一人の女性が腰掛ける。謁見に来た女性だ。

 

「礼なんて必要ないさ。どうしてもと言うなら、僕に会えるまで気長に待ったキミ自身の根性に感謝するといい。フフフッ……どうやら神としての僕が放つ魅力は、時に皆を困らせてしまうらしいね」

 

 目の前に座る彼女はフォンテーヌの民でたしか───

 

「さて、ディオデーレだったね?息子さんの病気はどうだい?」

 

「あっ……お、覚えてくださっていたなんて…!それに私の家のことまで……」

 

 感極まったように涙ぐむディオデーレ。大事な民のことだもの、当然ながら覚えている……カドゥが。僕も覚えようとしているけれど、全員となるとやはり難しい。その点、彼はフォンテーヌ廷だけでなく文字通りフォンテーヌの全員の情報を記憶している。

 

「息子は大分よくなってきています。実を言うと、うちの子は私以上に忠実なあなた様の信徒で……謁見は、息子が強く勧めてきたことなんです。フリーナ様が何をおっしゃったか後で教えてくれと、そう言ってきかなくて……」

 

「ハハッ……いいね、悪くない。今後はそういうことがあれば、事前に言うといい。たまには気分転換として、特別に民の家を回るというのも悪くない」

 

 僕には病を治す力はない。だから、それは君の息子さんが頑張った結果なんだ。だけど、僕はそれを口にすることはできない。それは彼女が信じる()を否定することになってしまうから。だから、僕は彼女の息子の頑張りを掠め取る簒奪者として振る舞うしないのだ。

 

「あなたは……本当にお優しく英明な神様であらせられます。息子の代わりに、改めてお礼を申し上げます……」

 

 違う。本当の僕は、君の思うような()じゃない。本当の僕は……

 

 *

 

 ディオデーレが帰った後は、部屋には僕とカドゥの二人きりになった。

 

「お疲れ様です、フリーナ様」

 

「ねぇ、カドゥ。僕は、僕は───」

 

 「このままでいいんだろうか」そんな言葉はついぞ口から出なかった。「鏡の中の僕」が言うように誰が聞いているかも分からないし、そして何よりカドゥにすらありのままの(神としての)僕を否定(肯定)されるのが怖かった。

 

「いや、なんでもない。そうだね、僕はやっぱり民の家を訪ねるべきなのかな?」

 

「迎え入れる側にも準備というものがあります。今すぐに、というのは難しいですが事前に告知して催し物として定期的に行うのであれば可能かと。一度きりでは不満もでるでしょうし」

 

 誤魔化すように出た言葉に帰ってくるのは事務的な返答。彼らしくて好きではあるものの、やはりもっと会話が欲しいと思ってしまうのはわがままなのだろうか。

 

「ありがとう。その方向で考えてみるよ」

 

 

 

第5幕

歌劇場

フリーナ

 

 

 

 

第6幕

歌劇場

フリーナ

 

 

 

 

第3509幕

歌劇場

フリーナ

 

 

 

「フリーナ様」

 

「どうしたんだいカドゥ」

 

 彼が真っ直ぐこちらを見つめてくる。今まで見たこともないような顔で。

 

「私たちはいつか終わるのですよね」

 

「そうだね。花も、鳥も、人も、神でさえもいつかは終わりがくる。それはきっと例外はないんだ。終わりのない命なんて、きっと光の届かない深海に溺れるような苦しみだろうね」

 

 「鏡の中の僕」が言うように、僕らにも終わりがある。きっと、それがなければ、終わりがなければ僕らの役目はもっと苦しいものになっていただろう。

 

「私たちは、審判を経て終わりを迎えます。では、その後はどうなるのでしょうか。終わりを迎えたあと、私はフリーナ様と離れることになるのでしょうか」

 

「……フ、ハハハ!!可愛いことを言ってくれるじゃあないか!なんでそんなことを聞くんだい?」

 

 聞かなくてもわかる。けれど、聞かなければならない。これはきっと彼の口から聞くことに意味があるはずだから。

 

「私は、分からないのです。私たちの終わりを、フリーナ様との別れを考えた時に発生する原因不明の、ある種間違いのような思考が生じるのです」

 

 機械は、命令に対応するだけの冷たい無機物。それが自他について夢想して、そのうえ命令にない疑問を呈し、そしてその原因がわからず否定する。それは、それは───

 

「ハハハ、それは心だよカドゥ。キミは今僕との別れを思って寂しがっているんだ。間違いなんかじゃないさ」

 

「心…ですか?」

 

「そうさ。キミはただの人形じゃなくて、心を手に入れたことでカドゥという「個」になったのさ。祝福するよカドゥ。今キミは本当の意味で生まれたんだ」

 

 ああ、実に喜ばしい。こんなに喜ばしいことがあるのだろうか。ずっと付き従ってきた隣人が、本当の意味で人になってくれたのだ。これほど喜ばしいことはないだろう。

 

「ハ、ハハ───」

 

「どこか痛むのですか?」

 

 気付けば頬を涙が伝っていた。きっと、彼は涙は痛む時に流すものしか知らないのだろう。

 

「違うよ、カドゥ。これは嬉しいんだ。涙は嬉しい時にも流れるものさ。うん、今日の公務はここまでにしよう。今から行けば歌劇場で劇を観れるはずだ。僕と一緒に何回か見たことある劇だけれどきっと、心を知った今なら感じ取れるものもあるはずだよ」

 

 

 

第73816幕

歌劇場

フリーナ

 

 

 

 およそ二百年が過ぎ去った。未だに予言の日が近付いているという確証も持てないし、それに対する対策も見つからない。ずっとずっと、歌劇場で劇を見て、持ち込まれる書類に目を通して、歌劇場での審判を見届けて、民に愛想を振りまいて、そっと枕を抱えて眠る。そのどれもが、神として自分を隠したままで。

 

「フリーナ様」

 

「なんだいカドゥ」

 

 唯一幸運だったのは彼の存在だ。ずっと隣にいてくれる彼が、僕のありのままを覚えていてくれる。もし彼がいなかったら(ありのまま)の自分が神の自分に押し潰されていたかもしれない。

 

「私たちは、いつ終わるのですか」

 

 

 

 

 ───えっ?

 

 

 

 

「なっ、何を言っているんだカドゥ!?確かに、僕たちには終わりがくる。だけどそれは急ぐようなものじゃないだろう?」

 

「はい、終わりとは早急に望むようなものではありません。ですが、同時にこうも思うのです。矛盾しているようですが、「早く終わって欲しい」と」

 

「な、なぜだい?僕と一緒にいることが嫌になったのかい?」

 

「そうではありません。私は、いつまでもフリーナ様のお傍にいます。ですが、私は怖いのです。私の身体は機械で出来ています。だから年月を経る事に劣化し、摩耗していく。その度に身体の一部を取り換えてきました」

 

 「鏡の中の僕」はカドゥを僕と同じ不老にはしなかった。あえてしなかったのか、あるいはできなかったのかはわからないけれど、彼の不死性は機械の特性によって担保されたもので、朽ちるそばから新しく変えて行くことによる擬似的な不老不死だ。

 

「ああ、キミの身体は腕の立つ───信頼のおける技師によって作られた部品を僕が入れ替えている」

 

 カドゥの身体の部品は、フォンテーヌ各地の技師から取り寄せている。歯車単位で別の技師から得ているから僕が人形の部品を集めていることは露呈しないだろうし、仮に露呈したとしても僕が人形を作るのが趣味で僕の部屋には何体かの自動人形が並べられているという噂が立つだけだろう。

 きっとそれが、カドゥの修復に使われているなんて思わないはずだ。だって彼は人間として知られているから。

 

「私の中で、初めてフリーナ様とお会いした時から残っている部品はどれでしょうか。今後私たちが続いていく中で、それらはいくつ、いえ、一つでも残るのでしょうか」

 

「それは……」

 

「お答えください、フリーナ様。私は怖いのです。私の中から最初の私が消えたとき、それは私なのでしょうか。私は、いつまで私でいられるのでしょうか。ああ……こんなに苦しいのなら、恐ろしいのなら、心なんて……芽生えなければ良かった」

 

 ああ、彼もまた二百年の年月を過ごしていたのだ。それも僕と違って役割が持てずに、目的がわからずに、ただ長い長い時間を。

 いつか終わりがくることを確信して、人を救うためであってさえ疲れる年月なのに彼にはそれらがない。僕は手元に灯りがあるのに、彼は何も持たずに暗闇の中を歩いていたのだ。

 

「……きっとキミは疲れているんだよ。今日はもう休んでいい。おやすみ、カドゥ」

 

「はい、おやすみなさい」

 

 *

 

「おはよう、カドゥ。昨日は良く眠れたかい?嫌なことも一晩ぐっすり眠れば消えるものさ。調子は───」

 

 おかしい。何かがおかしい。見た目は間違いなく彼だ。二百年傍にいてくれた者を間違える程僕は薄情じゃないはずだ。だけど違う。

 

「おはようございます、フリーナ様。私はカドゥ。ご命令は」

 

「め、命令って、キミと僕の仲だろう?い、今更そんな、初めて会った時みたいな───」

 

「何をおっしゃっているのですか?私はカドゥ。フリーナ様の命令で動く自律人形です。さあ、ご命令を」

 

「ぁ、ぁあ……」

 

 彼は、壊れてしまったのだ。昨日僕が答えをはぐらかしたから、彼を無理矢理寝かせたから。

 自律人形は眠らないのだろう。きっと彼は表面上は眠ったようにピタリとも動かなくても、その中身はずっと稼働しているのではないか。そして、昨日僕が無理矢理寝かせたあともずっと彼の頭の中では悪い考えが彼を取り囲んで、結果として彼は今まですべてのことを忘れるという選択をしてしまったのではないか?

 

「ごめん。ごめんよカドゥ……」

 

「…?なぜ謝るのですか?私はカドゥ。自律人形です。フリーナ様の為すことでしたら全てを受け入れます。故に、フリーナ様が私に対して謝ることなどないのです。さぁ、ご命令を」

 

「…じゃあ、身の回りの世話を……」

 

 ……僕はまた、同じ選択をすることにした。

 

「了解しました」

 

 

 

第181136幕

フォンテーヌ廷

フリーナ

 

 

 

 また数百年が経った。人と接するからなのか、カドゥは再び心を得た。得て、しまった。

 

「フリーナ様」

 

 未だに彼に名前を呼ばれると胸が締め付けられる。また僕は間違えてしまうんじゃないか。

 

「なんだいカドゥ」

 

 だから仮面を貼り付けて応答する。大丈夫。いつもやっていることだから。五百年、ずっとやり続けたことだから。今更その相手が一人増えたところで、何かが変わるわけでもない。

 

「私たちの終わりは、いつ訪れるのでしょうか」

 

 ───ああ、ついに来たか。

 大丈夫。僕はもう間違えない。この数百年、同じ選択を違う結末にするためにずっと準備をしてきたじゃないか。

 

「すぐに旅の支度をしてくれ、カドゥ。キミの分だけでいい」

 

「なぜでしょうか」

 

「キミの疑問に答えるためだよ」

 

 旅の支度───とはいえ、必要な物はすでに用意してあるだけだから物置きから引っ張り出して纏めるだけだけれども───が終わる頃にはすっかり日も落ちてこっそりと抜け出すにはいい暗さになっていた。

 こっそりと、《警察隊》にも《マレショーセ・ファントム》にもヌヴィレットにも見つからないようにこっそり抜け出す。まあ実のところ初犯じゃない。カドゥが最初に心を得てから何回か一緒に抜け出したし、全部忘れてしまったあとも二人で抜け出したことがある。いずれもバレなかったし、きっと今回もそうだろう。

 

「ここは……巡水船乗り場、ですか…?」

 

「そうさ。キミの旅が始まる場所だ」

 

 そして、僕らが別れる場所でもある。

 

「命令だ、カドゥ。キミは今までのことを忘れて、これからはただの旅人……ラモールとして生きろ。キミはすべての記憶を失い、死ぬための旅に出るんだ」

 

「それは……」

 

「何度も言わせないでくれ。キミは僕を忘れて納得して終われる場所を見つける旅に出るんだ」

 

「い、嫌です!あなたを忘れるなど───」

 

「これは命令だよ、カドゥ。朝になったら起きて、第1便が来たらガイドにこの手紙を渡したあとそれに乗ってフォンテーヌを出るんだ。それじゃあ、おやすみ」

 

