前半を3−0で折り返した。ナナニジのベンチの雰囲気はとてもいい。紡久は、ボードを見ながら、後半の手を考えている。
愛守香「みんな。後半も頑張って!」
つぼみ「後半ももっと点取ろう!」
そんな感じでしていると。
「もっと集中しろ!!」
向こうのベンチから怒声が聞こえてきた。
都「なんやなんや?」
晴菜「怒ってますね……。向こうの監督」
サンジュの監督「お前たち! 負けたいのか? 勝ちたくないのか? ここ負けたらほぼ終わりなんだぞ!」
向こう側の大声が聞こえている中、紡久が後半の指示をし始めた。
紡久「いいか。相手はここを……」
みう「これで終わり……」
後半が始まる。
紺色のジャージに、紺色と空色のチェック柄のパンツ。間違いなく「シャンプーの匂いがした」衣装が元になっている。
「みんないくよ!」
向こう側のキャプテンが手を叩きながら、チームを鼓舞している。
絢香「集中するぞ。風紀委員」
麗華「わかってるわよ」
全員位置についた。後半はナナニジボールから。
悠希は相手チームを見た。
悠希「なんか……。相手こっち側によってないか?」
相手チームはフォーメーションなどないかのようにセンターラインに詰め寄っていた。
笛の音が鳴る。
ピーーーー。
悠希は麗華に下げる。その瞬間、後ろにいた敵チームが一斉に前に走り出す。
突進のようなプレスをかけてきたのだ。
麗華「うわっ。ちょ……!」
麗華はびっくりしてしまい、絢香に思わずボールを出す。
絢香「お前……!」
絢香はすでにプレッシングのはまりどころだ。繋げないと判断したのか、ボールを蹴ってしまう。そのボールはタッチラインを割って、相手のスローインだ。
絢香「おい。しっかり見て出せ!」
麗華「ごめん。びっくりしちゃって……」
絢香「全く……」
相手はスローインですぐさま再開する。後ろの味方に投げる。そして蹴る。
月渚「面倒だな……」
飛んでくるボールの起動を読み、うまくヘディングで合わせてクリア。もう一度スローインだ。
近くにいたフォワードがすぐさまボールをとって再開しようとする。サイドハーフにボールを渡す。サイドハーフはトラップをしてそのまま走る。
月渚を抜く。そのままサイドを駆け抜ける。
月渚「まずいな……」
瞬く間の攻撃。麗華が月渚に近い位置ではないので、サイドの奥まで運ばれてしまう。ようやく追いつきそこで一対一。
麗華「やられない! って、ああ!」
相手は麗華にボールを当ててピッチに出す。コーナーキックだ。
サンジュチームの殆どがナナニジのゴール前に集まる。
「ここで決めよう!」
「うん!」
「絶対当てよう!」
そういう気持ちが相手のチーム内に満盈している。このままだとヤバいというのは次第に気づき始めている。
相手のキッカーはすぐにボールをコーナーへ置きに行く。
コーナーキックの時の圧が、心なしか、いや確実に前半より強い。必ず当てるというような執念というものを感じる。
笛が鳴って蹴る。ニアにボールがくる。あかねは取れない。ゴール前に走ってきたサンジュチームがマークについていた真紀を振り切り、ヘディング!。
ミートし、ナナニジのゴールへ飛んだ。
真紀「やば……!」
ダン!!
しかし、あかねが腕を伸ばし止めた。チームを救うビッグセーブだ。
しかし、あかねは倒れ、そこに相手が詰め寄る。
月渚「まずい!」
ボールをクリアしようと、月渚が走る。相手も必死に足を伸ばす。月渚は左足で前にボールを蹴ろうとする。そして何とかボールを掻き出す。その後選手と交錯して倒れた。
クリアしたボールは少し斜め前にそれる。敵の右サイドバックに渡る。
つぼみ「オッケー!」
と、した所で笛がなった。何だろうか、と思い後ろを向く。
つぼみ「えぇ。そんな……」
眼の前に映ったのは、倒れている月渚の姿だった。
さっきの交錯で腿に相手の足が当たったのだろうなあ。そこを抑えながらゴールポストの下でうずくまっている。
紡久「愛守香!」
愛守香「分かってる!」
応急セットを持ったマネージャーが月渚のもとへ急ぐ。
痛みもいったん和らいでいたのか、月渚は愛守香にパンツをずらして、当たったところを見せた。
愛守香「あ〜〜。腫れてる……」
月渚の右腿は紫色に変色している。内出血。打撲だ。
月渚「すまんな……。どうやら私は出来そうにない」
麗華「分かったわ。お疲れ様、月渚」
それを聞いてベンチに向かってバツマークを見せた。
紡久「ジュン!」
ジュン「わ、わかった」
後輩の怪我に動揺しているまま、ビブスを脱いで両ベンチの間にいる第4審の方へ向かう。
ピッチ内では、愛守香が一旦ピッチの外へ月渚を出して応急処置を始めた。
ジュンはまだ交代手続きをしていて、ピッチには立てない。その間にフリーキックで始めなければならない。
ナナニジは突然のアクシデントに集中力を切らし始めていた。