22/7 時計の時間   作:友だち

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邂逅

 グラウンドに集められた22人。

 

晴菜「あのーそろそろ私たちの監督が来るんですよね」

 

つぼみ「そうだよ〜」

 

紅葉「どんな人でしょうか……。触ってみたいです」

 

みかみ「せやなぁ」

 

陽夏莉「ああ、来たようです!」

 

 一人の男の子と、女の子がグラウンドにやってきた。

 

紡久「俺の名は飛口紡久。みんなと同じ高校生だ。よろしく」

 

愛守香「こんにちわ! 玉蟲愛守香です! ナナニジの大ファンです!」

 

心彩「ファンが来てくれるだなんて嬉しいだにゃ〜」

 

愛守香「後輩のみんなもライブ見てたよ!」

 

真紀「それは嬉しいわね。それであなた達ってJリーグのチームだったり、JFAの関係者だったりするの?」

 

紡久「いやぁ、実は違うんだ」

 

月渚「普通に監督とマネージャー募集って公式サイトに書いてあったぞ」

 

ニコル「ねえ先生、いい人連れて来れなかったの……?(小声)」

 

 すると先生は「予算が無い」とまた小声で言った。

 

都「それはしゃーないな……」

 

巴「そ、そうですよね……」

 

 お金のことに関してはこの二人、そして麗華が妙に納得していた。

 

麗華は二人に近づいた。

 

麗華「今日は来てくださりありがとうございます。私たちはナナブンノニジュウニ。私はリーダーの佐藤麗華と言います」

 

 お互いに手を出し合い、握手を交わす。

 

紡久「と、いうわけでこれからこのチームで優勝を目指すぞ!」

 

全員「おー!」

 

 

 

 

 

 まず紡久がやったのは、サッカーの基礎練習を沢山行うようにした。

 

 数名同士がある地点で向き合いながら、パスを向こう側に出して、出した方へ移動する。いわゆる「対面パス」という練習だ。

 

 ナナニジのメンバーたちはこれがボールを扱うのが初めてなので、殆どの人が独自の方法でボールを触ろうとした。

 

 しかし紡久は「違う違う」といってこの中で唯一の経験者である悠希を呼んで実践させた。

 

 紡久はボールを悠希に出す。すると、悠希は、動きながら、実にスムーズな動きで、ボールをトラップし、紡久に返した。

 

紡久「今ので、気づいたことはあるか?」

 

 その質問にほぼ全員が硬直した。何気なさすぎて、普通に思えて、特殊なことなど何もないように思えたからだ。

 

 そんな中、まず最初に手を上げたのが、

 

紡久「お、じゃあええとー。あかね、だっけ?」

 

あかね「はい。ボールを足元に止めるのではなくて、前に出しているということでしょうか?」

 

紡久「そうだ。まずそれが一つ。みんな動きながらプレーをしよう。悠希、もう一回」

 

悠希「ああ」

 

紡久「トラップあたりをよく見てくれ」

 

 そうやって、さっきと同じようにする。

 

紡久「このように、トラップするために浮かせた足。これを移動の一歩に使うんだ。そうすれば、スムーズにボールを出せるってことだ」

 

紡久「あまり名指しで言いたくないけど、初戦まで2週間しか無いから言ってしまう。特にできてないなってのが、麗華。ニコル。紫苑。晴菜。これくらいかな。悪いとは思ってるけど、頑張ってくれ」

 

紫苑「うう、私なんて結局、虫の箱の奥にちょっと見えるくらいの女の子なんです……」

 

桜「大丈夫だよ。やればできるって」

 

 そう言って慰めてあげる桜だった。

 

 実際紡久が徹底していい上げた結果、十分もすれば全員がそこそこできるようになっていた。

 

 それも当然。ボールタッチに集中すればいいし、パスを出す方向も決まりきっている。更に相手ディフェンダーがいないのだから。

 

 

 

 次に行ったのが四角パス。紡久は正方形になるように、コーンを置いた。愛守香が水を入れて持ってきたスクイズで給水したメンバーたちが、均等になるようにコーンの後ろに立つ。

 

 紡久は桜にボールを渡した。そして時計回りにパスを出せるようにコーンの後ろに立つ。

 

紡久「まずこのコーンは何だと思う。京子」

 

京子「わ、私ですか。そうですね。これも私が逸材だというがバレてしまったから聞かれてるに違いないわ。落ち着け私。今こそこれからサッカーとしても世界に羽ばたけるということを証明するまたとないチャンス……」