「はい、おやすみなさい」

 

 「鏡の中の僕」が言ったように、僕が呼びかければカドゥは眠りにつく。人と違って本当に眠っているわけではないけれど、暗闇の中で彼はかつてのように己の記憶を消すのだろう。

 いいんだ。これでいいんだ。彼と僕は同じ不死だけど、同じ時間を生きられないから。五百の年を経てまだ終わりが見えない僕の役目に彼は付き合えないから、きっとここで別れるのが正解だった。

 何年かかってもいい。何十年かかってもいい。普通の人がそうするように色んな出会いと別れを知って、そして納得して受け入れられる終わりを見つけられればそれでいい。水神の側付きのカドゥではなく、旅人のラモールとして。

 だから、早くここから離れよう。僕が変なことをする前に、早くパレ・メルモニアに帰ろう。

 

「……っ」

 

 バカだなぁ、僕は本当に。手放しちゃいけないものなんてわかるだろう。こんなに後悔するなら、こんなに涙が溢れそうになるなら、間違ったままで良かったじゃないか。これが正解とも限らないんだから、また彼が心を識るまで付き合えば───

 

「ダメに決まってるだろっ」

 

 そんな、そんなことダメに決まってるだろ。友人が心を壊すのを、何回でも繰り返せなんて言えるわけがないだろう。

 大丈夫、天秤の片方の皿が一人分重くなっただけ。片方の皿が一人分、軽くなっただけ。大丈夫、大丈夫。

 

「大丈夫。僕は、大丈夫……」

 

 

 

第182319幕

歌劇場

フリーナ

 

 

 

「おや?おチビちゃん、こっちにおいで!」

 

 あれから、カドゥのことを忘れようと執務に邁進した。カドゥが居なくなったことを不審に思われたりもしたけど、彼に休暇を与えたといえば皆一応の納得はしてくれたようだ。

 そんな日々の中、たまの息抜きでいつぞやのようにこっそりと抜け出してフォンテーヌ廷の夜道を歩いていたところに子猫を見つけた。

 

「逃げた!?むぅ、待て!」

 

 せっかくこの僕が撫でてあげようとしているのに、逃げるなんてナマイキだ!

 短い追いかけっこの末、ようやく捕まえた。思う存分撫で回して───

 

「うわっ!」

 

 驚く子猫に重なる影。飛び上がった子猫は僕の手を振り払って逃げていく。

 

「キミは誰?な、何をする気だ……」

 

 目深に被ったフード。顔を隠す仮面。怪しさ満点の風貌に、右手に握られた何かは月明かりを返して金属の光を伝えて来る。

 その手に持ったナイフはまず間違いなく僕を傷つけるためのもので───

 

「殺さないで……お願いだから」

 

 あっ……違う。そうじゃない。僕はこんなことを言ってはいけなかった。

 だって、神は命乞いなんてしないから。

 

「……っ、ぁ……」

 

 誤魔化さなきゃ。今からでも神として振る舞わないと、でないと僕らの五百年が、彼が心を砕いて必死に歩んだ五百年が…フォンテーヌの救済が文字通りの水の泡になってしまう。

 頭では分かっている。頭の中でやけに冷静な僕がずっと叫んでいる。だけど月下を切り裂くナイフの光に身体が竦んで、喉が張り付いて声が出ない。

 大きく広げるべき腕は体を抱きしめて、高らかに歌うべき喉は嗚咽しか漏らさなくて、しっかりと踏み締めるべき足は震えてその役目を果たそうとしない。

 

「ぁ…まっ……」

 

 長い長い一瞬が過ぎ去り、そして襲撃者は去って行った。

 すなわち、僕はあいつに神ではないと知られたままで、神であることを示す機会が一切無くなったわけで。僕らの五百年は、フォンテーヌの救いは泡沫と消えたわけで───

 

「……ぅぅ……」

 

 

 

幕間

遺跡

旅人

 

 

 

「ここがてっぺんだな!ふぅ~登るのに苦労したぜ」

 

「待った。誰かいるわ!!」

 

 ナヴィアの声に答えるように、暗がりから人影が前へ出る。

 

「ようやく来ましたね、旅人様」

 

「{…) ラモール!?」

 

 顔を完全にを覆い隠す仮面から除く深緑の目に、雲のような白い髪。襤褸切れのような外套を纏い、腰に石で出来た剣を差す。彼は間違いなく今まで共に旅をしたラモールだった。

 

「貴方は……」

 

「ラモール。ただの旅人です」

 

「おう!!モンド、璃月(リーユエ)、稲妻とオイラたちと一緒に旅してきたんだぜ。フォンテーヌでやることがあるって先に行っちゃったからスメールでは一緒じゃなかったんだけどよ」

 

 フォンテーヌに来た初日にロマリタイムハーバーで出迎えてくれて、そして、フリーナが来ると同時に何処かへ消えた───そういえば、ラモールがあの変な仮面をつけ始めたのもその時だったような。

 

「ここに来るのがお前のやるべきことだったのか?」

 

「ええ。結局、私の記憶が戻ることはありませんでしたが。ですがここに訪れて、私の為すべきことは決まりました」

 

「良かったじゃない。やるべきことが見つかったのなら」

 

「はい。ええと、貴女は《棘薔薇の会(スピナ・ディ・ロースラ)》のナヴィア様、ですよね。誠に勝手ながら調べさせていただきました。そちらの方は最高審判官のヌヴィレット様」

 

「ああ。そういう貴方は……記憶を失っているとのことだが、どこまで覚えている?」

 

「三年前、フォンテーヌで目覚めるより前の記憶は一切ありません。その後は、ただ何処かで死ななければならないという想いだけ」

 

 ヌヴィレットの口ぶりは、まるで何かを疑っているようで。それにパイモンも気付いたのだろう、かばうように前へ出る。

 

「お、おい、こいつはそんな奴じゃねえって。ずっと一緒に旅をしてきたオイラたちが言うんだ!間違いねえよ!!」

 

「{…) ラモールは信じられる」

 

「……旅人たちがそこまで言うなら、信じよう。私も疑いたいわけではない」

 

「それで、あなたの為すべきことって何なのかしら、ラモールさん」

 

「それを説明する前に、旅人様。私と戦ってもらえませんか」

 

「{…) えっ

 {…) 何で?」

 

「そ、そうだぞ!!何でこいつとお前が戦わなくちゃなんないんだ!!!」

 

「私の為すべきことを、私の奥底が否定するのです。おそらくそれは失われた記憶でしょう。私は記憶を取り戻すためにそれを為さねばなりませんが、しかし記憶を失う前の私はそれを望んでいない」

 

 一呼吸置き、話を続けるラモール。

 

「この矛盾を解決するためには、一度戦う必要があると考えました。裁判において被告が名誉を守るために、決闘をするように。しかし当然ながら自分同士では戦えません。ですので今の私の決闘の代理人を一番信頼できる相手、すなわち旅人様に任せようと決めました。それが私がここで待っていた理由です」

 

「い、いいのか?これまで一緒に旅してきたからわかってるだろうけど、こいつはお前よりも……」

 

「分かっています。ですので旅人様、遠慮なく勝ってください。例え過去の私が否定しようとも、私は過去を取り戻したいのです。なぜ私が死ななければならないのか、その理由を知りたいのです」

 

「{…) わかった」

 

 *

 

「{…) お茶は、反則……

 {…) 無限全回復はズルい……」

 

「はぁ、はぁ……そちらこそ、決闘の最中に…料理を食べるのはズルいのではないでしょうか……」

 

「どっちもおかしいわよ!!普通は戦ってる最中にものを食べたり飲んだりなんてしないでしょう!」

 

 なんて正論だろう。反論できない。

 

「とにかく、私の負けです。約束通り私の為すべきこと……サプライズの内容についてお話します」

 

 サプライズ…?

 

「ですがその前に、あちらの石板をご覧ください」

 

 示されたのは壁にはめ込まれた二枚の石板。一枚は誰かが膝を付き、空に浮かび雷を落とす島に祈りを捧げる様子が。もう一枚は予言の内容、神座に座るフリーナが涙を流し、フォンテーヌが水に沈む様が。

 

「んん?なんだこれ?こっちは女の人が空に浮かぶ島に祈ってるぞ。こっちは、予言の内容だな」

 

「彼女はおそらく先代の水神でしょう。そして、それは祈っているのではなく懺悔しているのです」

 

「エゲリアだ。先代の水神エゲリア。しかし彼女はなんの罪で?」

 

「わかりません。ですが間違いなく何かしらの罪を犯したのでしょう。そして、懺悔により一時的に許された。その証左に、今この天の島から落ちる雷はない。しかし水神は、フォンテーヌは真の意味で赦されてはいないのでしょう。そのため罰として予言が起きると、私は考えています」

 

「じゃあその、水神エゲリアの犯した罪って何なのかしら」

 

「ちょっと待て、この石板…抜けがあるぞ!順番的に一枚目と三枚目だな」

 

「ええ。それぞれエゲリアの罪とフォカロルスが予言に対策を立てる場面が描かれているのでしょう。彼女は予言に対し何もしていないわけではない」

 

 だけど、事実としてフリーナはポワソン町の水位上昇に対して何もできなかった。本当に、三枚目にはフリーナが準備する様子が描かれているのだろうか?

 

「我々がするべきこと、それはすなわち───水神の審判。今代水神フォカロルスを断罪し、その罪を聞き出すのです。我々の禊のために」

 

「…私は賛成だ。水神フォカロルス───フリーナ殿は明らかに何かを隠している」

 

「あたしも賛成。こんなことを言いたくはないけど、今のフリーナ様は信じられる点よりも信じられない所の方が多いわ」

 

「オイラたちはどうする?」

 

「{…) 賛成するよ

 {…) そのために決闘をしたんだし」

 

 審判に賛成する立場のラモールの代理人として、反対する立場のラモールと決闘をしたのだ。ならば自ずと賛成する立場ということになるだろう。そうでなくても賛成だけど。

 

「選択の機会を奪ってしまったようで申し訳ないです。ですが、あの決闘は私にとって大切なことでした」

 

「{…) 気にしてないよ」

 

「ありがとうございます、旅人様。ではまず───食事にしましょう」

 

「おお!!実はオイラもうお腹が減ってしょうがなかったぞ」

 

「あなた方が来られる直前まで料理を作っていたところでして。それに長いことここに居たせいで食材が傷みかけていたので多めに作りました。お二方もどうです?」

 

「おう、美味いぞ!!」

 

「{…) もう食べてる……」

 

「じゃああたしも貰おうかしら」

 

「私も貰おう」

 

「ん~~?この干し肉数日で傷むようなものじゃないぞ。お前、そんなに長いことここにいたのかよ」

 

「……ええ、まぁ。その干し肉を仕舞っておけないくらいには」

 

 

 

第182375幕

歌劇場

フリーナ

 

 

 

「フリーナ様!こんなに近くでお話しできるなんて、本当に夢みたい……。我々の一族で初めてこのような栄光を授かった者を辿ると、二十代ほども前のディオデーレ婦人まで遡るそうです」

 

「ハハハッ…それはいい、優秀な一族じゃないか。キミのように敬虔な信徒、もとい敬虔な信徒の子孫に会えるのは、僕にとっても最高に嬉しいことさ」

 

 ディオデーレ……五百年前に僕に謁見できるまで気長に待った根性のある彼女、だったかな。結局彼女の息子の病気は僕の預かりしれない所で日常に支障をきたさないところまで回復して、孫が出来て、そして今僕の目の前に座る彼女に繋がって。

 ああ、僕はいなくてもこのフォンテーヌは回って行く。神に縋らなくても命を繋いで、続いて、ここまで歩んで。

 

「そんな…!恐れ入ります、フリーナ様……あれ…フリーナ様?」

 

 それを僕が滅ぼしてしまう。たかが命の危機程度で、神であることを忘れてしまったせいで。

 

「ん?どうしたんだい、我が忠実なる民よ……」

 

 あの襲撃者───「召使」は僕が神でないことを言いふらしてはいないみたいだけれど、それがいつまで続くかはわからない。そして、「召使」の気紛れが終わった時がフォンテーヌの終わりの時になる。

 今フォンテーヌの救いを握っているのは僕じゃなくて「召使」だ。そしてもし「召使」が何も言わないまま死んでしまったとして、そしたらまた僕がフォンテーヌの救いを握る数百年が始まるだけ。

 

 

 

