陽だまりに焦がれて   作:oir.1

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皆さんお久しぶりです。今回は本当に最後の投稿として番外編としての話をひとつ投稿しました。


読む際の注意点としては
この【陽だまりに焦がれて】の《破壊神ビルス・少女の追憶編》を既読しておくことを強くオススメします。(物語忘れてしまったよーって方も是非)

あと皆さん色々な感想,ありがとうございます。まさか未だに感想が貰えるとは思っていませんでした。

では最後の番外編を是非楽しんで見てください。






番外編
月夜に絆されて


 

 

 

「ねぇ!お父さんってどうしてお母さんと結婚したの?」

 

「へ?」

 

ある日。家の外で息子と組手をしている最中,ふと自身の息子である悟飯から言われた言葉につい間抜けな声を上げてしまった。まだまだ幼い息子から問われた予想外の質問に首を傾げる。

 

「……どうしてって言われてもな〜…」

 

「……?」

 

ハッキリとした言葉が出ない。なぜなら自身が嫁と結婚した理由は本当になにか理由があったわけじゃないからだ。

……天下一武道会で牛魔王の娘であったチチからプロポーズされ,結婚の意味をしっかり理解し,その中でふと頭に浮かんだのはあまり初対面の人間を覚えるのが得意じゃない自分でも何故か一際印象に残ってたあ(・)の(・)少(・)女(・)だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私の傍に居てくれる家族が欲しい』

 

……ルナ。自身がドラゴンボール探しの旅に出て初めて出会った普通の少女。幻想的な花畑で聞いた彼女の願いと笑顔が何故か自身の頭から離れなかった。

 

 

 

ーーー結婚というのは,家族になるということ。

 

 

自分には特に人助けを進んでしようなどという善意の心は無いが,その時ふと"ならオラが結婚したらルナの願いは叶うんかな"なんて柄にもなく思ってしまった。

……そしてそのまま流れで自分とルナは結婚した。

 

 

 

「うーん……」

 

 

妻によく似た綺麗な瞳を向けてくる悟飯から顔を逸らしつつそのまま言葉を詰まらせていると,明るく鈴を転がすような綺麗な声が聞こえた。

 

「悟空くーん!晩御飯出来たから早くお家に入ってきてー!」

 

「…あ。ほら悟飯!母さんがご飯出来たってよ」

 

「やった〜!僕お腹ぺこぺこー!」

 

そう言って家に駆け込む息子を見て,何とか質問を流せたことにふぅ…とつい安堵してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーこれは月夜に絆された陽のお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「今日は良い天気だね〜」

 

「あぁ」

 

街を歩く仲むずましい夫婦。それに加えお互いに容姿もそれなりに整っており,夫の方がかなりのガタイだというのもあるが周りからはそこそこ視線を集めている。

だがお互いマイペースな夫婦はそれを気にすることはない。

 

「悟空くんは何処行きたい?」

 

「いやぁ…オラはこういう場所よく分かんねぇし…ルナが行きてぇ場所でいいぞ」

 

「せっかくの夫婦水入らずなんだから悟空くんも遠慮なく言ってね?」

 

「うーんじゃあオラは腹減ったし,飯食いてぇなぁ〜」

 

「ならあそこのレストランでも行こっか!」

 

今日は悟飯を人並みに外の世界に慣らさせるという意味を込めて保育園に預けている日だ。要するに久しぶりの夫婦水入らずの外出。

……あの悟空が普通の私服を着て妻と街中でデートをしている。もし観測者(原作知識を持っている者)が見れば甚だ有り得ないと叫ぶ光景だろう。

 

今日のような日は定期的にあることだ。悟空はルナと結婚してからは割と家にしっかりいるし,何よりこのような家族サービスも意外とする。別にそういうことをしなければいけないと理解してる訳じゃない。

ただ自身が修行に出ていく時に見せる妻の寂しげで切なそうな表情が少し引っかかるだけだ。

 

 

 

思えば,ルナと結婚してからの自分はかなり変わったような気がした。

畑を耕して働き,賃金を稼ぎ,妻の料理を食べ,息子と偶に組手をし,偶には妻と出掛け,夜には妻と寝る。そして毎日日課のように軽く修行を行う。

悟空には分からないことだが,正しく今の悟空は普(・)通(・)の(・)人(・)間(・)と(・)変(・)わ(・)ら(・)な(・)い(・)生(・)活(・)をしていた。

 

 

 

 

 

最初は少し大変だったし,面倒だったし,何より自身が大好きな修行をしたかった。今もその気持ちは変わらない。

 

 

 

 

 

 

だが………

 

 

 

 

 

 

「美味しいね♪悟空くん♪」

 

自身の傍で幸せそうな笑顔を浮かべるルナを見るのは……少し悪くないと思い始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

「そんな心配すんなよ〜……ルナ」

 

「………だってっ…!こんなボロボロでっ…!1回死んじゃって生き返ったばっかりなのに……っ…!」

 

