22/7 時計の時間   作:友だち

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若泉月渚

一試合目に続き、先制に成功したナナニジ。

 

 それも悠希というエースの力でこじ開けたものだ。戦術的には負けていなかってし、あの局面なら本来はやられないものだった。完全に個の力で崩されたのだ。

 

 巴ですら、あそこからゴールが生まれるとは思ってはいなかった。ゴールを決めた悠希に抱きつかれるが、本人はラストパスなど出した考えはない。

 

麗華「まだまだこれからよ!」

 

 相手は失点したことにショックを受けているだろう。そうして、もしこのまま試合が進めば、いつかはは全力で攻めてくることは間違いない。相手はすでに一敗。ここで負ければ、グループステージを自力突破は不可能になるのだ。

 

 そのことをナナニジは理解している。試合前に、紡久も言っていたし、麗華も繰り返し言っている。まだまだ勝負のときは終わらない。

 

紡久「月渚!」

 

 そこで紡久は右サイドバックを呼んだ。逆サイドにいるので、なかなか呼びづらいが、ここで一端ベンチの元へ引き寄せた。

 

 紡久は戦術ボートを持って説明する。

 

紡久「いいか。今の相手は守るときに5バックになっている。で、うちの3トップをそのまま前に置くと、センターバックに一人ずつつかれて対応される。そこでお前が上がれ。5バックそれぞれの間にできる4つのゲート。そこに立て」

 

月渚「なるほどな」

 

紡久「サイドバックな分、ピッチ上のアップ・ダウンが激しい。きつくなったらまたジュンに変える。わかったか。他のやつに伝えてくれ」

 

月渚「了解した」

 

 月渚は戻っていった。

 

 そして笛の音が鳴る。前半5分。相手はボールを繋ごうとするのは相変わらずだ。まだまだ焦ることはないのだが、崖っぷちっという状況が、彼らの頭にある冷静さを消させていく。

 

 フォワードは前に出る。前線三人がデイフェンスラインに張り付くのは相変わらずだ。

 

 真ん中のセンターバックが左側のボランチにつける。桜が後ろからプレッシャーに行く。

 

 ボランチは、もう一人の方へパスを出す。そこに真紀がプレッシャーに行く。

 

 しかし、左側のボランチは、後ろにフリックでパスを出して、真紀と桜の間を通す。

 

 抜け出して、桜を置き去りにした左側のボランチがそのパスを受け取った。

 

桜「うっそ!」

 

真紀「まずっ」

 

 しかし、インサイドハーフ二人を突破した所で、ボランチの巴が待ち構える。とのことなので、ボランチは左側へ大きくパスを出した。左サイドのウインガーではなく、サイドハーフ。

 

月渚(私の身長を見てか……)

 

 月渚は飛んでくるボールをよく見て、後ずさりながら、飛んでジャンプ。うまくヘディングで弾く。

 

 そこを巴が回収する。ドリブルで一旦外に出て、右サイドにいる鈴音へパスを出した。鈴音はターンをして後ろからくるディフェンダーを抜こうとする。しかし取られる。

 

鈴音「しまった」

 

 自分の打開力のなさは分かっている。だからといって繋ぐだけではだめだと思い、相手を抜こうとするが失敗に終わった。

 

 もちろんカウンタープレスですぐさまプレッシャーに行くが、相手にいなされる。そのままゴールキーパーにボールを戻される。

 

紡久「鈴音切り替えろ!」

 

 その言葉で鈴音は守備時の定位置につく。

 

 ボールはサンジュの右センターバックへ。当然ナナニジはスライドをする。そして、相手は左のセンターバックへ一気に飛ばす。

 

 それに対してナナニジは逆の方へ移動する。月渚は相手の左インサイドハーフへ移動しなければならない。しかし普通に考えてボールのほうが人より移動速度は速い。すぐに左のインサイドハーフへボールが渡る。

 

 月渚とのマッチアップ。スピード勝負をされたら勝てそうにないので、月渚は縦は少し縦に切り気味にする。相手は右利きなので中に行きたいだろうが、そこはしっかりと体を当てて対応しなければならない。

 

 相手は予想通り中へ行く。今だ。月渚は体を相手の体の前へ入れる。サッカー選手は身長が低くても、それを弱点とするのでは無く、一つの特徴として戦うことができる。月渚は身長が148と低いが、その分相手の下から潜り込むように体を入れることができる。その対応は難しい。

 

 そういう部分もあって、月渚は一対一では強さを見せた。もちろん対人守備能力は麗華がずば抜けているが、冷静さ、という部分では月渚のほうが上回っている。

 

 月渚はゴールキーパーに戻す。ビルドアップをする。紡久の言われたとおりのポジションにつくためだ。

 

 ゴールキーパーは絢香に出す。前から来ているので、少しボールを触らず流して、左のつぼみへ。

 

 つぼみはまた絢香に少しずらして出す。

 

 絢香についてたディフェンダーは中にいた巴へのパスコースを防ごうとするので、絢香が浮いてしまう。

 

 絢香は今度は中に運ぶ。そして次は麗華へ。絢香がプレッシャーから抜け出したので、麗華についてたディフェンダーが絢香も見ようとするため、麗華へのプレッシャーが緩まるからだ。

 

紡久「麗華! 前空いたぞ!」

 

 麗華はその言葉に従い前へ。

 

紡久「桜開け!」

 

 相手のスリートップが前に行っているので、実質相手の形は5−2−3と中盤のサイドがガラガラになっている。なのでサイドへ釣られることは出来ない。ただでさえ人がいないのに、中央付近から上がってくるセンターバックの花道を作ることになるからだ。

 

 そうして桜へボールを渡す。桜はサイドへボールを渡す。前を向けば殆どフリーだ。桜は前に運ぶ。

 

鈴音「桜先輩!」

 

 中と左のセンターバックの間にいた

 

 鈴音が鈴音が降りる。そこに、鈴音を挟んていた二人のセンターバックが釣られる。そこで鈴音が落とす。

 

 二人のセンターバックの裏を取ろうと悠希が走る。

 

 桜がそこに通そうとしていると感じた左のセンターバックが反応して少し絞る。桜、そしてもう一人はそこを見逃さなかった。

 

 その一人は月渚だ。月渚は裏を抜ける。中に絞ろうとした左センターバックの外側にパスを通す。月渚がそこを抜ける。裏に抜け出した。

 

 しかし悠希に反応しようと、後ろに重心が動いていた真ん中のセンターバックが追いついてくる。やはり走力がないと、完全にゴールキーパーと一対一になることはない。

 

 なので、思い切ってシュート! しかし、ボールは枠内に飛ぶ。一瞬入った、かのように思えたのだが、ゴールキーパーに弾かれてしまった。コーナーキックだ。

 

紡久「今の良かったぞ!」

 

 ゴールにならなかったがいい攻撃ができた。サッカーで攻めるのならば、誰が裏抜けをしなければならない。その動きによって開くスペースができる。そのように流動的に動くことが大切だ。

 

 その動きを紡久はこれまで叩き込んでいた。そして、サイドバックの中でその動きが最もできたのが月渚というわけだ。

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