 

 

「な、泣いておられるのですか…?」

 

 

 

 

 

 ……人は、満ち足りるを知ってはいけない。

 

「なっ……あれっ?ハハハッ…何ということだろう。気付かなかったよ……」

 

 水に満ちた器をひっくり返した時の喪失は、はじめから空だった時のそれより大きいのだから。彼のいない三年の孤独は、彼が傍にいて歩んだ五百年の霧中よりずっと辛い。

 

「はぁ……もしかすると、僕の中の水元素が満ち溢れてしまったせいかもね。まあ、僕は水元素を司る神だから、これも仕方ない。ハハハッ……」

 

 たった三年。たった三年の静寂と五百年の積み重ね。それは、神の演技(僕の殻)に罅を入れるには十分で。罅割れた仮面から雫が垂れる。

 

「な、なるほど…神であるフリーナ様のお力の表れだったのですね。それを直に拝見できるなんて、身に余る光栄です……」

 

 ……終わりが見えない。すごく寂しい。一体、いつまで耐えればいいんだ。

 

 

 

第182376幕

歌劇場

フリーナ、および…

 

 

 

 旅人に騙され、大掛かりな手品によって連れてこられたエピクレシス歌劇場。そこは水神───僕を暴く審判が行われている。

 旅人もヌヴィレットも、クロリンデも僕を疑っている。僕の言はことごとく論破され、旅人は誰もが認めざるをえない証拠を突き付けて来た。

 そして僕への止めとして、観客席のナヴィアから差し出されたのは水の注がれた器。

 

「さて、フリーナ様。ポワソン町のこの海水に触れる勇気はあるかしら?」

 

 目の前に並々注がれた海水。その中には原始胎海の水───フォンテーヌの人を溶かす予言の正体が混ざっている。

 

「理屈から言えば、神であるあんたはこんな海水に触れたところで何の影響も受けないはず……それどころか、身分を証明できる何よりの証拠を手に入れられるってわけ。逆に試す勇気もないなら、あんたの嘘は破綻する。でしょ?」

 

 そう、今この場で、神を暴く「拒否権なき審判」で僕が神であることを民衆に知らしめる唯一の方法。僕が───フォンテーヌ人が原始胎海の水に触れて溶けなければいい。たったそれだけ。少し水に触るだけで、僕が神であることを示せて、予言からフォンテーヌを救済できる。ちょっと……ほんの少し触れるだけ。

 

「ただ、一つだけ忠告するよ。あたしはこれ以上人が海水に溶けるのなんか、もう見たくない……だから、無謀な動きだけはやめなさい。自分の罪を認めたほうが、ずっと楽だと思うよ」

 

「《棘薔薇の会(スピナ・ディ・ロースラ)》のナヴィア……《棘薔薇の会(スピナ・ディ・ロースラ)》はポワソン町をずっと管理してきたんだから、彼女なら確かにその資格はあるかも……」

 

 原始胎海に沈んだ町、ポワソン町。そこの管理をしていて、人の溶ける様を間近で目撃した彼女は確かに僕を糾弾する権利がある。

 

「もしもフリーナ様が人間なら、フォンテーヌ人の可能性が極めて高い……このまま罪を認めるのか…?」

 

 駄目だ。僕は僕の罪を認められない。認めるわけにはいかない。君たちのために、神の詐称(フォンテーヌの滅び)を認めてはいけない。

 

「…………」

 

「{…) フリーナ?」

 

「フリーナ被告、これはあくまで原告側の一方的な主張であり、通常の審判におけるプロセスには含まれない──断る権利は君にある」

 

 諭示機のランプはすでに三つ点灯している。民の心がすでに僕が有罪であることに傾いている証。この挑戦も断れば、僕の罪は確定してしまう。

 

「審判官さまがそう仰ったところで……この実験を断れば、自分は神じゃないって認めたも同然だろう」

 

「海水をじっと見つめるばかりで、一言も発せられないとは。本当に怖がっていらっしゃるのだろうな。ならば、やはりこの方は……」

 

「っ……はぁ……」

 

 大丈夫。ちょっと触れるだけ。今までだって水に触れることがなかったわけじゃないだろう?このフォンテーヌにおいて水に触れない日なんてない。そうだろ、僕。

 

「すぅ───」

 

 そう、よくあること。これはよくあることなんだ。だから、大丈夫だフリーナ。僕は今まで隠し通せたじゃないか。今回だってきっと、上手くいく。そう、ちょっと勇気をだしてこの水に触れるだけで。

 

「この試行の危険性を踏まえれば、フリーナ被告、従う必要など……」

 

「──ッ!」

 

 ぎゅっと目を瞑って、一思いに水の中へ手を差し込む。

 

「うわあ──!」

 

「ちょっと!」

 

「{…) まさか…」

 

「はぁ…はぁ…ッ───あっ……」

 

 一秒、二秒……いつまでたっても僕の体が溶ける気配はない。僕の罪が暴かれる気配は、ない。

 

「ぼ……僕は大丈夫だ。ほら見てくれ!僕の手は無事だ。僕は溶けなかったぞっ!」

 

 手を高く上げる。観客によく見えるように。僕の無実を示す旗を掲げるように。

 

「これで信じてもらえただろう?僕は正真正銘神なんだ。海水に溶ける普通の人間なんかじゃない。本当だ……」

 

「シグウィン殿は?至急、シグウィン殿を呼んでくれ」

 

「シグウィン…?」

 

 シグウィンはたしか、ヌヴィレットが可愛がっていたメリュジーヌの一人のはずだ。彼女は今───そう、メロピデ要塞で看護師をしているはず。その彼女がなぜ?

 

「ほら、緊張しないで、すぐ終わるから…どれどれ、見せてちょうだいね……うんうん、もう大丈夫だよ」

 

 軽い診察を終える。それだけ。何もなかったとはいえ、原始胎海の水に触れたのだから何かしらの影響がでているかもしれないと考えるのは自然なことだろう。そのために最高の看護師を用意した……人選はヌヴィレットだろう。ということはつまり、彼は今最高審判官でありながら旅人(原告)側と繋がっているということになる。

 

「シグウィン殿、検査結果を聞かせてもらおう」

 

「ご覧の通り、フリーナさんの皮膚の状態と、息切れの症状から判断すると……彼女は原始胎海の水による影響を受けてると思うのよ。同濃度の胎海の水に接触した普通の人間と一緒くらいね」

 

 なんて……?

 

「感謝する、シグウィン殿。さて、フリーナ被告も元の位置に戻ってくれたまえ」

 

「ど、どういうことだ?今、なんて言った?僕は胎海の水に溶けなかったぞ。これでも証明にならないと?」

 

 だって、僕は……フォンテーヌの民は原始胎海の水に触れれば消えてしまうじゃないか。それが僕らを苦しめてきた予言の正体だったんじゃないのか。だって、僕が溶けなかったらそれは……

 

「最初は確かに、ポワソン町近くの海水をそのまま使おうとした。なぜなら、あんたはきっと今までのように逃げる選択をするってみんな予測してたからね。でも、みんなで話し合った結果、やっぱり低濃度の人間を直接溶かすことはできない水に置き換えることにしたの。だって万が一…万が一予想外の状況があったらって考えたら……人が胎海の水に溶ける光景なんて、もう誰も見たくないもの」

 

「だから低濃度の海水を使って、看護師長にも検査してもらえるようにしたんだな……その方向で決めておいてくれてよかったぜ。じゃないとフリーナのやつ、今頃きっと……」

 

 待って、待ってくれ。それじゃ、それじゃあ僕が人でないことを示せない。観衆にとって僕が神である理由が消えてしまう!

 

「聞いて、ねえ、聞いてよ。これ以上そんな冷たい目で僕を見ないで。い、今のはナシだ!」

 

 離れていく。僕らが繋いできたものが。僕が守りたかったものが僕の手から。

 

「神であれば原始胎海の水の影響を受けないなんて、キミたちにだって証明できないことだろ?」

 

 繋ぎ止めないと。引き止めないと……

 

「それに、それにだ…!もし僕が本当にただの人間だとしたら、あの海水に手を差し込む勇気なんかあるわけないじゃないか……」

 

 なんでもいい。どんなにみっともなくてもいい。僕が、僕が神であると証明しないと…!

 

「僕の話を聞いてくれ。頼むから、聞いてくれよ……僕は本当に神なんだ……」

 

 最後のランプが点灯する。すなわち、何を言ってもすでに民の心は有罪から動かない。

 

「はぁ…」

 

「これ以上でたらめを言ったって、誰も耳は傾けないでしょうね。もうこれだけの証拠が出揃っちゃったんだもの」

 

 でたらめ……そうでたらめだ。結局僕は神になりきれなくて、それでいて人でもいられなくて、でたらめを振りまくだけの……

 

「この状況じゃ、フリーナがなにを言っても無駄だよな」

 

「どうやら、結論は出たようだ。異議がなければ、判決に入る」

 

「……」

 

 …………。

 

 …………………………。

 

 ……………………………………………………………───

 

「……異議あり」

 

 異議の声は、意外なところから上げられた。

 観客席の最前列に座る襤褸切れを纏った仮面の男。異議の声は、僕の喉ではなくて彼の口から発せられた。

 

「なっ」

 

「まず、フリーナ様が自らを神であると偽ったのは事実でしょう。ですが、一番肝心な……なぜ神を騙る必要があったのかが明らかにされておりません」

 

 いつぞやのようにカツカツと靴音を鳴らして、ここ数年で薄れた、けれども確かに聞き覚えのある声で異議を唱え舞台上へと上がる男。

 現れたのは三年前、記憶を奪って死出の旅へと送り出した君。仮面を外したその顔を見間違えるはずがない。

 

「カドゥ!?」

 

 

 

歌劇場

あるいは……旅人

 

 

 

「……動機次第では情状酌量の余地がありますし、何より彼女の犯行が脅されていた結果であるのなら無罪にすらなるでしょう。なにせ、フォンテーヌには人を騙すことによる罪はあれど、神を騙ることによる罪はない。前者が他者によって強制されたものであれば、フリーナ様は無実になるかと」

 

 フリーナを庇うようにこちらを向いたラモールが、予想外の言葉を告げる。

 

「じゃ、じゃあフリーナは誰に脅されていたんだよ!まさか証拠もなしに言いがかりをつけようってわけじゃないだろ!?」

 

「{…) パイモン

 {…) 言っちゃダメ」

 

「だって、だってこの審判を提案したのは、フリーナを裁くって言ったのは───」

 

「{…) パイモン!!」

 

「お前じゃないか、ラモール!!!」

 

 言ってしまった。フリーナをこれ以上傷付けたくないのに、でもこの告白はフリーナにとって痛い追撃になるという確信がある。

 

「なっ、それは……どういう、ことだい…?」

 

 この動揺、ラモールとフリーナの間には確実に何かある。

 

「はい。あの日ポワソン町付近の遺跡で水神を裁くことを提案したのは私です。しかし、フリーナ様を裁くとは一言も」

 

「どういうことだよ!オイラたち騙されたのか!?」

 

「簡単な話です。この場で裁かれるのは水神。すなわち、フリーナ様でなくこの私です」

 

 諭示裁定カーディナルのランプが一つ点灯する。

 

「はぁー!?」

 

 ラモールが、水神…?いや、あり得ない……。

 

「まず皆様に伝えるべきは、私は只今から三年より前の記憶はありません。そして、その記憶を奪ったのはフリーナ様でしょう」

 

「{…) …ッ」

 

 ラモールの隣に立つフリーナの方を見る。

 

「あっ、ああ。カドゥの記憶を消して、ラモールの名前を与えたのは僕だ。……だけど、それは───」

 

「それが分かれば十分です。さぁ、席にお戻りください。ここからは私の舞台ですので」

 

 二人が小声で口論をする。その内容*1は聞き取れなかった。

 

「……わかったよ」

 

 ラモールに促されて折れたフリーナが席へと戻る。舞台を降り、彼女の神座へと。

 

「さて、まずは皆様に私が水神である証拠を示しましょう。皆様も知っての通り私の名前はカドゥ、フリーナ様の側使えだったそうです。フリーナ様が神を称した時から傍にいたというのですから当然、私もフォンテーヌの人でありましょう。では」

 

 その手を勢いよく原始胎海の水が混じった海水へと入れる。そして、その手を高く掲げた。

 

「シグウィン様。私を診てくださいますか」

 