サイヤ人との戦いに決着をつけた悟空は相手側の親玉であるベジータに辛勝し,今は仙豆がないこともあって仲間たちと共に病院に向かっていた。……だが自身の妻であるルナが異常に自身を心配していて仲間たちの申し訳なさそうな視線も合わさり悟空は少しバツが悪かった。

 

「……でぇじょうぶだって!最悪ドラゴンボールがあるしな!」

 

嘘だ。ドラゴンボールは1度死んだ者は生き返らせられないし,何よりサイヤ人との戦いでピッコロが死んだためもう地球にドラゴンボールは無い。それを知らないルナを安心させるための方便だ。

 

「……そんなの知らないけど…っ…!もし生き返るとしても……1回死んじゃった事には変わりないんだよ!?痛いし,辛いし,苦しいのは……無くなんない……っ…でしょ!?」

 

「!」

 

ドラゴンボールで生き返れる……それに対してこんな風に言う人間を悟空は仲間たちを含めて知らなかった。

 

「……うぅ…………ばか……」

 

「……………… 」

 

自身に蹲って涙を流すルナ。

その綺麗な淡い藍色の瞳から流れる雫を見て悟空は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルナ……」

 

 

 

 

 

 

ーーー何故か喜びの感情を持った

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が敵と戦って……こんなに心配してくれる奴なんて初めてだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いた?……私がいるからね」

 

「あぁ……サンキューな」

 

セルゲーム直前。何故かふと気分が優れなくなってルナに縋ってしまった日。その理由は今でも分からないままだ。

戦いに怖気付いた?……今までの自分では有り得ないことだ。そのままそばに居るルナの柔らかな体を抱き締めながらボーッと考える。

 

 

 

 

「……ふふ抱きしめる力,強いね。ねぇもっと抱きしめて……」

 

「…………」

 

 

 

 

何となく気分が悪かった,人肌が恋しかった。それは心臓病で死にかけた時も傍にずっと寄り添ってくれたルナの暖かさを思い出したからかもしれない。

 

はたまた自身が本当に死んで,この世から居なくなってしまう未来を知ったからかもしれない。

 

もしくは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーールナとずっと暮らし続けて自身が弱ってしまったからかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

肉体が……という意味だけでは無い。一番は心の話だ。

 

 

 

 

何も知らない少年であった自分がブルマによって外の世界に連れ出されて色々な事を知って,色々なヤツと出会った。

でもそれは知っただけだし,出会ったヤツらだってみんな変わった奴らばっかりだった。

 

 

「あっ…………悟空く……っ!」

 

「…………」

 

「ふ……っ……う…………」

 

絆された表情で熱を帯びた瞳を自身に向けてくる彼女に口付けをしながら思う。

 

 

 

けどルナはそれらとは違う。ルナと一緒に暮らしてからは自身もその外の世界に実際に触れ合う経験も多く,一般の地球人達の生活を間近に見てきたし,何よりルナ自身が何処までも普通の女性だった。

 

世間知らずで,戦闘狂で,どっか抜けてて,普通とはかけ離れてて,規格外で,サイヤ人である普通とは反対の性質である自分が普通の生活と人並みの幸せと何よりも人の心を手に入れてしまった。

 

修行も満足に出来ず,色々縛りが多く不満に思ってた生活も今では,悪くないと思ってしまっている。

……自身を心配してくれて,自身のために泣いてくれて,自身のことを何処までも真っ直ぐ想って愛してくれる妻の笑顔が好きになってしまっている。

 

 

 

「……はぁ……ふぅ…………悟空くん…………いつか……悟空くんが悪いやつらと戦わなくてもいいようになったらいいね」

 

「…………」

 

「…………ふふ……疲れちゃった?でもいつか悟空くんが望むような日々を過ごせたらいいなって……心の底から思ってるよ」

 

そんなことを言われるのも初めてだった。地球を護る事を特に疑問に思うことは無かったし,どうしようもない悪いやつらを倒すのは自然と自身の役割になることが大半だった。

仲間たちもそれを疑問に思わないし,何なら頼りにしてくれていた。それを自身が不満に思ったことは無い。

 

けどルナはそんな自分を望まない。地球に悪いやつらを呼び寄せてる気がする自身に対してもルナはそんなの関係なく自身のことが必要だと,傍にいてくれと抱きしめてくる。全て初めての経験だ。

 

 

 

 

 

ーーー何故かそれをどうしても嬉しく思ってしまう

 

 

 

 

 

 

戦いは好きだ。強いヤツと戦いたいのも本音だ。でもルナと過ごす普通の幸せな生活も好きになってしまった。前までは苦手だった都などの街を歩くのも,ルナが傍に居れば何となく幸せで楽しい気持ちになった。

 

それが良い事なのか悪い事なのか分からない。けど間違いなく普通の幸せと人の心を手に入れた自分は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー主人公(戦士)では無くなってしまった気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

「…………なぁルナ」

 

「なぁに?悟空くん」

 

息子である悟飯がブルマの元へ行っており,2人きりでやってきた自分とルナの思い出が詰まった花畑。お互いが初めて出会った場所で,2人だけの結婚式をした場所。

そこで悟空はルナに今一度聞きたいことがあった。

 

 

 