 

紡久「だ、大丈夫なのか……」

 

絢香「ああ、いつもの調子だ。許してやってくれ」

 

京子「そうです! これはディフェンダーです」

 

紡久「正解。というわけでこれで教えたいのは二つ。まず一つ目に━━」

 

京子「あれ! 意外とさらっといかれちゃった……」

 

紡久「一つ目に、相手マークを外すこと。ニつ目にプレーする方向にトラップするということだ。まず、桜がボールを受けたとき、または受けそうな時、こうするんだ!」

 

 紡久はコーンの外側へ急に離れ、「へい!」といってボールを呼び込む。そこに桜がパスをする。正確だった。

 

 そして紡久は左足でボールを触りすぐに右足でボールを蹴った。

 

 ボールを蹴られたのは、かすかで、ぴたりと止めていた。

 

紡久「それじゃあ、かすか、もう一度出してくれ」

 

 今度は反時計周りにボールが来る。

 

紡久「四角パスでは、まず行きたい方向を向いて、ボールから遠い方の足でトラップ。今は右足だ。もちろん足元に止めるんじゃなくて、行きたい方向へ。そしてすぐに逆足で、ここでは左足で、パス」

 

 動作がとても美しい。

 

紡久「これは初心者でもできるようなことだけれども、海外のビッグチームもやっているような練習だ。だから、絶対に気を抜くな。開いてる時間があったらこれをやれって言えるくらい大切な練習だからな」

 

ニコル「ボイトレと同じってことね」

 

鈴音「これは、永久の試練〈エターナルオーダー〉に取り組まなければ、待っている運命〈ディスティニー〉は蹴球術の崩壊の末路〈エンドオブコラープス〉ということね」

 

紡久「どういうことだ……?」

 

悠希「つまり基礎練習をしなければ、サッカーは成り立たない、ということを言ってるんだ!」

 

みう(いつも鈴音ちゃんの言葉を更にサッカーに言い回してさらにどういうことかってのを考えるけど……、今回は関係ない……)

 

 

 

 

 

 

 基礎練習が終わり、再び給水に入った。

 

ジュン「思ったより疲れるねー。これ」

 

月渚「そうだな。これは基礎的な体力を身につけるために皆で━━」

 

ジュン「山籠もりはいいよ〜」

 

 そうしてグラウンドの中央に戻ってくると、今度はマーカーが正方形に置かれていた。

 

紡久「これから鳥かごってのをやる。みんな外に四人、中に二人で合計四人してくれ」

 

 そういって入っていったのが、外側に悠希、ジュン、陽夏莉、真紀、内側に麗華、あかねが入った。

 

紡久「ルールは簡単。外側の四人が中の二人に取られないようにボールを回す。取られたらそいつと、そいつにボールを出したやつが次の鬼をする」

 

 じゃあやってみてくれ。そう言って紡久は真紀にボールを渡す。外側の四人は一辺ごとに一人となるように広がる。真紀から時計回りに、陽夏莉、悠希、ジュンだ。内に守備側の二人は、麗華は真紀の右足側、あかねはその逆側にいた。

 

 真紀はジュンにボールを出して始まった。ジュンは左足でトラップをする。

 

ジュン「ああ〜」

 

 ボールタッチがずれた上に、完全に二人に詰められたジュンは左足で真紀戻そうとするが、ボールの行く先を阻もうとして出した麗華の右足に止められた。

 

紡久「こうなればジュン、そしてジュンにボールを出した真紀が鬼ということになる」

 

紡久「じゃあジュン、一旦変わってくれ」

 

 そうして紡久はジュンの場所に立った。真紀にもう一度ボールが渡る。

 

ジュン「今、ジュンはこのようにトラップしたんだ」

 

 真紀からのもう一度のパス。紡久は左足で真紀と向かい合うようにトラップをした。

 

紡久「これじゃあどうなる? ジュン?」

 

ジュン「ええと、真紀ちゃんにしか、ボールが出せない……?」

 

紡久「そうだな。だから本当は右足で向こう側の陽夏莉を見るようにトラップするんだ。そうすれば、右側の悠希にもパスを出せるし、もちろん正面の陽夏莉も選択肢に入る」

 

晴菜「陶芸と同じように、ちゃんとした手順があるんですね」

 

 紡久は頷く。そして今度はディフェンダーについて問いかける。

 

