22/7 時計の時間   作:友だち

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その怒りは縋りつくように

みうたちが薫子を迎えにいって数分。すると、紡久のもとへある人物が話しかけた。

 

「紡久か━━━━」

 

紡久「凌駕━━━━!」

 

麗華「知り合い?」

 

紡久「ああ。学校は違うけど、同じサッカー仲間の恋水凌駕(こいみず りょうが)だ」

 

凌駕「もしかして紡久。ナナブンノニジュウイチの監督してるのか!?」

 

あかね「ナナブンノニジュウ“ニ”です。以後ナナニジと」

 

凌駕「そうか。すまなかった。━━━━」

 

あかね「なんですか?」

 

凌駕「いや、いい体してるなって」

 

麗華「ちょ」

 

ジュン「うえ」

 

絢香「はぁ」

 

場が一旦固まる。

 

都「なんやなんやこいつ。ごっつー積極的やな!」

 

つぼみ「軽そう……」

 

紡久「すまん。こいつはナンパ星人なんだ」

 

愛守香「ちなみにあたしも初対面でこんなふうに言われました」

 

桜「ナンパって? Wow! So dangerous! まさかこの人何回も海で━━」

 

ジュン「最低だよ! どうせ自分が高身長でイケメンだから、適当にそこらへんの女の子に声かけてればOKもらえるなんて思ってるだよ。私は、そんな男に絶対に引っかからないんだからね」

 

凌駕「そう言われちゃあ困るなぁ。俺だってちゃんとかわいい子の中でもちゃんと選ぶのに……」

 

絢香「で、その選別方法は? どうせろくでもない基準なんだろ」

 

凌駕「簡単だ。今流行りのファッションをしている人たちかな。ここら辺は大体がモテたいと思っている女子たちだ。だから今風の格好をしとけば、イケてる女子と思われるのでは? みたいな娘がいるってことだ」

 

つぼみ「うわぁ……」

 

都「あかん! 完全につぼみんがドン引きしとる!」

 

彼らの絡みに、数人の後輩たちとみかみと悠希はポカンと聞いていた。

 

みかみ「なあ、ゆーちゃんはナンパされたことってあるんか?」

 

悠希「いやあ。僕なんかアイドルになるって言われたら周りの目が凄い変わったくらいだからなあ。未だにかわいいが何か分からないこともあるし…。みかみは?」

 

みかみ「うちはな。一昨年くらいやったかな。金髪でサングラスかけた、お兄さんにキャバクラに誘われたことがあってなぁ。一緒にいたねーちゃんが断ってたんやけど……」

 

悠希「それはナンパというより怪しい勧誘だな……」

 

陽夏莉「なるほど。つまりは陽夏莉は最新の流行を徹底的に調べ上げた今風女子になれば沢山の男性ファンが増えるというわけですね。これこそニコル先輩が言ってた『もっと多くの人に見られるということを意識しろ』という━━━━」

 

晴菜「陽夏莉ちゃんは少し黙ったほうがいいと思います。それとつぼみ先輩のあんな顔初めて見ました……」

 

するとニコルたちがこの場に来る。

 

ニコル「ちょっと。何よこれ?」

 

奈々「これはいけませんね……」

 

ミコ「またやってるよ」

 

ニコル「?」

 

 すると、ニコルは凌駕と目が合う。

 

ニコル「もしかして丸ノ内さんたちの監督さん?」

 

つぼみ「ニコっちヤバいって!」

 

都「いや、割とここは言わせとったほうがええような……」

 

凌駕「ああそうさ。ところで君の名前は?」

 

ニコル「斎藤ニコル……」

 

凌駕「ニコルのその凛々しい感じ、俺めっちゃ好きだわ。よかったら俺と一緒にどこか遊びに行かないか?」

 

 少しニコルは黙った。

 

麗華「ニコル! 一見良さげな男に見えるけどついていっちゃだめよ!」

 

絢香「どんな一見でそう見えるんだ……」

 

ニコル「あなた……」

 

紡久「あなた……?」

 

ニコル「あなた舐めてるの?」

 

もの凄い形相をしていた。

 

ジュン「あわわわ」

 

都(やっぱりニコるんぶち切るわな)

 

ニコル「アイドルとそんなことすればどうなるか分かってるの? アイドルに恋愛なんか禁止に決まってるじゃない! 変な報道なんか出てこっちの信頼が落ちたらどうなるの……!」

 

真紀「もっともすぎるわね……」

 