「はいはーい。……なんの異常もないのよ。まるで人じゃないみたい」

 

 二つ目のランプが点灯した。

 

「さて、水神であれば原始胎海の水の影響を受けないそうですね。でしたら、私が水神であるという証拠としては十分ではないでしょうか」

 

 これは、恐らく意趣返しのようなもの。原始胎海の水を使ってフリーナを脅かしたことへの、そして糾弾した観衆への。

 

「さて、私……記憶を失う前のカドゥは恐らくフリーナ様を神に仕立て上げ、自分は影から操っていたのでしょう。その目的はフォンテーヌを海に沈め、水神エゲリアの罪を雪ぐこと。すなわち、予言の成就です」

 

「なんだって!?」

 

 三つ目のランプが点灯。

 

「そして長い時を経て、ただの人の身でありながらフリーナ様は水神カドゥの不意をつき、殺すことはできなかったもののその記憶を奪った。自分では殺せなかったから、自ら死ぬための旅に出るよう暗示をかけて」

 

「じゃ、じゃあなんでフリーナは自分が神じゃないって言い出さなかったんだよ!!おまえの記憶を奪ったあとに自分が神じゃないって言っておけばこんなことにはなってなかっただろ!!」

 

「神の不在を知ればフォンテーヌの民が混乱します。さらに、神であるという立場はフリーナ様にとっても都合が良かった。フォンテーヌの予言を止める、というフリーナ様の目的に。自らが神であるなら神座に座るものは自身で固定される。予言の不確定要素を一つ排除したままフォンテーヌの滅びを防ぐために奔走できますから。この審判において最後まで抗ったのも、それが理由なのでしょう。もし万が一、私の記憶が戻れば予言が成ってしまう」

 

 最後のランプが点灯した。

 

「そ、それじゃ本当にカドゥ様が水神だった…?」

 

「側近に影から操られていた少女が反旗を翻したうえでフォンテーヌを救うために努力していただって?なんてドラマチックなんだ」

 

 さっきまでフリーナを非難していた観衆がざわめき立つ。なんて都合のいい人たちなんだろう。

 

「静粛に。ラモール…いや、カドゥ被告は被告席へと上るように」

 

 カン、とヌヴィレットが杖を鳴らす。

 

「カドゥ被告、何か言いたいことは」

 

「そうですね。では旅人、これまで世話になった人に私に代わって謝罪をしておいてください。ダインスレイヴ様には感謝も」

 

 待った。それじゃあまるでお別れみたいだ。まだ何かあるはず。ここでラモールもフリーナも救えるどんでん返しが……。

 リオセスリに言ってメロピデ要塞から出してもらう?ヌヴィレットに訴えて減刑してもらう?どっちも無理だろう。ある程度信頼関係は築けたと思うけど、それでも最近来たばかりの旅人の言で覆るほど軽い罪ではない。

 

「……最高審判官の名において判決を下す。まずはフリーナ。水神を騙り人々を欺いていた事には変わりない。とは言えその背景にある事情を汲み取る事もできる。「無罪」だ」

 

「まあ、ラモールの話が本当なら無罪だよな……あれ、そしたらオイラたち誣告の罪に問われるんじゃ……」

 

「次にカドゥ。先のフリーナを水神に仕立て上げ、それを裏から操っていたこと、そしてその目的がフォンテーヌを滅ぼすことにあったこと。物的証拠こそないが、加害者本人の自供であること、並びに被害者であるフリーナから訂正の言がないことから「有罪」だ」

 

 やっぱり、ラモール……いや、カドゥは有罪か。今ここから出来ること……彼を連れて逃げる?良いの?そんなことをして。彼の言は信じたくないけど、共に旅をしてきた友人の言う事は信じたい。信じた結果彼は罪人ということになってしまう。信じたいのに、信じたくない。

 

「あ、いや、待って!!」

 

「フリーナ様。お静かに」

 

「何か、あるのかフリーナ被告」

 

「いいえ、ありません。これは私の罪です。ですよね、フリーナ様」

 

 まるでフリーナの口止めをするようにカドゥが話を遮った。

 

「あぅ……え…そ、そうだ!有罪!僕も有罪だ!!神の記憶を奪ってフォンテーヌの外に追放したなんて裁かれて然るべきだろう!!僕もメロピデ要塞に行くべきだ!!」

 

「すでに私の判決は下した。最後にそれを決めるのは諭示裁定カーディナルだ。では、最終判決に移る。諭示裁定カーディナルによると判決は……ん?」

 

 諭示裁定カーディナルからヌヴィレットの手元に送られた判決を記した紙。それを見た途端ヌヴィレットが怪訝な表情を浮かべた。いつも無表情のヌヴィレットが。

 

「ど、どうしたんだ?判決は?」

 

「……諭示裁定カーディナルによる判決。「水神」、有罪……「死刑」」

 

「しし、死刑だって!?」

 

「いやでも、カドゥ様のやろうとしたことからして死刑が妥当じゃないか?」

 

「少女を神に仕立て上げ、裏から操っていた人物に史上初の死刑が下される。実にドラマチックじゃないか」

 

 ……一つ、この判決には不明瞭な点がある。

 

「{…) 水神って、どっち?」

 

「どっちってそりゃ……あれ、ラモールはかつて神だったけど、記憶を失って追放されているから神とは言えなくて、でもフリーナは神として信じられているけど本当の神じゃない……どっちだ?」

 

 神として振る舞い、信じられてきたのはずっとフリーナだった。そして、カドゥはそもそも神としての権能を有しているのか怪しい。今のところカドゥが水神であるというのはフリーナ同様本人の言でしかないのだから。

 

「ぼっ、僕が───」

 

 フリーナが声を上げる前に、勢いよく歌劇場の扉が開かれた。

 

「えっと……その……ごめん、邪魔して悪いけど……審判の進捗は、どうかな?」

 

「フレミネ!やっと来てくれたか。任務を見事クリアしたみたいだね」

 

「うん、「お父様」の任務は、最優先事項だから」

 

 《壁炉の家(ハウス・オブ・ハース)》。フレミネの言う「お父様」───「召使」の運営する孤児院で、今回フリーナを連れてくるための手品を仕掛けたリネにリネット、そして今しがた入って来た潜水士のフレミネ、この三人は《壁炉の家(ハウス・オブ・ハース)》の一員だ。

 そんなフレミネが持って来たのは一枚の石板。

 

「これって……「予言の石板」か?まさかこれが、失われた予言の石板のうちどっちかなのか?「召使」が裏でフレミネに石板を探させてたんだな」

 

「あちこちずっと探して、ようやく海底で見つけたんだ。危険な水域を避けるのにもだいぶ時間がかかって……あれ?ちょっと待って。あなたたちのほうの審判は、もう終わっちゃったの?じゃあぼくは……遅かったってこと?いけない、「お父様」を失望させちゃう……」

 

「{…) 少し揉めてるから大丈夫

 {…) まだ間に合うよ」

 

「ご苦労だった、フレミネ殿。石板を見せてもらえるかな」

 

 ヌヴィレットが舞台へと降り立つ。そして、かつてそうしたように石板に手をかざしその内容を読み取った。

 

「な、何が書いてあったんだ」

 

「水神の罪についてだ。彼女は純水精霊たちの陸上に住みたいという渇望を汲み取り、彼らを人の形に整えた。だが俗世の七執政は人を造り出せるほど万能じゃない。そこで彼女は原始胎海の力を盗み、それを彼らの血管に流すことで純水精霊を人にした。当然、天理の許可はなく。水神の罪は、「人を造りだしたこと」、そしてフォンテーヌの民の罪は「原始胎海の水を盗んだこと」だ」

 

「{…) 水神が盗んだ原始胎海の水を血としているから

 {…) フォンテーヌ人は海に溶けなきゃいけないの?」

 

「ああ。そして我々が見た二つ目の石板。そこには罪を懺悔する水神の姿があった。そして三枚目の石板───カドゥ被告、貴方がそれを持っている。違うか?」

 

「いいえ、違いません。あの時、私が回収しました。粉々に砕き鞄の中へと」

 

「あっ、だからあの時まだ食べられる干し肉を使ったんだな!カバンの中を空けるために!!」

 

「はい。調味料は塩胡椒しか持ち合わせていませんでしたが味はいかがでしたか?」

 

「おう、美味かったぞ……って違う!!オイラが聞きたいのは三枚目の石板の内容だ!!!」

 

 そうだ。三枚目の石板が分かれば、どちらが水神なのか、そして何があってフォンテーヌは沈むのかがわかるかもしれない。そしたら、ラモールもフリーナも無実であることを主張出来るんじゃないだろうか。

 

「三枚目の石板に描かれていた内容、それは───人々によって水神が審判にかけられる場面。すなわち、たった今この瞬間です」

 

「なっ、なんだって!?」

 

 エピクレシス歌劇場全体が揺れる。観客席……フォンテーヌ人が多く集まるその場所に、亀裂が入る。

 

「ひっ……」

 

「きゃぁあああ!!!!」

 

 逃げ惑う人々。そして亀裂は大きくなり、やがて大穴となって───

 

『PHOOOOOOOOOOOON!!!!!!』

 

 ───巨大な鯨を吐き出した。

 

「──ッ」

 

 庇うように前へ飛び出たヌヴィレットを払い除け、鯨は翻って逃げる観衆へと迫る。

 このままでは、誰も間に合わずただ鯨に呑まれて───

 

「シャァアアア!!!!」

 

 同じ大穴から飛び出た人影が鯨の顎を殴り上げる。そうして鯨を打って斬って弱らせたところに、ヌヴィレットの一撃が入り鯨は大穴へと落ちていった。

 そのあとを追うように人影も大穴へと落ちていく。まるでヌヴィレットを煽るかのように立てた親指を下向きにするおまけ付きで。

 

「お、おい今のって」

 

「{…) タルタリヤだ……」

 

 このエピクレシス歌劇場で唯一、最高審判官ヌヴィレットが無罪と判断したにも関わらず諭示裁定カーディナルによる最終判決で有罪とされた者。その後送られたメロピデ要塞で行方不明となっていた彼。

 

「あれがおまえの言ってた鯨か?タルタリヤの神の目を通じて見たってやつ」

 

「{…) うん。

 {…) タルタリヤが子供の頃に見たのもきっと……」

 

「あの「鯨」はテイワットに属さない。涙を流しながら、星々を往来する化け物だ。やつはこの星の胎海エネルギーを貪り、吞み込んで、どんどん大きくなっている。これが海面上昇の主な原因だ。だが、胎海のエネルギーも、やがては尽きる日が訪れる。その次の目標こそ……」

 

「私たちの血液か」

 

「うむ。フォンテーヌ人の「血液」はあの鯨にとって、大きな魅力を放つものなわけだ。だからやつが胎海を離れた後は、大勢の民衆が集まる歌劇場が自ずと最優先の目標になった」

 

「さっきのって、あいつをひとまず追い払っただけでしょ?回復したらまた陸地に上がって、フォンテーヌ人を狙ってくるんじゃないの?」

 

「ああ、むしろやつはとっくに陸地に上がろうとしていたはずだ。今になってようやくその姿を現したのも、彼のおかげだろう。疲れ具合から見るに、鯨とどれほど戦ってきたのかは想像に難くない」

 

 そういえば、メロピデ要塞でタルタリヤが失踪してから六十日は経っている。それだけ戦い続けていたはずだ。

 

「戦闘狂のタルタリヤがあの鯨と腐れ縁があったことが、まさかこんなときに役に立つなんてな。そういや……鯨こそが予言にある災いの根源だってわかったわけだろ。なんとかしてあいつを倒せたら、予言の実現を止められるんじゃないのか?」

 

「もう間に合わない」

 

「{…) えっ

 {…) どういうこと?」

 

「私の知らない間に、やつはこの星の胎海の力をあまりに多く吸収してしまった。もはや、星の胎海そのものと一体化してしまいそうなところまで来ている。恐らくテイワット全土を滅ぼしてもなお、あの鯨は生き続け、他の世界を泳ぐことだろう」

 

「あたしは……あたしは認めないよ。やれることは全部やった。元凶まで目の前に現れたのに……そんなときに、「この相手にはそもそも勝てっこない」だなんて、ずる過ぎるでしょ」

 

「盛大な開演に、こういうフィナーレは相応しくないと思うな」

 

「何があっても、最後まで戦う覚悟だ」

 

 皆口々に言う。諦めたくないと。そう、ここまで来て諦めるわけにはいかない。

 

「一般的に、「予言」は神の視点から見た未来だと言われている。でも、神の視線の死角で……何かが起こっている可能性について、考えたことはある?テイワットの未来がどうであれ、最終的にあなたを導くのは「運命」だけ。やるべきことをやればいいわ」

 

 思い出されるのは魔女Nの言葉。そうだ。まだ見えていない死角があるはず。それを握っているのは───フリーナだ。ラモールとフリーナのうち、フリーナだけが五百年の記憶を残している。

 

「ッ…!」

 

「どういうこと「諭示機」が……」

 

 歯車が回りだす。諭示機が発光を始める。

 

「おそらく……死刑執行の時間だろう」

 

 死刑執行…?