紡久「じゃあ麗華とあかね。二人が最も消さなきゃならないパスコースは何だと思う」

 

麗華「え、、、、えっとお」

 

あかね「私たちの背後ですか?」

 

紡久「そう。正解。二人がこうやってこっちを向いて詰めてきてるのに、突破されちゃあ駄目だろ。逆に攻撃も相手の背後。自分の真正面にいる味方へボールが渡ることを意識してくれ」

 

紡久「じゃあまずディフェンスはどうしたい?」

 

 紡久の言葉に二人はお互いの距離を近づけた。二人の間。サッカーでは《ギャップ》と呼ばれるパスコースのことだ。すなわち、ジュンから陽夏莉へのパスコース。

 

紡久「そういうこと。だからこそサ横の人を使って向こう側へパスを渡すんだ」

 

 紡久の言葉に色々な人が納得する。基本的にサッカーの守備は中央に守るゴールがあるため、外側に追い込むように守備をする。つまり、追い込もうとする守備の後ろにボールを渡せば、ディフェンスを突破したと考えられる。

 

紡久「だけど、横の人はただいるだけでは駄目だ」

 

 そう言って紡久はボールを持つ。それに合わせて、麗華とあかねはギャップを消しながら、紡久に寄せるようにポジショニングをとった。ここで、紡久は真紀に質問をする。

 

紡久「俺がボールを持ったとき、真紀はどんなポジショニングを取ればいい?」

 

真紀「ええと、私が陽夏莉さんに出せる位置ですよね。ここでもいいと思うんですけど……」

 

紡久「そうか。じゃあもう少しこっち側に来て、そこでボールを受けてくれ」

 

 紡久は殆ど自分と同じ場所にパスを出し、そこで真紀が陽夏莉の方を向いてトラップする。しかし━━。

 

真紀「多分あかね先輩に止められますね」

 

紡久「そういうこと。だから横の選手はできる限り、向こう側にいることが大切なんだ」

 

 その言葉を聞いて、真紀、そして悠希も麗華とあかねの斜め後ろ側へ、恐らく各々が紡久がパスを出せる限界の位置まで陽夏莉の方へ四角形のライン上で移動した。

 

 それにつられ、麗華とあかねが少し斜め後ろに動く。横に出しやすくなったが、ギャップにパスを通しやすくなった。

 

紡久「そうすれば、ディフェンスの二人が連れられ、ジュンが自由になれるということだからな。もちろんそのために、ジュンにはさっき言ったようなトラップをすべきだったし、真紀もそんなパスを出してあげなければならない。さっきジュンの左足にボールが来たぞ。いいトラップができる足とは逆側だ」

 

 真紀は頷く。

 

紡久「これがボールを回すほうがすることだ。じゃあ次は、『奪う側』。麗華」

 

 紡久は自分の左足の少し前の方へ指を指した。ここに移動しろの意味だ。まずここで、俺から真紀へのパスコースが削られる。じゃあ次はって」

 

 あかねは麗華に合わせてポジションをとった。それは、ギャップ先の陽夏莉へのパスコースを潰し、残った悠希にパスが出されても詰められる場所にいたのだ。

 

紡久「お、いいとこいるじゃん。まず麗華、というか一人目は一人のパスコースを潰す。もちろん横に行きすぎないようにある程度縦も潰さないとならないぞ。そして二人目。こいつがしっかりと一人目が消せないところを消さなければならない。ギャップと残った横側の選手だな。そうやって、相手を追い込めていって、あるところでギュッと詰めてボールを奪う。これが大切だ」

 

 そうして紡久は鳥さんのノウハウを詰め込ませた。一気に言ったから選手が理解しているかどうか、実践できているかどうかは分からない。なので一人しっかりと見ていきたいと思っていた。

 

紡久「じゃあ6の倍数になるから俺と愛守香が入るからな」

 

 人数的なものもあるので、難しいが、やるしかない。

 

 こうして鳥かごが始まった。

 

 独自のルールもあって「20本パスを繋がれたら、ディフェンスはもう一度」、「ギャップを二本通されたらもう一度」と、「股を通されたらもう一度」とした。また、四つの鳥かごをそれぞれABCDと分けて、一定時間たった後、鬼だった人はA→B→C→Dと回る。そして最初のところに一周してきた人は罰ゲームとなったのだ。

 

 そういうこともあって各々が必死になりだした。

もう一度になることを「ため1」といい、「ため2」「ため3」といい、しばらくすれば「たまった」ディフェンスのペアも出てくるようになった。

 