紡久「そこまでにしておけ。言っただろ。こいつらはアイドルだ。変なこといって、変な報道出たらどうするんだ」

 

凌駕「まあ、これ以上言ったら信頼がさらに下がりそうだからな。やめとくわ」

 

あかね「まあ、これ以上落ちることはないと思いますが」

 

凌駕「めっちゃ言われたな……。ところでお前のところは試合終わったのか?」

 

紡久「ああそうだ。言っとくけど、初戦勝ったからな」

 

凌駕「ええやん。俺もこれから勝ってくるわ」

 

紡久「選手のメンタルは大丈夫か?」

 

凌駕「大丈夫だ。そういうお前はどうなんだ? まさか自分の好きなサッカー押し付けて崩壊させるつもりなんかじゃあないよな」

 

凌駕「お前もしかして━━━━。ナナニジのメンツでバルセロナのサッカーするつもりか?」

 

紡久「それが何だ」

 

凌駕「やめとけって」

 

紡久「何でだ」

 

凌駕「できやしない。こいつらはまだ初心者だ。仮にできたところでどうせ優勝なんかできやしない」

 

紡久「やってみなくちゃ分からないだろうが」

 

凌駕「じゃあこん中からチャビやイニエスタ、ブスケツが生まれるっていうんか? あのチームは奇跡の賜物だ!」

 

紫苑「何だか険悪ムード……」

 

桜「何だか大半なことに……」

 

悠希「バルセロナ……」

 

 悠希と愛守香以外の人たちはポカンとしていて聞いていた。

 

愛守香「紡久! 怒りすぎだって! バルセロナのこと悪く言われて怒ってるんでしょ」

 

幼馴染の静止は意味をなさなかった。

 

紡久「じゃあプレミアのチームにあんなサッカーができると思うか? あんな選手が下部組織から生まれて来ると思うか? ペップシティでも厳しいだろうなぁ!」

 

凌駕「だったらそっちはどうなんだ! チャビが監督になったからって変わるのか? あのサッカーができたのはペップがいてこそでもあるからな!」

 

紡久「絶対チャビなら実現させてくれる」

 

凌駕「実現させたところで勝てやしないけどな。今の欧州じゃプレミア勢にフィジカルで潰されて終わりだ。クライフの意思が全世界に広がってる今じゃあ、すでにバルセロナは時代に取り残された古豪なんだよ! 哲学に溺れながらELで満足してろ」

 

紡久「確かにバルセロナのサイクルは終わった。だがチャビなら新しいサイクルを作ってくれる。CLだってこれからも出続ける! いつか必ずビッグイヤーを掲げる時がくる」

 

凌駕「無理だろ!」

 

紡久「無理じゃない!」

 

ここでみうたちが合流してきた。

 

薫子「揉めてる━━━━?」

 

凌駕「どうせグループステージなんて突破できやしない。何がディナモ・キエフに勝っただ。何がベンフィカに次勝てれば進出だ。ベンフィカにあれだけボコボコにされるとか、メッシがいなければ何もできやしない。どうせ突破したところで最後のバイエルンに、またボコボコにされる!」

 

紡久「やめろ!」

 

凌駕「今回はバイエルンのホームか。前回は0−3だったな。そしてその前は━━」

 

紡久「やめろって言ってんだろぉ」

 

紡久が凌駕に襲いかかる。

 

愛守香「やめて!」

 

愛守香が止めにかかるが間に合わない。このまま大問題を引き起こそうとしたその時。

 

薫子「やめなさい!」

 

薫子が二人の間に入って静止させた。

 

ミコ「薫子さん!」

 

奈々「やっと来てくれましたか」

 

 一触即発の雰囲気を、たった一人の少女が消した。

 

薫子「二人ともこんなところで喧嘩なんてだめでしょ! 全く」

 

紡久「すまん……」

 

凌駕「すまないな」

 

 さっきまでの煽り合いが嘘のようだ。

 

薫子「それじゃあ私たちは試合に行くから。また、戦うことになったらね」

 

ジュン「そういえば、シュシュと戦うのっていつ?」

 

あかね「こちらはBブロック。そちらは?」

 

奈々「こちらはDブロックです。ですので互いに一位か二位通過なら準決勝。それぞれ別の順位なら決勝ですね」

 

麗華「つまり、勝ち上がらないと当たらないってことね」

 

紡久「そうか、ならそこで結着剤つけてやるよ」

 

凌駕「望むところだ。去年の八月みたいに、絶望を味わらせてやるよ」

 

そうして両陣営は別れていった。

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