 

「{…) フリーナ!!」

 

 被告席を見上げる。そこには、全てを諦めたように絶望の表情を浮かべて席に座るフリーナと、その側で立ち尽くすラモールの姿が。その二人に向かって勢いよく飛び上がり手を伸ばす。

 

「{…) まだ、聞きたいことが…!」

 

 彼女たちは予言にあるように涙を流していた。その涙は、死への恐れか、あるいは片方を置いていくことへの後悔か、逢えた喜びか、あるいはその全てか。いずれにせよ、涙というのは感情が重く詰まったもので、二人の涙は伸ばした指先へと零れ落ちる。

 

 ───瞬間、世界は白く染まった。

 

 

 

幕間

諭示裁定カーディナル

 

 

 

 

「やぁ、ヌヴィレット」

 

「君は……」

 

「ぷっ……ハハハっ……すまない、その驚愕の表情……すごく好きだよ。思わず吹き出してしまった」

 

「君はフリーナではないな」

 

「ああ───そんなに驚いてくれるってことはつまり、僕はキミたち全員を騙し通せたんだね。見れば分かるだろう?僕こそ魔神フォカロルスだよ」

 

「魔神フォカロルスが……なぜ私たちを欺いた?」

 

「ああ、無論、僕の目的はキミたちを騙すことなんかじゃない。本当に騙そうとしているのは……「天理」さ」

 

「「天理」を欺く……」

 

「あの予言のことだよ。面倒だろう?すべての人々は溶け、フォンテーヌは水に呑み込まれてしまう……僕の前任水神エゲリアがこの予言を僕に託したとき、僕も思ったよ……これはさすがに難しすぎないかってね。予言のあのシーンは必ず起こるって、そして「天理」を敵に回してはならないってわかってたくせにさ?僕は一人で海底まで潜り、周りの貝がぶくぶく泡になっちゃう頃まで考えてようやく、僕はその唯一の答えを見つけ出した。「天理」を欺くことのみが、予言が起こると同時にみんなを救える方法だとね。うん、僕って本当に天才!これもまさに、エゲリアが僕を後継者として選んだ理由だろう」

 

「そうか───」

 

「そういえば、彼女はこの国を救う任務も、水神としての責務も、「人を創造した」ことの原罪も……何もかも一気に僕に押し付けたんだね。はぁ……でもまあ、しょうがないさ。なんと言ったって、僕もかつては彼女の眷属───数多の純水精霊の一人だったんだからね」

 

「つまり……君もかつてエゲリアによって、人間にされた純水精霊の一人だったと?」

 

「その通り。人間になることは、ずっと僕の夢だった。今だってなんの変わりもないさ。僕からすれば人間の存在そのものが、美しい歌劇のようなもの。神になってから、僕は作られたばかりの「人」の自分だけを残して、己の「神格」を体と精神から分離した。今こうしてキミと対話しているのはその「神格」さ」

 

「では、フリーナ殿は……」

 

「そう、僕は人間の僕を「フリーナ」と名付けたんだ。喜怒哀楽の感情を持つ彼女は、思い上がりたい時は思い上がって、逃げたい時は逃げる……彼女の長所は、人間しか持たない長所───その短所も、人間ならではの短所だ。僕の目に映るフリーナは、まさに完璧な「人間」だ。なぜなら彼女は本当の人間とまったく一緒で、それこそ僕の理想の「自分」だったからね。その後、僕は彼女を呪った……「天理を欺く」計画を完成させるためにね」

 

「……ならば、カドゥ殿は」

 

「僕だって、フリーナを虐めたいわけじゃない。彼女の隣には、支える誰かがいたっていいだろう?それに、覚えているかい?予言の最後の、あのシーン───水神は自らの神座において涙を流す。でもその隣に、誰も立っていないなんて予言にはないからね。きっと「天理」は座るフリーナに夢中で見えなかったのさ。予言が実現した風に「見える」ように、僕はフリーナという役者を招き、予言の中の水神を「演じて」もらった。彼女は「天理」の目を釘付けにした名女優だったわけだよ」

 

「……」

 

「呪いによって、「神格」である僕が存在する限り、フリーナは永遠に死ぬことはない。しかし同時に、人間が持つべき幸せを享受することもできないのさ。例の予言が実現したと見せかけるため、彼女はこの歌劇場を舞台に、正真正銘のヒロインとなり……永遠に「神」の役を演じ続けるんだ。さあ、もう理解できただろう?キミの法廷がなぜ「エピクレシス歌劇場」という名前なのかを」

 

「……だが、あのフリーナは所詮人間のはず。尽きぬ命があったとしても、精神の強さは人並みにすぎない。隣にカドゥ殿がいたとしても、彼女にとって……これはどれほどの苦痛だろうか」

 

「そうだよ、彼女はずっと苦しんでいた。それに、カドゥの存在はフリーナにとって必ずしも良いものとはいえなかった。フリーナは人間の「僕自身」とはいえ……機会があれば、僕はちゃんと「僕」に謝らないとね。この五百年は、彼女にとっては……この上なく長く、この上ない苦痛を伴う───「歌劇」だった」

 

「……謝る、というその言葉、嘘はありませんか」

 

「おや、やっと役者が揃ったようだ。これで僕の処刑を始められる」

 

「カドゥ殿……」

 

「やあ、カドゥ。元気だったかな?フリーナがキミの記憶を消して追い出した時は肝が冷えたよ。フリーナへの贈り物としてキミを造ったら、カーディナルが集めた律償混合エネルギーを象る先を造るためのリソースがなくなってしまってね。処刑の時にキミの持つその石造りの剣に律償混合エネルギーを注いで神を殺す刃とすることにしてたんだ。だから戻ってきてくれて良かったよ。さぁ、僕の首を落としてくれ」

 

「いいえ。私は貴女を切りません、魔神フォカロルス」

 

「それは、困るな。僕が死んで、神座が砕けないとフォンテーヌに救いは訪れない。キミのわがままに付き合ってるだけの余裕はないんだ」

 

「いいえ、付き合って貰います。わがままではなく、私の「正義」に」

 

「「正義」…?」

 

「……これは僕の「正義」さ。そして、フォンテーヌを救うことはフリーナの「正義」でもある。キミは、それを否定するのかい?キミの「正義」はフォンテーヌを滅ぼしてでも貫くものなのかい?」

 

「いいえ。私の「正義」と、フリーナ様の「正義」、そしてフォンテーヌの救いは全て共存します。その中に溶け込めないのは貴女の「正義」だけ。さあ、水神の座を私に譲りなさい」

 

「なんだって?」

 

「カドゥ殿、今は巫山戯ている場合ではないだろう」

 

「巫山戯ているわけではありません。私はフォンテーヌに来てから集めた情報、あの石板、そして先の魔神フォカロルスの言から確信しました。貴女がフリーナ様を水神として仕立て上げた後、裏で何をしようとしていたのか」

 

「へぇ。カドゥとしての記憶は消えているはずだよね。それだけの情報でここまで辿り着くとは、うん、さすが僕。自分だけでなく造った物も天才だなんて」

 

「……貴女は、神としてフリーナ様の審判を通じて処刑されることで神座を破壊しようとした。その結果どうなるかまでは推察することはできませんでしたが、しかし処刑される者は水神であれば誰でもいい。それこそ、フォカロルスでなく私でも」

 

「待った、それではカドゥ殿は自ら……」

 

「その理屈なら、死ぬのは僕で十分だろう。なぜ自分が死のうとするんだい?僕が死ねば、最後まで姿を見せなかった水神がいつの間にか死んでいた、で終わりだろう。僕がキミに水神の座を明け渡さないといけない理由はなんだい?」

 

「……貴女が、自分で言ったことです。フリーナ様に謝罪を。そして今神を騙ったとして指をさされるフリーナ様の悪評を、私と折半して貰います。これが私の「正義」です」

 

「フッ、ハハハ……キミは面白いことを言うね。たったそれだけのために……」

 

「虚勢を張るのは辞めてください。そして、お答えください。貴女の「正義」は、私の「正義」を否定できますか?」

 

「いや、ここで死ぬのは───」

 

「私は今、私の「正義」にフリーナ様の「正義」、それからついでにフォンテーヌの救いを乗せた皿と、貴女の「正義」を乗せた皿、天秤がどちら傾くかを聞いているのです。答えろ、フォカロルス」

 

「……」

 

「答えねば、この剣が振るわれる前にフォンテーヌが沈むぞ」

 

「カドゥ殿、それは……」

 

「……キミは、記憶がないんだよね。なのにそんなことを言うなんて。よっぽどキミを大事にしていたんだね、フリーナは」

 

「では」

 

「僕の負けだよ。僕はキミの「正義」を否定できない。でも残念、神座はその代の神が死なないと引き継げないんだ」

 

「そうですか。なら───」

 

 

 

終幕

歌劇場

フリーナ

 

 

 

 いつしか光は収まって、静寂が劇場に訪れる。

 僕の体には何もない。僕の───

 

 

 ドサッ

 

 

 僕の体に何もないなら、死刑は───

 

「ぁ、ぁぁ……ぁぁああああああ!!!!」

 

 カドゥの身が崩れ落ちる。その目を開くことはなく、そして、僕の命令でも起き上がることはないと直感的に理解する。記憶を消したとか、そんなんじゃない。僕の代わりにカドゥは死んだのだ。

 

「ぁぁ……カドゥ……起きて、起きてくれよ……お願いだ、お願い、だから……」

 

 そんなことは起こらないと、そう知っているのに。そんな都合の良いことは望めないと知っているのに縋ってしまう。

 これは罰か?なんの?僕は、なんの罪を犯して、こんな罰を受けなきゃいけない?

 

「頼む、頼むよ。悪いところは直す。罰が必要だと言うならどんな罪でも認める。だから、だから僕からまたカドゥを奪わないでくれよ……」

 

「{…) ラモール……」

 

「旅人、そろそろ終わりにしよう。あの鯨を誅伐する」

 

「{…) でもフリーナが」

 

「それはフリーナ殿の問題だ。我々は、あの鯨を討つ」

 

「{…) ごめん、フリーナ」

 

「……」

 

 旅人たちが大穴へと入っていく。でもそんなことはどうでもいい。どうすれば良い?どうしたらカドゥは戻ってきてくれる?

 

 

 

 ───ああ、そうだ。踏み躙ればいい。そも、彼の覚悟を無駄にしないために沈黙を選んだ審判の結果がこの死刑だ。だったら、その覚悟を踏みにじるような言葉なら……目を覚ましてくれるんじゃないか?

