育秀はナナニジの守備を見る。
育秀「これ。今何体何だ?」
近くにいた自チームのアイドルに尋ねる。
「今3−1でナナニジだ。ナナニジが3点とったが、後半相手が息を吹き返して1点とって今こんな感じだ」
育秀「ありがとう。これはあと2点、取られそうだな……」
「それはどうしてだ? 勢いだけ見てのことか?」
育秀「それもある。だが、ナナニジの守備陣の修正が一行に見られない。大方紡久のことだから攻撃のことしか考えてないんだろう。そのままだ」
「お。ナナニジが交代するようだよ。18番と、左サイドバックの7番だね」
育秀「バテているからだろうな。だが、戦術的なミスが無ければば意味はない。18番が7番には無い何かをもたらしてくれないと、交代の意味はほとんど持たないぞ」
「そうだね。だったらちなみに、育秀ならどうなる?」
育秀「俺だったら右サイドに修正を加えるな。インサイドハーフを一人落として、ナナニジのボランチに、サンジュの左のボランチを抑える」
「なるほどねーー」
育秀「あ、まずい」
サンジュの右のウイングが絢香にドリブルを仕掛ける。
絢香「やらせるか……」
絢香は、自分の左サイドの方に突破にかかる相手に体を入れながら付いていく。だがフィジカル差がありボールを奪えない。
敵フォワードは右足でシュート!
カン!
ポスト。麗華が溢れたボールを奪う。相手は更に来る。
悠希「麗華!」
麗華「悠希!」
紡久「やめろ!」
あまりにも危険すぎて向こうにマークされている悠希。相手のボランチは必ず悠希の戻りを見ているようにしているのだ。
そして取られる。
悠希「うぐ!」
桜「ここで取る━━━━そんな!」
相手のボールを取ろうと前に出るが、抜かれる。
育秀「ナナニジのインサイドハーフ。守備強度が低すぎる。上手いんだろうが、ハイプレスはかわせないなぁ。さっきはボール持ってもすぐ取られてたし」
紡久「まずい…………!」
巴「撃たれる━━━━」
相手は振りかぶる。シュートを撃つつもりだ。巴はスライディングをして、止めにかかる。だが撃たれる。
心彩「ここ……!」
ボールに飛びつく。シュートコースはおそらく甘い。このまま手を出せば止められることは出来る。
しかしボールは無回転だ。ぐにゃりと逃げるようにボールがブレる。
心彩「あ……」
必死に手を伸ばし、ボールに振れるが力足りず。ネットを揺らしてナナニジ失点。
3−2。残り3分。
晴菜「ま、まさか……」
心彩「あかね先輩なら……」
サンジュはゴールに入ったボールをすぐさま取ってセンターサークルへ向かう。直ぐに始めさせるつもりだ。
紡久「残り3分だ! 集中しろ!」
時間はわずかしか残っていない。鈴音もみかみも、そして悠希も残って守備につく。もうナナニジの頭は守ることしか考えられていない。
紡久「このメンバーじゃあ。厳しいのか……」
みう「紡久くん……」
ゴール前には大量の人が。ナナニジは必死に引いて守る。
育秀「守備ブロックがバラバラだ。あいつ。押し込まれたときの練習絶対してないな」
みかみ「えや!」
みかみがボールを奪う。しかしすぐさまプレッシャーをかけられ奪い返される。
そして撃たれる。心彩が今度は弾く。
そのボールを晴菜が奪う。そのボールを蹴る。しかしまた相手ボール。みかみがさっき取り取られをしたので前には誰もおらず、晴菜と一対一。縦に行かれる。
晴菜「そんな……」
つぼみ先輩なら止めれていただろう、そんな言葉が頭の中によぎる。そのままクロス。そのボールは晴菜の股を通りゴール前へ。相手に渡りシュート。麗華がブロックで弾いてコーナーキック。
残り数秒だろう。
これを耐えれば、これを耐えれば。
相手が蹴る。ボールがゴール前へ。その起動はニア。
絢香「ジュン!」
普段のあだ名呼びも忘れてしまい名を呼ぶ。詰めろの合図。
ジュン「やああ」
必死に詰め寄る。撃たれる。
ジュン「げふっ」
ジュンの体に当たる。
「ハンド! ハンド!」
相手はジュンの手に当たってとしてのファールを要求するが無い。手が体にへばりついていて、不自然に動いたわけではないからだ。たが、そのボールはナナニジの左サイドへ流れ相手ボール。
試合は終わらない。
敵は横パス。そしてその横パスを受け取ったボランチが右足でシュート!
ボールはカーブしながらゴールの右隅へ吸い込まれていく。あろうことがナナニジディフェンダーの間をすり抜ける。心彩はブラインドとなってボールがよく見えず反応が遅れる。それでも持ち前の跳躍力でボールに反応するが━━━━届かなかった。
ゴール。3−3。
その瞬間、笛の音がなった。
「よっしゃーーーー」
ゴールを決めたサンジュの選手がベンチに向かって走っていく。ベンチメンバーも飛び出る。他の選手もベンチのもとへ駆け寄る。全員で抱き合い讃えあっている。
一方ナナニジは。
心彩「あ……」
ジュン「そんな……」
倒れ込み、立つことの出来ない心彩とジュン。
麗華「…………」
しゃがみ込む、頭を抱える麗華。
あと少しでもらえていた勝ち点3。奪われ、もう帰ってこないこの試合の勝ち点2ポイント分を、ピッチにいる全員が感じていた。