「…………おめぇは今何か叶えてぇ願い,あるか?」

 

 

初めて出会って初めて ここに来た日に問いた言葉を悟空はルナにもう一度聞いた。あの時はただお互いに夢を語ったようなモノだが,ドラゴンボールが身近となってしまった今では本当に叶えられる可能性がある問いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ないよ」

 

ルナは迷わずに言った。

 

「何もないよ」

 

ルナが自身にするりと撓垂れ掛かる。

 

「あなたがいれば私は何もいらない」

 

自分(オラ)はもっと強くなりたいはずだ。

 

「あなたが私の願いを全て叶えてくれたから」

 

強いヤツと戦うのが好きだ。

 

「なんでも願いを叶えてくれる神龍だっけ?でも私にとってのカミサマはあなただから」

 

戦いが……好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してるよ悟空くん」

 

ルナのことが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「………まいったなぁ…………ここまでか……ただアンタの世界に足を踏み入れられなかったのは残念だったなぁ………」

 

 

 

「潔いいねー君。でもキミには健闘賞をあげようと思ってるんだ」

 

 

 

「……健闘賞?地球を見逃してくれんのか?」

 

言い訳のしようのない完敗。こんな敵は初めてだった。

ピッコロよりもベジータよりもフリーザよりもセルよりも魔人ブウよりも比べ物にならない圧倒的力……それを今悟空は知った。

 

 

 

「あぁ地球は見逃してあげるよ。ここまで僕と戦えた奴もいなかったことだしね。」

 

 

 

「本当か!?」

 

 

 

「でも……微妙だったのは事実だ。ただ見逃す訳には行かない。なんせ破壊神の機嫌を損ねたんだからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーだから孫悟空。君の命1つで許してあげるとするよ

 

 

 

 

その言葉を聞いても特に取り乱すことはなかった。それより思い浮かぶのはもう少しちゃんと修行をしていればこの破壊神にも認めて貰えたかな……?という自問自答。

 

でも……すぐにその疑問は飲み込まれた。なぜなら自分は戦い以外にも人生を費やした事に一切後悔なんてしてないからだ。

 

 

「ははっ……そうか。悪かったなぁビルス様。わざわざここまで待ってもらったのに期待外れでさ。オラも次があったらもっとアンタといい勝負できるくれぇ強くなれたらいいなぁ………地球を見逃してくれてサンキューな。」

 

 

 

「今回だけだよ。……あと期待してる所悪いけど破壊神に破壊された者はドラゴンボールでもなんでも生き返ることは出来ない。君の魂はこの場で破壊される。」

 

 

 

「………あぁでぇじょうぶさビルス様。」

 

唯一後悔があるとすれば妻を置いていってしまうことだろうか。彼女はサイヤ人との戦いやセルとの戦いで死んでしまった時の取り乱し方や弱り方が酷かった。自身が本当に居なくなってしまえば壊れてしまうかもしれない。

…………でも彼女ならきっと時間はかかってもいつか前を向いてくれる。悟空はそう確信する。なぜなら彼女はどこまでも真っ直ぐで一途な想いと何よりも優しさを持っている女性だからだ。

 

悟空はルナを信頼している何故ならーーー

 

 

「……あぁそうだ。最期に1つだけ………ルナ」

 

 

 

「ぇ………」

 

 

 

「最期まで心配かけちまって……おめぇにそんな顔させちまって悪りぃな…………本当にすまねぇ……あと………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーオラもちゃんと愛してたぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分はルナを愛してるからだ。何よりも1番……愛している。そう自身に迫る紫色の光をぼんやりと眺めながら想う。

 

 

 

 

『お父さんってどうしてお母さんと結婚したの?』

 

いつかの悟飯から問われた質問をふと思い出した。

あの時は言葉を詰まらせて答えられなかったが,今なら迷うことなくその理由を告げられる。それは……

 

 

 

 

 

ーーー愛してる

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーたとえこの世から魂事消えようと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー自分がルナを愛したことは間違いじゃない

 

 

 

 

 

 

ーーールナと過ごした幸せな日々を後悔していない

 

 

 

 

 

 

ーーー戦い以外の幸せを知ってしまったことを後悔していない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー彼女と過ごした時間全てが自分にとっての幸せだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして最期に自身を想い悲痛な表情を向けて手を伸ばすルナの姿が悟空の瞳に写り……孫悟空の魂は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは月夜に絆された陽のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーこれは何処までも特別で偉大で規格外だった主人公が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通で,平和な人並みの幸せと心を手に入れて1人の人間になったお話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








今回この小説を投稿した理由としてはルナが元々いた世界の話やルナの世界の悟空の描写が割とあっさりとしてたのでそこを深堀した番外編となります。

嫁の違いという少しの違いで,原作と全く同じ物語の流れでも全く異なる心情を持ち成長した孫悟空の人物像を描いたつもりです。
その果てに待っていたのは破滅でしたが,この世界の悟空にとってそれは決して不幸ではなかったはずだと思いますね。



では今回でこの小説は完全に完結となります。皆さん応援や感想ありがとうございました!


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