 

 

 

「い、いいのかい?ここで死んでしまって。君がここで死んでしまえば、僕は君を置いて旅に、そう、旅人について行ってしまうぞ!」

 

 駄目だ。声が震える。涙が滲む。どれだけ強がったところで、彼を置いていけるわけがないのに。

 わかってる。こんなことをして僕の過去の沈黙が破られるわけじゃない。むしろこれはすべきじゃない。彼の覚悟の故の死を、僕が否定していいわけがない。

 

「過酷な旅だっ!僕は途中で命を、お、落とすかもしれない!!そしたら、君の死地は僕の隣じゃなくなって、しまうな!だって、だって、僕の死地は、どこともしれない、君の隣ではない───」

 

 涙が、溢れた。喉から絞り出そうとしても声は出ないのに、涙は止まることを知らないかのように溢れ出す。

 そうして、落ちた雫が彼の頬を伝い、まるで彼も泣いているかのように───

 

「それは、困りますねフリーナ様。私の死に場所は貴女様の隣です」

 

「ぇ…カドゥ?」

 

「はい、フリーナ様の側付きのカドゥです。長らくお側を離れてしまい申し訳ありませんでした。さぁ、涙を拭いてください。涙は、嬉しい時に流してください」

 

 だったら、今は泣いていい場面じゃないか。だってこんなに嬉しいんだから。

 

「でも、なんで?」

 

「それは僕が説明しよう」

 

 それは、明らかにカドゥの声で、カドゥから発せられた言葉だった。だけど絶対に違う。これはカドゥじゃない。

 

「やあ、久しいねフリーナ。僕はフォカロルス。いや、「鏡の中のキミ」と言ったほうが良いかな?」

 

「「鏡の中の僕」!?」

 

 それは、五百年前にフォンテーヌを救う方法を僕に齎した「鏡の中の僕」で。姿はカドゥのものなのになぜか彼女だとわかる。

 

「まずは、謝罪と感謝を。五百年もの間、キミに辛い思いをさせて済まなかった。そして、ありがとう。キミの献身によってフォンテーヌはもうじき救われる」

 

「う、うん。それは喜ばしいね。さぁ、早くカドゥを返して」

 

「まぁまぁ、そう焦らない。僕と彼はいつでも交代出来るからね。とりあえず今は僕の話を聞いてくれるかい?キミの奇跡の話だ。僕はずっと諭示裁定カーディナルの中にいた。審判で得られる律償混合エネルギーを集めつつ……キミの審判の日を待つために。そうして今日この日、全てが整い水神の処刑を行うために諭示裁定カーディナルの中へと二人招待したのさ。すなわち、見届人となるヌヴィレットと処刑人であるカドゥの二人をね」

 

 水神……「鏡の中の僕(フォカロルス)」を処刑する役目がカドゥだったのだとしたらおかしい。

 

「じゃあなんで僕じゃなくてカドゥが死んだのか、だね。実は僕ももう死んでいるんだ。この僕はフォカロルスの記憶をまるまるコピーした複製品。そうだね、フィスと名乗ろうか。そして、カドゥは死んではいない」

 

「……どういうことだい?」

 

「いつか、カドゥはキミに問うたね。「私の中から私が消えたとき、それは私なのか」って。キミの答えは?」

 

 そんなもの決まっている。僕は三年前にその答えを出したじゃないか。

 

「どれだけ時がたってもカドゥはカドゥだ」

 

 だから、これ以上苦しんで欲しくなくて、カドゥではなく別の誰か───ラモールとして生きて、そして満足して逝って欲しいから記憶を奪い送り出したのだ。

 

「そう、部品が全て置き換わったとしても彼は彼だ。じゃあそれはなぜか。体ではなく心、記憶が連続しているからさ。逆に言えば記憶が繋がっていなければそれは別の人だ。カドゥとラモールが別人であるように。あっ、カドゥが一回目にキミを忘れた時、あれは別に記憶を消したわけじゃない。ただ自分のエラーを取り除こうとして記憶に制限をかけただけさ。その証左に、初めてあった時の彼は自分を当機と言って、心を得た後は私と言っているだろう?」

 

「じゃ、じゃあ」

 

「そうさ。死んだのはカドゥではなくラモールだ。凄いよね、彼。奥底に封じられたカドゥの記憶があるとは言え、ほぼ初対面のキミのためにそれまで共に旅をしてきた旅人を裏切って、さらには僕をキミに謝罪させるためにその命を使ったんだ」

 

 なんでそこまでしてくれるのか。頭は困惑するばかりなのに、なぜか不思議と口角が上がってしまう。それを、頬をつねって無理やり押し込めた。

 

「順を追って話そうか。まず、諭示裁定カーディナルの中での問答の末、僕の「正義」は彼の「正義」に負けた。そして処刑される水神の座を彼に譲ることにしたんだ。けれども神座を譲るのは僕が死なないとできない。そこで僕は自分の記憶を複製してカドゥの記憶の封の中に混在させた後、自ら命を絶った。そして水神となったラモールが石剣で自らの首を落とせば、水神の処刑は完了。神座として分けられていた力は全て水龍に戻り、万全と化したヌヴィレットは今元凶である鯨を倒しに行った。ここまではわかるかい?」

 

「わ、わかったよ……いや、あんまり理解できてないんだけど……でもなんでカドゥと君は蘇ったんだい?ラモールが死んだだけでは君たちが蘇る理由にはなっていないだろう?」

 

「記憶というのは何も個人のものだけでない。五百年分のキミから見たカドゥの記憶が、キミの涙を通じてカドゥの中に流れ込んだ。涙は強く感情を宿すからね。それがカドゥの記憶を封じ込めた錠の、存在しないはずの鍵となってカドゥの記憶を呼び起こさせたんだ。そしたら途絶えたはずの記憶の連続性が戻る。すなわち、死者の蘇生のできあがりってわけさ。その錠に紛れる形でカドゥの体に入り込んだフォカロルスの記憶の複製品も目覚めたから僕もこうして復活だ」

 

「そ、それならラモールも……」

 

 旅人はラモールと共に旅をした友人だったはずだ。僕だって友人を失う辛さは分かっているから……今回の審判のせいであまり良い印象を抱けなくなったけれど、それでもあの旅人に同じ思いをして欲しくはない。だから、出来ることならラモールの記憶も生きていて欲しい。

 

「ラモールはキミの涙が錠に届くのに自分が邪魔になるからって、自分から死んだんだ。もうカドゥの体の中にはラモールの記憶は欠片も残っていない。僕らの復活は、ラモールの記憶が神座とともに消え去ることで成り立っている」

 

 ゴゴゴッ、と大地が揺れる。大穴の中であの鯨が暴れているのか、あるいは───

 

「予言の時だ。じきフォンテーヌは海に沈む。けれどもキミたちの五百年にも及ぶ献身の結果、もう二度とフォンテーヌの民が水に溶けることはない。改めて謝罪と礼を。本当に、よく頑張ってくれたね、フリーナ」

 

 エピクレシス歌劇場が海に飲まれる。客席が、舞台が、諭示機が、神座が水に浸かる。けれども僕も階下のクロリンデたちも、そして当然カドゥも水に溶けることはない。

 

「……ふふっ」

 

 涙が流れる。ああ、本当にフォンテーヌの滅びは回避されたんだ。僕らのしてきたことは無駄じゃなかったんだ。

 水が引いていく。衣服を身体中に張り付かせているというのに、僕の心は晴れやかだ。審判で傷ついた心も、カドゥが帰ってきてくれた喜びに比べればないも等しい。ああ、でも。

 

「疲れた、かな」

 

 五百年の緊張がほどけた。今は幸せでいっぱいで、もう誰に怯える事もなく自室で枕を濡らす事もない。

 そう思うと、何か気というか、力が抜けて───

 

「おやすみなさい、フリーナ様。長い間お疲れ様でした。今は、ゆっくりと」

 

「うん、おやすみカドゥ。今日はいい夢が見れそうだよ」

 

*2

 

 

 

余談 ベッドタイムストーリー

ヴィマラ村

旅人

 

 

 

「あっ、そうだ!!そういえば伝言預かってたんだ!!ちちち違うぞ!隠してたとかじゃなくて、人探しで忙がしかっただけだからな!!それで、その、ラモールのことなんだが……」

 

 パイモンが誤魔化すように手を振る。実際、ただの人探しに予想外の人物が現れて忘れていただけ。なんでもない依頼だったはずなのに、まさかダインスレイヴも現れるなんて想いもしなかった。

 

「見つけた、か」

 

「えっ!?そ、そうだぞ!ラモールはフォンテーヌで死地を見つけたっていうか……よくわかったな!?」

 

「全てを捨てた旅人が、旅をやめる理由は一つしかない」

 

「{…) 寂しい?」

 

「ああ」

 

「うえ!?お、オイラてっきり「受け入れる準備は出来ていた」とか言うかと思ってたぜ」

 

「別れを惜しむことと、受け入れることは矛盾しない。ただ、そうだな。友人との別れは、いつだって悲しい」

 

「そっか、そうだよな。お別れは寂しいもんな」

 

「だが、彼が望んだ場所を手に入れられたなら、祝ってやるべきだ」

 

「{…) だから、ありがとうなんだ」

 

「うぇえ!!?じゃああいつはダインスレイヴがこう言うって事がわかってたってことか!?」

 

「そう難しいことではない。俺と奴の立場は違っていたが、けれども似通うところもあった。互いに、分かり合うところはある。……そうだな、旅人。あとでフォンテーヌへ行こう。彼の墓へ」

 

「{…) 生きてるよ」

 

「………」

 

 短い沈黙。

 

「お、おう…ラモールは生きてるぜ。いや、一回死んだんだけどよ、奇跡が起きたっていうか……ただ、代償にオイラ達との旅の記憶を失っちまったんだけどよ」

 

「そうか。俺の知るラモールは、失われた彼だけだ。その彼は死んでしまった。だが、そうか。生きてはいるのか」

 

「{…) ………」

 

 夕暮れの空を見上げ、彼は言う。まるで、広がる夜闇に溶け込ませるように。

 

「ああ、それは、いいことだな」

 

*3

 

 

 

余談 伝説任務 給仕の章

モンド城

旅人

 

 

 

 「水の娘」の公演成功を期に、フリーナに許可を貰ってラモール───カドゥと共にかつての旅路をなぞっていた。もしかしたら、カドゥが蘇ったようにラモールの記憶も戻るかもしれないって思ったから。

 意外なことにフリーナはあっさりと許可をくれた。友人を失う辛さは分かってるからって。だったらなおさら、もう一度離れるのは抵抗があっただろうに。

 

「なぁ、本当に思い出せねえか?」

 

「申し訳ありません」

 

 稲妻で多くの人々に再会した。璃月(リーユエ)での冒険の地をなぞっていった。モンドでいつぞやのように事件を解決してみた。いずれも、意味はなかった。

 

「い、いやオイラも責めたいわけじゃなくてよ……」

 

「あれぇ〜旅人じゃあん。どしたの〜?元気してた〜?」

 

 この声は……

 

「{…) ウェンティ!?」

 

「うわ、すげえ酔っ払ってるじゃねえか。まだ昼なんだぞ。それに、おまえがここまで酔っ払うなんてどれだけ飲んでたんだよ」

 

「へへへ、なんか昨日は皆気前がよくてね。一晩中飲んでたんだよ」

 

 昨日……そういえば「旅人が帰って来て、そして人攫い事件を解決した祝い」とか言ってエンジェルズ・シェアで皆で宴会を開いてくれてたんだ。途中で眠くなったから帰っちゃったけどあの後も騒ぎ続けて……今の今まで騒いでたの?主役不在なのに?

 

「おまえもいたのかよ」

 

「残念ながら君たちが帰ったあとに来たんだよね。ちょっと君たちの活躍を唄えば皆酔っ払ってるからかいっぱいお酒をくれたよ」

 

「あれ《西風(ゼピュロス)騎士団》の奢りだからな」

 

「そうなの〜?」

 

 ガイアが提案し、ジンがそれに乗っかる形で開かれた宴会だから費用は《西風(ゼピュロス)騎士団》から出ている。モラは余っているから出してもよかったけど「主役に払わせるわけにはいかない」って固辞された。

 

「旅人様、こちらの方は……?」

 

「嘘だろう……魔神バルバトス!?」

 

 カドゥの肩に乗った小型の「クロックワーク・マシナリー」のフィスが声を上げる。そういえば彼女は何者なんだろう。気付いたらカドゥの側にいたし。

 

「その声……フォカロルス?エゲリアの眷属だった?わぁずいぶんと大きく……小さくなってるねぇ」

 

「えっ、フィスってフォカロルスだったのかよ!?」

 

 そういえば全部終わった後ヌヴィレットが言っていた。水神フォカロルスの「神格」はその記憶をカドゥに託したと。その記憶を「クロックワーク・マシナリー」に移し替えたのがフィスだろう。

 

「え〜なになに、水神の神座をぶっ壊して自由になった?へぇ、いいねそれ。ボクもやろうかな。へへっ」

 

「{…) ウェンティ」

 

「ははっ…ごめん、冗談だよ。いや、冗談にしては悪趣味すぎた。ずいぶん酔っ払ってたみたいだ。こんなことを言うなんて。今ので酔いは覚めたよ。うん、本当にごめん。ボクはこんなことを言うべきじゃなかった。しばらくお酒は控えるよ」

 

「そうだぞ。その時にラモールは記憶を失ったんだからな」

 

「えっ、それは本当?一緒に酒を飲みすぎてディルックに怒られたことも、悪戯に誘って団長代理に怒られたことも、トワリンを鎮めたことも、なにも覚えていない…?」

 