 あるところでは、

 

絢香「ほれ」

 

 ぽーんと紅葉と心彩と頭上をボールが行く。

 

紅葉「浮かしパスって駄目ですか?」

 

紡久「駄目じゃないぞ。ちなみに対辺同士のパスならギャップ一回の判定な」

 

心彩「そんにゃー」

 

 あるところでは……

 

あかね「ため6」

 

かすか(これでパス48本目)

 

ニコル「何本パス回されたのよ……」

 

桜「これじゃあ終わんないよ〜〜」

 

 明らかなトラップミスで鬼になったニコルと、ニコルにパスを出し巻き込み事故のように鬼になった桜が、そのまま為す術もないようにパスを回される。

 

 あるところでは……

 

麗華「ちょっと都! 今の触ったでしょ!」

 

都「触っとらんわ!」

 

紫苑「すみません……。私のパスが緩すぎで……。先輩たちにご迷惑を……」

 

麗華→紫苑→都とパスを繋ぎ、紫苑のパスに都が触れるかギリギリのところでDFの京子がカット。もし触ったのならば、都と紫苑が鬼。触ってなければ都の代わりに麗華。お互いに鬼にならまいと必死になっていた。

 

京子「別に私ほどのスーパースターとあればもう一度ディフェンスをしてもいいですけどね」

 

つぼみ「京子っち。それだけはマジで!」

 

 そしてあるところでは……

 

愛守香「おりゃあ!」

 

鈴音「罪証の貯蔵〈ちゃりーん〉」

 

 愛守香が鈴音のボールをカットしようと足を伸ばすが、それ故に開いてしまった股を鈴音に通された。これで愛守香、そして鬼のペアとなったみうは、ボールを取っても、もう一度ディフェンスをしなければならない。

 

 ちなみに、ちゃりーん、は股抜きをしたときのよく言う言葉である。鈴音はただ、ちゃりーんに漢字をつけただけだ。

 

愛守香「ご、ごめんみうちゃん」

 

みう「だ、大丈夫だよ……」

 

 

 

 それから一週間後

 

 ナナニジはボールを使ったトレーニングを行った。

 

 そうして段々と、基礎技術がついてきたところで、ナナニジのメンバーにポジションが言い渡された。

 

 最初に決まったのはGKで、サッカーの理解度も高く、的確な指示を出すことができたあかねとなった。もう一人はその後輩の心彩。身長面では大きな心配があるが、紡久にはそれ以外での理由でGKに選出したようだった。

 

 愛守香は六番町学院の教室にいるナナニジメンバーたちのもとへ、段ボール箱を持ってきた。これからユニフォームの背番号を決めようとするのだ。

 

 愛守香は2番から11番までの番号が書かれたユニフォームをみんなの前に並べる。1番はもうあかねで決定している。後輩たちの意志で、後輩は12以降の番号をつけるようになったのだ。そして、先輩たち、壁に選ばれたアイドル達が、各々自分の番号を決めていた。

 

 基本的に、自分のポジションと合った番号を選ぶ。例えば、CFの悠希は、点取り屋として9番を選んだ。中学生のときの全国大会でも、この番号をつけていたようだ。

 

 各々がとっていく中で、余り物でいいという意志を見せたみうは、残された番号のユニフォームを見る。その番号は━━。

 

みう「10番……」

 

紡久「みうが10番か……」

 

みう「うん。そうだね。余っただけだし」

 

悠希「おお! みうが10番か! いい番号を貰ったじゃないか?」

 

みう「いい番号?」

 

悠希「ああ、10番をつける人はそのチームの顔になることが多いな! サッカーを知らないみうでも、聞いたことある選手が着るような番号だ! センターのみうに相応しいんじゃないか」

 

みう「え、ええ……」

 

 

背番号

♯1 丸山あかね

♯2 戸田ジュン

♯3 佐藤麗華

♯4 立川絢香

♯5 河野都

♯6 藤間桜

♯7 柊つぼみ

♯8 神木みかみ

♯9 東條悠希

♯10 滝川みう

♯11 斎藤ニコル

♯12 八代陽夏莉

♯13 岬心彩

♯14 五十嵐真紀

♯15 阿久津かすか

♯16 蓮沼巴

♯17 七崎紫苑

♯18 村中晴菜

♯19 森鈴音

♯20 若泉月渚

♯21 椎名紅葉

♯22 黒瀬京子

 

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