後半20分。ナナニジが3−1で勝っている。
先程の圧倒的なドリブルからのゴールを見せられた相手は悠希につきっきりだ。少しでもドリブルを始められては困る、という共通認識ができている。
紡久は、バテてきているみかみを紅葉へ、月渚をジュンに変えた。交代枠は三つなので、これでベンチ要員を出すことはできない。
悠希は巴から貰った縦パスを真紀に落とす。真紀は足裏で並走する相手を外し、逆サイドの鈴音へボールを出す。
鈴音は中に運ぼうとする。
ジュン「スーちゃん!」
右サイドから上がってきたジュンにボールを出した。
ジュンは走る。縦に走る。悠希みたいにボールが足元へいるわけではないが、速い。そのままエンドラインまで一直線にドリブルをした。
もちろん相手サイドバックとついてくるが、ジュンに走力で勝ちきれない。そのままジュンがクロスを上げる。
しかし、走ってきた悠希には渡らない。キーパーにボールがわたった。キーパーは前にボールを出す。
カウンターだ。
ジュン「や、やばいよ」
ジュンが上がっていた右サイドはがら空きだ。そこを相手フォワードが流れボールを貰おうとする。
キーパーからボールを貰ったボランチが縦へボールを蹴った。
さっき麗華が弾いたボールを、中盤の戻りがなく拾えなかったことがあった。そこをみた紡久がもっとボールを前で奪うため、中盤と最終ラインの間延びを防ぐため、デイフェンスラインを上げた。
そのことによって、更に後ろのスペースができてしまって走られる。相手のシュンソクフォワードに渡ってしまったらそれだけで危険だ。
しかしこちらには、足が速く、ボール奪取能力に優れたセンターバックがいる。麗華だ。か
悠希に比べて加速力はあまりなかったが、トップスピードは変わらない。最初は裏を取られ、空いていた敵との距離がまたたく間に狭まってくる。相手にボールが渡れば更に縮まり、ついに麗華が追いつく。
敵はドリブルで抜こうと仕掛ける。しかし━━━━。すぐにボールを取られてしまった。麗華の対人能力はものすごく高い。
そして前へボールを出そうとする。
絢香「お前!」
絢香が驚いた。麗華が出した巴には後ろから敵が出てきて、そのままインターセプト。
麗華「しまった……」
せっかく奪ったボールが悪い形で相手に奪われピンチに。麗華は敵に一直線に向かう。そしてまた奪った。
絢香「こっちだ!」
とったボールを今度は繋げた麗華。
紡久「全く相変わらずだな……」
ベンチからはそんな呟き。
絢香は前に出て、今度はウインガーの紅葉へパス。紅葉は相手を背負っているのを見越して、真横にいる悠希へパスを出そうとした。しかし、囲まれている人間へのパスが簡単に通るはずもなくセンターバックに引っかかる。
しかし、眼の前にいた真紀が、引っかかったボールを奪い取る。そのままボールに触ったセンターバックを抜いて、前へ。
サイドバック二人が中により、悠希、紅葉、鈴音と合わせて四体三で数的有利。しかし後ろからボランチが戻ってきてぐだぐだしてればすぐに数的同数だ。
真紀はセンターバックとサイドバック間を通す。走っていた紅葉へパスを出した。オフサイドは無い。
紅葉はボールを持つと更に前へ。そして斜めへ。サイドバックが食らいつく。
そしてゴールのほぼ真横まで来てクロス! しかし相手に当たり、出る。コーナーキックだ。
紅葉はボールを悠希に渡しゴール前へ。悠希はコーナーへ蹴りにいく。
コーナーに当てるため、長身のセンターバック二人がゴール前へやってきた。
ゴール前には十五人近くが密集している。悠希はそこを見て、ボールを蹴らなければならない。
悠希はゴールキーパーの位置を見る。自分が右利きなので、曲がるときは、ゴールに近づくようになるのだが、それすらも取ろうと少しゴールに出ている。
だから。
笛の音が鳴る。そして悠希が蹴る。ボールは高めで速い。キーパー取れないと判断し、ゴールに戻る。
そしてゴール前へボールがいる。そのボールに反応したのは━━━━。
麗華「ふぅうん!」
麗華だった。もちろん今までのヘディングの強さから警戒されていたが、流石に良いボールが来てしまっては対応は不可能。
ヘディングシュートをゴールに打ち込んだ。