「前二つはおまえだけだぞ……」

 

「旅人、立ち話もなんだし一息つかないかい?僕もゆっくり旧知を温めたいんだ。といっても、ずっと人前に出なかった僕には魔神バルバトスと語れることなんてあまりないけれどね。カドゥ、お茶の準備をしてくれるかい?」

 

「ウェンティで良いのに。あっ、甘いお菓子もつけてね」

 

「承知しました」

 

 どこからともなく取り出されたテーブルと人数分の椅子に、お菓子と温かいお茶。なんか流れでお茶会をすることになっている。普通におかしい。元素力も使わずできることじゃないし、人々の行き交うところで普通は茶会を開かない。

 

「なるほどねぇ。つまり彼は自分を犠牲にして自分───カドゥと、フォカロルス───フィスを蘇らせたわけかい」

 

「ヌヴィレットが言うにはそうらしいぜ。それで、ラモールの記憶を取り戻せないか試しに旅をしてきたところだ。まぁ、結果は……あんまり良くなかったんだけどよ」

 

「記憶、記憶ねえ。ちょっと失礼」

 

 そういうと、ウェンティは立ち上がり椅子に座る───ように浮遊するフィスの側に立つカドゥに近づき、その腰に下げられた偽物の神の目を取り上げる。あれは確か、モンドを旅立つ前にウェンティがラモールに渡したものだったはずだ。

 

「ねぇ旅人、白紙の紙か何かはない?」

 

「{…) あるけど…

 {…) はい」

 

「それでどうすんだ?白紙の紙なんて何に使うんだよ」

 

「ふふーん、実はこれ写真機になっていてね?強い元素反応を感知するとその瞬間を記録する。こうして白紙の紙を押し当ててしばらく待つと写真になるんだ」

 

「すげぇな……。でもなんでこんなん持ってたんだ?」

 

「気付いたら目の前に置いてあってね。ご丁寧に説明書付きで。さすがに放置するわけにもいかないからボクが持ってたんだけど、君たちが出発するときにこれ幸いと渡したんだ。旅人なら何かあっても対処できるだろうと思ったから」

 

「……何か作為的なものを感じるね。ウェンティに渡せばカドゥか、あるいは旅人に渡ると。その結果がどうなるのかは分からないけれど、この写真機を作ってウェンティに渡した人物はそれを知っていたみたいだ。まるで、予言のようだね。ハハハッ、カドゥ。僕らはどうやら予言というものから逃げられないらしいよ?」

 

「それは……不気味だね。出来たよ。これが君たちの旅の記録だ」

 

 白紙の紙に落とされたのはいくつかの写真。空を飛ぶ狂風のコアに攻撃が届かず、ヤケになって元素爆発させるも当然当たらなかった瞬間。璃月(リーユエ)に行く途中で迷い込んだ場所で純水精霊ローデシアにボコボコにされて苦し紛れに元素爆発させた瞬間。特になにもないところで間違えて元素爆発させた瞬間。香菱の元素爆発で霧氷花以下が消し飛んだ瞬間。ガイアに頼み込んで海を渡って稲妻に不法入国しようとして雷に叩き落された瞬間。

 

「改めて見ると……なんというか、酷えな」

 

 言い訳をさせて欲しい。普通の戦闘であれば元素爆発なんてさせずに勝てる訳だから元素爆発を起こすのは強敵が相手になるときで、そういう相手は大抵苦戦する。そしてこの写真機が元素爆発なんかの強い元素反応に反応して写真を撮る以上そういった苦戦した瞬間ばかりが写真に収められるのは当然だ。

 

「こっちの写真は?」

 

 そこに写っていたのはこれまでの旅の記憶。

 

 岩王帝君が死んだ日のとき。「冥」を追って林へ駆けたとき。ヒルチャールと戦いながら大鍋で夜泊石のサンプルを煮たとき。ココナッツヒツジを探す途中で宝盗団から帰終機を守ったとき。黄金屋にある岩王帝君の遺体の前で「公子」と戦ったとき。渦の魔神を沈めるために群玉閣が落とされたとき。

 

 ダインスレイヴとともにアビスの魔術師を撃退したとき。アビスの使徒と激戦を繰り広げたとき。───片割れと、出会ったとき。

 

 主を失った神の目を宝盗団から取り戻したとき。トーマの投げた槍によって無想の一太刀が中断されたとき。《抵抗軍》に加わり《幕府軍》との戦に参加したとき。哲平が邪眼で死んだとき。邪眼工場で「散兵」に襲われたとき。「淑女」と御前試合をしたとき。無想の一太刀を万葉が受け止めたとき。

 

 逆さまの街でアビスの司祭を打ち破ったとき。エネルギー供給装置を止めたとき。ハールヴダンが旅立ったとき。

 

 そして、ポワソン町近くの遺跡で決闘を行ったとき。カーディナルによる死刑執行のとき。カドゥの、復活のとき。

 

 どれも大切な思い出で、でももうラモールはそれを覚えていなくて───

 

「お、おい泣くなよ。そんな、オイラだって……ひぐっ!」

 

 涙が溢れる。つられて泣き出したパイモンと共に机に広げられた写真を滲ませていく。ポタポタと垂れる二粒の雫が、写真機の上に落ちた。

 

「うわぁ───!!」

 

「{…) 待って!!」

 

 突然、写真機から風が吹き荒れる。その風は写真を全て巻き上げ、遥か上空へ。そしてその写真は、ラモールの思い出は彼の記憶と同じように戻ってくることはなかった。

 

「{…) 写真が……」

 

「旅人様、そのようなものはもう不要です。全て、思い出しましたので」

 

「へ?」

 

「{…) ラモール…?」

 

「はい。あなたと共に旅をしたラモールでございます。ずいぶんと、心配をかけたようで申し訳ありません」

 

 そこにいたのは紛れもなくラモールだ。カドゥにはない雰囲気を感じる。それでいて、カドゥらしさもあって、きっと二人は今一つになったのだろう。

 

「わっ、偽物の神の目が本物になってる!?」

 

 ウェンティが素っ頓狂な声を上げる。風元素の神の目だからそれを授けたのはウェンティでは?

 

「偽物の神の目が本物になる───「水の娘」のときの小道具みたいだね。主従揃って似たもの同士だよ」

 

「でもなんで神の目が本物になったら記憶が戻ったんだ?」

 

「要因は三つ。一つ、カドゥがそれを望んだから。神の目を授かるには強い渇望が必要だと言われている。あの時キミたちの涙を見てカドゥは記憶を取り戻したいと望んだのだろうね」

 

「ええ、その通りです」

 

「二つ目、原始胎海の水を飲んだ者の涙に触れたこと。フリーナの涙でカドゥが記憶を取り戻したときを再現してみたんだ。彼女、直前の審判で原始胎海の水に触れているからね。あの時はカドゥの記憶がカドゥの中に封じられていたけど、今回は何もない───はずだった。だから上手くいくかは分からなかったけど、偽物の神の目の中に写真としてラモールの記憶が入ってたから、結果として同じ状況が作り出せたよ」

 

 原始胎海の水……?

 

「原始胎海の水なんて飲んだ覚えねえぞ?」

 

「カドゥに命じてお茶に一服盛らせてもらったよ」

 

「おい!」

 

 ヒョイ、と肩を竦める動作をするフィス。肩がないどころか脚のついた宝石箱みたいな見た目の「クロックワーク・マシナリー」のくせに肩を竦めたとわかる動作をするのは器用だ。

 

「最後、神の目が本物になったから。偽物の神の目は写真機だったけど、本物の神の目に写真を撮る機能はない。だったら、偽物の神の目に入ってた写真(ラモールの記憶)はどうなったのか。それは弾き出されて記憶の主、すなわちカドゥのところに戻ったんだろうね。つまり今回の奇跡は偽物の神の目と偽物の記憶、二つの偽物が本物に変わったんだ」

 

 *

 

「おかえり。その様子だと無事記憶を取り戻せたようだね」

 

 フォンテーヌに戻ったところを、どこかさみしげなフリーナが迎える。その様子は、泣き出しそうなのを我慢しているようで。

 

「どこにも行きませんよ。私の生きる場所はフリーナ様の隣だけです」

 

「なっ、君はまったく……そんな心配はしていないよ。ただ、君がここに残ることで君と旅人の仲が険悪にならないか心配しただけさ」

 

「嘘だぞ。明らかに記憶を取り戻したラモールがオイラたちと旅をするのか心配してたよな。ラモールだって一発で看破してたぜ」

 

「{…) ラモールの選択を尊重する

 {…) それに……」

 

「{…) 観測者だから

 {…) 最後まで一緒にはいられない」

 

 結局どこかで別れはくるのだから、いつかこうなるはずだった。それが、遅いか早いかの違いでしかない。覚悟は出来ていた。

 でも、ダインスレイヴの言うように別れは何時だって寂しいものだ。

 

「旅人様。出会いは別れの始まりでありますが、しかし別れとは再会の前触れであります。忘却が想起の前兆であるように。またいつでも会いに来てください。それでも寂しいと言うのなら、これを」

 

「これって……おまえのティーポットじゃねえか!?いいのか?」

 

「これはラモールの私が買ったものです。カドゥの私が買ったものは別にあります。そしてこのティーポットは私と共に旅をした、いわばラモールの片割れ。私は共に旅を続けることはできませんが、これを私だと思って───なんて、歌劇の一節のようですね」

 

「{…) ありがたく受け取るよ」

 

「じゃあ僕からも」

 

 受け取ったティーポットの中が水で満たされる。

 

「フリーナの、元水神の特別な水だよ。よそでは貰えない貴重な水だとも。大事に飲み給えよ」

 

「おまえは何もしてねーだろうが!」

 

 得意げに、そう表情なんてない「クロックワーク・マシナリー」のはずなのになぜか得意げに見えるフィスにパイモンが突っ込む。

 

「水元素で作り出したただの水だよ。言ってくれればいつでも継ぎ足してあげるからそうだね、お茶でも淹れるといいさ」

 

「お茶の淹れ方はお教えしますよ」

 

*4

 

 

 

カーテンコール

ロマリタイムハーバー

旅人

 

 

 

「時間が経つのは早いな。あっという間に次の旅の時間だぜ。次は確か、ナタに行くんだったよな?」

 

 ナタ……あまり話を聞かない国。どんなところなんだろう。

 

「ヌヴィレットは龍の国だって言ってたけど、一体どんな場所なんだろうな。ちょっと謎めいてるぜ」

 

「{…) ナタ人って見たことないしね」

 

「だな。稲妻が鎖国していた頃ですら稲妻人とは別の場所で会ってたのに。あっ、もしかしてナタって人が住んでないんじゃないのか?」

 

「{…) ……?」

 

 ふと、視線を感じた。周囲を見渡してみれば、一台の写真機がこちらに向けられている。

 

「いい感じ!そのワクワクと驚きの表情はそのままで、目線をこっちにお願い。一枚撮らせて」

 

「おう、かっこよく撮ってくれよな!」

 

 パシャリ、シャッター音が鳴り響く。

 

ってちっがーう!!シャルロット、なんでここにいるんだよ」

 

 物陰から現れたのはシャルロット。フォンテーヌに来てからお世話になったスチームバード新聞社の記者で、彼女が集めてくれた手がかりがなかったら勝てなかった審判もあっただろう。

 

「フォンテーヌで活躍してた旅人がまもなく旅立つって聞いたから。こんな絶好の報道チャンス、「スチームバード新聞」が見逃すわけないでしょ。次に取材したいってなっても、今みたいに簡単にはいかないでしょうしね」

 

「ばれてたか。いつも、誰にも別れを告げないで行っちゃうからな」

 

「へへっ、確かに君たちらしいわ。でもたまにはスタイルを変えるのも悪くないんじゃない?っていうのが、私たちの考え」

 

「「たち」…?」

 

「一緒に戦った日々が、まるで昨日のことみたいね。時間があったらまた来てちょうだい、相棒」

 

 金の髪を揺らしながらナヴィアが現れる。

 

「もし何か困ったことがあれば知らせてくれ。距離なんて、問題じゃない」

 

 勇ましい靴音と共に、クロリンデが現れる。

 

「 別れを告げると寂しくなってしまうものだけど、別れというのはより良い出会いのためにあるんだ。永遠に変わらないものがあるとすれば───それは僕たちが一緒に残してきた思い出だと思うよ」

 

「また共に旅をすることこそできませんが、しかしここでいつでもお待ちしております。どうぞ、一息つきたい時にでも会いに来てください。できれば、手土産にあなた方の新しい思い出を携えて」

 

 フリーナと、それに付き従うラモール。それから、彼の回りをふよふよと浮かぶ小型の「クロックワーク・マシナリー」のフィスが現れる。一体どこにこんなに大勢隠れていたんだろう。

 

「わあ、みんな来てくれたのか」

 

「{…) きっとまた会いに来るよ」

 

 ナタに行っても、スネージナヤに行っても。フォンテーヌでの思い出がある限りここに戻る時がある。だって、別れは再会の前触れだから。

 

「うん!これからの冒険に関する物語を楽しみにしてるから。こっちに帰ったらぜひ聞かせてちょうだい!」

 

「こういう時は、写真を撮るべきだろうか」

 

「そうだね。ちょうどプロのシャルロットもいることだし」

 

「任せて。写真機をセットするからちょっと待ってね」

 

 シャルロットが写真機を用意する。大切な思い出になるからか、いつもより丁寧に慎重に。まだ皆と話す時間はあるだろう。

 

「そういえば、さっき言ってたナタのことだけどパイモンの考えすぎだよ。別に、ナタもフォンテーヌと大して変わらないさ。人間も住んでるし、独自の文化もある。ただそういう習慣だから、あそこの人たちはナタを離れようとしないんだ」

 

「でも、外から来る者は拒まないはずだよ。ナタへ商売や旅行に行ったことのある人は多くいたけど、みんな印象が良かったみたいだったからね」

 

「だぁ~!!一緒に喋るな!!おまえら声が同じだからどっちが喋っているのかわかんねえんだよ!」

 

 フィスとフリーナはどちらも元は魔神フォカロルスだ。同一人物である以上声は同じだし、喋り方も似ているから意識しないとどちらが発した言葉なのか分かりにくい。

 

「昔は、うちのメンバーも結構ナタに行ってたみたいよ」

 

 《棘薔薇の会(スピナ・ディ・ロースラ)》のメンバーもナタに行ったことがあるんだ。

 

「なるほどな、なら安心だぜ。次こそ、これまでの旅みたいに到着早々事件に巻き込まれないといいんだけどな」

 

「確かに、旅人様の旅はいつも何かしらの事件と共に始まっていましたからね」

 

 今まで共に旅をしてきたパイモンとラモールが言うように、これまでの旅は事件とともにあった。だけど……

 

「{…) 出発前にそんなこと言わないで」

 

「大丈夫だ。あなたたちの経験と腕なら、何があったとしてもきっとすぐに解決できる」

 

「ええ、今までも様々な事件を乗り越えここまで歩んで来たではありませんか」

 

「まあ、それでも危険がないに越したことはないさ。楽しく食べたり遊んだりするのも旅の醍醐味だからね」

 

「僕も旅してみたいなぁ。ずっとカーディナルの中にいたから外の景色をもっと見てみたいよ。まあでも、僕がカドゥから離れられなくて、カドゥはフリーナの側から離れない以上無理だけどね」

 

「準備オッケーよ。さあ、撮りましょう!」

 

 シャルロットの準備が整ったようだ。フィスにはナタから帰ってきたときにナタで撮った写真を見せてあげよう。

 

「それじゃ、旅人───」

 

 ジジジ、とタイマーが巻かれる音がして、それから勢いよくシャッター音がなる。

 

「「「「「「いってらっしゃい」」」」」」

 

 思い出の写真が一枚増えた。今度は風で飛ばされないように、大切にしまっておこう。

*1
「……一つだけ聞かせてくれ。なんで、戻って来たんだい?」

 

「本当のところ、私の記憶は真の意味で消えてはいないのです。思い出せないように鍵のない錠をかけて頭の奥底に封じた。思い出せないなら消えているようなものでしょう。ですが、頭の奥底にあるその記憶が、旅の間ずっと叫ぶのです。フォンテーヌに戻れと」

 

「君は……」

 

「フォンテーヌに戻ったその日、フリーナ様のお姿を見た時になぜ私の記憶がそう叫んでいたのか、記憶がなくとも理解したのです。私の旅の目的、私の死に場所は貴女の隣にしかありません。さぁ、お戻りを。この先何があっても、お静かに」

*2
アチーブメント達成

voyage de la mort

惜しむべき友人の死と、祝福すべき誰かの復活

※「予言」の結末を見届ける

*3
アチーブメント達成

また一人、夕焼けに溶ける

「死」の友人へ。「枝を拾う者」より。

※ダインスレイヴに伝言を伝える

*4
アチーブメント達成

水を一杯

長い旅の友よ、さようなら

※ラモールと別れる




カドゥ▶フリーナについて1
「フリーナ様ですか。とても強いお方です。私が二度壊れた五百年を、一度も狂うことなく過ごしきった。この偉業は永劫称えられるべきであります。ですが、その……神として振る舞うお姿は少々痛々しく、一刻も早く辞めて欲しいと思っておりました。「水の娘」の公演を観てくださった旅人様であれば分かると思いますが、フリーナ様は本来はあのような生き生きとした演技をなさるのです。しかし、神として振る舞うフリーナ様の演技は下手なものでありました。神とは貴女のことで、貴女の振る舞いがそのまま神の振る舞いになるのだからありのままで良いとお伝えしては居たのですが」


カドゥ(フィス)▶フリーナについて2
「僕もね、悪いことをしたと思っているんだ。フリーナにはこの五百年の苦痛を忘れるぐらい素敵な生涯を過ごして欲しい。いや、違うな。僕たちでフリーナのこれからの生涯を良いものにしていくんだ。なにせ僕はフリーナの姉妹であり、親のようなものでもある。カドゥなんて僕が作ったんだから僕の子供さ。ん、何?いや異論は認めないよ。キミもフリーナも僕の子供さ。そして、子の幸せを願わない親なんて親じゃない。僕はこれまでキミたちに酷い役目を押し付けて来た。だからその分、五百年分の幸福を祈るよ。……当然、その中には僕の幸せだって含まれてる。そうしないとキミたちは納得しないからね」


カドゥ▶ヌヴィレットについて1
「ヌヴィレット様ですか。その、今はあまり会いたくはないですね。「予言」のあと、ヌヴィレット様とのお茶会は何度か開かれたのですが第一回目が私とフィス様が延々と詰められるだけの場になりまして……最終的にあまりの圧に一言も発せられなかったフリーナ様が泣き出してしまったことでお開きになったのですがそれ以降もヌヴィレット様の目が怖く……。……フリーナ様はこれから人として生きていきます。そのうちで婚姻を結ぶこともあるでしょう。その相手として一番はやはりヌヴィレット様でしょうから、そうなった時のために今のうちに関係を修復しておいた方がいいのでしょうか」


カドゥ(フィス)▶カドゥについて
「信じられるかい?この子本心からそう言っているからね。ヌヴィレットは確かにフリーナが信頼する相手の一人かもしれないけど、でもキミはそれ以上に信頼されてるよって何回言っても「私はフリーナ様を三度裏切っていますから」の一点張りだ。……残念ながら人形であるカドゥと僕には子供を作る機能はないから、結婚したとして子供を持つことはできない。歌劇とかでも子供は幸せの象徴として扱われるからね。そういうところも気にしてはいるんだろう。でもまあ、結局のところカドゥが渋るのは自責の念が大きいんだろうね。そこをどうにかするいい方法、知らないかい?」


カドゥ(フィス)▶ヌヴィレットについて2
「いや、ヌヴィレットがいてくれて助かったよ。「予言」について、その最大の功労者はフリーナに違いないが、彼がいなければこの美しい水の国は救えなかった。勝手に最高審判官の席に付けた事は悪いと思っているけど、彼も満更ではない様子だし良いだろう?……僕の審判についてはもう少し待って貰うことになった。そうだね、フリーナが永い眠りに着いたあと、このフォンテーヌに降る大雨が止んだら、僕は彼に裁かれよう」


カドゥ▶ウェンティについて1
「ウェンティ様ですか。そうですね、私に神の在り方を魅せてくれた方でしょうか。旅を始めてから最初に出会った神であり、自由の国にふさわしい自由な神でありました。その結果魔神バルバトスであると信じて貰えていませんでしたが。……まあ、あの方に出会えたからこそ、ラモールはフリーナ様の審判に踏み切れたのです。あの遺跡において私とラモールの決断は違いましたが、しかしフリーナ様をあの下手な神の演技から解放し、ありのままの彼女が受け入れられるようにしたいという目的は同じだったのですよ」


カドゥ(フィス)▶ウェンティについて2
「魔神バルバトスかい?過去に一回だけ会ったことあるよ。でも当時の僕はエゲリアの眷属の純水精霊だったから、彼は覚えていないだろうって思ってたけどバッチリ覚えてたね。吟遊詩人やってると人のことよく観察出来るのかなぁ、五百年間カーディナルの中にいた僕を一声聞いただけで見抜くなんて。……彼、僕が見ない間に変わってしまったね。いや、元々こんなだったかな?ごめん、僕は彼ほど他人を観察出来るわけでも、それを覚えておけるわけでもないようだ」


カドゥ▶ナヴィアについて
「ナヴィア様ですね。あのあとフリーナ様との関係も良好で、たまにお茶会を開いたり、フォンテーヌ廷で共に買い物をするような仲にまで発展しております。ですが、ポワソン町と我々の関係はあまり良くなく……。その原因は私ではありますが。あの審判の場で私が予言を推し進めた水神であると言ってしまったのが良くなかったらしく……ただ、フリーナ様単独であっても「なぜ予言は止められたのにポワソン町が沈むのは止められなかった」と言った意見が多く、関係の改善のためにナヴィア様に奔走していただいて……本当、迷惑をかけてばかりです」


カドゥ▶クロリンデについて
「クロリンデ様には剣技の指導をしていただいてます。かつてはクロリンデ様だけでフリーナ様の護衛を行っておりましたが、私もフリーナ様の側付きでありますから戦えるようにと。最強の決闘代理人直々に教えていただけるのです。これ以上の幸運がありますか。ただ……一緒に教えを受けていたはずのフリーナ様は最近はずっと椅子に座ってこちらを応援してばかりですが」


カドゥ▶「召使」について
「「召使」様ですか。私が不在の間、フリーナ様が大変お世話になったとか。お茶会に招かれるたびにフリーナ様がお好きなケーキを持ってきていただいたそうで……今度お返しをしたいのですが、あの方は何を好まれるのでしょうか」


カドゥ(フィス)▶「公子」について
「ごめん」


カドゥ▶リネとリネットについて
「素晴らしい手品でした。今この状態は最高の結果ではありませんが、最善の結果です。こうなれたのも、あの審判で最高の手品を披露してくださったお二方のおかげです。改めて礼を申し上げたいですね。今度歌劇場で奇劇を披露する際にでも、直接お礼を言いましょうか」


フリーナ▶カドゥについて
「下手…?僕の演技が下手だって?下手なのは君の方じゃないか。なんだい、あの時の審判での振る舞いは。黒幕は自分です、どうぞ裁いてくださいなんてのこのこ出てくるやつがあるかい。……まあでも、帰って来てくれて嬉しかったよ。もう一度僕を選んでくれてありがとう、カドゥ」


フリーナ▶フィスについて
「「鏡の中の僕」ってもっとこう……神秘的な存在だった気がするのだけど、実際に一緒に生活してみてそんなことないって分かっちゃったよ。なんというか少し高慢で、だけどわずかな慈愛もあって……お姉ちゃんってこんな感じなのかな」




カドゥは星4の風・法器のキャラクター。全体にバフを撒いたあとランダムなキャラ単体(水・片手剣のキャラを優先)を追加でバフする。ランダムとはいうけど優先度はフリーナ>水旅人>水・片手剣キャラ>水以外の旅人>片手剣キャラ>水元素キャラ>その他のキャラ。だけどフリーナとあんまり噛み合いが良くなくて別のパーティーでフリーナ以外のキャラをサポートする役目に回されがち。水旅人ともあんまり相性がよくない。そんな感じの性能で考えてる。
腰に差した石剣は飾り。というか神殺しの剣なんて厄ネタ振り回せるわけがない。
フリーナは掴めし明光で引けました。書けば出るって本当なんですね。これ書いてなかったらすり抜けてたとか怖すぎる。
餅は天井叩かされたけど。

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